髙島市政を変えなければ市民の暮らしはよくならない

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 福岡市は「日本一元気な街」と言われていますが、「元気な街」とはどういうことでしょうか。髙島市長は福岡市を国家戦略特区(故安倍前首相が進めた)の指定を受け、規制緩和によるスタートアップ(起業)支援や国内外から企業を誘致、高さ規制の緩和や容積率の緩和で天神地区及び博多駅周辺の再開発事業を誘致してきました。また、日銀の金融緩和政策で市場にあふれた資金が不動産投機に流れ、地下鉄沿線等の交通の利便性が高い地域や多額の補助金が交付されている人工島(アイランドシティ)でマンション建設が相次いでいます。企業活動が活発になり、建設ラッシュが続き、「元気な福岡市」と言われてきました。では、市民の暮らしは本当に豊かになったでしょうか?

 髙島市長が就任した2010年12月以降の数字を追ってみます。まず、福岡市の経済活動を示す「市民経済計算」では直近2018年まで雇用者所得はほぼ頭打ちです。福岡市は全国市町村での人口規模は5位ですが課税平均所得の順位は129位(2020年の厚生労働省からの資料)、非正規雇用は約40.4%で全国平均38.2%よりも高い(2017年就業形態調査)、世帯収入300万円以下の世帯の割合は40%で全国平均34%より多い(2018年住宅・土地調査)となっています。また、2022年度の要保護児童・就学援助児童の割合は23.6%で全国平均14.4%を大きく上回っています。この数字を見ると、髙島市政の基本方針である「都市の成長と生活の質の向上の好循環」は、不動産投資を中心とする企業活動は元気でも、市民生活は格差と貧困が広がっているといえます。この原因は「グローバル創業・雇用創出国家戦略特区」の指定を受け労働者の解雇を指南する「労働相談センター」の設置や、PFI(民営化)や指定管理者制度を広げることで、非正規雇用・低賃金構造を進めたことにあります。新自由主義政策によるトリクルダウンは起こっていないことが数字から見えてきます。

 また、職員を削減し非正規雇用を進め、行政職職員や福祉関係の職員の非正規化を進め、非正規雇用は3割となっています。 長年人事院勧告で改善が求められているにもかかわらず長時間労働は改善されていません。 教員も足りてなく長時間労働が改善されず、非正規雇用が1割強を占めています。教員の長時間労働は改善されず疲弊し、 心の病で休職する教員が増えています。 非正規職員や教員を増やしてきたことで、市民サービスの低下やこども・生徒に対して支援が十分にできない状況となっています。非正規雇用を増やす「使い捨て労働」を広げていいはずはありません。

 髙島市長が進める「都市の成長」政策は、教育や住環境に大きな問題を引き起こしています。交通利便性が高い地域の無秩序なマンション建設は児童数を急増させ、過大規模校(学級数31以上)が2010年に小学校7校だけであったものが2022年には小学校20校、中学校6校と急増し、教室不足や運動場が狭隘化し教育環境が悪化し、教育現場は疲弊してきています。海外では以前から行政能力に合わせた開発を誘導する「都市の成長管理政策」が執られています。福岡市が「都市膨張」は「都市の発展」としてきたツケが住環境の悪化や教育環境の悪化となっています。また、福岡市の市街化区域における永続性がある樹林地は、2007年138ヘクタールであったものが2017年は124ヘクタールと減少、舞鶴公園や須崎公園で大量の大木伐採が行われています。都心部の緑地の減少はヒートアイランド現象を激化させ、都心部再開発でオフィスビルなどの延べ床面積が1.7倍となりエネルギー消費を増加させ、地球温暖化に拍車を掛けています。福岡市は2040年実質カーボンゼロを表明していますが、このままでは実現は不可能です。

 髙島市政12年を振り返ると、安倍政権の政策に「寄り添い」新自由主義政策を進めてきた結果は、格差と貧困を広げ、住環境を悪化させたといえます。まさに、福岡市は日本の縮図といえます。桑原市長時代から高島市長に至る今日まで、「アジアのゲートウェイ」「都市間のサバイバル競争」という「競争と成長」という発想は変わらず続いています。「元気がいい福岡市」という言葉の裏に格差と貧困が広がり住環境の悪化が進んできました。高島市長は市民アンケートで「福岡市は暮らしやすい」という評価が高いとしていますが、交通の利便性や買い物のしやすさ、病院等が多くあるなど、過疎化する他の地方都市に比べ生活の利便性が相対的に良いことによるものです。東京一極集中により地方都市が過疎化する中で、福岡市が東京への人口移動の中継地にあり、ブラックホールのように九州・山口地方から人を吸い寄せ、九州・山口において「一人勝ち」していることによるものです。福岡市の「一人勝ち」をよしとするのではなく、九州・山口での均衡ある発展を模索すべきです。地方自治体の本旨は「住民の福祉の増進」であり、経済成長を優先することは地方自治体の主たる業務ではありません。

 超高齢社会・少子化社会に突入しており、今後需要が大きく増えることは考えられず、日本経済は低成長、ゼロ成長時代が続くと考えられます。コロナ禍で格差と貧困は更に拡大しています。加えて、アベノミクスの負の遺産である円安とウクライナ戦争で経済は更に傷み、収入が増えない中で物価上昇や食糧不足など市民生活が悪化することが危惧されます。超高齢社会・少子化社会において、新自由主義政策・「都市の成長」優先政策から「人への投資」「子どもや若者への支援」「生活困窮者支援」に政策転換が必要です。地方自治体は住民の福祉の増進に必要なことは、法律に明確に禁止されていなければ原則として何でも実施できます。ただし、財源は国や県の補助がなければ自治体が予算化する必要があります。つまり地方自治体における税金の使い方が問われます。貧困は政治の責任であり、安心して暮らせる福岡市にするためには政治を変えなければ実現できません。