都市問題等調査特別委員会

Pocket

2006年7月31日(月)
議案:福岡空港の総合的な調査に係るパブリック・インボルブメント(ステップ2)の実
   施について

 事務局からパブリック・インボルブメント(ステップ2)の実施についての説明および需要予測に関する資料説明の後質疑に入った。
 まず私から、需要予測について質問した。第1点は経済成長率を下に3パターンのシミュレーションがなされているが、いずれパターンも今後需要が増える予測になっていることについて質問した。福岡空港の現状は2001年をピークに離発着回数や利用者数は減少傾向にある。国内線については、名古屋セントレア空港、那覇空港以外は頭打ち又は減少しており、国際線も離発着回数は増加しているが利用者数は増えておらず、日本航空のハワイ日、ソウル便、香港便、マレーシア航空の撤退が撤退しており、搭乗率が悪い上に燃料の高騰などから今後も国際線で撤退する路線も出ることが予想される。このことについて、市は福岡空港の利用が低迷していいる理由に①新幹線利用と深夜バス利用との競合による利用減、②テロによる影響、③羽田では離発着制限があると利用客が減っていることから事実上の離発着制限があったのではないか、を挙げている。しかし、新幹線利用及び深夜バス利用との競合は今後も続くことから、現状を需要予測に反映させていないことはおかしい。事実上の離発着制限があったのかについては具体的な調査はなされておらず、東方航空が算入できないことがあったことを事例に挙げているだけで根拠は何も示されていない。要は、都市間や東アジアとの交流を増やしたいと願望を語っているように、この需要予測は経済成長の願望であり、都市膨張政策の願望である。
 第2点として需要予測の前提として、GDPが今後とも伸び続け、航空機利用とGDPには相関関係があるとして、航空需要も伸び続けるとしていることについて質問した。ようやく景気回復してきたと言われているが、所得格差が広がり、年金給付の削減、医療負担増、介護保険負担増の状況で、単純にGDPが伸び続けるので航空需要が増えると言えるのか。市は、過去の状況で高齢者の需要は増えており、今後団塊の世代が退職すれば需要は増えていくと答えている。しかし、それも願望であり、根拠はない。現状を見ても国全体のGDPとの総関係と福岡空港の需要が直接連動していないこと、人口減少、少子化、高齢化が進み、人口の質が変われば移動手段も変わり、単純に需要が伸び続けると言うことはおかしい。
 市は4段推計法(①日本全体の移動需要予測、②福岡県に振り分け、③航空需要と鉄道その他に振り分け、④航空需要を近隣空港に振り分ける)に改善したので需要予測は正しいとしている。しかし、GDPの成長率は01年-1.4%、02年0.8%、03年1.9%、04年1.9%と伸びているが、利用者は01年1945万5千人、02年1949万4千人、03年1883万8千人、04年1851万1千人、05年1865万9千人と、なっており、GDPの伸びと航空機利用の相関関係はない。これがどうして将来相関関係を産むのかその脈絡はない。
 次ぎに、石油資源の将来予測に基づいているのか質問した。石油資源は40年ないし50年でピークを迎えると言われている。また、新たな資源採掘が進んでいるが採掘費用が高くなっており、燃料の高騰は今後も続くと見られている。資源の減少及び航空燃料の高騰などについては予測していないと答えている。航空燃料だけが高騰する訳ではなく他の交通機関にも影響が出るので、一概に航空需要が減るとは言えないと答えているが、経済にも影響が及び、移動そのもの減ると考えられ、資源・エネルギーについての将来予測をしないことは、需要予測そのものの信憑性をなくすものである。飛行場ができても飛ぶ飛行機がないということも笑い話でなくなることが予想される。
 容量限界についても、14万5千回が妥当なのか質問した。昨年那覇空港を視察したとき、沖縄県の担当者は小型機が増えれば離発着時間が短くなるので、1時間当たり26~36回と幅ができると答えている。今回の調査でも、機材は小型化しているとしており、そうであれば容量限界はもっと大きくなる。これについて、大型機や中型機が間にはいると乱気流ができるため、離発着時間を縮めることができないと答え、沖縄はピーク時を33回としおり、福岡の32回とそれほど変わらないと答えている。しかし、沖縄の33回も怪しい上、仮にそうであっても福岡を沖縄と同じとすれば離発着回数は年間2千回ほど増える。また、航空会社も着陸後の誘導路が改善されれば5%ほど余裕ができると言っており、容量限界そのものの設定に疑問が残る。
 環境政策としても、飛行機のCO2排出及び飛行場への自動車によるアクセスによるCO2問題についての見解を質した。この質問に答えて、飛行機からのCO2排出量は1%程度で問題ないとしているが、飛行場への交通アクセスのあり方、また総合的な交通体系としての政策については考えてない。ドイツでは空間計画が立てられ、200km以内の空港建設はやめて、鉄道での移動を進めるなど総合的な交通政策を立てている。日本には92の飛行場があり、新たに静岡空港などが建設されようとしているが、政策的なものは何もない。CO2対策、交通政策から、また国や福岡市の財政問題から考えても政策的な視点がない。
 そもそも、空港問題は政策的視点がまずなければならない。福岡市を将来度のようにするのか、CO2削減、水需給や自然環境から都市膨張政策を続けることができるのか、環境政策や成長管理政策の施策的視点を踏まえて調査されるべきである。しかし、環境政策や成長管理などの政策的視点はなく、市は都市膨張政策は考えていないとしているが、今回の需要予測は明らかに都市膨張政策を前提としている。他の議員の質問に、雁ノ巣空港については調査はしているが具体的な試算はしていないと答えているが、需要予測及び北九州空港、佐賀空港との連携は効果が薄いという調査結果を見れば、新空港ありきである。
 委員会での答弁から見ても、需要予測は新空港ありきの結論に誘導するもの以外のなにものでもなく、需要予測そのもの信憑性がないことは明らかである。