私は緑と市民ネットワークの会を代表して、「共謀罪」の創設に反対する意見書(案)に賛成して討論をします。
政府はテロ等準備罪を新設すべく今国会に法案を提出しました。テロ等準備罪は共謀罪とこれまで言われてきたものを衣替えしたものです。これまで3度国会に上程されましたが、思想信条の自由を保障する憲法に反し、人権侵害の恐れが強いとして世論の強い反対によって廃案になってきました。共謀罪は話し合い合意しただけで罰せられる法律で、犯罪行為をしない限り罰せられないという日本の刑法の原則に反するものです。例えば仲間が酒場で会社の上司が生意気だから、ぶん殴ってやろうと話し合意すれば共謀罪成立となってしまうのです。
テロ等準備罪を新に作らなくても既に日本には極めて重大な犯罪については、犯罪着手前の「予備」「準備」「共謀」を処罰できます。予備罪の例は、殺人、強盗、放火など40,準備罪は9あります。「共謀」「陰謀」で処罰される例は、内乱、私線予備、爆発物取り締まる罰則などに限られ、共謀罪14,陰謀罪8となっています。改めて広範囲な共謀罪をつくる必要はありません。戦争法を強行採決し、戦争が出来る国として海外に自衛隊を派兵することが国際紛争に巻き込まれことが、日本にテロを起こさせることになります。戦争法を廃止して平和外交こそがテロを予防します。また、現状の法律でも国際条約批准の要件を満たしており、新に共謀罪をつくる必要はありません。
戦前の治安維持法の対象は、最初は国体=天皇制や私有財産を否定する共産党のような思想犯でしたが、やがて緊急勅令改悪を経て太平洋戦争が始まる直前に改悪された治安維持法は、「国体を否定する」ものへの最高刑を死刑にし、「神宮を否定する」ものに対象を広げ、戦争に反対する人たちを弾圧するために宗教団体や自由主義や民主主義を主張する人々も弾圧しました。また、共産党員の妻が夫に食事の用意や生活費を用意することも支援結社の罪として投獄されています。
いま道徳教育が子どもの教科として評価されるようになり、子どもの内心の自由を侵そうとしています。教科書検定で「郷土愛を育てる」という理由でこれまで記載されていた「パン屋さん」がパンは古来日本にないという理由で「和菓子屋さん」に変えさせられたことは、戦前の天皇を頂点とする国のあり方である「国体思想」を子どもにすり込む教育の復活を惹起させます。安倍首相は森友学園の「天皇のために命をなげうつことを求める教育勅語」を保育園児に暗唱させる教育をすばらしいと感動しています。いま国が進めている道徳教育のあり方は、安倍首相が進める憲法改悪につながっています。
政府はテロ等準備罪(共謀罪)の対象は犯罪組織で一般人は絶対に対象にはならないと断言してきましたが、一般人も対象であることは明らかです。国会の質疑で一般の市民団体や労働組合でも急変して「組織的犯罪集団」になると法務大臣が答弁しています。しかも、「組織的犯罪集団」か否かを決めるのは検察・警察であり、私たちではありません。たとえば、環境を守る市民団体が開発現場で座り込みをしようという協議をして仲間に呼びかければ、市民団体は威力業務妨害の「組織的犯罪集団」とされてしまうのです。しかも、目配せしても、ラインやメールを見ただけでも合意と見なされ罰せられるのです。
ではどの様にして謀議したのかを立証するのでしょうか。刑事訴訟法で司法取引が出来るようになり、密告による減刑が出来るようになりました。また、盗聴法改悪によって盗聴の範囲が広がるとともに、通信事業者の立会なしで盗聴が出来るようになりました。このように、テロ等準備罪(共謀罪)の証拠は電話盗聴や室内盗聴と密告によることも明らかです。ジョージ・ウォーエルの「1984年」に描かれた「戦争は平和、隷属は自由、無知は力」という価値観と監視社会に日本社会が変えられようとしています。
テロ等準備罪は特定の組織犯罪が対象ではなく、一般市民が対象となる極めて危険な法律です。テロと準備罪としながらも「テロ」という言葉の記載が一切なかったものが、自民党からの指摘で「テロ」の言葉が入れられた経緯を見ても、この法案の目的は現代版治安維持法と言われるように、組織的犯罪集団だけでなく一般市民が対象であることは明らかです。政府は対象犯罪を277に絞るとしていますが、基本的に法の運用が検察・警察に委ねられており、検察・警察をチェックする機関がなく、人権侵害をチェックできない構造になっており、人権侵害されることを防ぐことは出来ません。戦前の治安維持法が最初は一般人が対象でなくても政府の都合で対象が拡大されたように、テロ等準備罪(共謀罪)が成立すれば歯止めがかからないのです。
私たちの思想信条の自由、内心の自由、政府を批判する権利、私たちの人権と民主主義を守るために、福岡市議会として政府にテロ等準備罪(共謀罪)を廃案にするよう求めるべきです。
以上で賛成討論を終わります。