干潟を守る日2004
4月10日(日):諫早(みのり会館)
討論:諫早干潟の再生を考える
学者、漁民、弁護士から報告を受け、参加者との討論をした。
東元佐賀大教授:堤防の締め切りによって有明海全体の潮流が遅くなり、海底の状態が砂 質か泥質に変わっている。その結果、生態系が大きく変わっており、貧 酸素状態でも強い二枚貝とヨコエビの仲間が増えている。開門すれば、 潮流はある程度戻るし、潮止め堤防内の汚濁水が海水のマイナスイオン と結合して凝集沈殿し水はきれいになる。
漁民:①ノリの色落ち、赤腐れ病が増えている。原因は、潮流が遅くなり、赤潮が長く対 流し、栄養分を取るため。
②堤防周辺ではカニが捕れなくなっている。それは堤防内で腐敗した水により、貧 酸素状態になっているため、カニが移動した。
③島原方面では、ヨコエビが多くかかるようになり、魚は捕れなくなった。車エビ を捕るために網を流しているが、堤防を締め切ってからは網が流れなくなっている。 明らかに潮流の変化が起きている。初めてのこと。
④アゲマキは堤防を締め切って2年目からは全くとれなくなった。昨年の短期開門 調査で底流にきれいな水が入り、少しとれたがすぐ死ぬような状態。長期開門調査 して欲しい。
安藤九大名誉教授:閉鎖水域の水質改善は難しいことを岡山県児島湾の例で説明。
碇山金沢大学教授:干潟復元は世界の流れ。先進国で埋立をしているのは日本だけ。湿地 再生の例をイタリアポー川河口の例で説明。干拓地は塩が抜けず作物 がまり育ないために埋立失敗。また、汽水湖をつぶすことで、稚魚が 育つ場がなくなり、アドリア海での漁獲が激減した。そこで、湿地を 復元させてエコツーリズムなどの観光資源にし、村おこしをした。
オランダでは、市民の反対で干潟埋立による防災計画を見直し、「市 民の反対のおかげで環境保護と防災が実現できた」と感謝の言葉が展 示館に記してあるという。
堀弁護士:有明海裁判では画期的な判決が出る可能性を報告。
埋立を進める国は、影響が出ているにもかかわらず事実を認めようとしていない。環境亜アセスがいかにデタラメかは、博多湾埋立でも同じである。地球環境の危機が指摘されて既に30年を超えているにもかかわらず、過ちを改めようとしない、国、それを支える学者、政治家、利権まみれのこの国の姿が浮き彫りとなった。干潟を守る運動は、無駄な公共事業を続け、自然を破壊し、農林水産業をつぶし、借金を垂れ流す、国のあり方を問う運動でもある。
4月11日(日)
場所:コミセンわじろ
いい加減にしろ!博多湾人工島、底なしの税金投入
1)人工島点検を点検する会事務局長中尾さんから、人工島埋立の現状を報告
①人工島の見直し
・00年12月 銀行団の要求で人工島事業計画を見直す。新事業計画策定。
見直し内容 ①随意返済(土地が売れたときに融資を返済)から約定返済(土地が売 れなくても期日が来れば返済)に変更
②福岡市が博多港開発に対する200億円の緊急貸付枠を予算化
③福岡市が銀行からの融資に対する保障、福岡市が土地売却を担保
本来開発者である博多港開発が整備すべき公園や道路の整備を福岡市 が行う。用地費340億円、整備費240億円
④出資金4億円を64億円に増資(福岡市の増資額30億円)
・01年3月 見直し案を議会が承認
計画外の公園を計画、住宅用地を市住宅供給公社が購入
・02年 福岡市住宅供給公社が住宅用地12ヘクタールを購入
113,900円/㎡
・03年5月 福岡市が博多港開発に45億円の緊急貸付
公園用地(15ha)購入価格が予定価格を下回り、資金不足となる
126億円(82、500円/㎡)
・03年11月 照葉プロジェクトの破綻
・04年 1月 博多港開発が第2工区の埋立免許期間伸長の手続き
収支計画を変更(実際はこの時点で計画は破綻)
集合住宅部分109,400円/㎡、戸建て部分57,700円/㎡
その後に売却された価格は6割程度
・04年3月 ①市住宅供給公社が積水ハウス・福岡地所グループへ住宅地を一括処分
平均価格7万円/㎡、
(市住宅供給公社が博多港開発からの購入価格は47400円/㎡)
道路用地14億円と住宅地売却益47億円、新生銀行等への支払い8 億円を引くと53億円しかならず、銀行団への返済額95億円に42 億円不足し、不足分を福岡市が緊急貸付
②福岡市は新事業計画を再び見直す。
約定返済の変更は拒否される
資金調達方法を検討、事実上税金を全面的に投入
土地の証券化、トラスト方式、直轄化
②今後
・人工島中央公園整備費 191億円
用地費 126億円
造園整備費用 50億円
緑化フェアのパビリオン(緑の建築)建設費 15億5千万円
維持管理費1億7千万円(120人規模の保育園、建設費1億円年間運営費5千万円)
・道路整備
用地費
整備費
・緑化フェア 42億円
・リーディングプロジェクトによる公共施設の建設
土地売却の見通しがないため、市の施設や第三セクターの施設が建設される
子ども病院と市民病院を統合し人工島への移転 500億円以上
・地下鉄を人工島につなぐ
香椎花園から人工島間 福岡市の単独事業 250億円
貝塚から香椎花園の軌道の改修 300億円(市、西鉄)
2)荒木貸しの財政状況を報告
福岡市の財政ー人工島に税金をつぎ込む余裕はない
かって福岡市が経験したことがない厳しい財政(財政局長の答弁)
市債発行残高 2兆6千億円 市民一人あたり194万円
起債制限比率 18.2%
財政の中期見通し
平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度
不足額 161億円 200億円 254億円 256億円
平成16年度予算は161億円の削減
+地方交付税等削減のため115億円の基金の取り崩し
取り崩した基金は財政調整基金65億円、市債管理基金35億円、他の基金15億円
財政調整3基金の残高は66億円
行政経営改革プラン 3年間で180億円の削減
国の「三位一体の改革」により今後も地方交付税等の削減がなされることを考えると これでは足りない
3)脇事務局長から照葉プロジェクト破綻のによる6000万円の損害に対する住民監査 請求のその後の取り組みについての報告
博報堂が4500万円ほど減額請求したため、市の損害は減っている。福岡市はその代償として、市長室 のテレビ交番組を博報堂に与えた。結果としてテレビ局との関係で博報堂がとれず、他 社になった。
福岡市は、支払った部分はロゴ等今後も使うためと言っており、住民監査請求をどうするか、今後検討することにした。
参加者との討論後、以下の2点を集会決議として12日(月)に市長に申し入れを行った。
1、国および福岡市に、人工島建設中止を求める。
2、責任の所在を明らかにし、応分の責任を取るために博多港開発の会社精算を求める。