Ⅰ、6月議会
議案質疑
1、人工島C2バース後背地の埋め立て議案
今回上程された契約議案はは人工島の外貿コンテナターミナル水深15mの岸壁C2バース建設に伴う背後地のヤードを整備するために埋立を行う築堤工事の契約議案です。福岡市の港湾統計を見ても大型コンテナ船の入港は減り続けており、特に3万トン以下のコンテナ船が増えています。これは博多港がハブ港湾(集荷の拠点港湾)の機能が小さいことや、物流が大きく変わり中・韓からの近距離貨物が増えていることが原因です。生産地で仕分けするように物流が変わったことで、RORO船(直接コンテナ車を積み込む船)などが増え、大水深の埠頭が必要ないだけでなく、ガントリクレーンや倉庫、コンテナ置き場が必要なくなっています。施設が必要ないだけでなく、港湾用地も売れなくなっているます。いまでさえ過剰投資となっており、新たに15m水深の外貿コンテナ埠頭及び新たな埠頭用地が必要とは考えられません。この契約議案に反対するとともに港湾計画の見直しを求めました。
2、町区域の変更に関連してマンション問題解決を図るよう質問
香椎副都心土地区画整理事業がすすみ、それぞれ隣接町に編入されることになりました。名島5丁目に新たに編入される地域に置いてはマンションが10棟屏風のように立てる計画があり、既に5棟が完成しています。既に完成している5棟のマンションによる被害についての調査も出されており、この被害についてどうするのか、また今後建設予定のマンションによる被害を未然に防ぐためにどうするのかが問題となっています。良好なコミュニティをつくるために、市および都市再生機構は都市計画法、土地基本法等さまざまな法律の趣旨、目的に添った視点で問題解決するよう努力すべきではないかと質問しました。市は事業者である都市再生機構に責任もって解決するように要請すると答えています。
反対討論
この議案の仮護岸は人工島の外貿コンテナターミナル水深15mの岸壁C2バース建設に伴う背後地のヤードを整備するために埋立を行う築堤です。しかし、いまでさえ過剰投資となっている外貿コンテナ埠頭及びヤードなど機能施設建設が必要とは考えられません。
福岡市の港湾統計を見ても、外貿コンテナ船は01年には1,623隻であったものが05年には1,926隻に増えていますが、6万トン以上のコンテナ船は01年に70隻あったものが05年には26隻、3万トン以上のコンテナ船も01年には282隻入港していたものが05年には136隻、それに比べ3万トン以下のコンテナ船は01年には1,341隻から05年には1790隻と増えています。欧米航路は99年に12航路44便あったものは04年には4航路14便に減っているのに反し、中・韓の近距離航路は99年には10航路、56便であったものが、04年には38航路300便に激増しています。コンテナの取り扱い量も欧米航路は減り、アジア、特に中・韓の近距離航路の取り扱い量が飛躍的に増えています。水深15mのバースを利用しなければならない大型船は増えておらず、C1バースはおろかC2バースも必要ありません。
港湾局長は、3万トン以上のコンテナ船がC1バースを使っていない理由を、大水深の連続したバースがないからといっています。しかし、これまでも6万トンクラスのコンテナ船は香椎パークポートの水深13mの岸壁を利用しており、その理由は満載した状態で博多港へは入港しないからです。つまり、博多港はもともと他の港で荷おろした後に入港しており、また他の港で荷積みするために満載で入港していなかったということです。このことはフィーダー貨物の集荷が少ないことを意味しており、もともとハブ港湾機能がないことを意味しています。博多港に大型コンテナ船が寄港しなくなった理由は、大水深の連続バースがないことが理由ではなく、博多港がハブ港湾ではなくフィダー港化しているためです。そのことは長距離の欧米航路数及び便数が減っていることに現れています。
港湾局長はは世界的な傾向としてコンテナ船が大型化しているため大水深の岸壁が必要と繰り返し主張していますが、皮肉なことにコンテナ船が大型化しているが故に博多港のようなハブ港湾機能がない港には寄港しなくなっているのです。コンテナ船が大型化すればするほどハブ港湾に荷を集約し、コンテナ船が寄港する港を減らすためです。博多港における北米航路および欧州航路が減少し、アジア、特に中・韓の近距離航路が増え、3万トン以下のコンテナ船が増えているのは、博多港がフィダー港化している現れです。ハブ港湾ではない博多港は、将来的に大型船が寄港する見込みはなく、大水深のバースは必要ありません。
また、3万トン以下の船が増えているもう一つの背景には、世界の工場である中国からの貨物が増え、近距離の上海などから荷がきていることによります。近距離で小回りがきく効率的な輸送になっているのです。物流はかっての状況とは変わり、現地で目的地別にコンテナ仕分けして輸出するため、従来のように港で荷下ろし、港で仕分けして目的地に運ぶようになっていません。RORO船がその最たるものです。物流の中心はアジア、特に中国であることから、近距離輸送が主になっており、小型船舶の入港が増え、大水深の埠頭は必要なくなっているのです。
コンテナ船が大型化することでハブ港湾でない博多港に大型船が寄港しなくなっていることや、物量の変化によりRORO船が増えていることは、大水深の埠頭が必要なくなっているだけでなく、ガントリクレーンや上屋などの港湾施設が必要なくなっています。これは岸壁使用料や港湾施設の使用料が減ることを意味しており、機能整備事業の採算がとれなくなることを意味します。同時にヤードや倉庫用地が必要なくなり、人工島の港湾区域の土地需要がなくなり、臨海土地整備事業も採算がとれなくなることを意味します。このような状況に加え、博多港開発第2工区直轄化は、港湾整備特別会計のさらに悪化させます。
人工島の港湾施設は現状でも過剰な港湾設備となっているのに加えて、今回の水深15メートルの岸壁及びその背後地のヤードの建設は全くのムダな投資です。今後、港湾整備特別会計は土地が売れない、また過剰な施設に対し施設の需要がないことから、確実に赤字を産みだすことになります。物流の現状を無視した身勝手なハブ港湾の願望による港湾整備は、市民に多大な借金を負わせることになります。まして、オリンピック招致を口実に須崎埠頭の再開発することは、人工島同様に市が民間事業者に損失保証し、港湾整備特別会計を破綻させ、その借金を市民に負わせることになります。
以上のように、冷静に世界の物流を見れば、C2バースの建設及び後背地のヤード整備の埋立事業は過剰投資となり、B5仮護岸の建設及びC2バースの建設はやめるべきです。包括外部監査でも人工島事業について将来にわたり赤字になる事が指摘されており、港湾計画そのものを抜本的に見直すべきです。
よって、議案第124号人工島地区平成18年度仮護岸(B5)築造工事請負契約の締結について反対します。
※RORO船:コンテナを牽引したトラックで船内に搬入し、コンテナが載った荷台だけを切り離して積み込む。到着港では、トラックを船に乗り入れ、コンテナが載った荷台に繋ぎそのまま目的地へコンテナを運ぶ方式のコンテナ船。
博多港港勢
■規模別外貿コンテナ船入港船隻数
01 02 03 04 05
全体 1,623 1,655 1,879 1,900 1,926
3万トン以上 282 211 151 119 136
6万トン以上 70 81 48 45 26
3万トン以下 1,341 1,444 1、728 1,781 1、790
※人工島14mバース 3万トン以上のコンテナ船の利用はない
※大型船が減少し、小型船が増えている。とくに3万トン以下のコンテナ船が増えている
■航路別に見ると
欧米航路
99年 12航路 44便
04年 4航路 14便
近距離(中・韓)
99年 10航路 56便
04年 38航路 200便
※航路は近距離が増加し、欧米航路は減っている
■取扱地域別に見ると
02年 49万TEU
アジア 30万TEU(東アジア:22万TEU)
欧米 14万TEU
06年 62万TEU
アジア 48万TEU(東アジア:38万TEU)
欧米 11万TEU
※地域的に見るとアジア、特に東アジアが伸びており、欧米向けは減少
一般質問
1、箱崎中学のアスベスト除去で不法投棄の恐れ
鮮魚市場仲卸売場棟解体に伴うアスベスト除去工事で、アスベスト除去の見積もり量149m3に対して排出量57m3と排出量が少なすぎる件ついて調査を求めていました。市は他の公共工事でも見積もりに対する排出量の割合は平均で66%であり、見積もりが過大であったとしています。また、鮮魚市場では市の監督員がアスベスト除去後排出時に確認しており、小中学校でのアスベスト除去工事ではアスベスト除去後の排出時には元請けの監督員が確認しているので不法投棄はないと答えています。しかし、これらの説明は見積もり量より処分量が少ない根拠にもなっていません。
その後、箱崎中学及び福岡中学のアスベスト除去工事で、アスベストの不法投棄が行われていると思われる事実が明らかになりました。箱崎中学校のアスベスト除去工事に置いて、アスベスト除去量の見積もりが17.5m3であったにもかかわらずマニフェストによる排出量は5m3しかありませんでした。業者は箱崎中学と福岡中学で除去したアスベストの一部を他の民間現場に持ち出し、その現場でのアスベストと一緒に処理したと説明しているようですが、適正に処理されたか確認できていません。また、除去したアスベストを袋に詰める作業についても、決められたように処理されてなく、また、箱崎中学での作業確認の写真を福岡中学で撮った物を使うなどの事実が判明し、適正な除去作業が行われたのか疑わしい状況です。鮮魚市場のアスベスト除去工事も疑惑が残ったままです。
そこで、箱崎中学及び福岡中学で除去されたアスベストが適正に処分されたのか徹底して調査すること、また他の工事現場においても適正に作業がなされているのか確認すること、市の発注工事についてのチェック体制を明確にすること、不正を行った業者には厳正に対処することを求めました。
2、福岡市オリンピック招致アンケート結果は市民はNO!
福岡市が行ったオリンピック市民アンケートの集計結果について質問しました。回答率が26%にとどまったこと、また市の提案に賛否は拮抗、更に48%の回答者が財政問題を危惧していることからも、福岡市民は福岡オリンピッに「NOー」を突きつけたことがわかります。市長は「まだ市民に理解してもらえていない。もっと理解してもらうよう努力する。」と答えていますが、市民はハッキリと「NO!」と言っていることを市長が理解しようとしていないだけです。
オリンピックを福岡に招致するか否かは、財政支出をともなう市政の根本問題です。賛否を市民に問わないのは市政への参画権を奪うことに他なりなりません。市民は「オリンピック」を問題にしているのではなく、いまの福岡市の財政状況でオリンピック招致することを問題にしているのです。オリンピック招致を中止するしか福岡市政への不信を回復させる方法はありません。
Ⅱ、オリンピック招致費用4900万円流用について住民訴訟を提訴
山崎市長は「オリンピック招致だけならお金はかからない」とうそぶいてオリンピック招致を強引に進めてきました。2005年度予算ではオリンピック招致計画はなく当然予算もありません。山崎市長は9月に突然のオリンピック招致に手を挙げ、市民局の予算を4900万円流用しました。私たちは、そもそも市民への説明もなく、議会でも議論がなされないまま市長が強行しているオリンピック招致は問題であり、招致費用の支出は違法であること、また、手続き的にも予算執行は厳格になされるべきであり、オリンピック招致費用は流用すべき性格のものではなく違法であるとして、山崎市長に4900万円返還するよう求めて住民訴訟を提訴しました。
第1回公判は7月24日(月)、午前11時、302号法廷で開かれます。多くの方の傍聴をお願いします。
Ⅲ、須崎埠頭再開発
須崎埠頭再開発は人工島の二の舞
山崎市長は、オリンピック招致ができなくても須崎埠頭の再開発は進めると、オリンピック招致を口実に須崎埠頭の再開発を進めようとしています。この「須崎地区再開発」構想は、第3セクター「再開発会社」によって用地を買収し、須崎埠頭や中央埠頭にメイン会場や競技施設、選手村やプレスセンターを新たに建設し、オリンピック後に選手村やプレスセンターなどは民間に住宅地や商業施設として売却する計画となっています。しかし、少子高齢化が進み人口減少が始まり、現状でも住宅供給過剰な状況にあるうえ、人工島での住宅供給などを考えると、オリンピック終了後、今から10年後に選手村約3500戸を住宅として処分することができるとは考えられません。メディアセンターを商業施設として売却するという計画も、博多リバーレーンの数倍の規模の施設が販売できるのか、大いに疑問です。総事業費3840億円の第三セクターによるこの再開発計画は、人工島で博多港開発が「税金は使わない」と言って埋立を始めたものの福岡市が全面的に損失保証をしたように同じ経過を辿ることになります。いま福岡市に必要なことは、50年先、100年先の福岡市のあるべき姿を市民とともにイメージし、「いい街」をつくることです。
■須崎埠頭再開発の枠組み
対象エリア 約90ヘクタール
・市有地 約32ヘクタール
・民有地 約35ヘクタール
・道路等 約23ヘクタール
民間地権者 約140名
・土地所有者 約120名
・建物のみ所有者 約20名
再開発会社を設立→対象地区の土地を取得
→施設の整備(選手村、メディアセンター、競技施設、メインスタジアム、道路等整備)
総事業費 3,758億円
調査・設計費 119億円
補償費 942億円
解体・整地費 118億円
建築・土木工事費 2,423億円
(別途、幹線道路は福岡市が整備相当額を負担)
歳入 3,758億円
再開発補助金 756億円(市の負担378億円)
保留床処分金 3,002億円
→民間に売却2,462億円+市の施設取得費540億円
○民間に売却するもの 2,462億円⇒分譲事業・賃貸事業
選手村を住宅として 684億円
オフィス(IBC・MPC) 383億円
商業施設(大会関連施設) 882億円
大会後建設用地など 513億円
○福岡市の協議施設取得費 540億円(市負担270億円)⇒ 民間ノウハウの活用による維持管理費の縮減(指定管理者)
オリンピックスタジアム 355億円
新設プール 74億円
駐車場の一部 111億円
○従前資産との交換 820億円
競艇場の移転 148億円
各施設の用地等 672億円
Ⅳ、福岡空港に関するパブリックインボルブメントパート2が始まる
雁ノ巣に新福岡空港をつくる必要はない
福岡空港についてのパブリックインボルブメントパートⅡが始まります。今回は福岡空港の需要予測がメインです。国の予測として、離発着回数が2012年には限界の14万5千回を超えるという報道がなされています。しかし、この予測の根拠がどこにあるのか疑問です。福岡空港は2000年をピークに理は着回数は減少しており、国内線利用客すも2000年をピークに減少、国際線利用客も1999年をピークに減少しています。路線数も国内線、国際線ともに減少していることに加え、九州新幹線の開通による鹿児島便がなくなる、新北九州空港開港による国内線利用者の減、また少子高齢化と人口減少、IT技術進歩によるテレビ会議の可能性などを考えると、今後利用者が増える要素はありません。また、環境問題や財政問題、都市政策など政策的に考えても、単純に利用者が増えるから新空港建設ということもやめるべきです。まして、破綻している人工島事業を救済するための雁ノ巣新空港は、環境破壊と税金の無駄遣いになります。