移動についての調査

Pocket

 9月30日(月)に福岡市東区美和台校区自治協議会へコミュニティバスの社会実験について調査に行きました。その後福岡市役所で交通計画課から福岡市の情況について報告を受けました。

■美和台コミュニティバス社会実験の報告
1、福岡市の情況
 2011年3月制定の「公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例」の公共交通空白地及び公共交通不便地、及び要綱に定める公共交通不便地に準ずる地域に補助。鉄道駅から1km以上のところを公共交通空白地域、バス停から500m以上離れているところを公共交通不便地区、高低差40mのところを公共交通不便地区に準ずる地域と条例で定めています。
 現在条例に基づく公共交通空白地苦闘の対策は、今宿姪浜線、板屋脇山線、志賀島島内線、脇山支線、金武橋本線が対象事業。西浦線は継続、福大病院大橋外環線は運行実施、長岡高宮線社会実験継続中、柏原は調査中、橋本地区循環線は2010年に社会実験、美和台地区コミュニティバスは2度の社会実験終了。

2、美和台地区コミュニティバス
 美和台では自治協議会が中心になって、これまで2回のコミュニティバス運行の社会実験をしています。北九州市の「おでかけバス」、新宮町のコミュニティバス、福岡市の橋本地区循環線の社会実験の視察など行ってきました。美和台の社会実験は西鉄のマイクロバスを運行しました。料金は一律200円、グランドパス、得頃カードが使え、回数券の販売をしています。しかし、条例の対象に該当しないという理由で福岡市の助成はありません。
 美和台の社会実験は1回目は3路線で三苫駅前スーパーからJR新宮駅・和白病院まで実験しましたが、利用者が路線について認識しずらいという声があり、2回目の社会実験では路線を一つに絞り、S字路線にして地域全体を回るコースにしています。また、バス停の間隔も50メートルにして利用しやすくしています。2回目の社会実験では利用者は増えていますが利用者は1日300人ほどで、西鉄が示す採算ライン1日520人には至っていません。しかし、社会実験中に美和台地区の中心を走る路線バスの利用者が増えたということから、コミュニティバスから路線バスへの乗り換えが増えたものと思われ、高齢者の外出が増えたと考えられます。
 美和台地区では、自治協が中心に様々な企画を行い、また和白病院や商店街と連携した取り組みをするなど、街づくりにも大きな役割を果たしています。残念ながら9月30日で社会実験は終わりましたが、地元では再開を強く望んでいます。今回視察して感じたことは、高齢者の移動の自由を保障する取り組みとして、また街づくりの取り組みとして福岡市が誇れるものと感じました。フランスでは1982年に国内交通基本法が作られ、「交通権」が明文化されました。美和台の取り組みは「交通権」につながる取り組みと感じています。

■北九州市「おでかけバス」
 「おでかけ交通事業」は、バス路線廃止地区やバス路線のない高台地区、高齢化率が市の平均を上回る地区などにおいて、地域住民の交通手段を確保するため、採算性の確保を前提として、地域住民、交通事業者、市がそれぞれの役割分担のもとで連携して、マイクロバスやジャンボタクシー等を運行するものです。

「おでかけ交通事業」への市の支援
 市としては、地域と交通事業者の取組みに対して、運輸局、既存の交通事業者など、関係機関との調整や車両調達等の費用及び試験運行や運行に要する費用の一部に対する助成などの支援を行います。

「おでかけ交通事業助成金の概要」

・交通事業者が運行開始時に要する費用に最大460万円の助成
・交通事業者が車両更新時に要する費用に最大300万円の助成
・交通事業者の収支が赤字の際に、地域や交通事業者の運行を継続するための努力 を前提として赤字額の一部に助成(運行支援助成)
・地域が主体となって試験運行を実施する際に、赤字額の一部に助成

「お出かけバス事業」実施地区
 八幡西区木屋瀬・楠橋・星ヶ丘 八幡東区枝光 八幡東区田代・河内
 八幡東区大蔵 小倉南区合馬・道原 小倉南区平尾台 
 門司区恒見・喜多久 門司区田野浦

■フランスの「交通権」
 フランスでは1982年、ミッテラン政権時に国内交通基本法が制定され、移動に関わる権利として「交通権」が明文化されました。「交通権」として「全ての人の移動する権利」「交通手段の選択の自由」「利用できる交通手段とその利用方法に関する情報を得る権利」などが定義され、「交通権」を保障することで「誰もが容易に、低コストで、快適に、同時に社会的コストを増加させないで移動すること」を実現できるとしています。日本では「高齢者、障がい者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」が2006年に制定され、その後改正が繰り返されてきました。前民主党政権時には交通基本法が提出されたが政権交代で廃案になった経緯があります。しかし、日本においては「交通権」についての理解がいまだ十分ではありません。高齢化が一段と進む今日、更に一歩踏み込み「交通権」実現に向けた施策が求められています。