クリーンエナジー決算審査
2012年9月19日
クリーンエナジーの会社概要
クリーンエナジーは福岡市東区蒲田のゴミ焼却場建て替えに伴い、PFI的手法と言うことで作られた株式会社である。ゴミ処理の余熱で発電することを目的としている。しかし他の旧来の発電に比べ著しく効率が高いわけではない。平成12年に設立し、平成13年から建設に着手、平成17年4月から稼働し始めた。福岡市が51%、九州電力が49%出資している。300トン/日×3基、計900トン/日の処理能力がある。年間24万トン(メンテナンスのために稼働率を72%と設定)の処理能力が見込まれているが、ゴミは減り続けており、平成22年度は17.1万トン、平成23年度は17.9万トンとなっている。
クリーンエナジーの問題
この事業の収入は福岡市の委託費と売電収入だけである。
委託費の構成は
①固定費 定額の費用:実際には利益確保から逆算して毎年決められる。
・人件費(福岡市の平均賃金×必要人数、九電の人件費はこの枠内で処理)
・物件費
・借入金返済元本 13億円余
・預金金利
・諸経費として上記累計の8% 2.6億円(SDCRの補填のため)
②変動費 ゴミ処理量に応じた額
平成23年度 1,405.66円/トン
販売原価の中に減価償却費10億円が含まれている
営業利益14.5億円余の中には、委託費に含まれる借り入れ金返済元本と販売原価に含まれる減価償却費10億円の差額3億円と諸経費2.6億円が含まれる。それに売電収入及びゴミ処理経費節減の差益が加わり、税引き後6.9億円の当期利益を保障する。
全体の収益の構造
①プロジェクトファイナンスの条件として出資金の3%の配当を補償されていること
②EIRR契約として25年後には最終収益5.5%を確保し、出資金50億円が現金として残るように収益を出す。25年事業終了後は78億円の現金が資産として残ることを補償。
③金利スワップの条件DSCRとしてキャッシュフローとして常時30億円が現金として準備されていなければならない。常時30億円の現金はあっても、短期借り入れしなければいけない状況がある。
予算は①+②+③の収益を確保し、人件費、物件費、建設費の償還を加えて委託費が算定される。
変動費は効率を上げればトン当たりの価格が下がるということであるが、前提は①+②+③の収益確保にある。
15年後償還が終わったあとはどうなるのか、①+③、建設費の償還はなくなるが。
※プロジェクトファイナンスにした市の説明
まず、起債を増やしたくないと言うことから直営をやめて株式会社にすることで検討、その後資金調達について検討とした。
平成14年、市債削減を図ると言うことで民間の資金を活用するとした。
会社としては親会社に負担させないためにプロジェクトファイナンスとした。プロジェクトファイナンスは出資者に担保を取らず、経営権,収益を担保にしている。
福岡市は九電との契約でEIRRを約束しており、25年後の資本金に対する収益は5.5%としている。そのため毎年計画的に収益を出す予算となっている。
整理すれば
①プロジェクトファイナンスは九電のもうけのため,言い換えれば市民負担増の構造
そもそもゴミ減量に取り組んでおり、ゴミ処理量が減っていることからゴミ発電を目的にすることは本質的に間違っている。福岡市ではゴミがピーク時に比べて2割減っており、今後も減るとされている。福岡市には4工場があるが、ゴミ発電を優先するために東部工場・クリーンエナジーにゴミを集中させることは他の炉の維持のために出来ない。そのため計画の7割しか稼働できていない。
➁九電がやっている業務は委託できるもの
他の工場は運転を委託しているのになぜ共同出資になったのか、そこには九電の思惑が働いている。市は発電技術が優れていると言っているが、他の工場でこれまで余熱を利用した発電を行っており、特に九電と合弁でやる理由はない。九電にとっては出向先が出来、自社の合理化として利益を生み出すことが出来る。プロジェクトファイナンスはまさに打ち出の小槌なのだ。確実に利益保障されている事業にプロジェクトファイナンスはあり得ない。
③PFI的手法、プロジェクトファイナンスの錬金術(EIRR、経済的内部収益率)。
その1、 通常の企業における借り入れでは企業全体の信用力を基礎に借入が行われる。一般には物的な担保を取り、加えて、ローンは遡及権(リコース)付きで組まれている。プロジェクトファイナンスでは、ある特定の事業からあがる予想収益を基礎に借入が行われる。担保になっているのは、事業の収益や経営権であり、出資者からからは追加の担保を取らない。ローンは出資者に対して遡及をしないノンリコースローンになっている。つまり九電は出資した額以上の損失がこない。同時に、ローンの条件として収益が担保されないといけないために、毎年出資金の3%の配当が条件となっている。
その2、 更に、今回の契約では25年後の事業終了時には出資金の元本及び出資期の5.5%の常用を確保し解散するとされている。解散後施設は福岡市に寄贈されるが、九電はまさに濡れ手で粟のもうけとなる。
その3、 この利益を保障しているのは市民の税金である。クリーンエナジーの事業の仕組みは極めて簡素である。収入は市からの委託金と売電収入、支出は人件費及び物件費、建設の減価償却費、更に配当となっている。つまり委託金橋首都から逆算している、もっと家は必要な剰余額から算出されている。
その4、民間の借り入れは15年で終わり、その後は更にもうけが膨らむ仕掛けになっている。
金利スワップのよる税金の収奪
クリーンエナジーの金利スワップは、クリーンエナジーがみずほ・三井住友に固定金利を払い、みずほ・三井住友が変動金利をクリーンエナジーに払い、その差額がみずほ・三井住友の利益になる。変動金利が固定金利を上回ればクリーンエナジーの利益になるが、そのような可能性は少ない。まさにぼったくりの世界である。その差額は23年度▲820万円、累積で▲2億4583万円。EIRR契約のため、収益の見通しを把握するために15年の固定金利にする必要があるとしているが、この間金利はゼロ金利政策で上がっていない。仮に当時見通せなくても議員の指摘のように、10年固定金利で契約し5年を変動切りにする選択もあった。ここでも銀行が暴利をむさぼる構造がある。
出資金 50億円
国庫補助金 99億円
銀行借入金 197.8億円(借り入れ償還期間15年)
計 356.8億円
借り入れ期197.8億円の内、
日本政策投資銀行 98.9億円 固定金利
市中銀行 98.9億円 変動金利→金利スワップ
金利スワップにした市の説明
①変動金利ではEIRRの5.5%を確実に見通せないため
②平成14年当時固定金利は10年ものしかなかった。
③契約上解約が出来ない
ある議員 高い金利で借りているのはおかしい。借り換えすべき。
10年ものの固定金利にし、5年は変動金利でもよかったのでは
人工島などでは長期固定切りがあるのではないか