ケヤキ庭石裁判傍聴記

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2005年11月24日

 本日の裁判は先回に引き続き西田被告の弁護側の質問であった。質問の趣旨は、①納入された五木石が緑青変成岩が10.8%しかなかったことは知らなかった、②五木石は貴重で入手が困難であったこと、③3万5千円/トンは決して高くない、④志岐被告・大庭被告に示唆された訳ではなく自分で庭石を売るためにプランを作った、⑤自分が圧力をかけてケヤキ・庭石を買わせた訳ではない、⑥ケヤキ・庭石を売る時に関連会社が契約すると契約出来なくなるため大成産業や一つ葉技研を納入業者とし、隠していた、ということである。今回の裁判で、物価本の問題(公共事業がいかにも受かるか)、西田被告が市議会議員の地位を使って商売していたこと、議員と市執行部との癒着が浮き彫りとなった。

 まず、庭石について、五木石は並と色石があり、並は12.200円/トン、色石は20.000円/トンであることが大庭被告の裁判で井上氏が証言している。西田被告は並と色石があることを知らなかったと言っているが、最初からどうでも良かったと思われる。井上氏は通常五木石といえば五木でとれた石であるが、五木石として発注する時は色石(緑青変成岩)を指すということである。博多港開発の塩田課長は契約書で緑青変成岩として発注しており、なぜ並みが圧倒的に多く納入されたのというこうとについては立ち会った職員は素人で分からなかったのではないかと言っている。しかし、納入業者である荒嶽庭石は契約書に緑青変成岩と書かれており知らないはずはなく、当初から意図的に納入したとしか考えられない。

 五木石が貴重で、この時でなければ入手できなかったとして、売り込みの正当性を主張した。建設省が管理する川では石の採取は禁止されており、川辺川はダム建設の関係で平成12年に一時解禁されていたが、その後禁止された。五木石が当時過去に採取されたものの再生利用か山からの掘り出ししか流通していないしている。

 次に価格についてである。井上氏によれば緑青変成岩は貴重で高価ということである。井上氏の鑑定によれば、納入された石は
 Cランク 16,913円/トン
 Dランク 15,019円/トン
 Eランク 13,756円/トン
 計 1億4978万円余
 これについて県庁が整備した筑豊緑地では石・木が17億円、建物が4億円、計21億円かかっており、県に石の値段を聞いたが公表していないとしながらも物価本の4万円/トン前後であることを認めていると主張。また、井上氏は並の五木石は3万5千円/トンは高すぎる、伊予の青石でも東京で2万8千円/トンと一散ることについて、インターネットで調べると7万円/トンするといって反論。
 さらに、西田被告は、①物価本では通常の石でも、景石は0.5トン級は4万円/トン、1トン級は4万円/トン、1.5トン級は6万円/トンになっていること、②並石といてもほとんど遜色がないとして写真を証拠として提出している。
 また、井上氏の鑑定の原価であるとしても、35,000円/トンが高くない理由として、公共事業の発注の仕組みを福岡県と福岡市のれをあげて主張した。福岡県が整備した筑豊緑地に使われた五木石は全てが並で一部色石であった。荒嶽庭石は18,000円/トンでの業者に納入し、県は4万円/トン前後で購入している。一つ葉技研は宝満石を2万円/トンで購入し元請けに2万7千~2万8千円/トンで納品し、県は3万円/トンで購入している。福岡市が緑化フェアの会場の中央公園で使った宝満石は生産者に聞くと1万円/トン、口頭での交渉ではもっと下がるということで文章での価格表示はこのようになると答えてとしている。この石は元請けに18,000円/トンで納品され、福岡市は25,000円/トンで購入している。それは物価本を元に積算されており、物価本では生産者、孫請け、元請けと流通過程を経るたびに45%程度の利益が出るように設定されており、これが業界のルールだと答えている。これは物価本が公共事業を高いものにしている実態を示している。

 また積算について、県では標準価格、物価本価格、積算価格、見積価格の4通りの方法があり、県は見積価格を採用、第一園材に3社からの見積もりを一括して取り価格を決定している。しかし、他社の調査はしていない。また、受注業者が見積もりを出した業者名を聞く時には教えているということである。このことについて、県職員は官と業界との信頼関係があっての取引と言っている。西田被告は行政は情報を持っていないから業者に情報提供を求め、業者が情報を提供する、当然情報提供した業者に発注することになるが、これは情報の価値であり、そうしなければ業者は情報提供しなくなるといっている。これは、業者と行政とに癒着・談合である。

 また清武氏は利幅がこんなに大ききことは通常考えられないと発言していることについて、西田被告は清武氏が知っててそのようなことを言っているのか、知らなくて言っているのか、たぶん知らないのだろうといっている。西田被告は具体的に自分が経営する海浜振興の事例を挙げて説明した。平成12年に受注した市の東浜の工事では、仕事を下請けに出し、2835万円で受注し830万円の荒利を得た。粗利率29.3%。同じ年中之島公園の工事を受注、自社で施工した。117万円の受注で56間園の粗利を得た。粗利率48.3%。平成10年に雁ノ巣レクレーション施設の工事では自社で施工、受注額2300間園、粗利1370万円、粗利率58%。度年、アビスパの練習施設の場合は自社で施工、受注額1600万円、粗利800万円、粗利率49%。このように外注でも30%程度、自社施工では50%前後の粗利を得る。地場業者が多く公共事業は年に1件か2件、場合によっては2年か3年に1度というところも多く、この程度の利益がなければ維持出来ないといっている。

 ケヤキ1本100万円が決して高くないという根拠について、博多港開発がケヤキを100万円で購入して施工業者に現物支給すれば、発注事業費は植栽の費用だけになるが、ケヤキも含めて発注すると、ケヤキが物価本では145万円なので、その9掛けとしてケヤキの値段は130万円で発注され、更に130万円を基に1.4~1.5倍の施工発注額の182万~217万円(145万円の場合)となるので、今回100万円で購入したことは約半分の費用で済むと言っている。更に、現物支給の工事発注であれば通常1/3ぐらい安くなるといっている。しかし、そもそもの木の価格が問題であり、物価本そのものが公共工事を高くしていることを悪用しているに過ぎない。福岡市では水道局が水道管を購入し、工事を発注していることについて、西田被告は、水道局は緊急時の対応のためと言っているが、現物支給のほうが工事費が安くなるからだと言っている。水道局は企業会計で独立採算なので事業費を抑えなければならないが、他の土木工事は国の補助などがあるので工事費を抑える必要がないと言っている。昭和50年に福岡市では公共工事について現物支給が検討されたことについて、西田被告は当時の財政状況が厳しかったからではないかとことあえている。この裁判の経緯を見るにつけ、公共工事のあり方が考えさせられた。

 西田被告が庭石を売る経過についての質問がなされた。西田被告が庭石を売るためにプランを第一物件にプランを作らせたのは、志岐被告が大庭被告に指示し、大庭被告が西田被告に示唆したことによるのではないかということについて、あくまでも自分の考えで三苫氏に話して作ったと言っている。大庭被告のところに行くと石と桜を使った公園の図面があり、大庭被告からいい石を知らないかといわれたので、三苫氏に話し、三苫氏が一つ葉技研に話し、五木石の話しがあったので、大庭に伝えたとしている。議員としての経験から、事業を進めるためまずラフの計画があり、更にそれを基に詳細な計画案が作られるので、具体的プランを作れば売りやすいと考え、大庭から公園の図面をもらい、三苫氏と話してコンサルタントの第一物件に作らせた。大庭被告には第一物件が図面を持って行くことを伝えていたと答えている。あたかも公園の計画があったかのよう話しを合わしており、自己弁護と思われる。

 また、ケヤキ庭石を使った公園については市が引き取ると考えるかという問いに、無償での寄付であり、維持管理や安全性についても問題がなく、必ず市は寄付を受けると答えている。ケヤキ・庭石が人工島で既にたくさん使われていることを主張していることと併せて、ケヤキ庭石が無駄な買い物でないことを主張しようとしていると思われる。600本のケヤキのうちまだ300本ほどは鹿屋市の圃場にあり、庭石約9000トンは東浜にあることを見れば、無駄な買い物である。
 
 また、橋口氏が、西田氏がいろんなものを売りつけているのはけしからんといっていることについて弁明している。問題となっている芝については公園(どこか不明)に芝を見本として敷いたが、試験期間が終わった後買い取って欲しいと求めたが、当時の友池助役が必要ないとしたことで買い取られなかった。もともとドームに使うように開発したものであったが、公園が定理返しもきつく市民不評だったので使った見た。当時桑原市長とはダイエー誘致でともに動いたこともあり、仲が良かったので市長に頼めばできたと思うがしなかった。圧力をかけたことはゼロとはいわないがかけていない。また坂口氏が芝だめなら石もあるといったということについて、リバーストーンという石のゴムをつけて取り外しができ、基盤を砂にできるものにした海浜振興が開発した特許で、代理店が販売しており直接売っていない、これは県知事鴨庄をもらっていると答えている。また、下水道の窒素除去の高度処理に活性汚泥法を使った方法を時習館、海浜振興、窒素環境エンジニアリングの三者で1億円かけて研究しており、福岡市で600億円かかるといわれているものが10分の1の費用でできると答え、時習館がペーパー会社でないと主張した。
 また、志岐被告にケヤキ庭石以外に依頼したものが4件あるが実現していないとして、依頼すれば何でも購入していないとし、ケヤキ庭石も現場の同意があったもので圧力で購入させたものではないと主張した。具体的に、ケヤキが塩害に弱いということで土壌改良が必要ということから石膏ボード廃棄物を塩害除去に使うことを提案した。志岐社長は検討を指示したが、橋本工務部長が産廃を人工島に入れるのはイメージが悪いと拒否したため実現しなかった。千早の香椎操車場の残土を人工島に入れるように依頼したが、志岐被告は検討を指示したが橋本工務部長が土質が悪いと拒否した。人工島中央公園に塩害対策として水はけが良くなるよう火山灰の礫を入れるよう提案し、博多港開発では了承されたが、福岡市が予算上の理由で断られた。リバーストーンの使用については志岐被告が関心がなくて検討の指示がされなかったこと、また自分も選挙中で忙しかったのでそのままになったということである。
 しかし、この売り込みの状況は西田被告が市議会議員の地位を利用し、また市執行部と癒着してさまざまな公共事業が行われていることが伺われる。西田被告は当然のごとく語っているが、これはまさに癒着の構造である。このことは、西田被告が志岐被告を講演会の講師に入らしたことに関連し、坂本助役も講師として講演会に主席しており、市長や助役、局長は議員に依頼されると講演会に講師として出席することはよくあることだと答えていることにも、市幹部と議員との癒着が伺える。

 この日の最後として、西田被告が、ケヤキ・庭石を博多港開発に売り込む時に、西田被告の名前や海浜振興などの関連会社が表に出ないように大成産業や一つ葉技研を博多港開発に契約に行かしたと証言している。そのために、ケヤキについてはあくまでも宮崎営林署のために仲介しているという装いをした、庭石についてはイゴスなどが中間にはいることが分からないよう一つ葉技研が2度出る矛盾も起こったが、あくまでも西田被告の名前が出ないようにしたと証言。西田の名前が出れば100%取引ができなくなり、政治的な問題になると考えていたからだと言っている。庭石については大庭被告に購入を依頼したが、志岐被告は何も知らなかったと言っているが、誰も信じないだろう。あくまでも西田被告の考えでケヤキ・庭石の購入を進めたとしているが、お互いにかばっていることが見える。