公共の空間が、私的な営利事業の場に変わろうとしています。
福岡空港はなぜ民営化に?
福岡空港の競争入札が8月10日に締め切られ、九電や西鉄などが出資している「福岡エアポートホールディングス」をはじめ、オリックスグループや外資なども含め、5グループが応募したと報じられています。来年(平成30年)5月ごろに最終受託事業者が決まるスケジュールとなっています。
福岡市議会では2月議会で福岡空港の民営化が最終報告され、3月議会で議論の末、福岡市としては「民営化(運営権譲渡)の新会社には出資しない」ことが決まりました。運営権譲渡の額は2060億円(うち1643億円を増設費に充てる予定)とされています。
福岡空港では出発機と到着機とが混雑する時間帯にしばしば遅延が発生していますが、現在この対策として「平行誘導路の二重化」を進めています。これにより発着回数が年間6000回増え、17万回になるとしています。平成24年から着手し、駐機場とターミナルビル前道路の整備は国、地下鉄の出入口の移設は福岡市交通局、ターミナルビルの改築は福岡空港ビルディング(株)が行っており、平成31年3月末の竣工予定です。
これに加えて、今回の運営権譲渡による収入を財源とし、国は「滑走路の増設」を進めます。平成37年3月末に供用開始の予定です。しかし、増設によって増える発着回数は1.8万回/年であり、今後超高齢社会が進むことを考えれば、多額の費用を投じて増設するよりも、北九州空港や佐賀空港との連携による運用を計るべきと考えます。北九州空港から天神まで既にリムジンバスが運行されており、1時間弱で移動できます。
「運営権譲渡(コンセッション)」とは?
運営権譲渡とは、民間会社が投資を募って特別目的会社(SPC)を設立し、国や地方自治体が保有する施設を借り受けて事業を行うことです。PFI(※)をさらに進めたもので、「コンセッション」と呼ばれています。空港、上下水道、道路などの公共施設で実施または検討されています。
福岡空港の場合は、管制は国が行いますが、それ以外のすべての事業、使用料の決定、滑走路や関連施設の維持管理、空港ビルや駐車場の運営、空港周辺対策などは民間会社が行います。3月議会では、民間会社が不採算部門である騒音対策や周辺対策をしっかりするのか、きちんとさせるためには市も出資すべきではないかということが争点で、私も出資すべきと主張しました。
※PFI…効率的・効果的な公共サービスを提供するため、公共施設などの設計・建設・維持管理・運営に民間の資金とノウハウを活用して行う手法のこと。
住民福祉にはつながらない「コンセッションの正体」
安倍政権はコンセッションを「経済成長の推進部」と位置づけています。これまでのPFIや指定管理者制度の業務委託とは異なり、公の施設を借り受けて「自由に営利事業を行う」ということです。すでに仙台空港や関西空港が民営化され、千歳空港や高松空港が検討中です。空港以外では、愛知県が県営道路で実施、浜松市が下水道で検討中です。さらに対象を美術館や博物館などにも拡大を図っており、福岡市では中央埠頭に建設予定の第二展示場をコンセッションで実施するとしています。
また、公園においても都市公園法が改正され、公園での営利事業が今まで以上に自由にできるよう規制緩和が進んでいます。公共空間が私的営利事業の場に変わろうとしており、たいへん問題だと考えています。
コンセッションは、福岡空港において借地料(年間82億円)を国が負担するように、税制も含めて「不採算部門は公共が負担する」仕組みがあります。つまり、民間会社の利益を確保するためです。さらにコンセッションには「受益者負担」=必要と思う者が応分の負担をすべき=という思想があり、「お金がある人もない人も等しく文化やサービスを享受できる」という地方自治体の本旨である「住民福祉の増進」の否定になりかねません。
総務省は行財政改革の推進のためとして、指定管理者制度の導入や、PFIやコンセッションなどの民間委託を進めない自治体には交付税を削減する措置を執っており、このような流れにくさびを打ち込む必要があります。