昨年末武漢で発生した新型コロナウイルス感染症はパンデミックとなっており、世界での物流および人の交流は制限され、経済や生活は大きな打撃を受けています。日本においては他国に比して緩やかな感染拡大状況ですが、今後大都市を中心に感染症が急激に拡大するオーバーシュートによる医療崩壊を生じさせない対策が求められています。濃厚接触を避け高齢者などに感染させないなどの市の対策と私たち市民の協力が必要です。
今回の新型感染症による市民生活および経済活動の影響は、リーマンショックを超えるとも言われ甚大です。国民生活および経済活動の維持のため、国においては雇用対策や消費対策、企業への融資などの経済対策が検討されていますが、本市としても対策本部を設置し予算案を組み替え、独自の緊急対策を取るべきです。新型感染症の世界的パンデミックは終息の見通しはつかず長期化するおそれが強く、世界経済および日本経済の後退は長期化するものと見られます。国民生活および経済活動の回復を図るためには思い切った多額の対策費用を要すると考えられます。税収が激減することは明らかであり、緊急な対応が必要であることと多額の対策費を要することを勘案すれば、予算の組み替えを速やかに行い、その後の状況を見て適切な時期に補正予算を組むべきです。宿泊税については事業者支援のために、4月1日実施を延期するとともに新型コロナウイルス終息後も一定期間実施を延期すべきです。新型コロナウイルス感染症の一日も早い終息を全世界ともに願うところです。
他方、本市が安倍首相の根拠のない小中高校および特別支援学校の一斉休校要請に阿吽の呼吸で追随し、市民に甚大な影響を与えたことついては今後検証されなければなりません。また、新型コロナウイルス対策特措法を制定し、安倍首相が緊急事態宣言できる事態を作ったことはまさに火事場泥棒ともいえます。「桜を見る会」、森友学園問題、加計学園問題、自衛隊日報問題、更に黒川検事長定年延長問題に見られるように、ウソ、改ざん、隠蔽、自己都合による法の解釈を平然と行ってきた安倍首相に人権を制約するような権限を持たせることは極めて危険な状況になったと言えます。森友学園問題の文書改ざん事件で自死した職員の手記に対しても何ら責任を感じない安倍首相および麻生副総理の発言は、日本の政治の腐敗がここまで来たのかと感じます。
高島市政の基調は2020年度も「都市の成長」優先です。破綻した人工島事業への投資、2016年港湾計画は実態と大きく乖離し破綻が明らかにもかかわらず中央埠頭をはじめとする湾岸部の再整備、天神再開発や博多駅周辺の再開発を優先するものとなっています。安倍政権の7年間で非正規雇用が4割と増え実質賃金はマイナスとなっており、福岡市も同様な実態となっています。大企業優遇・富裕層優遇の税制、特区による規制緩和による再開発事業や大企業優遇の開発政策を進めていますが、トリクルダウンは起こっていないし、起こりません。この様な中、消費税が昨年10月から10%に引き上げられ、他方医療費の負担増や国民健康保険料の引き上げなど、市民生活は一段と苦しくなっています。介護保険、国民健康保険、後期高齢者保健には一般会計からの繰入を増やし、負担軽減をすべきです。また、「教育・保育の無償化」が実施されましたが、全ての子どもが対象ではなく、また3歳児から就学前の保育費は新たに副食費の負担が必要となっています。いまこそ、開発優先の政策をやめ、市民生活の支援が必要です。
2020年度から会計年度任用職員が採用され、非常勤職員の処遇が改善されることになりますが、給与総額は低下しないとしつつも月額の給与は大幅に下がることになり生活設計は難しくなります。非正規としての処遇の悪さや勤務時間制限は本来の職務を十分にこなせるとは考えられません。児童福祉司、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどいじめ対策、子どもの貧困や虐待から子どもを支援する職員は処遇が悪い上に人員も足りておらず、十分な支援が出来るとは考えられません。図書館司書や学校司書の処遇の悪さや人員不足により、総合図書館と学校図書館連携による児童のアクティブラーニングの支援や教員の学習計画の支援、不登校児童の学校内の居場所としての学校図書館の開設など、学校図書館機能が発揮されていません。教育現場でも働き方改革が叫ばれていますが、教員の数が足りていないことや、保育士の確保が出来ないために保育園児の受け入れが出来ない状況です。介護や福祉の現場でも従事者への改善が求められています。「都市の成長」に優先的に投資するのではなく、「人への投資」を優先すべきです。
全世界そして日本において大規模な自然災害は急増しており、気候変動対策は喫緊の課題です。開発優先の市政は子ども教育環境を悪化させ、緑地を劣化し、ヒートアイランド現象を進め、地球温暖化を助長するものです。福岡市は2040年までに温室効果ガス実質排出量ゼロを目指すとしていますが、具体的なものは見えてきません。福岡市は気候非常事態を早急に宣言し、市民と危機感を共有して脱炭素社会実現に向けて行動する必要があります。広く市民の参加の下「地球温暖化対策実行計画」を改定し、具体的施策を打ち出すべきです。とりわけ将来の地球の住民である若者の声を聞く必要があります。福岡市は二酸化炭素排出量削減のために、九電に石炭火力発電をやめさせ、福岡市の購入電力は再生可能エネルギー100%にすべきです。
また、福島原発事故後9年を迎えましたが、原発事故の収束は見えず、原発の電気はなくても電気は十分足りています。原発は決して安いエネルギーではなく、一旦過酷事故を起こせば長期に亘り生活を奪い、健康被害や自然破壊が長期に続きます。また、原発労働者や周辺住民の命を犠牲にしてなり立つ非倫理的なエネルギーです。全ての原発を廃炉にする取組をすべきです。
都市の構造として、質の高い緑地およびオープンスペースを増やし、省エネルギー建築物を促進し、これ以上河川や博多湾の埋立はすべきではありません。和白干潟をラムサール条約登録湿地に指定するなど、「環境政策」優先の市政を求めます。
また、情報化社会が進み、個人情報保護が益々重要となってきます。福岡市も情報化システム改善を進めてきましたが、セキュリティの向上と運用の在り方が常に問われます。2020年4月1日より、髙島市長は自衛官募集に18歳、22歳の名簿を提供するとしていますが、個人情報の保護に関する法律、行政が保有する個人情報の保護に関する法律および福岡市個人情報保護条例は目的外使用を原則認めておらず、法的根拠は弱く名簿提供はやめるべきです。福岡市個人情報保護審議会の目的外使用に関する答申は、「自衛隊の目的外使用禁止措置を厳正にすることと、提供を望まない市民を除外すること」を求めています。安保関連法および日米新ガイドラインの基、自衛隊員は国防とは関係なく海外での戦闘に巻き込まれることは現実のものとなっており、2016年南スーダン・ジュバに派遣された陸上自衛隊員は家族に遺書を書いて出発しています。このような状況で、本人の同意なしに自衛隊員募集のために名簿を提供することは個人の権利利益を侵害することとなります。福岡市個人情報保護条例第10条2項では、「本人又は第3者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは」提供できないとなっています。条例を遵守するならば、自衛官募集のために名簿提供することに本人の同意を得るべきあり、また個人情報保護審議会の答申はこのことを示唆するものです。ところが、2020年度予算では本人の同意を得るためのダイレクトメールの費用や自衛隊に名簿提供後の個人情報漏洩を防ぐ措置に関する予算措置を執っていません。情報化時代・シンギュラリティを迎える中で髙島市長の人権感覚が問われています。自衛官募集のために18歳、22歳の市民の名簿を提出することは、「住民の福祉の増進を図る」地方自治の本旨に外れ、イギリスの作家ジョージオーウェルの「1984年」に描かれた監視社会に繋がる行為です。厳しく市長の責任を問います。
次に、一般議案に関して、特に議案第70号福岡市立学校の特別措置に関する条例の一部を改正する条例案について反対の意見を述べます。この条例案は教員の給与に関する特別措置法改正によって教員の時間外勤務の上限が指針として示されたことによる改正です。教員の時間外勤務が多いことは、教員の健康上の問題、子どもと向き合う時間がないなど指摘されてきました。時間外勤務の上限が法的に明記されたことは評価されますが、上限最大1ヶ月100時間、2~6ヶ月の平均で80時間、年間の上限は720時間となっていますが、これは過労死を容認するもので問題です。市の条例において時間外勤務の上限は大幅に削減すべきです。その為にも教員を増やすべきです。
次に議案第72号福岡市総合図書館条例の一部改正する条例案については、仮称早良南図書館の設置についてであり議案には賛成するものですが、図書館の運営については指定管理にするとしていることについて意見を述べます。図書館は単に本の貸し出しだけをするものではありません。市民の生涯学習の支援や情報の提供、また学校図書館との連携など図書館行政は総合的になされなければなりません。既に指定管理となっている東図書館は利用者の評価は高く、問題ないとしていますが、その認識に根本的な誤りがあります。図書館の分館を指定管理にすることは、分館では総合図書館や学校図書館とは異なる独立した業務管理になり、一体的な図書館政策が展開できなくなります。これは図書館行政の在り方としては致命的と言えます。また、指定管理において司書の給与は低く抑えられ、低賃金構造が広がることも問題です。以上の理由から、図書館分館を指定管理にすることは反対です。
「人への投資」を優先せず、人件費削減を進めて「都市への成長」に優先的に投資する市政からの転換を求めて反対討論を終わります。