吉田市長は福岡市の行財政改革として「福岡市2011グランドデザイン」を公表しました。これは山崎前市長がつくった行財政改革プランを継承するもので、都市膨張政策を維持するものです。山崎市政とどこが変わったのか、「福岡市2011グランドデザイン」、また人工島検証・検討およびこども病院移転見直しを見ると、山崎前市長それほど代わり映えがない、市民に顔を向けた市政とはは思えません。
まず、財政リニューアルプランについてみてみます。厳しい財政状況が続く中、財政健全化に向けて起債を減らすことは必要です。山崎前市長の財政健全化策により市債発行残高は減少に転じています。しかし、どこを削りどこに重点的に投資するのか、これが問題です。山崎前市長は破綻している人工島事業を見直さず、オリンピック招致による須崎埠頭再開発を図るなどの開発を進める一方で、使用料手数料値上げや敬老パスの縮減のど市民負担を求めてきました。この財政健全化のあり方が問題でした。
では吉田市長はどう変わったのでしょうか。 一般会計における市債発行額を毎年500~450億円程度に削減をするとしています。しかし、内訳は人件費・扶助費・公債費等については削減をしていますが、投資的経費は従来通りの額を維持するとしています。破綻している人工島事業や箱物作りは進めるというのです。全ての事業を洗い直して、投資的経費も削減しなければなりません。
一般会計以外は利用料で収支が合うとして見直しをしていないことも問題です。一般会計、特別会計、企業会計は連結しており、第三セクターを含めて全体の見直しが必要です。北海道の夕張市は特別会計の破綻が市の破綻となりました。港湾特別会計における人工島関連事業、下水道事業における雨水対策のあり方、水道企業会計における水源開発事業等抜本的に見直する必要があります。総論としては、相変わらずの都市膨張政策、開発優先の政策といえます。これでは市民に負担がいくだけです。
財政健全化に向けては、何がムダな事業でありであり、何が事業な事業のかを整理し、市民合意を図るためには市民参画の仕組みが必要です。人工島事業見直しやこども病院の見直しに見られるお手盛り評価にならないようにするためには、公募市民を含めた事業仕分け、公共事業評価、一定期間過ぎた事業の再評価の仕組みつくる必要があります。公募市民、NGO・NPO、関係者、を含めたラウンドテーブル方式で、評価の計画段階から検討する仕組みが必要です。また、人工島事業やオリンピック招致など市民生活に大きな影響を与える事業については住民投票による意思決定をする仕組みが必要あります。しかし、「福岡市2011グランドデザイン」にはこのような発想がなく、山崎前市長のプランとは実質的には変わっていません。結果として、ムダな事業を続け、市民ニーズに応えられない状況となっています。
行政改革プランについては大きく二点を指摘します。第一点はコンプライアンスについて、市民の目と内部の目が相互に働く仕組みが必要です。そのためには市政オンブズマン制度、千代田区のような対象を職員だけでなく、外郭団体職員、退職者、取引業者とし、外部の第三者による公益通報制度をキチンと整備すべきです。
第二点は、傾聴・対話として聞くだけの市政から、市民から出された問題を解決できる市政に変わる必要があます。そのためには市民の権利を明確にし、市民参画の仕組みをつくる必要があます。市民基本条例を作り、市の情報は全て市民の財産であること、情報公開は市民の権利であることを明記する必要があます。諮問機関である審議会・協議会等に公募市民を入れる仕組みが必要です。様々な問題を解決するために、市民、外国籍市民を含めて検討、評価、実施する仕組みがまだ不十分です。
政策推進プランの問題点をいくつか挙げます。まず、街づくりの視点にトータルなグランドデザインがないことです。環境、自然、文化、歴史というコンセプトを挙げていますが、具体的な街の構造がありません。それぞれの政策は点であり、面となっていません。自然を生かした街であれば、人工島の埋立が終わっていないところは森と干潟を再生し、クロツラヘラサギを保護し、博多湾の自然を復元することが福岡市の魅力を高めます。海と島、みどりとオープンスペースがある都心部、歴史・文化が感じられる都心部、多々良川・那珂川・室見川河川の川辺を行かした街、背振山麓の歴史自然をつなぐトータルな構想がありません。景観法を活用し、民間活力を活かして街全体が歴史的遺産となるような発想が必要です。
次に、雨水利用による災害防止と節水都市を進めるために総合治水をすすめ、近自然工法の考えで街づくりを進める必要があります。ムダな水源開発を進め、自然を破壊する都市膨張の発想は止めるべきです。ゴミ問題として、ダイオキシン対策をすすめ、二酸化炭素排出を抑制するために焼却主義を脱し、焼却炉の削減を進める必要があります。そのためにも分別を強化すべきです。
こども施策として、こどもの虐待やいじめをなくすため、こどもの権利条例や、こどもの権利オンブズマン制度、またこども情操教育を進めるために各小中学校に司書の配置と中学校区に一つの図書館と司書を配置、こどもの居場所づくりの推進などが必要です。
障害者や高齢者支援、アスベスト対策、耐震対策、化学物質対策、外国人市民が住みやすい街づくり、ホームレス対策など多くの課題がありますが、解決に向けての市民との協働とその財源を確保する必要があります。ムダな公共事業をやめて、市民生活に重点を置く市政が必要です。、