新型コロナウイルス感染症対策緊急事態宣言が一旦5月31日まで延期とされましたが、14日に見直しで福岡県は15日に解除されました。緊急事態宣言が延長されることが明らかになった5月5日に、福岡市は第2次の独自施策を発表し、5月19日、20日に臨時議会を開催しました。福岡市第2次独自施策に関する補正予算案および特殊勤務手当特例条例改正案並びに医療・介護者等応援基金条例案は全会一致で議決されました。しかし、相談窓口が繋がらない、全ての事業者にカバーでていない、PCR検査が十分でなく実態が把握できていないなどの問題点が指定されました。秋口に向けて、新型コロナウイルス感染症の第2波が来るおそれがあり、またインフルエンザと重なるおそれがあり準備が必要です。学校再開についても段階的に登校が始まりますが、感染予防をしつつも出来るだけ早く通常の授業に戻すことが、子どもの成長のためには必要と考えてます。
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臨時議会討論(森議員)
私は緑と市民ネットワークの会を代表し、今臨時議会に上程された議案第123号 令和2年度福岡市一般会計補正予算案(第3号)、議案第124号 福岡市職員の特殊手当に関する条例の一部を改正する条例案、議案第125号 福岡市医療・介護従事者等応援基金条例案について賛成し、討論を行います。
議案第123号、124号、125号はいずれも新型コロナウイルス感染症の追加支援策として上程されたものです。先週金曜日の15日から福岡県の緊急事態は解除されましたが、市民の暮らしや経済活動は、感染症拡大前の状況にしばらく戻ることはできません。
世界全体の状況は、昨日の時点で陽性確認されているのが489万人、新たな感染者数は過去最高の112,637人、死亡者数は32万人を超え、パンデミックは続いており、国内でも感染者が発生している状況があります。今後とも感染拡大予防対策の継続が必要であり、私たち市民の行動も事業活動も3密にならないよう注意し続けるとともに、手洗いや消毒などの感染予防策の徹底は緊急事態宣言中と同様求められています。今臨時議会で上程された3議案は、緊急事態が解除されても、市民の暮らしを支えるために必要であり、とても重要なものです。
この間様々な報道や特集番組でも指摘されていますように、日本において収束に向かっても、日本の感染者が少ない状況であれば秋口には第2波、第3波の感染拡大状況が生じる恐れが指摘されています。100年前にパンデミックを起こしたスペイン風邪は、日本では3波にわたって感染のピークがあったといわれています。1918年春の第1波の感染はそれほどでもありませんでしたが1918年秋に始まった第2波の感染では感染者数は約2100万人、死亡者数は約26万人、1920年秋の第3波の感染者数は約240万人、死亡者数約13万人といわれています。新型コロナウイルス感染症は治療薬やワクチンの開発にはまだ時間がかかるとされ、当面は検査と隔離、対処療法的治療で対処するしかありません。特に、秋口はインフルエンザと新型コロナウイルス感染症が混在する状況が想定され、発熱外来の運営について準備が必要と考えられます。
このような状況において、保健所および医療関係者のマンパワーを充足させ、検査体制および隔離体制を維持し、秋口の備えを検討することを求めるものです。そこで、秋口に備えるためには、PCR検査に加えて先日承認された抗原検査の検査を行い、併せて抗体検査をすることで感染実態を把握することが必要です。医療・介護が崩壊しないよう、施設内での集団感染を防ぐために医療介護従事者および関係者の抗原検査・PCR検査を行うこと、また新たに設置された地域外来・検査センターを継続させ、検査と陽性患者を隔離できる体制を維持することが必要です。また、ライフライン従事者、保育関係者、学校関係者の検査を併せて行う必要があります。感染予防体制を充実させつつ、段階的に日常生活および事業活動に戻ることができる環境を整備していくことを求めます。
会派で行っているアンケート調査では、まだ途中ではありますが一番にPCR検査の受けやすさを求める声が寄せられています。実態がわからないことへの不安の現われです。
感染症の集団感染を歴史的に見ると、人類の農耕社会が始まり人口集団を形成した約1万年前から起こっていると言われています。特に1918年にアメリカから起こったスペイン風邪は世界を席巻し、日本にも襲来しています。当時と現在とは衛生環境や検疫体制は異なるものの、スペイン風邪は未知の感染症にどう対応すべきか新型コロナウイルス感染症対策においても学ぶものが多いと言われています。今回の新型コロナウイルス感染症対策を将来の未知の感染症対策にいかすためには、災害という視点で防災計画に組み込むことが必要ではないかと考えます。グローバル化が進み、物流・人流は大きくなり、世界はますます狭くなっています。かつては風土病とされていた感染症もグローバル化が進む今日では、今回のようなパンデミックを生じるおそれが高まっています。また、経済成長とともに開発が進み、動物と人間との距離はますます近くなり、動物から人間へ、人間から動物へと感染リスクが高まっています。感染症のパンデミックの時間的間隔は小さくなっているという指摘もあり、またエボラ出血熱やデング熱などの新たな感染症も出現していることから、感染症を災害として認知し、私たちの記憶に残るようにすることが必要と考えます。災害同様に初期対応が重要で、迅速な検査体制と隔離体制の整備、防護服・マスク・消毒等資材の備蓄と行動様式の訓練、複合災害時の対策、また市民生活や事業者の支援などを準備することが求められています。
グローバル化した経済において、感染症のパンデミックは世界経済だけでなく国内経済にも大きく影響し、その影響は長期に亘ることが明らかになりました。災害支援同様に国民の生活や事業者への継続的支援が必要となります。同時に、経済の在り方が変わらざるを得ません。経済のグローバル化は今後も進むと考えられますが、同時に地域で循環する経済を構築することが重要となります。福岡市においては、「都市の成長」=「経済成長」への投資に重点化してきたことから、地場中小企業の支援と共に、福祉、医療、教育、文化・芸術など、人への投資に政策転換が必要です。
感染症対策は国がなすべきものが多いのですが、住民と直接向き合う地方自治体としても整備することが必要です。今回の新型コロナウイルス感染症では感染症の被害は高齢者や持病を持った方など免疫力が低下した方に深刻な被害をもたらしています。超高齢社会を迎え、感染症対策の一つの要素として、医療と介護の連携が重要と考えられます。今回の新型コロナウイルス感染症で医療崩壊の危機の背景には、国の医療費削減政策による病床数削減や地方の公立病院削減、公務員の削減による保健所機能の低下などがあると考えます。有床診療所等地域資源を生かし地域包括支援システムと感染症対策との連携を構想すべきではないでしょうか。
本市にとってもこれまで経験のない感染症による影響への対応です。市長を先頭に、各局職員方々が夜遅くまで様々な対応をしてくださっていることに感謝いたします。特に市民に近い業務に携われている方々は、自粛を余儀なくされる方や働かざるを得ない方の、様々な苦悩の声を聴きジレンマに陥る状況もあると拝察します。一生懸命に対応してくださり、何とか支援ができることもこの間増えては来ましたが、人口160万人の都市です。まだまだ制度がわかりづらかったり行き届かなかったり、制度の隙間にある方もいらっしゃいます。市民にとっても、外出自粛で 精神的にも体力的にも不安を抱えられています。怒りの声も届いています。衛生用品不足、情報不足、特に支援の遅さは生業の継続危機が起こっています。年金生活だけでは暮らせない方にとっても、給付金はまだ届かず不安で苦しい状況にあられます。また、医療・介護従事者など、気温の上昇により既に防護服やマスクの装着で熱中症も懸念されます。働き続けられない、生きていけない、そんな声が私どもの会派に寄せられています。更なる支援策の充実とわかり易い周知を要望します。一人ひとりに寄り添う対応と寄り添える体制の充実を引き続きよろしくお願いいたします。そして、緊急事態に無くとも、保健所の充実、公共施設の運営、学校運営、生活および事業の在り方の想定、防護服、マスク、消毒剤等の機材の備蓄など、今後数年を見据えた感染症対策を地域防災計画としてグレードアップすることを求めます。人の生きる力を高める施策の充実を図ることが、これからの社会が進む道だと考えます。
以上、誰一人取り残さない市政運営となることを求めまして、私共会派の賛成討論を終わります。