他都市調査の報告

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他都市調査
2006年4月24日(月)
午前:熊本県 大型店の立地に関するガイドラインについて
午後:熊本市 熊本市自治基本条例(案)について
       路面電車による交通政策について

1、熊本県大型店の立地に関するガイドラインについて
1)ガイドラインを作るに至る経緯
 大型店の立地に関するガイドラインが策定された理由は、郊外に大型店が出店することで、中心市街地の空洞化が進行することに対する対処を求める声が強まったことによる。具体的には八代市の郊外にイオンとイズミが同時に進出することになったこと、また現在熊本市の隣接する佐土原地区に7万㎡の敷地を有するイオンが進出することを巡り、進出反対の署名が24万人、賛成の署名が13万人提出され事態になっていることによる。
 大店補立地法では出店に当たり、交通や環境などの調整はしても出店調整そのものはできない。昨年大店舗立地法指針改定の際、国の審議会で「大店舗は企業の社会的責任として地域社会への貢献が期待される」旨の考えが示され、現状でも対応可能な対策として、大店舗の主体的な地域貢献を促すガイドラインを策定した。県民においても、大店舗は利益のみを追求し、地域と強調しないなどという声もあり、社会的責任を問うことにした。
 国においては、「まちづくり3法(都市計画法、大店立地法、中心市街地活性化法)」の見直しが進められており、県による出店調整が可能になる方である。直接的な出店調整は「まちづくり3法」改正後に対応するという。

2)ガイドライン策定までの経過
・平成17年6月:議会で外ドライ策定を表明
・     8月:商工団体からの意見聴取、市町村への説明、経済常任委員会への説明
・     9月:ガイドライン素案策定、9月議会経済常任委員会中間報告
・    10月:パブリックコメント実施
・    12月:ガイドライン最終案策定、12月議会経済常任委員会へ最終報告
・    12月26日:策定、施行
・平成18年1月13日:大店舗設置者に対する説明会実施
・     2月 8日:市町村、商工団体、商店街に対する説明会実施
 条例ではなくガイドラインにした理由は、社会的貢献は条例化になじまないこと、状況として急いでいたことを挙げている。大店舗設置者からは特段異議は出なかった。

3)ガイドラインの仕組み
 ガイドラインの対象は店舗面積1万㎡以上の新規出店店舗および既存の店舗、増築によって1万㎡以上の店舗面積になる店舗。できるだけ早く貢献策を出させることで、地域との話し合いを進める。複合商業施設は対象外。既存店舗は現在24店舗があり、6月までに地域貢献策を出さなければならない。
■新規出店の場合
①開発行為許可申請の事前協議開始時等、早期の出店計画の届け出(開業2年前程度)
 ②届出後2ヶ月以内に地域住民等への説明会開催
 ③遅くとも大店立地法届出後4ヶ月以内に地域貢献計画の届出(開業半年前程度)
 ④届出後速やかに地域住民等に対する地域貢献計画についての説明会開催
 ⑤地域住民等の意見にも配慮した地域貢献の実施
 ⑥開設後2年間、地域貢献に関する地域住民等との協議をするための協議会を設置
  2年以降の設置は協議による
 ⑦開設後、地域住民等からの意見提出等に対応する窓口の設置

■既存施設の場合
 ①6月までに地域貢献計画について届出
  増床による街頭店は増床後速やかに届出
 ②地域住民等からの意見提出等に対応する窓口の設置
 
 1万㎡未満の店舗については市町村でガイドラインを作ってはと県は提案している。

4)ガイドラインの内容
 ガイドラインの内容は地域づくりの取り組みや雇用対策、環境対策、撤退時の対策、情報の公開など14項目、49時効について具体的な内容について地域貢献策を求めている。
 この届出の内容は県のホームページで公開され、また実施状況についての報告も県のホームページで公開される。情報公開することで、事業者間の地域貢献についての競争と、地域住民に対する真摯な対応を期待している。

まとめ
 福島県では地域の街づくりの視点から出店調整をしようとしているが、熊本県では直接出店調整ができない変わりにより具体的に地域貢献策を求めることで、地依拠との共存を実現しようとしている。緩やかな規制ではあるが、事業者の社会的責任を問うことで、無秩序な出店の抑止には役立つものと思われる。

2、熊本市自治基本条例について
1)制定の経過
 平成15年9月に、市長公約により市長の提案で公募市民による自治基本条例の素案づくりに取り組む「協働のまちづくりを進める市民会議」がスタートした。応募した市民116名は全て委員とし、顧問・アドバイザーとして3名の大学教授、市職員23名が素案づくりに参加した。
 当初13の班に分けてワークショップ方式で議論を進め、その後、6班に再編成を行い素案の叩き台をつくっていた。全体会議17回、延べ43時間、延べ1008名の出席、連絡員会議6回、延べ32人出席、運営委員会6回、延べ53名の出席。
 平成16年6月21日、第13回会議で起草委員会をつくり素案づくりをすることを決めた。起草委員26名と運営員9名を選出。平成16年6月27日から市民会議メンバー26人と市職員22名で起草委員会を立ち上げ、検討計7回、延べ33時間、延べ233名の出席で素案をつくった。全体会議に報告し、協議をしながら進められた。大学教授はアドバイスに徹し、素案は全て市民の意見でつくられた。
 平成16年7月21日第15回全体会議で提言書を完成、市長へ提出。その後、平成16年8月22日、市民会議と市の共催でシンポジウムを開催、139名出席。同時に8月30日から9月10日にかけて小学校60校区を5地区に分けて地域説明会を開催、369人の参加。
 提言書を受け、庁内での条例化作業を始める。8月6日に職員後援会および研修、200名の参加。各主管課および調整担当者40名で庁内検討会議を8月12日から12月20日まで6回開催、平行して市民協働課と法制課で市民会議素案をベースに条例素案化検討委員会を設置し専門的に検討、庁内会議とのやりとりをしながら9月21日から12月6日まで23回開催、その後12月22日から17年2月10日にパブリックコメントを実施、同時に、資料配付場所を72ヶ所設置、説明会を31回、オープンハウスを商店街の一角に設置、12人の職員を配置して説明、500人の来場、市政だより、新聞、ラジオでの情宣、出前講座31回、830人参加等、丁寧な対応をした。パブリックコメントでは164名、701件の意見、説明会等では181件の意見が出された。庁内においても17年1月14日に職員研修会を実施、職員の自主権週7回が開催された。
 パブリックコメントを受けてを2月2日第24回素案化検討会議~2月10日第29回素案化検討会議を開催し、パブリックコメントの回答と条文修正等を検討。その後2月10日第7回庁内会議に諮り、2月11日第30回素案化検討会議~2月15日第33回素案化検討会で素案を作成、パブリックコメントや庁内会議の意見を受け31ヶ所を修正。2月16日経営戦略会議で条例案を確定。
 議会に対しては、市民会議が提言を市長に提出した平成16年7月に報告、その後条例素案化の検討状況を各会派へ説明、条例素案策定後パブリックコメントにかける前に議会に報告している。
 条例案は平成17年代1回定例会議に議案として提出。議会では継続審議となり、「地方自治に伸す威信に関する調査特別委位階」で審議される事になった。平成17年度は地方自治の現状とあり方7項目が調査対象で、他都市調査が行われた。平成18年度は具体的な条例検討にはいる予定。

2)条例案の特徴
①市民の定義を市内に居住するものだけでなく、市内に通勤し、又は通学するもの、市内に事業を営む、又は活動するもとしている。市内で生活し、活動する全ての個人団体を含めて、市政への参画と協働する事を定義する事でより豊かな地域尽くるを目指している。もちろん定住外国人も含まれる。
②市民の権利と役割として、参画する権利、知る権利、意見を表明する権利を明記、同時に社会的責任の自覚を求めている。単なる役割ではなく、権利と明記する事で、主体的な参画を図っている。また、法人市民についても社会的責任を求め、地域社会との調和を求めている。
③参画および共同の原則として市民と議会および行政執行機関との情報の共有を明記。情報公開を進めている。また男女平等参画を明記する事で、審議会等の構成ついて男女の同数に近い状況を作っている。
④青少年および小どの参画として、政商ね・子どもが個人として尊重され、まちづくりに参画する事を権利として明記し、意見表明を保証している。子どもの権利条約が批准されているにもかかわらず、子どもの権利について明記して自治体は極めて少なく、先進的事例の一つである。
⑤住民投票について、手続きは地方自治法によるが、市長は結果について尊重する事を明記。
⑥審議会等については公募等による事を明記。現在法定の審議会以外は公募市民が委員に入っている。公募方法は、作文で選定し、面接で決めている。
⑦議会および執行部の活動に関する情報公開を進める事を明記。現在議会審議についてホームページによる公開やテレビ放映が始まっている。行政情報も説明会の要請があれば出かけて説明をしている。
⑧市民自治基本条例を再興規範として明記する事で、市民の権利と情報公開、市政への参画を担保している。

まとめ
 市長公約による発議ではあるが、市民による素案づくりをベースに条例が作られており、丁寧な取り組みがなされている。条例案も市民知る権利、子どもの権利、男女共同参画、審議会委員の公募、情報公開などを明記し、かつ最高規範として市民の市政への参画を具体的に保証している事は先進的条例と評価できる。しかし、議会の対応は、市民の積極的な市政参画に対する理解が遅れていると思われる。
 また、熊本市は少子高齢化社会を迎え、福岡市の小学校校区を単位とする自治協議会制度を取り入れようとしている。市民自治基本条例でも地域での協働を謳っており、市民だけではなくしに通勤・通学するもの、市内で活動する企業や団体を含めた地域でのコミュニティ形成を目指している。福岡市と異なる点は、市民の知る権利、子どもの権利など、市民の権利を明記し情報公開を進め、市執行部、議会の責任、企業・団体の社会的責任を明記した上での協働である点である。福岡市市民公益活動推進条例に見られる市民の受動的な役割とは雲泥の差である。「権利」と「役割」の違いが大きい。

3、熊本市路面電車を生かした交通政策について
 熊本市は現在、熊本都市圏交通アクションプログラムを策定し、市内の交通網の整備を進めている。道路網の整備と、路面電車の住宅地への延伸および熊本電鉄(私鉄)と熊本市電を接合させる事で、路面電車の利便性を高め、自動車交通を抑制することが検討されているが、路面電車を生かしたまちづくりまでには至っていない。また、バス会社4社と路面電車との一体的運営やJRとの一体的運営については、事業との協議が進まないという事である。効率的な公共交通体系を構築するには、熊本市は条件がそろっているように思えるが、現実的には強力に推進する母体が存在しない事に問題があるようだ。
 帰りに、熊本駅まで超低床電車に乗ったが、段差がほとんどなく、大変乗りやすい。料金が安い事、目的地が分かりやすいことを改めて感じた。