意見開陳
2007年3月9日(金)
共産党から議案第28号2007年度福岡市一般会計予算案の組み替え案を提出された。組み替えの要旨は人工島関連経費及び五ヶ山ダム建設関連経費、渡辺通駅北土地区画整理事業関連経費を削減し、起債を削減すると共に捻出した市費約10億円を高齢者及び障がい者の公共料金の減免に使うというものである。共産党、ふくおかネットワーク、みどりは賛成したがその他の会派は反対したため否決となった。また、中央卸市場特別会計については移転計画費がはずされていると言うことから自民党が反対したが賛成多数で可決。留守家庭子ども会の基本料金減免(無料化)の条例案は自民党、みらい福岡が反対したため反対多数となり否決された。現時点での議員総数61名(2名欠員)のうち、自民党22名、みらい福岡10名計32名となるため過半数となる。議会での構成が変わらなければ、吉田新市政の前途は厳しい。来る市議会議員選選挙で有権者がどのような判断するかがこれからの市政運営に影響すると考えられる。
意見開陳
私は上程された諸議案の内、議案第28号2007年度福岡市一般会計予算案及び、議案第31号、35号、40号、41号、43号、45号、46号、48号、49号、61号、90号、104号、106号に反対すると共に、議案第28号2007年度福岡市一般会計予算案の組み替え案に賛成して意見開陳します。
福岡市の2007年度予算は一般会計6,740億円、前年度比0.6%減、3会計合計1兆8,310億円前年度比2.8%減と緊縮予算となっています。歳入は、景気の回復による法人市民税の増と、三位一体の改革によって税源移譲により市民税は増えていますが、地方交付税・補助金等の削減等により、歳入は全体として前年度とほぼ同じ水準となっています。今後も厳しい財政が続くものと考えられます。
歳入確保のために市税の収納率向上を図るとしています。一方歳出は、人件費や扶助費など義務的経費が増え続けており、財政状況は厳しく歳出の抑制をしなければいけない状況です。歳出抑制の中心は人件費の抑制、業務の外注化などとなっています。吉田市長は財政健全化に向けて借り入れを一段と減らし587億円に抑え、起債の元金償還を増やし778億円にすることで一般会計における起債発行残高を191億円削減、三会計でも300億円削減する予算になっています。また、諸基金の取り崩し減と財政調整基金の積み増しをしています。しかし、人工島事業には従来通り港湾整備や博多港開発救済の事業を続けるために約226億円を計上しています。財政再建への姿勢を見ることはできますが、先行きは不透明です。
また、今回予算では公約をどのように実現するのか問われています。子育て日本一の都市にするとして就学前児童の医療費の無料化や留守家庭子ども会有料化について減免の見直しなど子育て支援や、市民のための公共工事を行うとして学校などの耐震化を進める予算を組んでいます。また、無駄な公共工事の見直しとして人工島への病院移転を07年度秋までに検証(土地購入費67億円を07年度予算からはずす)、渡辺通北土地区画整理事業における市民芸術劇場構想について、焼き物博物館構想について、市役所前の道路整備事業についての3事業を再検討としています。青果市場の移転計画の費用もはずしています。これらの点では厳しい財政状況でそれなりの努力が見えますが、構造的な問題には切り込めているとは言えません。
人工島事業について、病院移転や青果市場の移転を見直すとしていますが、どのように見直すのか示していません。市長は「聞きたかけん」と市民の声を聞くとしていますが、私たちが求めている公募市民やNGOを入れたラウンドテーブル方式の見直しや住民投票による市民の意思決定についてなにも答えていません。いまのままでは山崎前市長が行った、市職員だけでの密室の見直しになりかねません。また、港湾施設については2月議会でも争点になりましたが、過剰な設備投資と指摘しているにもかかわらず従来通り整備するとしており、一体どこをどう見直そうとしているのかも明らかではありません。また、山崎前市長が銀行団と交わした「銀行には決して損はさせない」という念書及び、銀行団と博多港開発の協定書はまだ生きており、新年度予算にも博多港開発が銀行への返済が滞ったときに福岡市が貸し付けする100億円も計上されています。山崎前市長が書いた念書及び念書に基づいた協定書を廃棄しないまま人工島事業の見直しを進めるとしたら、まさに市民を裏切るものです。身の丈にあった都市づくりを掲げていますが、まだ全体像は見えません。
ICCP(気象変動に関する政府間パネル)第4次報告が出されました。第4次報告では地球環境は更に悪化しており、21世紀末には地球の平均気温は最大6.4℃上昇すると報告されています。既に世界各地の氷河は溶けて後退しており、アメリカの研究機関でも2040年には北極の氷が融けてなくなると予測を報告しています。地球温暖化により海水の温度上昇により、台風は日本近海で発生するようになり、南アメリカブラジル沖ではハリケーンは発生しないとされてきましたが、巨大なハリケーンが発生しました。世界各地では局地的な大干ばつや大洪水、巨大な竜巻、台風やハリケーンなど被害が生じており、今後異常気象の被害は拡大し、常態化していくとしています。また既に生態系に大きな影響が出ており、鳥インフルエンザやナイル熱など新たな病気の発生や病害虫の被害も広がっています。地球環境は最早猶予がない状況になっています。エネルギー浪費社会、開発優先・経済成長を優先する社会からの転換が必要です。
ではこの福岡市はどのようになっているでしょうか、市長の施政方針及び新年度予算を見てみますと、山崎前市政の開発優先・都市膨張政策からの転換ができているとは言いがたいものです。市長の施政方針を見ると、環境政策については従来通りの政策を踏襲しています。福岡市のゴミ政策は焼却主義を進めてきました。福岡市のゴミ焼却能力は1日3150トン、周辺自治体を含めた市民が排出する焼却ゴミは約2000トンです。メンテナンスのために休止することを計算に入れて稼働率を75%とすると、1日約2600トン強の処理能力となり、既に過剰施設となっています。福岡市はゴミ減量を進めるとしているにもかかわらず南部清掃工場を建て替えるとしています。南部清掃工場を4自治体が共同で運営することにしたため、大野城市ではこれまでプラスチック類は分別して燃やしていなかったのですが、プラスチックの分別を止めて燃やすことになりました。吉田市長は従来通り南部清掃工場の建て替えを進めるとしています。焼却主義を捨てないこの計画は、無駄な公共事業であると同時に地球温暖化防止にも反する計画です。
水源開発についても従来通り続けるとしています。福岡市の1日の造水能力は75万トンです。渇水時の危険率70%としても造水能力は51.5万トンです。福岡市の1日の使用量は平均40万トン、夏場のピーク時でも45万トンであり、福岡市の水事情は余力が十分あります。日頃から雨水利用や処理水の利用を進め節水に努めれば新たな水源開発は必要ありません。しかし、吉田市長は五ヶ山ダムなどの水源開発を続けると表明しています。1978年の大渇水以来、福岡市は筑後川から水道水を取っていますが、その結果ダム建設による自然破壊、筑後川からの流入が減ることで養分が減少し、有明海の生態系と漁業に大きな影響を及ぼしています。都市膨張政策による水源開発が自然環境に影響を及ぼしている反省がいまだにありません。
以上新年度予算を見ると、市長が公約を守ろうとする姿勢はある程度評価することができます。しかし、破綻が明らかな人工島事業について市民も含めた見直しがなされないまま従来通り予算がつけられ、無駄な開発であると同時に地球環境を更に悪化させる五ヶ山ダム建設や南部清掃工場建て替えを進める新年度予算案及び市長の施政方針に賛同することはできません。議案第28号2007年度福岡市一般会計予算案の組み替えを求めます。
最後に市民の権利と人権を守るためには、川崎市のような市政オンブズマン制度・人権オンブズマン制の導入、またいじめをなくすための子どもの権利条約条例などのが必要と考えます。また公共工事の不正再発棒には更なる入札制度の改革を行う、内部のチェックか働くために「職員相談サポートライン制度」を抜本的に見直しする、そして議員が公共工事に不正に介入出来ないようにするために議員の口利きについて全て記録を取る仕組みが必要です。市民の信頼を回復するために、以上の施策を早急に実現することを市長に求めて意見開陳を終わります。