ドイツ・脱原発の道

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1月21日(航空機の関係で成田で1泊)から28日まで、脱原発の道・ドイツツアーに行ってきました。報告は後日まとめますが、ドイツの脱原発の動きについて概略を報告します。

 もともとドイツでは反原発運動と地球温暖化対策としてエネルギーシフトが取り組まれており、石炭火力発電削減についても取り組みがなされていました。ドイツにおける脱原発の運動が大きく前進したのはチェルノブイリ原発事故、そして福島原発事故でしました。今回メルケル政権が脱原発に再度舵を切ることが出来たのは、背景に再生可能エネルギーへの転換が確実に進んでいることにあります。ドイツは脱原発をいっているが、フランスから電力を買っているから可能だという人がいますが、ドイツは電力輸入よりも電力輸出多いということです。

 1998年の総選挙で緑の党が躍進し、社会民主党と連立内閣を作りました。2000年6月に脱原発の方針が合意され、2002年の原子力法で2022年までに全ての原子炉を廃炉にすると決めました。ところが2005年の総選挙でキリスト教民主・社会同盟が政権を取り、政権交代が起こりました。その後キリスト教民主・社会同盟は2009年の選挙で社会民主党との連立を解消した後、2010年に脱原発から脱「脱原発」に舵を切り、原発稼働年数を8~14年、平均12年延長する改正原子力法を発行させました。

 2011年3月鵜11日の福島原発事故を受けて3月14日に予防措置として危険性を認めた7基の原発と点検中1基を併せて8基の原発を停止させました。その直後3月27日に行われたバーデン・ビュテンブルク州の総選挙で58年間州政権を堅持してきたキリスト民主・社会同盟が大敗しました。バーデン・ビュルテンブルク州は第一党の緑の党と社会民主党が連立政権をくみ、初めて緑の党の首相が誕生しました。同時に行われたノルトライン・ウエストファーレン州の州議会選挙でも緑の党が躍進しました。このような状況で、メルケル首相は倫理委員会の提言を受け6月に段階的に2022年までに全ての原発を停止することを決めました。同時にゴアレーベン高レベル最終処分場についても他の候補地を探すことを認めました。
 
 現地の話を聞く中で、脱原発の取り組みに弾みがついたのは2000年の再生可能エネルギー促進法(EEG)が出来、電力会社に再生可能エネルギーの買い取りが義務づけられたことを挙げています。再生可能エネルギーが高く買い取られることが新たな事業者が生まれただけでなく、個人発電も広がりました。太陽光発電は設置が増えることで価格が下がり、いまでは10年で元を取り、後は収入になっているということです。2011年時点の推計では総発電量における再生可能エネルギーの割合は20%ととなっており、2030年には50%を見込んでいます。同時に消費者は購入エネルギーを選択できるようになったことを挙げています。そして、エネルギーの地産地消を進めたのが都市事業公社です。

 都市事業公社は1983年に会社法が改正され、市など自治体が100%出資する会社です。都市事業公社は風力、水力、太陽光、バイオガスによる発電の他、水道事業や熱供給、バス事業などの公益事業を行っています。2004年に再生エネルギー促進法が改正され、送電網が大手民間4社に払い下げられました。都市事業公社は自ら発電事業を行うだけでなく、送電網を買い戻し、地域の発電を買い取り、地域に供給するシステムを作っています。都市事業会社は市民に節電やエネルギー効率を高めるコンサルタントや提案もしています。都市事業会社の利益は自治体の財政に還元されます。この都市事業公社がエネルギーシフトに大きな役割を果たしているといわれています。ネッカー・オーデンバルト郡には他に2社の民間送電網会社があります。また、地域によっては市民や事業者、行政が出資する市民エネルギー会社も出来ており、多様なシステムがあります。

 この地域エネルギー供給システムの基礎は1900年代からドイツ各地で熱供給システムが作られいたことにあります。このシステムを生かし、コジェネレーションによる発電と熱供給システムが作られています。CO2削減とエネルギーの有効利用が進められています。いまでは天然ガスによるコジェネ発電から、バイオガスのコジェネ発電に転換が進められています。

 ドイツでは節電やエネルギー有効利用として断熱構造に住宅や建造仏を変える取り組みも重要視されています。エネルギーシフトや節電、断熱などのリフォームなどエネルギー有効利用を進めているのが地域にあるエネルギー庁です。エネルギー庁は州の支援で作られた自治体の外郭団体です。自治体職員の身分ですが自治体から独立しており、エネルギーシフトのコンサルタントや地域でのイベントを企画します。地域資源をネットワークするコーディネーターで、エネルギーシフトに大きな役割を果たしています。人員は一人です。

 エネルギーシフトを進めることで、地域経済が活性化しているといわれています。エネルギーシフトを進めることで新たに37万7千人の雇用が生まれたといっています。設備の設置やメンテナンスに技術者やエンジニアが地元に残る、またエネルギー売買で新たな銀行業務が増える、此まで外部にエネルギー購入の費用を払っていたことからエネルギーを地産地消することで地域にお金が回るようになったといっています。市民がエネルギーを生産し、消費する、また市民が地域のエネルギー会社に投資することで利益が地域を回ることになります。

 原発を廃炉にしただけでは問題は解決できません。使用済み燃料や原子炉解体に伴う放射能に汚染された様々のものが残ります。ドイツではようやく低レベルの放射性廃棄物処理場が1箇所確定しました。コンラート中低レベル廃棄物処理場です。鉄鉱石鉱山跡地に地下1000mに横穴を掘り、コンテナに詰めた中低レベル廃棄物をつ目、コンクリートで充填していくということです。上部に400mの粘土層があり、地下水の浸入はないとしています。担当者によると100万年は地上に出ないとしていますが、最悪30万年後に地上に出たとしても放射能レベルは十分下がっているの問題ないといっていました。しかし、ここの処分場で処理できる放射能の料は全体の0.1%未満でしかないということです。の

 高ベル放射線の処理先はまだ見つかっていません。此まではゴアレーベンの岩塩層に地下1000mのところに処分する計画でしたが、35年間住民の反対運動が続いており、今回の福島原発事故を受け、他の候補地の検討もするとなりました。理由は選定方法がここありきで問題という点、もう一つは他の岩塩層処分しているところで地下水が浸入し、その排水から放射性物質が検出されていること、、さらに岩塩層には石油を含むところがあり、ガスがたまっているとこがある問題が指摘されています。ゴアレーベンでも試掘中にガス爆発があったと聞いており、私たちも坑道に入りましたが、石油がにじんでいるところがありました。

 岩塩層は新しい岩塩層で年間数ミリ、古い層では年間数センチ上部に流動しているということです。そして岩塩の間には硫酸カルシュウムの層が薄く入っており、場所によっては50mの層もあります。この硫酸カルシュウムは水に溶けやすく、浸水の恐れや、空洞を生じさせガスがたまる恐れも指摘されています。いずれにしても高レベル廃棄物の処分場はまだ確定しておらず、大きな問題です。このような現状を見れば、日本の地層処分が以下に甘いか、また地層は必ず動く上に、100万年以上管理しなければならず、地震国日本に処分場の適地があるとはとても考えられません。

 今回のドイツツアーで、感じたことは、ドイツには都市が一極集中しない仕組みがあり、地域コミュニティが維持されていることを感じました。たとえばどんな小さな町にも元気な商店街があります。10万人程度の都市には中央政府の本部機関があります。このような地域を疲弊させない仕組みが、エネルギーシフトを進め、エネルギーの地産地消が実現できる基になっていると考えられます。エネルギーシフトが進んでいるからこそ、脱原発が現実的なものとなっていると言えます。ドイツでも放射性廃棄物の処理はめどが立っていません。地震国日本では放射性廃棄物の処分が出来ないことは明らかであり、原発を稼働させることは直ちにやめなければいけないことです。同時 に、エネルギーシフトを進める仕組みを早急に作る必要があると感じました。

 なお、報告書は出来たときには希望者にはお渡しします。