他都市調査その2

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26日(金)愛知県

時 間 10:00~11:40

説明員 議会事務局戸塚主査

目 的 愛知県営道路のコンセッションについて道路管理上どのような成果があるのか調査した。

1、コンセッション導入の経緯

1)事業までの経緯

愛知県営道路公社は1972年に設立され、愛知県99.9%、豊田市0.1%の出資となっている。豊田市の出資についてはと豊田市が関連する道路事業はすでに償還が終わっているが、公社が精算されるときでなければ豊田市には出資金は返還されないために残っている。コンセッション前は道路整備特別措置法による有料道路8路線と一般自動車道有料道路1路線を営業していた。

2011年にPFI法が改正されコンセッションが制度化されたが道路は対象外であった。道路整備特別措置法に基づく有料道路を運営できる者は、都道府県等の道路管理者や地方道路公社に限られており、民間事業者がその運営を行うことは認められていなかった。県知事として愛知県の活性化に民間活力を導入すべきとの考えがあり、国に規制緩和を働きかけてきた。2012年2月に国に民間事業者による有料道路事業の運営を認める、構造改革特区制度による規制の特例措置に関する提案を実施。

2014年6月政府の構造改革特区推進本部において、道路整備特別措置法の特例を設けることとする方針が決定。2014年12月に経営状況が良い知多4路線の事業変更を議会の議決を得て、県は道路管理者として同意。2015年7月に構造改革特別措置法の一部改正(国家戦略特区)が成立。検討の結果、地方創成として国家戦略特区の区域指定を申請し、2015年9月に区域指定を受けた。公社管理道路において、➀民間事業者による事業者の収入として料金収受、➁公社が国の許可を受けた額を上限として民間事業者による料金の決定、➂PFI法に基づいて公社との契約や監督の下で事業者による安全や利用者利便の確保ができるようになった。2015年11月応募要項を公表、5グループが応募した。2016年6月に二次審査を行い、前田建設グループを優先交渉権者に選定、同年8月に道路公社と運営事業者が実施契約を締結、同年10月に事業開始した。

 

2)選定事業者

前田建設グループの構成は前田建設(グループ代表企業)、森トラスト(ホテル建設)、大和ハウス工業(物流)、大和リース(バイオガス事業、大型商業施設開発)、セントラルハイウェイ、連携企業MacquarieC.H.L(オーストラリア資本、道路のコンセッション事業者)となっている。オーストラリアの資本を参加させることで海外展開も視野に入れているという。

運営事業者選定における主な評価は事業期間約30年の運営権対価は1,377億円、初年度150億円の支払い)、地域の活性化の提案が挙げられている。地域活性化の提案は➀知多半島道路の阿久比パーキングエリアでのパーキングエリアとの連結型大型商業施設「愛知多の大地」の提案、中部りんくうタウン(空港島)でのグレードの高いホテルの建設、➂環境・地域連携事業として知多半島近隣の畜産農家の廃棄物を使ったバイオガス事業、④地域連携物流事業が提案されている。

2、事業のスキーム

1)対象事業

公社は資産等の管理および公権力行使を伴う維持管理及ぶ運営業務、運営事業者のモニタリングを行う。運営事業者は公権力に係るもの除く道路の維持・管理および料金徴収等運営業務、利便施設等の運営行うことになっている。

国による事業変更許可条件として、➀工事予算の変更(地元要望に応えインターチェンジの新設、パーキングエリアの新設、インターチェンジ出口の追加等194億円の新規投資を行う)、➁料金の変更(380円を180円に、知多半島道路において通勤時間帯(6時~9時、17時~20時)の3割引)、➂知多半島4路線(知多半島道路、南知多半島、セントレアライン(知多横断道路および中部国際空港連絡道路))の運営をプール化、④料金徴収期間を延長(4路線全てH58年3月31日までに)となっている。新たな投資をすることで事業期間を約30年間に延長でき、料金徴収期間を延長することで事業を安定させることができる。

2)事業スキーム

事業の構成は➀改築事業、➁維持管理運営事業、➂附帯事業、④任意事業の構成で、➀➁➂はPFI手法で契約を一本化、任意事業は審査における事業評価に組み入れている。改築事業はインターチェンジおよびパーキングエリアの新設・追加は公社が運営事業者に建設を委託し、完成後公社に引き渡し公社が費用を負担する。維持管理運営事業は公社が運営権を付与し、運営事業者は利用者から利用料金を徴収して収入とし、収入から公社に運営権対価を支払う。附帯事業は運営事業者がサービスを提供し収益を得る。任意事業は事業区域と事業区域外とを連携する事業を行い、地域の活性に資するとしている。任意事業の主体は必ずしも運営事業者である必要はないことになっているが、愛知県の場合は事業者の関連企業が実施することになっている。

人員体制

コンセッション移行前の人員は、92人体制(県派遣職員34人、公社固有職員29人、再任用職員29人)であったが、コンセッション移行後は知多4路線を除く県管理道路5路線の管理を含めて34人体制(県派遣職員8人、公社固有職員21人、嘱託職員5名)に縮小された。職員は配置転換および退職者不補充で対応することで解雇者はいない。公社本社および道路管理センターを道路管理センター1カ所に集約し、コンセッション職員も道路管理センターを使用。公社は、負債の管理、公権力の行使(交通止めなどの交通指令、道路占有許可など)、モニタリングを行い、維持管理運営業務は運営権事業者が行う。

 

4)リスク分担

民間事業者が事業継続できるよう運営事業者に対する過度な負担をさせないために、リスク分担が図られている。物価変動による収益の一定の割合(1.5%)を超える増減および交通予測量に対する収入の増減の一定割合(6%)を超えるものについては公社の負担または帰属することとし、それぞれ毎年査定される。軽微な範囲の災害を除き、災害復旧費用は公社が負担する。新たな競合路線の新設による計画収入からの乖離については公社が負担もしくは公社に帰属する。知多半島道路については平行している国道の上部に無料のバイパス道路が計画されており、その影響が考えられている。

 

5)モニタリング体制

公社は運営事業者が行うセルフモニタリングの報告および運営事業者が外部監査を受けた結果の報告を受けることでモニタリングを行う。区域外事業については事業者から報告を受ける。

事業実施後のチェック体制として、県、公社、運営事業者間に協議レベルに応じた会議体を設置している。➀協議会(県、公社、事業者の参加。契約等事業全般に係る協議。年1回程度)、➁業務報告会(県、公社、事業者の参加。要求水準の充足状況、課題および運営事業者の財務状況の確認。半年に1回程度)➂連絡会議(公社、事業者の参加。現場での要求水準充足状況の確認、諸課題の進捗状況の確認および情報共有。月1回程度)を設置し、それぞれの会議対には重複するメンバーが参加して会議体間の協議の共有を図っている。また、事業について中立的かつ専門的な視点からのアドバイス等行う第三者委員会を設置、年に1回程度開催。構成員は運営事業者選定の経緯を把握している民間事業者選定委員会のメンバーから選定している。今後の課題としては、運営事業者の提案が確実に実施されるようチェックすることにある。

 

  • 事業開始後1年の状況
  • 管理運営状況

民間では実績がない状況で公社職員7名を3年間運営事業者に派遣し支援することで、公社運営時と同様の管理およびサービス水準が維持できている。災害時などの対応も適切になされ、特に問題はない。民間事業者としての業務効率化の取り組みとして、ドローンを使った災害状況の確認や橋梁の近接点検、道路パトロールカーにスマートフォンを搭載させ簡易路面調査の自称実験の取り組みがなされた。また発注手続きの簡素化や発注の包括化も取り組まれた。

 

  • 利便施設等の運営状況

運営開始1周年記念の乗り放題となる「1DAYチケット」の販売、パーキングエリアでのフリーWi-Fiの設置、地元産品を生かしたレストラン・ショップのリニュアル工事、工事期間中のキッチンカーを日替わりで出店するスタンプラリーの企画など、地域活性化の取り組みがなされた。

 

  • 道路利用状況

料金が半額となったことで160万台の利用増、増えた路線では6%増、4路線平均で2.4%増となった。利用台数は増加したが料金を半額にしたことで料金収入は減っている。しかし、計画の料金収入額は下回っていない。計画交通量を適正に見込むことが重要なポイントであるとの説明を受けた。

 

  • 議会および県民の意見

コンセッション導入の条件として地域の活性化や、地元および利用者の要望に応えることとしていることから特段反対の声は出ていない。

 

  • 調査の所見

道路は基本的には収益を上げることが目的でない。運営事業者が決められた料金体系の範囲内で事業の効率化により収益が上げられるようにすることで事業者にインセンティブを与えるという考え方で道路運営にコンセッションが導入されている。事業者が運営を継続できるようにコンセッションの対象を9路線の中で経営が良い知多4路線を対象とし、事業期間を延長、また利便施設等の附帯事業で収益が得られる仕組みとしている。民間のノウハウを活用して地域活性化に繋がることが同時に事業者の収益増に繋がることを目指している。事業が始まった現時点では順調に進んでいるようである。しかし、りんくうタウン計画の破綻などの過去の開発事例から、経済状況の変動等で事業者の提案が実行されるのかは今後の推移を見る必要がある。また、リスク分担のあり方について適正なのか、今後の推移の中で検証する必要を感じた。愛知県県営道路のコンセッションおよび浜松市の下水道のコンセッションの実態を見たとき、道路、下水道、上水道などの公共インフラの業務委託のあり方として検討の余地はあると考えられるが、公共インフラの運営そのものを収益事業の対象にすることが可能か、また適正なのか疑問が残る。事業終了後に道路が無料化された後の道路の維持管理の費用についてはどのように考えるべきなのか、将来の財政状況を考えたときに大きな課題を感じた。