6月議会
6月議会の主な議案は①コロナ対策の追加補正予算(生活困窮者に対する30万円の給付、プレミアム電子商品券の販売)、②法律の改正に伴い行政手続きのデジタル化を進めるための条例の改正(従来通り紙媒体でも可)、③福祉施設や介護施設等での電磁記録ができること、また本人の同意があれば電磁媒体での報告等ができるよう条例の改正、③その他天神1丁目開発地区計画決定、人工島の護岸延長、公共施設の建設契約等、でした。
議案質疑
1)補正予算について
今回の生活困窮者支援対策は、総合支援貸付金最大200万円の借入をして新たな借り入れができなくなった方で、非課税世帯克ちょちくが70まんえんいかなどの複雑な条件があり、極めてわかりにくく、また生活困窮者をカバーできている制度とは言いがたいものです。しかし、少しでも有効な支援にするためには、制度の周知が重要であり、答弁では「市政だよりや市ホームページへの掲載を予定している」としていますが十分とは考えられません。今後効果的な制度の周知について検討するとしていますが、全非課税世帯へ通知するなど踏み込んだ周知を求めました。
プレミアム電子商品券事業は2月議会議決の全市版プレミアム付電子商品券事業に追加され、事業規模が約2倍になっています。利用者の住居指定がないことから福岡市へ来られる人は誰でも利用でき、市民の利用者が必ずしも増えることにはならないと考えられます。市内事業者には事業規模が増えた分支援強化にはなると考えられますが、事業者でも天神および博多駅周辺の大型商業施設での利用が多くを占めることが考えられ、市内中小事業者の恩恵は少ないと思われます。そこで、事業者参加の呼びかけにおいて決済機器が必要ないことを周知することや、市民が近くの事業者でも利用できるよう地域ごとの参加事業者を紹介するなどの取り組みを求めました。
2)天神1丁目開発について
現在「天神ビッグバン」と称する天神における大規模な再開発が進められており、本議案もその一部です。都市の景観は市民の財産であり、また気候危機が指摘される昨今、都市のクーリングが求められています。今回の地区計画においても50年先100年先を見据えた都市景観と環境対策を盛り込むことが求められます。市は計画が具体化する中で誘導してゆくとしていますが、地区計画を作る時点で植栽計画および緑化率、エネルギー効率化の水準、自然エネルギー調達目標など明確な目標設定を求めました。
3)人工島の岸壁延長について
国際的な状況を冷静に見ると、今後福岡市のコンテナ取扱量が増える状況は全くありません。2019年までの過去の推移を見ると、コロナ禍とは関係なく、入港船数の減少傾向、クルーズ船の減少、取扱量の推移は微増・頭打ち。国内外の経済動向を見ると生産拠点は中国・東南アジアに移っており福岡市は集荷・輸出入の拠点ではありえません。人口動態を見ると福岡市は超高齢社会となっており、まもなく人口減少となります。また周辺都市も超高齢化・人口減少がすでに始まっており福岡市およびその周辺において消費が増え続けることは考えられません。港湾統計の現状から乖離した2016年の港湾計画は単なる願望に過ぎません。2016年の港湾計画は見直し、過剰な港湾整備をやめるよう求めました。
一般質問
1)建築紛争予防条例について
中央区小笹のマンション建築事業者は、住民が説明会開催を求めていますが誠実に対応していません。福岡市と同じような建築紛争予防条例を持つ14市では事業者への説明が義務付けされ、住民が事業者に説明を求めたときは、事業者は説明しなければならないとなっています。福岡市では住民が求める説明会開催については事業者の努力義務となっています。また、3市では事前説明報告書を審査し必要な措置を勧告でき、4市では市長が必要と認めたときは説明会について事業者に報告を求める事ができます、さいたま市は事業者の事前報告書を公開し、近隣住民は意見を述べることができます。事業者の不適切な対応は福岡市の条例に問題があり、条例改正を求めました。
2)福岡市の緑の政策について
須崎公園において市民会館建て替えのため、樹木の伐採が問題となっています。2009年策定の新・緑の基本計画では「多様な役割を担う“緑”に対して我が国の多くの都市では、経済発展を最優先に捉えた政策で、多くの自然や緑を減少させてきました。しかし、近年の地球温暖化やヒートアイランド現象、都市災害などの深刻な環境問題の顕在化などの課題をも引き起こしてきています。」「福岡が持続的に発展していくためには、福岡の持つ特性を活かしつつ、経済性、効率性優先だけではない都市づくりを進め、「都市の中に緑を創る」という発想から転換した「緑の中に都市がある」姿を目指さなければなりません。」と言っています。しかし、高島市長が進める「都市の成長」優先政策によって、福岡城址では5年間に98本も高木が切られるなど、福岡市の緑の現状は悪化しています。2017年時点では市街地の永続的な緑地が14ヘクタール減少、目標の58%余です。2020年の調査はありませんが2017年の数値から緑被率も目標を大きく下回っていると思われます。開発優先の市政から「緑の中に都市がある」理念が実現する政策への転換を求めました。
3)自衛隊への名簿提供問題について
今年も同意がない市民の名簿が自衛隊に提供されました。自衛隊が今年5月11日から17日にかけて霧島で米、仏の軍隊とともに市街戦などの訓練をしており、紛争地への派兵は現実化しています。自衛隊への同意なしの名簿提供は個人の権利侵害になることは明らかです。毎年3万人もの名簿が同意なく渡されており、直ちに名簿提供をやめるよう求めました。
「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」の廃止を求める意見書(案)に賛成して討論
これまで、2013年の特定秘密保護法強行採決、2015年戦争法強行採決、2017年共謀罪法強行採決、と住民・国民の人権や権利を奪う法律が、多くの反対の声がある中で数の力で強行採決されてきました。今年に入りデジタル関連法が十分な審議がなされないまま強行採決され、マイナンバーが様々な個人情報に紐づけられ、内閣総理大臣をトップとするデジタル庁によって個人情報および行政情報が一元的に管理されるようになりました。このような戦争への道と監視社会形成のなかで、この法律は、かつての空域、土地、水面について区域を定め、その区域に於ける航空、気象観測、立ち入りの禁止又は制限、外国船舶に対する開港場以外の入港禁止又は制限を行った軍機保護法や撮影やスケッチなどを禁止した要塞地帯法の焼き直しともいえるものです。
この法律は内閣総理大臣の下、注視区域、重要施設を恣意的に指定することができ、自衛隊や米軍の基地周辺だけではなく、原発など住民が問題とする施設についても指定することができます。監視の対象者、調査される事項の範囲、調査の主体、阻害行為などあらゆる法概念があいまいで、指定区域周辺住民や土地所有者の情報が知らない間に集められ、監視されることになります。基地や原発の周辺の土地の外資による取得を規制するものだけではなく、知らない間に指定区域周辺住民や土地所有者の個人情報が収集され、被害を受けている住民を敵視し、権力者に不都合なものを監視しようとするものです。
その第一の対象はあきらかに沖縄です。沖縄では対中国政策として石垣島や宮古島で自衛隊のミサイル基地建設が進み、軍事拠点として標的となる島の住民は基地建設に反対しており、沖縄本島では東村のヘリパット建設反対運動や辺野古新基地建設反対運動が起こっています。この法律の行使により、こういった基地建設反対の住民運動を潰すことが考えられます。そして、第二の対象は首都圏を含む全国の基地県と原発立地県です。この法律によって基地撤去を求める住民運動や原発反対の住民運動を強力に規制することが可能になります。福岡市にも福岡空港に米軍基地と自衛隊基地があり、背振山には自衛隊のレーダー基地があります。指定区域周辺の住民監視や土地取引の制限など、福岡市民にもこの法律の影響が生じます。しかし、それだけではありません。第三の対象は上下水道、エネルギー、通信、交通など重要インフラ施設の周辺、すなわち全国に拡大できます。私には関係がないと、この土地規制法に手をこまねいていれば、最後には一般市民も口を封じられることになりかねません。
この法律は基地や原発に反対している人たちだけの問題ではありません。様々な個人情報および行政情報が内閣総理大臣の下に一元的に管理される構造とともに、曖昧な法概念で恣意的な運用により住民を恫喝して黙らせようとする法律です。指定区域周辺の住民プライバシー侵害と土地所有者の規制など、問題が多いこのような法律は廃止すべきです。