2022年3月議会討論

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 私は緑の党と市民ネットワークの会を代表して、本議会に上程されている諸議案の内、議案第26号ないし第29号、第31号、第33号、第38号ないし第41号、第46号、第51号、第59号ないし第65号、第75号に反対して討論を行います。

 新型コロナウィルス感染症の第6波は陽性者の数は緩やかに減少していますが、まだ見通しは定かな状況ではありません。感染症による経済への影響に加え、ウクライナへのロシア侵攻による世界経済への影響、アベノミクスの負の遺産である円安と、日本経済は悪化しています。かつての1億総中流時代から中間層は消え始めており、格差と貧困が広がっています。日銀による調査で二人世帯以上の世帯において、貯蓄がゼロの世帯は30%という報告があり、またコロナ禍で貯蓄が増えたと言われていますが中央値は下がっており、格差が広がっています。相対的貧困率が改善していると言われていますが、相対的貧困率は所得の中央値の1/2以下を指しており、所得の中央値が下がっていることから、実際には貧困者が増えています。

しかし、自公政権は、国民の生活はいっそう疲弊しているにもかかわらず、新自由主義政策を転換しないどころか、富裕者優遇、大企業優遇の税制を進め、政府は戦争する国へ敵基地攻撃や憲法改悪を目論み軍事費を増やし続けています。更にウクライナ戦争を口実に核武装が安倍元首相などの自民党内や日本維新の会から主張されることは許されません。軍事費は国民生活のために使うべきです。

福岡市においても、次年度予算は「ぬくもりと彩り」をキーワードにしていますが、これまでと変わらない人工島事業、天神再開発事業、中央埠頭再開発事業、博多駅周辺再開発事業、国際金融機能誘致などへのインフラ投資や補助金交付など、「都市の成長」に軸足を置く経済成長政策を優先する政策を進めています。都心部再開発により緑が劣化しており、また延べ床面積の増加はエネルギー消費を増やし、二酸化炭素の排出量を増やします。「みどりや文化芸術、歴史などが持つ魅力にさらに磨きをかけ、まちに「彩り」を加え、多様な豊かさを感じられる、市民一人ひとりのW e l l – b e i n g を大事にするまちづくりを進めてまいります。」と述べていますが、実態はヒートアイランド現象の激化と温暖化を進め、W e l l – b e i n gとはほど遠い状況になります。都市の成長への経済優先政策から、市民の暮らしと雇用環境の改善に政策転換が必要です。

次年度予算では夜間中学が開設され、ヤングケアラーの支援や子ども・若者支援センター事業など新たな事業が始まり、35人学級が本格的に実施されます。制度は少しずつ整備されていますが、制度を支える人については相変わらず会計年度任用職員などの非正規雇用が増えています。デジタル化を進めることで職員を対人業務に回し、市民へのサービスを高めると言っていますが、必要な人員体制にはなっていません。会計年度任用職員を増やす、あるいは外部委託を進めており、専門職を軽視し市民に対するサービスを低下させ、低賃金構造を更に拡大することになります。公契約条例策定や非正規雇用から正規雇用へ転換を促進させる施策が必要です。全ての学校図書館に正規雇用の司書を配置する、教員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの増員と正規雇用が必要です。

また、デジタル化により、市民の個人情報が教育の場を含め様々なところで収集され、利用されることが進められます。個人情報は基本的人権であり、プライバシーの保護と個人情報の自己コントロール権が保障されなければなりません。国はデジタル庁をつくり総理大臣の下、地方自治体の情報を始め、免許証、保健所、銀行口座、医師や教員等の国家資格、更に子どもの成績など、国民の個人情報を一元的に管理・利用することが出来るシステムを進めています。更に重要土地利用規制法ができ、福岡空港など重要施設がある福岡市において市民の個人情報の提供が求められることが考えられ、福岡市として監視社会への対応が求められます。18歳、22歳の市民の個人情報を本人の同意もなく自衛隊に提供することは個人情報保護違反であるとともに地方自治法違反であり直ちにやめるべきです。

次年度予算案は子どもや若者支援、市民の暮らしに目を向けた予算としては不十分であり、2022年度予算関連議案に反対するものです。

 次に一般議案について述べます。

 まず、議案第46号福岡市共創による地域コミュニティ活性化条例案に反対して討論します。本条例案は「良好で持続可能な地域コミュニティの形成を図るため、基本理念を定め、市民等の役割及び市の責務を明らかにする必要があるによる」としています。第4条には市民の役割として「地域活動に自主的に取り組むよう務めるものとする」とあり、第5条には町内会等の役割が規定しています。

 地方自治は住民自治と団体自治で構成されており、住民自治は一定の地域社会の公的事務を住民みずからの意思に基づいて自主的に処理するものと解されています。住民自治の一形態と考えられる町内会等は、住民の任意の参加による親睦を目的とする地縁組織であり、努力義務であっても参加が強制されるべきものでありません。地方自治体が住民の自主的な活動を支援することは地方自治体の責務であることから、条例に市の責務については記載しても、市民の役割や町内会等の役割と言うことで条例に努力義務を記載することは問題といえます。また、町内会等や町内会等の連合組織である自治協議会は任意組織であり、市が町内会等や自治協議会の事務を規定することは行政機関に組み入れることとなり、住民自治の否定になる恐れがあります。

もう一つの問題点は、2005年に本条例案とほぼ同様な目的で福岡市市民公益活動推進条例を制定しています。この条例は今回上程されている条例案とほぼ同様の中身となっており、同様な条例を制定するに至った理由は何なのか疑問を持たざるを得ません。福岡市市民公益活動推進条例が制定された以降、町内会等に加入する地域住民が減少していることを考えれば、福岡市が補助金の交付の条件に市が行うべき業務を地域に強要したことや、地域での過大な行事開催などに対する住民の負担があると考えられ、条例を制定することが解決にならないことは明らかです。屋上屋を重ねることであり、条例案に反対します。

次に、議案第62号福岡市公園条例の一部を改正する条例案について反対の理由を述べます。この議案は都市公園法改正により、公募設置管理制度パークPFIを導入出来るようになり、条例改正するものです。国及び地方自治体の財政が逼迫する中、民間事業者に公園における収益活動を認め、収益の一部を公園の管理に使用するという、民間活力を生かした公園管理を行うというものです。合理的に見えますが、公園という公共空間が、民間事業者の収益の場になることの本質的な問題があります。公園は基本的には市民の憩いの場、レクレーションの場であり、災害時には避難の場となります。誰でもが自由に利用できる空間であり、利便施設は最小限にとどめ、利便施設の運営は障がい者の雇用の場など公共性がある事業に限るべきです。また、公園を共有の畑や果樹園として市民が整備するエディブル・コモンズが都市における新たな公共空間の在り方として提起されています。エディブル・コモンズは出会いの場であり、学びの場であり、災害時や低所得者の食糧確保の場であります。都市のW e l l – b e i n gを形成するために、パークPFIを推進よりもエディブル・コモンズを推進すべきと考えます。以上の理由から議案に反対するものです。

次に、議案第65号福岡市道路の構造の技術的基準及び道路標識の寸法を定める条例の一部を改正する条例案について述べます。

本議案は近い将来無人バスの走行などを想定して、道路地下に自動運転の走行を補助するための「自動運行補助施設」を設置できるとするものです。自動運行するためには多数の監視カメラを道路沿線に設置する必要があり、「自動運行補助施設」とセットの事業となります。そもそも自動車の自動運行が必要なのか、また監視カメラによる個人情報収集と利用について、個人情報保護が十分図られている状況にない中で、先行的に条例を改正する必要があるとは考えられません。カナダのトロント市での湾岸地区再開発事業において、企業が市民の同意もなく個人情報を収集することがわかり、住民の反対によってスーパーシティを計画していたグーグル系列の企業はスーパーシティ計画から撤退しました。本議案は箱崎キャパス再開発におけるスマートシティを想定していると想像するものですが、個人情報保護について十分な議論がなされない状況おいて本条例改正案に反対するものです。

次に、議案第75号福岡北九州高速道路公社の基本財産の額の増加に伴う定款の変更に関する同意について、反対の理由を述べます。

本議案は都市高速道路を福岡空港までの1.8km延伸する事業のための増資です。これまでも議論してきましたが、混んでいる時間帯で短縮時間わずか5分から10分程度に470億円を使う事業が必要とは考えられません。しかも現時点で事業費は470億円としていますが、高速道路6号線人工島への接続道路は当初250億円であったものが401億円なったことを見ても、湿地帯にトンネルを通すことから470億円で終わるとは考えられません。加えて国道3号線空港口交差点には交差点を南北にまたぐ陸橋が架けられることになっていることから、高速道路延伸事業は全く必要性がないといえます。少子超高齢化社会が進んでおり、今後福岡空港への自動車による交通量が増えるとは考えられず、無駄な公共事業といえます。

以上の点から本議案に反対するものです。

最後に、議案第76号令和4年度福岡市一般会計予算案の組換えを求める同議案に賛成して 意見を述べます。

学校給食は食育として教育の一環であり、無償化を求める意見はこれまでも出されています。全国的に給食費を無償化する自治体は増えてきていますが、大阪市ではコロナ対策として2020年から給食の無償化をしており、世田谷区では一昨年から就学援助を拡大して年収700万円以下の世帯の給食費を無償化しています。2年に及ぶコロナ禍で生活困窮世帯は増えており、またウクライナでの戦争の影響や、アベノミクスの負の遺産である円安により、今後更なる物価上昇と経済は低迷するとみられ、緊急措置としても、生活困窮世帯に対する学校給食費の更なる負担軽減の措置をする必要があります。よって令和4年度福岡市一般会計予算案の組換えを求める議案に賛成します。

以上で討論を終わります。