条例予算特別委員会意見開陳

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3月新年度予算審議
 2014年度予算は3会計で1兆9204億円余、前年度比7.0%増、一般会計7763億円余、2.3%増となっています。一般会計において増額の主な理由は市税収72億円増、地方消費税交付金39億円増(同時に地方交付税60億円減)、消費税値上げ対策としての公共事業の補助金、臨時福祉給付金など国庫支出金120億円です。市税収はようやくリーマンショック時に戻っていますが、今後財源が増え続ける見込みはありません。支出の主なものは障害者施設介護給付や保育所施設運営費、臨時福祉給付金など扶助費86億円増、道路・橋梁、公共施設及び上下水道の維持管理費、耐震化等アセットマネージメント費、香椎副都心公共施設整備費(44億円)など普通建設事業費79億円増えています。今後も財政状況は余談を許さない状況であり、限られた財源をどのように使うのか市民がしっかり監視する必要があります。

 高島市長は「生活の質の向上と都市の成長の好循環」を謳っていますが、基本的には桑原市長以来続く都市膨張主義です。大企業誘致に企業立地交付金を増額、人工島にこども病院と青果市場を移転、市民体育館を移設などと毎年100億円投入、中央埠頭の再開発・第二期展示場建設と開発優先の政策ですが、福岡市の経済を豊かにしません。他方、教育現場では教師や学校司書、スクールカウンセラー、ソーシャルワーカーなどの専門職は不足、特別養護老人ホームの不足、障がい者の支援など、市民が必要としているとこには目を向けていません。また、事業を外注化することでワーキングプアーを生み出しています。消費税値上げと円安による物価上昇、年金切り下げや医療費・介護保険の負担増、所得が下がり続ける中で、いま福岡市政として市民生活を守る施策を優先すべきです。地域にお金が回わる経済を作るために、雇用と消費を生み出す住宅リフォーム助成や公契約従事者の生活を守る公契約条例を制定することが必要です。

意見開陳

 私は今条例予算特別委員会で審査された諸議案の内、議案第42号ないし第45号、第47号ないし第50号、第54号、第55号、第57号ないし第64号、第75号、第85号ないし第88号、第99号、第103号、ないし第105号、第110号、第111号に反対して意見開陳を行います。

 昨年11月に公表されたICPP第5次報告書では、気象システムの地球温暖化は疑う余地はないとし、1950年以降観測された変化の多くは数十年から数千年にわたり前例がないものとしています。温暖化は更に進み、気温の上昇、地域的な乾燥と降水量の変化、海面水位の上昇、海水温度の上昇および海流の変化、世界的氷河の減少、人為的に排出された二酸化炭素の約30%が海洋に吸収されており酸性化が更に進むと警告しています。二酸化炭素の排出は化石燃料からの排出と土地利用変化により、工業化以前より40%増加しているとしています。
 1972年にローマクラブが「成長の限界」を発表し、地球環境悪化による経済成長の限界を指摘しました。しかし、この警告は1992年リオの「地球サミット」で「持続可能な社会」という玉虫色の言葉で経済成長主義を掲げる人たちに顧みられることありませんでした。それは、拝金主義と新自由主義の落とし子である金融資本主義を育て、2008年リーマンショックを引き起こしました。拝金主義と新自由主義、そして金融資本主義は世界経済を攪乱させるだけでなく、地球資源の収奪、環境破壊と地域紛争、貧困を生み出してきました。今私たちは限界を超えつつあり、イノベーションだけでは地球環境を維持ことは出来ません。人類の生存と貧困解消に向けて、今求められていることは地球環境維持可能な社会実現のために脱経済成長社会への転換です。時代錯誤の愛国心と奪い合う経済・社会を進めるアベノミクスは、世界認識を間違えており、行き着く先は破綻しかありません。

 平成26年市政運営方針において、高島市長は新総合計画である「生活の質の向上と都市の成長の好循環を創り出す」を実現するとしています。「生活の質の向上と都市の成長の好循環を創り出す」という新総合計画は、桑原市政以来連綿と続く都市間競争と都市膨張政策の継承であり、世界認識の錯誤と言えます。なによりもそれを象徴する言葉は「環境の創造」です。また、高島市長は人口が150万人を超えたことを手放しで喜んでいることに端的に現れています。人口が増えることが単純に福岡市の活性化になるわけではありません。高齢者が増え、労働人口が減少しており、深刻な都市問題を抱えることになっています。他方一極集中により他の地域の過疎化と衰退を生じさせています。この成長政策が今条例予算特別委員会における質疑でも指摘された過大規模校問題を創り出し、数々のマンション問題を生じさせ、ヒートアイランド現象を激化させています。ICPPの報告に見られるように、経済活動の拡大と土地利用のあり方が地球環境を悪化させています。更にグローバル化が進み人口減少がはじまり、日本経済が縮小する中で、未だに都市の成長を求め続ける市政運営は基本的に間違っています。都市の成長管理政策をとり、分かち合う仕組みを作ることで脱経済成長社会に向けて舵を切るべきです。都市膨張政策をすすめ、大規模開発や企業誘致、イベント誘致に力点を置くではなく、福祉や教育などに投資して雇用を創出することにより、地域で循環する経済と市民サービスを向上させる政策に転換すべきです。

 総合計画に沿った政策として「見守り,支え合う,強い絆の地域づくり」,「次代を担う子ども,グローバル人材の育成」,「福岡の成長を牽引する観光・M I C E,都心部機能強化の推進」,「人と企業を呼び込むスタートアップ都市づくり」という4つを重点分野とし、住みやすさをさらに高める「安全・安心で快適なまちづくり」を掲げています。「見守り,支え合う,強い絆の地域づくり」のメインは、2015年度から見直される介護保険における地域包括ケアシステムをつくるために自治協議会を行政の枠組みに内部化しようとするものです。地域の助け合いや地域の医療や介護事業者、NPO、協同組合など様々な地域資源を生かして在宅介護を充実させることは重要なことですが、そのためには地域をコーディネートする専門職員の配置が必要です。しかし、その役割を自治協議会やボランティアにたよる構造となっていること、介護保険などに財源を回さず国民に負担を求める国の財政運営に問題があります。また、市の計画ではその財源の一部として共同募金を使うとしており、本来の共同募金のあり方や市の責任のあり方を歪めるものです。

 「次代を担う子ども,グローバル人材の育成」では、いじめをなくし心豊かな子どもを育てるためには子どもが自ら権利を自覚し他者を認め、同時に大人も子どもの権利を理解し擁護することが重要です。しかし、福岡市では子どもの権利条例を作る意思はなく、道徳教育を重点に置いており、愛国心を強要し内心の自由を犯す安倍政権の政治による教育介入を先取りする動きに見えます。子どもが持っている力を伸ばすためには読書環境を整備することが重要であることは国立青少年教育振興機構の報告でも明ですが、読書の取り組みを進める教員体制や学校司書の配置やなどには予算は使われていません。一方で英語教育に偏重する競争をあおる教育を進めていることは問題です。これでは次世代を担う子どもが健全に育つ環境とは言えません。

 「福岡の成長を牽引する観光・M I C E,都心部機能強化の推進」,「人と企業を呼び込むスタートアップ都市づくり」は将に都市膨張政策そのものであり、福岡市の特区構想はブラック企業を育て、地域経済を疲弊ざせるものです。また、職員数削減のために業務の外注化を進めることでワーキングプアーを生み出していることは地域経済を疲弊させます。グローバル化した今日、地域経済を活性化させるには地域に雇用を生み出し、地域でお金が循環する経済にしなければいけません。しかし福岡市の政策は大企業優先であり、中小零細企業の育成に繋がるものとはいえません。現に人工島をはじめ再開発、MICE事業などに多額の投資をしてきましたが、非正規社員が増えており、市民の所得は減り続けています。
 地域経済を活性化されるためには地域に必要な小さな公共事業を行い、地域の事業者に仕事と雇用を創り出すことが必要です。そのためには、福祉や教育の従事者の待遇改善支援、小規模学級実現のために教職員の増員、ソーシャルワーカー等専門職員の増員や学校および図書館司書の増員、住宅リフォーム助成制度などに投資すべきです。また公契約従事者の賃金と身分を守るために公契約条例制定が必要です。2014年度市政運営方針にはこの様な発想も取り組みもありません。

 「安全・安心で快適なまちづくり」として防犯カメラの設置を進めていますが、肖像権の侵害でありプライバシーの侵害という人権意識に欠けていることは問題です。日弁連によると、世界的に防犯カメラの設置と犯罪防止に相関関係があるという報告はないとしています。EUをはじめ世界的には公共空間での撮影は禁止の方向にあり、カメラの設置よる撮影は人権侵害の恐れがあり、抑制的に設置すべきです。福岡市は設置状況については十分把握できていないばかりか、規制もしようとしていません。防犯カメラの設置は抑制すべきであり、防犯は街灯設置等の他の方法ですべきです。先進都市に学び条例制定して、設置及び運用、撤去の報告、指導・勧告等が出来るようにすべきですが、全く考えていないという人権感覚に欠如していることは嘆かわしいものです。人権感覚に欠ける問題として、「生活保護ホットライン」の設置があります。「生活保護ホットライン」の設置目的を生活保護受給者の不正受給をなくすとして生活状況を監視することが主たる目的となっており、市民の密告を促しています。これは将にプライバシーの侵害であり、人権侵害です。この様な密告社会を作り、社会的弱者を排除する社会を「安心・安全で快適なまちづくり」と考えていることは歴史に逆行するものです。同様に廃棄物の減量および適正処理等に関する条例の一部を改正する条例案においても、これまで空き缶回収で生活を維持してきたホームレスの方を排除することになり、社会的寛容さを否定する改正案となっています。人権に対する意識の希薄さは、高島市長が言う「誰にも優しい、誰もが優しいユニバーサル都市」なのか、また「全ての人の人権が尊重されるまちづくり」なのか疑われるものです。
 また、安全・安心なまちづくりに欠かせない重要なことは、原発がない社会をつくることです。福岡市から僅か50kmのところに玄海原発があり、私たちは常に生命と財産を失いかねないリスクを負っています。この様なリスクをなくすことこそ「安全・安心なまちづくり」と言えます。そのためにも福岡市は玄海原発廃炉を明確に主張すべきです。安倍政権が誕生し、特定秘密保護法の制定、解釈改憲による集団的自衛権の行使の動き、そして政治の教育への介入と愛国心の強要、このような憲法を無視し、民主主義と人権を踏みにじる動きの中で、平成26年度市政運営方針おける道徳教育推進や防犯カメラの設置推進は、安倍政権に呼応して人権を軽視し民主主義を後退させる懸念を感じます。
 以上の理由からから、諸議案に反対するものです。