住民投票条例否決への抗議

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 住民投票条例を市長および議会が否決したことについて、「人工島点検」を点検する会、博多湾会議、和白干潟を守る会、環境共育を考える会の4団体で議長および市長に抗議した。同時に、市長には説明会の場に出席して説明するよう求めた。回答の締め切りは5月10日としている。

これまでの人工島の動き
 ・60年港湾計画 東部海域の全面埋立計画。臨海工業地帯を計画。
 ・72年港湾計画 長距離フェリー基地として、400㌶の人工島を計画。
 ・78年港湾計画 人工島は背後水域が停滞水域となり水質が悪化すること、雁ノ巣か
          らの景観が悪くなるという理由から陸続きの埋立に変更。
          香椎パークポートの埋立申請。環境庁から、これ以上周辺海岸に影
          響がないようにという意見が附される。
 ・89年港湾計画 桑原前市長が人工島に計画変更。和白干潟の環境に配慮して島型式
          にしたと説明。
          桑原市長、九大を人工島に移転させる計画を発表。後に九大は西区
          元岡・桑原地区に移転決定。 
          ※市が説明する人工島の必要性は
           ①港湾の整備。国際コンテナー埠頭の強化。
           ②東区の交通渋滞解消
            (旧国道三号線和白交差点から九州産業大学前の渋滞解消のた
           め、人工島経由で雁ノ巣・香椎浜間にバイパス道路を通す。)
           ③良好な住環境の都市空間を造る
           ④新産業の集積 
           市民は以下の理由で反対した。
           ①博多港の港湾機能整備は人工島でなくてもよいし、過剰投資で
           ある。九州の経済が日本の1割しかなく、地理的にも将来バブ港
           湾になることはない。無駄な投資をせずに北九州港と連携すべき。
           ②東区の交通渋滞解消には和白交差点と九州産業大学前の旧国道
           3号線の拡幅をすべき。人工島に道路を通しても、人工島内から
           発生する交通量、港湾からの交通量から再び渋滞が起こり、周辺
           の環境は悪化する。公共交通機関への転換策を図るべき。
           ③市内には香椎操車場跡地や九大移転跡地など住宅用地は余って
           おり、人工島に住宅を造る必要がない。これまでも百道浜、香椎
           浜では住宅建設計画を半減させており、人工島に住宅を造る理由
           はない。香椎浜では住宅地がゴルフ場になっている。また地価が
           下落する中で170,000/㎡の高い土地は売れない。
           人工島に住宅を造ることは新たな水不足を生じ、ごみや交通問題、
           広大な海面を埋立て、高層住宅を造ることによるヒートアイラン
           ド現象など周辺の住環境は更に悪化する。福岡市には警固断層が
           あり、人工島に住宅を造ることは、地震の時には液状化が起こり
           問題がある。 
           ④新産業誘致にしても、市内でも百道地浜のソフトリサーチパー
           クや九大移転先、飯塚市や宗像市など同じような計画があり、競
           合してうまくいくとは考えられない。 
           ⑤人工島建設によって和白干潟は閉鎖水域になり、干潟の生態系
           に大きなダメージを与える。また、浅海域の埋立により、博多湾
           の漁業に打撃を与え、博多湾の水質を悪化させる。人工島建設は
           中止し、和白干潟をラムサール登録湿地に指定して和白干潟を保
           全すべき。
           ⑥これ以上の都市膨張政策は止めるべき。
 ・92年3月  「博多湾の自然を未来に伝える署名の会」が人工島計画中止を求める
         12万人の署名請願を市議会に提出。
 ・92年5月  福岡市は人工島に関する市民意見発表会を開催。170名の市民が発
         表、人工島中止を求める市民の声が続出。
 ・92年5月  「ローマクラブ福岡会議in九州」が福岡市で開催。海外の参加者か
         ら人工島に関して科学的なアセスの実施と公開、代替え案の提示を求
         める意見が出された。
 ・92年11月 環境影響評価準備書の縦覧開始。
 ・92年12月 福岡市は東区4ヶ所で説明会を開催。2時間の説明で、一方的な説明
         で終わる。環境への影響は軽微である、埋立には税金を使わないので
         市民には迷惑を掛けないと説明。
 ・93年1月  環境影響評価準備書書に対する市民の意見受付を締め切る。2929
         通の中止を求める意見が出された。
 ・93年4月  環境影響評価準備書に対する福岡県知事の意見が出される。「環境に
         与える影響が懸念される」という厳しい意見。
 ・93年4月  環境影響評価書縦覧開始。全く修正されず。
 ・93年5月  国・市・博多港開発は公有水面埋立法に基づく埋立免許を福岡市長に
         提出。
 ・93年6月  ラムサール条約締約会議が釧路市で開催。日本湿地ネットワーク、W
         WF日本委員会、アジア湿地局、バードライフインターナショナルな
         ど国内外の環境保護団体が福岡市長に人工島計画中止を求める。
 ・93年6月  福岡市議会、人工島計画を可決。
 ・94年2月・3月 「人工島を考える会」と「博多湾の自然を未来に伝える市民の会」
         が人工島事業への公金支出が違法と住民監査請求を行う。
 ・94年4月8日 環境庁が意見書を提出。博多湾は国際的に重要な湿地であるとし、
         博多湾の保全を求める異例な意見書となる。
 ・94年4月8日 運輸省が埋立の認可。
 ・94年4月11日 福岡市長は国・市・博多港開発に埋立免許を許可。 
 ・94年4月、5月 「人工島を考える会」と「博多湾の自然を未来に伝える市民の会」
         が人工島への公金差し止めの訴訟を提訴。
 ・94年7月11日 人工島着工
 ・96年    環境庁は福岡市に和白干潟を国設鳥獣保護区にすることを打診。桑原
         市長は断る。
 ・97年4月11日 諫早干拓潮受堤防が締め切られる。
 ・98年3月  人工島裁判の判決が出る。敗訴であったが、福岡市の環境影響評価は
         科学的でない、事業の見直しをすることも一つの政治的判断と考えら
         れるなど福岡市を批判する異例な意見が附された。
 ・98年11月 山崎現市長が人工島計画を「引き返す勇気を持って見直しする」と公
         約し、市長に当選。
 ・99年1月  見直しの委員会を庁内に設置。12月には工事期間を延長し、従来通
         りの計画ですすめると結論。
         ※当時の日本興業銀行はこのままでは100億円の赤字となるので、
         福岡市が損失補償をしなければ融資をやめると言っている。福岡市と
         博多港開発担当常務が銀行団の説得に動いたことがケヤキ庭石事件の
         検察官の冒頭陳述で述べられている。
 ・01年4月  新生銀行、鹿児島銀行、あおぞら銀行、博多港開発の融資をやめる。
         この頃、信託銀行5社も融資をやめる動きが出た。
 ・01年12月 銀行団の要求で人工島事業計画を見直し、新事業計画策定。
        見直しの内容(事実上の損失補償) 
        ①随時返済(土地が売れたときに融資を返済)から土地張付約定返済(返
        済期日に合わせて売却する土地を決め期日に返済返済)に変更。
        ②福岡市が博多港開発に対する200億円の緊急貸付枠を予算化する。
        ③道路や公園用地を公共事業として福岡市が土地を購入し整備する。
        ④博多港開発の資本金を4億円から64億円に増資。
         (福岡市30億円増資 02年に6億円、03年に24億円)
         ※福岡市が銀行からの融資に対する保障と福岡市が土地売却を担保。
 ・02年3月  見直し案を議会が承認
         計画外の公園を計画、住宅用地を市住宅供給公社が購入。
        道路を公共事業として市が土地を買い取り整備。
         ※土地処分の見通しが立たないため、博多港開発が銀行に返済する資金
         を造るために福岡市が必要がない土地を次々と購入。
 ・02年11月 市長選挙でケヤキ庭石事件が発覚。
         西田元市議が衆議員選挙資金を作るために、関係会社にケヤキと庭石を
         転売して約5億円もの不正な利益を得ていた。ケヤキは1本30万円の
         ものを100万円で、庭石は倍の価格で博多港開発に買わせていた。
 ・03年2月  ①公共工事不正再発防止及びケヤキ庭石購入等調査特別委員会設置
         ②福岡市は市住宅供給公社が人工島の住宅地購入のための借り入れにつ
         いて銀行に210億円の損失報償をする。(住宅用地に貸し手150億
         円、その他について60億円)
 ・03年3月  ケヤキ庭石事件のための100条委員会開催。
 ・03年5月  山崎福岡市長、商法の特別背任罪で志岐博多港開発社長と大庭博多港開
         発常務を告発。      
 ・03年5月  福岡市が博多港開発に45億円の緊急貸付
         公園用地(15ha)購入価格が予定価格を下回り、資金不足となる
 ・03年9月  人工島に宮崎駿監督のデザインを元に「照葉の街」構想を発表。
 ・03年11月 宮崎駿監督が協力を拒否、照葉プロジェクトの破綻。
 ・03年11月 和白干潟が国設鳥獣保護区になる。
 ・04年 1月 博多港開発が第2工区の埋立免許期間伸長の手続き。
         収支計画の変更
         集合住宅部分109,400円/㎡、戸建て部分57,700円/㎡
 ・04年3月  ①積水ハウス・福岡地所グループへ住宅地の一括処分
         (最終的には6月25日に売買契約がなされる)
         平均価格7万円/㎡、
         市住宅供給公社が購入価格は47400円/㎡
         道路用地14億円と住宅地売却益47億円、新生銀行等への支払い8億円
         を引くと53億円しかならず、銀行団への返済額95億円に42億円不足
         し、不足分40億円を福岡市が緊急貸付(福岡市が博多港開発から道路用
         地・公園用地などを購入する資金で返済していく)
         ②福岡市は新事業計画を見直す。
         約定返済の変更は銀行に拒否される。
         資金調達方法を検討、事実上税金を全面的に投入。
         土地の証券化、トラスト方式、直轄化など検討。
 ・04年6月 ケヤキ・庭石事件で志岐元助役、西田元市議、大庭元常務を逮捕
 ・04年6月25日 積水ハウス他住宅計画が示される
     6月25日 積水ハウスと市住宅供給が売買契約
  7月20日 積水ハウス、九宅協住宅開発、市住宅供給公社と売買契約
         ※残りの住宅地は博多港開発が土地を販売、住宅会社が住宅建設し販売する。
         これは、もし住宅が売れないときには博多港開発が土地代を下げることで販
         売リスクを負う構造としてある。
 ・04年9月 ①人工島に小中学校用地取得の補正予算50億円が可決
         ・小中一貫校、予測児童数が半分にもならないため島外からも通学
         ・教育委員会でも検討された形跡はない、第2委員会にも報告がない
         ※土地張り付き約定返済であるため、9月中には返済しないといけない資金
         があり、何が何でも学校用地を買わないといけないかった。そのために、積
         水ハウスに破格の価格で叩き売り、住宅計画を何とか6月25日に出させる
         ことで学校用地購入の口実が出来、ようやく用地取得の補正予算をだした。
         そのため、議会や教育委員会に諮る時間がなかったのが真相である。
        ②博多港開発第2工区直轄化が示される
 ・04年12月 人工島直轄化のための補正予算399億円が可決
        ①銀行等の協議内容(博多港開発への融資条件は依然と厳しい)
         緊急貸付について
         博多港開発に対する福岡市の緊急貸付枠100億円を予算化
         約82億円の福岡市の緊急貸付残高を16年度末までに12億円に圧縮する
         融資の返済方法
         「土地張付約定返済」から「随時返済」に変更
         ただし、新規融資については達成目標を下回った場合は事業を見直し、銀行
         団の承認を得ることが必要。
         達成目標 
         〔売上高〕 当該年度の売上高が事業計画の80%
         〔販売価格〕販売単価加重平均が事業計画における単価の
              a、当該年度の80%
              b、2期連続90%
        ②博多港開発第2工区の新事業計画、2~4%の地価上昇を見込む。
 ・05年2月 ①人工島の小中学校用地取得43億円(107,500円/㎡)を可決。
        ②人工島直轄化396億円を可決。
 ・05年3月4日 総務省より起債許可通知。
 ・05年3月10日 港湾管理者(市長)から譲渡許可。
 ・05年3月15日 譲渡契約、年度内に支払う。70億円は福岡市に、残りは全て銀行団に返
           済。負債約700億円の内約半分が銀行に返済されることになる。
 ・05年3月18日 300億円をシンジケートローンで借り入れ、96億円を起債。
 ・05年3月20日 福岡県西方沖地震発生。マグニチュード7.0、震度6弱。死者1名、負
           傷者872名、家屋被害、戸建て3,915戸(全壊125戸)、共同住
           宅356棟(全壊3棟))。愛宕浜、百道浜、海岸部、人工島など埋立地
           では液状化。中央埠頭など港湾施設の損壊。玄海島が壊滅的被害を受ける。
           その他、公共施設やビルの被害。
 ・05年4月18日、19日 8万4千名の署名で直接請求された「人工島建設事業の賛否を問
           う福岡市住民投票条例案」を審査する臨時議会を開催。市長は条例は必要
           ないという意見を附す。自民党、公明党、みらい福岡、民主党、平成会の
           反対多数で否決される。
 ・05年4月20日 福岡県西方沖地震の震度5強の余震。負傷者47名(軽傷)、家屋の被害
           108件。その他被害多数。

※市長は特別会計で事業を進めるので市民には迷惑を掛けないとの説明。特別会計と一般会計は繋がっていること、また特別会計で埋め立てた土地を一般会計で買い取っていることからもウソである。漠然と人工島は福岡市の将来に必要と言っているが、全国の事例を見れば、成功した例はないばかりか、負の遺産の処理に負われている。市長が誘致するとしている中華街構想は神戸市でも進められているが、神戸市の中国企業は全て土地建物はリースである。人工島の土地が売れないだけでなく、誘致の補助金で多額の税金を使うことになりかねない。市民に役立つどころか、借金が増えるだけである。今回の地震災害復旧に多額の費用が必要であり、人工島に無駄遣いする余裕はない。

※大阪市をはじめ、他都市では特定調停などで銀行の貸し手責任をそれなりに求めているが、人工島に関しては全て市民が借金を負うことになっている。こんな無茶苦茶なことが許されていいはずはない。