地震シンポジウム

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日時:2005年5月27日(金)14:00~16:00
場所:防災センター
講師:清水洋九大教授(地震火山観測研究センター長)
 今回の福岡県西方沖地震は、志賀島から西北方向へ伸びる全長25キロメートルの断層が左横ずれしたことによる。地震の結果、志賀島は南西へ約20㎝、古賀市は西へ約10㎝動いている。(図1)
 今回の地震は左横ずれ地震で、南北に縮む力が、東西方向には引っ張る力が働いて起こった。九州には別府ー雲仙歩行に地震が多く、国土地理院の観測でもこの地域は南北に延びている。沖縄から雲仙・別府にかけてのマグマが湧きだしており、南北の伸びが大きな原因となっている。それ故、この地域は地震や火山活動も活発となっている。(図2)
 九州はユーラシアプレートの上にあり、日向灘でフィリピンプレートがぶつかっており、フィリピンプレートは年に5~6㎝西へ動きユーラシアプレートも東へ押している。そのため、日向灘では10~20年周期でM8程度のプレート型地震が起きている。しかし、北部九州は南北方向の伸びがあるが、力が小さいために歪みのエネルギーがたまるまでには時間がかかる。そのため大きな地震が起こることは非常に少ない。しかし、数万年単位では地震が起こっている。今回の地震もそのような内陸型の地震ということである。
 今回の地震は地震計と海底に地震計を設置して調査した結果、地震を起こした断層のの状況が詳しく分かった。断層は志賀島から玄海島方向に25㎞、本震によって断層は同時にずれたわけではなく、強く動いた部分とそうでない部分があり、そうでない部分は余震の震源と重なっている。4月20日の最大余震はちょうどずれのない空白部分であり、これによって地震を起こした断層のずれは終わり、今後収束に向かうということが分かるといことであった。(図3)
 その後の調査で警固断層は博多湾にも続いており、今回の地震を起こした断層に繋がっていると思われ総延長50㎞にも成り、第一級の断層ということで国の調査の対象になるということである。しかし、今回の地震による余震域は志賀島付近で切れており、警固断層部分は空白となっている。今回の地震に触発されて、警固断層が動いているという兆候はない。福岡市の警固断層の調査では、警固断層が動く周期は9千年から2万年、過去動いた時期は1万年から1万6千年となっている。この情報からは、悲観的に見れば明日起こってもおかしくないし、楽観的に見れば当分地震はないということになる。今回の地震によって警固断層は1バールの圧力を受けると見られており、どの時期に動いたかによって地震の可能性が高いか低いか判断されることになる。今後より精確な調査が必要であるが、地震は起こることを前提に準備しなければならない。
 地震を予知することは難しいが、予兆現象を捉えることが出来るのではないかと考えているして、今後の観測について説明をした。その一つは、地震が起きるときに断層がゆっくりと動くことがあり、GPSを使って大地の動きを観測しているが、今のところ前駆滑りとして想定される方向に動いていない。もう一つは、大地震の前の予兆減少としての前震をとらえることである。必ずしも大地震の前に前震があるわけではないが、大地震の前に前震が起こっていることが知られている。身体に感じない地震を観測することで、断層の動きをとらえることが出来るのではないかと、観測を続ける必要があるとしている。大壕公園周辺に73個の地震計を20メートル間隔に設置し地震波を観測することで、ことで、地震後起きた場合に、どこ震央となるかを推定することが出来るのではと観測している。
 以上のことから、地震が来ることを前提に準備することが必要である。