本来廃棄物の広域処理は原則としてすべきではありません。廃棄物は生じたところで処理するこれが基本です。更に焼却も基本的にはすべではありません。焼却すれば炉内でダイオキシンに代表される様々な有害物質が合成され排ガスとなって環境中拡散し、焼却灰に残った有害物質は雨水などに溶出により河川や地下水を汚染することにつながります。また、重金属類がガスとなって大気中に拡散され問題です。まして放射能に汚染されたがれきを燃やすことは問題であり、広域処理すれば放射能を拡散させることにつながります。放射能は閉じ込めることが重要です。
そこで現地の声はどうなのか
広域処理しなくて良い状況
5月21日に震災がれきの量が見直されました。その結果はこれまで広域処理が必要としていた量400万トンは247万トンに修正されました。更に、現地では31基の仮設の焼却施設が7月から全面稼働することになっており焼却が進みます。青山禎一東京都市大学名誉教授方達の調査では、宮城県で当初広域処理が必要とされていた124.8万トンは今回の見直しで27.9万トンに減少しています。宮城県が処理すべき量はこの27.9万トンを含めて193.4万トンであり、宮城県が設置する26基の処理能力の合計は1日4015トンとなっており、26基を稼働させると482日で終わります。これは現状でも予定の2年以内に処理が終わると言うことです。
岩手県での処理量は103,1万トンとされ、仮設焼却炉2基、既存の焼却炉及び県内セメント業者での処理能力を併せると103.3万トンとなっており、広域処理しなくても良い状況です。岩手県のがれきは昨年から山形県や東京都で受け入れをしてきことによるようです。
がれきを生かす森の長城プロジェクトが始まった
現地ではがれきを行かす森の長城プロジェクトが始まりました。震災がれきはただのゴミではなく、被災者の遺品や思い出のものが混じっています。ゴミのように燃やしてほしくないという声もあります。横浜国立大学名誉教授宮脇昭さんは震災がれきを混ぜて盛り土のし、そこに広葉樹を植林することを提唱しています。松は根の張りが浅く津波には持ちませんが、広葉樹は広く深く根を張り、津波に耐えることがこれまでの調査で明らかだと言っておられます。木質のがれきは養分になり、コンクリートに根が絡みつき丈夫な堤になります。そしてこの防潮堤は遺族の方にとっても鎮守の森になり、また将来の世代に津波を語り継ぐモニュメントになります。
既に岩手県の大槌町ではがれきを埋めて防潮堤が創られ3000本が植林されました。宮城県亘理町でも同じようにがれきを埋めて防潮堤を造り、10年間で145万本の植林を行う計画が造られ、動き始めています。宮城県議会では59人の議員が超党派で議員連盟を結成して、「いのちを守る森の長城プロジェクト」推進を全会一致で決議しています。「森の長城プロジェクト」が始まればいまあるがれきだけでは足りないと言われています。広域処理をする必要は全くないのです。
広域処理は利権の塊
広域処理をする必要性がないにもかかわらずなぜ広域処理をする必要があるのでしょうか。それはがれきを輸送する運送会社に利益が上がります。さらに、過剰な焼却施設を造っている自治体は余剰施設を使うことで莫大な処理費が入るからです。ダイオキシン問題が起こったときに国は焼却主義を反省せず、大規模施設に補助金を出し、過剰施設を全国に造らせました。これも焼却炉メーカーを潤しました。しかし、自治体ではリサイクル・ゴミ減量に取り組み、その結果各地で過剰施設になっているのが現状です。
北九州市での試験焼却ではいったいどれくらい費用がかかっているのでしょうか。がれき80トンの輸送費は1400万円、1トン当たり17万5千円です。処理費は1334万円、1トン当たり16万7千円です。福岡市の可燃物の処理費は、収集費用+焼却費用+焼却炉の減価償却費+焼却灰の処分費+処分場の減価償却費等全てを含んで1トン当たり1万8千円、阪神淡路大震災のがれき処理は2万2千円と言われています。この数字を見ればいかにがれき受け入れがおいしい話しか理解できます。北九州市は2年間で6~7万トン受け入れるとしており、輸送費105億円~122億円、処理費100億円~116億円と莫大な費用が使われます。北九州市にとってはおいしい話しでも、税金が現地の復興に使われないのはおかしなことです。まして広域処理の必要が無いにもかかわらず受け入れを進めることは現地の声を踏みにじるもので、市民及び国民の税金をくすねると言われてもしかたありません。
税金の無駄遣いをやめて現地の復興にお金を使うべきであり、市民の健康を守るために北九州市はがれき受け入れをやめるべき。