昨日3月20日(日)に第4回こども病院移転計画調査委員会が開催されました。まず先回の委員から出されていた小児専門病院所在地に小児科を持つ公立病院の状況についての報告がなされ、続いてこども病院が担う医療について説明がなされました。保健福祉局はこども病院が担う役割として小児高度医療と小児地域医療どちらが重いとは言えない、医療の質の向上が目的であると説明しました。この市の説明を受け、各員に意見が求められました。主な意見のやりとりは
■小児科開業医清松委員「市の計画はこども病院を人工島に建てたいと言うことを前提に計画されたものと感じる。開業医はそれぞれ役割を担っている病院を紹介する。全てこども病院でやるのではなく、市内の医療機関が連携すればこども病院を大きくする必要はない。こども病院は循環器に特化すればよいのではないか。」
■市民委員「二次医療と高度医療とでは患者の要求が異なる。二次医療の患者にはアクセスが重要となるが、高度医療を受ける患者は遠くからも来ておりアクセスは重要ではない。医療の質の向上といっているが、二つを同時に実現するのは難しい。」
■福重こども病院院長「地域医療をないがしろにしているわけではない。こども病院は高度専門医療が評価されている。心臓病を持つ子供が増えており、周産期産科が必要。産科がないこども病院は全国で3病院しかない。高度医療をするためには一定の規模が必要。
■前田委員は「答申と構想に開きがある。1月の医師会の申し入れを見ると現場の意見が反映されていないようだ。現場の意見は反映されているのか、」
■福重医院長「病院の現場では何度もヒアリングをしている。現場の声はいかしている。」
■患者家族代表佐野委員「新病院将来構想検討委員会を傍聴してきたが、場所についての負託がなく、抽象論で終わっていた。」
■田口委員から福岡地区小児科医会の意見についての質問に答えて清松委員は「福岡地区小児科医会は平成20年11月に臨時総会でこども病院の人工島移転反対の決議をしている。反対だけでなく新病院将来構想について検討してきたが、今年1月の申し入れは市が小児科医会の意見をくみ上げていないので申し入れを行った。」
■田口委員「①市内の産科医の意見が出されているがどのように受け入れたのか、(市は西部地区医療について協議会を作り検討していると回答)②小児地域医療には紹介による高度医療と急患センタ-経由とある。児地域医療をどう考えているのか。③周産期医療にはハイリスクの新生児医療とハイリスクの母体医療がある、周産期医療をどう考えているのか。3点を質問。」
■福重医院長「周産期医療ではハイリスクの胎児がハイリスクの母体の5倍有り、疾患を持つ胎児が増えておりハイリスクの胎児中心の周産期医療があってもいい。」
■田口委員「NICUを長期に利用する患者が増えており、療養型を検討しているのか。(市は県に要請していると回答)急患センターで診療しているが、喘息やけいれんなどが多くこども病院が近くにあるので半焼時間が短く助かっている。小児二次医療機関として市の中心部にあることは心強い。」
福岡市の再見積についての検討がなされました。
■黒瀬委員(福大建築科教授)検討結果として「実施設計の図面がなく見積もることは難しい。今回の再見積もりでローリングの際に打ち込んだ杭について、北側は当面建物の建設予定がないので杭を抜く必要がなく減額(4.3億ほど)するようにいった。南側はどのように建てるのかが不明のため抜くこととした。昇降機に関しての見積もりが抜けていた。依頼先の日本設備設計事務所協会は通常の会社でないので、それなりに信頼できる。」
現地建て替えにつての検討がなされました。
■黒瀬委員「現地立て替えになると、階を合わせなければならず、30年前の構造を引き継ぐことになる。」
■福重医院長「30年前の構造を引き継げば広さや動線に問題が出来る。現地立て替えをするなら更地にして建て替えて欲しい。」
■前田委員「pwcアドバイザリー社の指摘のように、振動や騒音のなど問題がある。(福重医院長は診療縮小による収入減も主張)」
■清松委員「今日はちょうど6年前に地震があった日である。その時急患センターで診療していたが、大変恐い思いをした。今回の東日本地震を見て人工島移転は難しいと個人的な意見として持っている。」(市は安全性を強調)
九大病院からの提案についての取扱の経緯について説明がなされました。
■市「水田前病院長、久保病院長と話し、提案は組織的な検討がなされたものでないこと、建て替え跡地は駐車場建設および将来の建て替え用地として計画しているのでこども病院は受け入れられないと言われた。」
■田口委員「九大としての将来構想として検討しなければならないので、病院長としてはそのような回答しかできない。久保病院長と話したが、検討の余地はあり、市長が総長に申し入れすれば検討はできると思う。」
提案しているメデカルコンプレックス構想(大学病院の中にこども病院を設置)について「①全ての診療科を持てる、②子どもが成人しても継続して診療が出来る、③周産期医療(ハイリスクの胎児と母体共に)が出来る、④医療従事者の研修が出来、小児科を目指す学生を増やせることが期待できる、⑤こども病院と九大病院の得意分野を分担することで医療の質を向上できる」
この件についてはこの委員会に付託された内容を超えるので取扱をどうする会見が求められましたが、委員からは意見として扱っても良いのではという意見も出されました。
この日の委員会は福岡市が人工島移転を前提に計画を進めてきたことは否めないものでした。建て替えについては現場の声が反映されなければいけないはず。市は現場とは福重病院長以下限られたこども病院関係者しか認識がないようで、市内の小児科医や産科医の声、患者家族の声を聞いていない実態が明らかでした。地震についても想定外の事態が起こったことを学習しているとは考えられず、安全性のみ協調することは問題です。再見積も時間が短く十分検証されたとは言い難いものです。これから他の場所の検討経緯についての議論がなされます。九大医学部からの提案についても否定することからしか発想しないという、人工島ありきの姿勢が見えました。