都市問題等調査特別委員会調査
11月20日(木) 三重県
11月21日(金) 宝塚市
1,三重県
調査事項
1)県出資法人への関わり方の基本事項を定める条例について
2)議決すべき事件以外の契約等の透明性を高めるための条例について
三重県議会では常任委員会とは別に行政改革調査特別委員会(平成9年10月設置)において外郭団体改革にかかる整理、統合等のあり方等を調査検討している。三重県議会では政策法務担当者のサポートを得て、議員立法がなされている。平成6年以降、今回調査対象の第三セクターの整理統合に関する2条例以外にも計8条例が議員立法で作られている。三重県生活創造圏ビジョン条例は都市計画マスタープランにあたり、都市計画法上では従来議会の議決を必要とするものではなかったが、街づくりの構想に議会の意思を反映させる条例である。このような条例は宮城県、石川県などしかなく、先進的な条例である。今回調査対象となった「決すべき事件以外の契約等の透明性を高めるための条例」は地方自治法に規定されない第三セクターの契約にも焦点を当てている。北川知事の改革に触発され、議員立法による議会の改革が進んでいることを感じた。
今回の調査対象ではなかったが、議会運営の改革を進めている。本会議のテレビ放映、会議録をホームページに掲載、議会を情報公開の対象とする、傍聴にの規制を削減、議場を対面演壇方式にし、質疑質問方式の変更など議会のチェック機能を高める努力をしている。
福岡市でも、議会事務局には調査法制課があり、担当職員を衆議院法制局へ研修にだしている。調査に終えて、福岡市議会の改革が求められていることを改めて感じた。
以下調査事項の報告をする。
三重県議会の政務調査課政策法務担当者から条例の説明を受け、質疑を行った。
1)県出資法人への関わり方の基本的事項を定める条例。
平成13年10月から各会派代表者会議の合意に基づき、議長の要請により、各会派から選出された7名の議員で構成された条例案検討会(7階開催)で検討、条例案を作成し、平成14年第1回定例会に提出、3月20日議決、26日公布、10月1日から施行された。内容は①県と出資法人との役割分担と協働、②知事等の出資法人に対する事業等に係る助言等、③一定の出資、出えん等を議会の議決事件とする、となっている。
この条例は県が4分の1以上出資する法人を対象に、社会経済状況の変化に対応し、行政目的の確実かつ効果的に達成を図るために基本的な事項を定めている。各法人は①法人の目的、②事業目的の達成度③経営計画④経営状況、の4項目について自己評価を行い、法人を所管する局において同じ内容で再評価する。評価の仕組みは4段階で各4項目(さらに複数の評価項目がある)を評価し、各項目ごとに合計し合計点数を100点満点で表示することで、数値化して評価をする。対象38法人の内、平成15年3月に事業年度が終了した37団体についての評価が終わった。
この評価により、議会および外郭団体改革推進本部(本部長:副知事、構成員:各局長)の議論をふまえて策定された「三重県外郭団体改革方針」に基づいて事業の民営化などの具体的な改革の方針が示されている。出された評価は議会に報告され、ホームページにも掲載される。
「三重県外郭団体改革方針」では、団体別に統廃合、事業の民営化などの具体的な改革を示している。また、「外郭団体の資金運用にあたっての基本指針」を始め、基本財産取り崩しについての考え方の整理、および団体の目標管理の導入などの方向を示している。 条例施行後の外郭団体見直しの状況は、統合2件、廃止1件、情報公開の推進、県退職職員の外郭団体での退職金を廃止、県職員の外郭団体への就職者を公表、民間経営者を積極的に登用(県は県職員・県退職者の数は35人から9人へ)、知事・副知事の団体役員から離任(19団体から10団体へ)、7千万円以上の出資に係る議会の議決案件として平成15年代3手例会で9千5百万円の出資を議決など。リゾート関係の法人で県の株を全額民間に譲渡した事案が1件あった。
このシステムでは身内同士の評価になるので、甘くなるのではないかという私の質問には、各局がキチンと対応しているので問題ないと答えた。また、県民が意見を述べる場があるのかと尋ねたが、現時点で情報提供をしているだけで特にないと答えた。また、他の議員から細目の評価シートをホームページに掲載しているのかとの問いに、ホームページへの掲載はしていないが、情報公開請求があれば公開すると答えた。また4分の1以下の出資法人に対しての対応についての質問に、三重県では多くが公益法人なので情報公開がなされており、問題は少ないと答えた。補助金の支出について議決を要する条例項目については、執行部としての専決事項とのかねあいや否決された後のフォローをどうするかで強い抵抗があったという。
2)議決すべき事件以外の契約等の透明性を高めるための条例について
平成12年7月、各派代表者会議で、地方公営企業の契約、リース契約および出資法人の契約について、透明性を図るべきという発言があった。その後11月に全会派から選出された議員で構成する条例案検討委員会発足を決定。既に先行していた「三重県行政に係る基本計画について議会が議決すべきことを定める条例」案に係る条例案検討委員会と同メンバーにより検討、条例案を作成、平成13年第1回定例会に提出、3月22日議決、27日公布、4月1日施行された。
この条例の目的は、地方自治法98条規定に基づく議会の検査の充実を図り、議会の議決すべき事件以外の契約および県の出資法人に係る契約の透明性を高めることにより、契約事務の適正な執行に資することとしている。
条例は①県が賃借人となる予定価格7千万円以上の賃貸借、②地方公営企業の業務に関する予定価格5億円以上の工事又は製造の請負の契約、③出資法人に係る予定価格5億円以上の工事又は製造の請負契約について、契約の名称、相手方、契約金額等を議会の定例会に報告、となっている。県出資法人の対象は25%以上出資の法人で、50%以上は義務規定、25%以上50%未満の出資法人は努力規定となっているが、事実上同じ扱いになっている。
具体的に調査項目を条例で定めることで、議会の検査能力が上がる。特に第三セクターの契約については眼が行き届かないのが実情で、ケヤキ・庭石事件、ゴルフ場跡土地の残土処理をめぐる数々の疑惑がいい例である。談合や不正の続発する福岡市を見れば、このような条例は是非必要である。
三重県の外郭団体
50%以上 13団体
25%以上、50%未満 27団体
25%未満 85団体
計 125団体
2,宝塚市
調査事項
分権と自治的コミュニティ支援(小学校校区コミュニティの展開について)
福岡市は町世話人制度を廃止し、小学校単位の自治連合会を基礎にコミュニティづくりを進めるとしている。宝塚市は小学校区単位の街づくりを進めていると言うことで調査に行った。
宝塚市の取り組みの流れは、一つには地方分権に向けての動きの中で、住民参画の取り組みが検討されてきた。平成9年~平成10年には市民100人委員会を設置(11の100人委員会、1100人参加)して市政参画の仕組みを検討してきた。平成11年に地方分権懇話会提言、平成12年市民参画検討委員会提言を受け、平成15年の特例市移行に向けて市民と行政の協働の街づくりを進めてきた。
もう一つの流れとして、社会状況の変化の中で、自治会を中心に新たなコミュニティづくりが進められてきた。昭和40~50年代の急激な都市化による人口増と社会変動により、人間関係の希薄が住宅街が広がる一方で、新興団地などで自治会形成する状況見られた。地縁関係よりも趣味や目的で集まるサークル活動が活発になり始めたが、他方高齢化や青少年問題など広域で取り組むべき課題も増えてきた。平成5年度からコミュニティ課を設置し、概ね小学校単位で「まちづくり協議会」の推進を始めた。自治会を中心に地域の諸団体に理解を求め、平成11年にようやく全市を網羅する20の「まちづくり協議会」が組織された。
平成4年に「女性ボード」を創設(任期2年、委員50名、平成15年まで流刑550人が参加)、女性の社会参加を進めてきた。平成7年の阪神淡路大震災ではボランティア活動がさらに高まり、平成10年にはNPOセンターを創立(同年12月NPO法施行)とボランティア活動を支援してきた。平成13年には「まちづくり基本条例」を制定、市民参画推進、地域ごとのまちづくり推進、NPOとの協働のまちづくり推進、情報の積極的な提供を進めている。この条例を基づき「市民参画条例」がつくられている。
■まちづくり協議会の仕組み
宝塚市には23小学校区がある。基本的に1小学校区が1まちづくり協議会になっている。コミュニティのエリアは3段階に想定されている。小エリアは単位自治会、中エリアは小学校区で、構成は自治会、子供会、PTA、民生委員・児童委員、老人会、各種サークルとなっている。大エリアはまちづくり協議会を7ブロックに統合、構成の町づり協議会は1~5と地域に合わせて構成している。因みに宝塚市の自治連合会は大エリアと重なっている。
地域の活動はまちづくり協議会が核となっており、福岡市で言えば校区自治連合会のようなものと思える。まちづくり協議会で、配食活動などのボランティア活動、運動会や地域のまつり、学習会などのイベント、防災や人権活動などが行われている。また、地域情報紙の発行をしている。地域間の格差が大きく、自治会の組織率も低下していることが課題としてのある。
各ブロックは年に2回ほどのブロック別まちづくり連絡会議を開催し、市政全般の情報伝達、地域の交流、行政との対話の場となっている。市はこのブロック別連絡会議を通じて行政と住民との意見交換をしている。
■宝塚市のまちづくり協議会に対する支援
まちづくり協議会には世帯数を基礎に平均50万円総額1100万円の助成をしている。二千世帯まで30万円、千世帯ごとに10万円加算、8千世帯以上は100万円となっている。財政が厳しくなっているので今後平均30万円へカットするという。まちづくり協議会によって異なるが、構成自治会から世帯数に応じた会費を集めたもの、また、廃品回収やイベント参加費などでの収入を併せて財政運営している。
コミュニティ活に使用する施設の補助も行っている。小学校の空き教室を集会所にする、また騒音対策として設置された集会所は地元自治会に管理を任せている。また271ある自治会の内102の自治会が管理する集会所を持っており、宝塚市は面積に応じて補助金を出している。補助額は、100平米未満は8万円、200平米未満は15万円、400平米以下は30万円、400平米以上は50万円となっている。
宝塚市ではまちづくり協議会を地域の核として考えており、地区別計画を策定してもらい、これを基礎に都市計画マスタープラン作成の準備を進めている。地域格差があり、要請がある協議会には市からコンサルタントを派遣するなどの支援をしている。
■感想
課題はやはり、地域格差が大きい、役員のなり手がない(抽選が多く、6~7割が毎年変わる)、役員の兼任が多いなどがある。市職員が地域住民としてまちづくりに参加し、支えていると言うことである。福岡市でも同じような問題があるが、何よりも時間をかけて丁寧に合意形成し、市民が市政に参画する窓口をつくる努力を感じた。