「こども病院人工島移転決定のナゾに迫る」シンポジウム

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 5月30日に「福岡市立こども病院の人工島移転撤回を求める市民会議」主催のシンポジウムが200名の参加で盛大に行われました。神秘慈雨の後、須崎公園から福岡市庁舎までパレードを行い市民にアピールしました。シンポジウムでは、これまでの経過報告、活動報告の後、RKBの番組ムーブの録画「こども病院現地立替費用水増しの疑惑」、「近江八幡市における医療センターのPFI破綻について」を上映、医師、患者家族、市民、弁護士の4名のパネラーによる問題がおこなわれました。
 「市民会議」ではこれまで①市長に対する公開質問、②福岡市がこども病院現地立替費用水増しにヒヤリングをしたという大手ゼネコン3社と思われる5社に質問を行う、③人工島へのアクセス調査として各区役所からの2台で同時に人工島移転予定地と現こども病院に向かって自動車で移動し、距離と時間の調査、タクシー代の調査、④市議会議員に対するアンケート、などを行い、その報告がなされました。
 ①市長の回答は相変わらずの不誠実な回答、②大林組と鹿島建設は市からの依頼はなかったとし、清水建設、竹中工務店、大成建設は回答を拒否、③人工島に移ると東区以外はどの区からも時間がかかり、タクシー代も大幅にかかる、高速道路における通勤時での渋滞、事故や気象による渋滞や通行止めなどの実態を報告、④市議会議員のアンケートは自民、公明、民主の議員は会派で答えており、みらい福岡は無回答、無所属2名の内1名は無回答、他は個人で回答、回答内容は推進議員と反対議員で答えの内容はハッキリと分かれており、公明党は一部政党と結託している印象があるという偏見に満ちた、市民の声を無視する回答が寄せられています。
 シンポジュウムでは、医療の立場、患者の立場からアクセス問題が指摘されました。こども病院が2次医療、3次医療を担っているために、入院患者にとって家族が通院し支えられることが重要と言うことからアクセスの問題は重要、また、一次医療としても患者が通院しやすいと言うことが病院経営にとって必要という指摘。周産期医療の立場から30分以内で措置できることが必要で、アクセスの問題が重要と産科医から指摘されました。都市計画の点からも、自動車交通を前提にした都市ではなく、病院などの公共施設は公共交通で誰でも行ける場所に作られべきであると意見が出されました。地球環境問題からも自動車社会からの脱却、また病院も過大な施設ではなくコンパクトで質の高い医療ができるエコな病院にすべきという意見が出されています。
 また、周産期医療廃止のチームワークが必要で産科医・小児科医・麻酔科医の確保ができるのか疑問、また福岡市の現状から人工島に周産期施設を作るよりも周辺の総合病院を強化すべき、ドクターヘリよりもドクターカーが必要と指摘されました。病院の立地環境も、人工島予定地のそばは国際コンテナ埠頭があり、更に青果市場も建設予定で、大型トラックの騒音・破棄ガス、24時間の港湾荷役による騒音や光、セアカゴケグモなど海外からの病害虫の侵入の危険、航空機の騒音、地震時の液状化や橋桁の落下の心配などが指摘されました。
 また、こども業員現地立替費用水増しの経緯を巡り、情報公開請求、市長以下関係者の公文書棄毀罪での刑事告発、100条委員会設置の署名請願の取り組みが報告されました。こども病院の人工島移転は医療問題と同時に財政問題でもあります。こども病院の人工島移転では毎年30億円の赤字を30年も出し続ける事業計画となっていますがこのような事業計画が認められるでしょうか。福岡市がこども病院のPFIについて見直しをすという報道が出されましたが、これまでの運動の成果といえます。

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          シ ン ポ ジ ウ ム 決 議

1 私たちは、福岡市と吉田市長に呼びかけます。
こども病院への交通アクセスは、命へのアクセスです。福岡都市高速道路のみに依存する人工島では、通行止めや交通渋滞の際の搬送リスクを回避できません。助かる命を助けられない立地では、どんなに広くても、決していい病院にはなりません。
公共交通機関の整備が不十分ななかで、こども病院が人工島に移転されると、患者は高いタクシー料金を支払って通院せざるを得ない場合が出てきます。病気と闘うこどもを必死に支える患者家族に対し過度な経済的負担をかけるような立地では、どんなに広くても、決していい病院にはなりません。
 人工島移転決定過程では、小児科医、産科医ら現場の意見を集約しておらず、患者家族、市民の多くの反対の声も聞き入れませんでした。現場の声を無視して決めた立地では、どんなに広くても、決していい病院はできません。
 私たちは、福岡市と吉田市長が、いま一度、専門家や市民の声に謙虚に耳を傾け、勇気をもって、人工島移転計画を撤回することを強く求めます。
2 私たちは、福岡市議会と市議会議員のみなさんに呼びかけます。
  2008(平成20)年9月のこども病院の人工島移転用地購入に関する補正予算は、市の検証・検討委員会報告書を基本とした情報をもとに、市議会は、その情報に誤りがあることを疑うことなく、議決に至ったのではないでしょうか。
  検証・検討報告書は、まず現地建替えか移転か、という問題設定をし、現地建替えが不合理であるとして、移転候補地の選定に入っています。仮に現地建替え費試算に合理性が見出せなければ、その議論は振り出しに戻ることとなります。コンサルタント業者から85.5億円で現地建て替えができる旨の内部報告があったにもかかわらず、無償で、かつ口頭で簡単な聴取をしただけでこれを覆し、約1.5倍の128億3000万円に水増しするというやり方は、手続上きわめて問題です。さらに、その聴取の際の聴取メモ等の書類をすべて破棄して、パソコンからも消去するということは、通常あり得ないことです。市の誤った情報に基づき得られた補正予算と関連議案の議決は、瑕疵を帯びた無効の決議と考えられます。
  福岡市と吉田市長がこれまで十分な説明責任を果たしていないことは火を見るより明らかですが、これに対し、市議会は今こそ、与えられた権限を十分に行使して、市政をチェックすべき責務があります。私たちは、真相解明のため、市議会が、地方自治法100条に基づき、調査特別委員会を設置することを強く求めます。
3 私たちは、市民のみなさんに呼びかけます。
  人工島移転決定に潜む問題の根は深く、もう決まったこととして容認できるものでは決してありません。こども、胎児、母体の命を守るために、確信をもって声を出し続けましょう。行動し続けましょう。ひとりでも多くの市民と手をつないでいきましょう。病院の建築は2011(平成23)年度からの予定で、まだ時間があります。人工島移転の撤回を勝ち取るまで、最後まで頑張りましょう。

                        2009(平成21)年5月30日
       「こども病院の人工島移転決定のナゾに迫る」シンポジウム参加者一同