2021年度も引き続き新型コロナウイルス感染症により市民生活及び経済活動が大きく影響受けました。感染拡大が見込まれることから多くの国民が反対したにもかかわらず、政府はオリンピック・パラリンピックを開催しました。その結果感染は更に拡大し、多くの国民生活や経済に深刻な影響を与えました。政府はコロナ禍対策として2020年12月に追加分として31兆円余の補正予算を決めました。これを受け、福岡市の2021年度のコロナ対策は2020年度2月補正予算の繰り越し分の執行と、3月当初予算に加えて7回の補正がなされ、医療関係や介護福祉関係へ支援、事業者や市民への支援がなされました。度重なるコロナ対策がとられましたが、医療関係や介護福祉関係へ支援は十分だったのか疑問が残りました。また多くの市民のくらしは収入減や年金の減少などで厳しい状況にあり、市民生活への支援は非課税世帯だけでなくもっと多くの市民への支援がなされる必要がありました。
2021年度決算では不用額は約289億円、前年度の425億円に比べれば減少しているものの過大な額といえます。基金の積立も市債管理基金積立金を除いて約223億円となっており、基金積み立てするよりもコロナ対策に活用すべきでした。実質収支93億円余の黒字となり財政調整基金44億円を積立、スポーツ振興基金については世界水泳が1年間延期され緊急性がないにもかかわらずサッカーくじtotoからの公的助成等の相当額30億円を先取りして積立、土地開発基金については2020年度残高約134億円あり緊急に積み立てる理由はないにもかかわらず19億円を積み立てています。緊急性がない積立金をやめて、政府の臨時交付金に市独自の財源を上乗せし、大学生や専門学校の学生への支援、子ども食堂などの困窮者支援している民間団体への支援、中学3年生までの医療費の無償化、保育の副食費や学校給食の無償化、上下水道料金の減免、医療や介護の負担軽減など、市民生活を直接支援することはできたと考えられます。また、事業者支援としてプレミアム商品券事業が繰り返しなされましたが、生活困窮者や高齢者は購入ができない上、小規模・零細事業者は初期投資や手数料の問題から事業に参加しにくいなど多くの問題が有り、事業の在り方を見直しすべきでした。
他方、コロナ禍で多くの市民が苦しんでいるにもかかわらず、人工島事業、天神再開発,博多駅再開発事業などには相変わらず投資を続け、拠点文化施設建築に着工し須崎公園の樹木を伐採するなど開発優先の政策を進めました。福岡市は経済成長優先政策すすめ住宅開発を規制しないために過大規模校が増え続けており、教室不足や運動場不足など教育環境を悪化させ、子どもの育つ権利を侵害し続けています。気候危機対策が急がれている中で、開発を優先し舞鶴公園や須崎公園の大木を伐採し街路樹を伐採するなど都市の緑地空間を減少させることは許されません。経済成長優先・開発優先の政策は都市のウェルビーイングの低下と地球温暖化防止に逆行するものです。都市の成長政策を優先することよりも、環境保全を優先し緊急時の市民生活を守ることを優先すべきでした。
次に適正な人事配置がなされたのかと言う問題です。一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会の「地方公務員健康状況等の現況」によると、令和2年度の1ヶ月以上の長期休務者は10万人当たり1713.3人となっており、10年前の約1.5倍、15年前の約2.1倍に増えてとし、国でも地方公務員の長時間労働が深刻化していることを問題としています。総務省は今年3月29日に自治体職員のメンタルヘルス対策を組織のトップである知事・市町村長のリーダーシップの下、全庁的に取り組むよう通知を出しています。通知では「メンタルヘルス対策の取り組みの方向性」として、「メンタルヘルス不調の要因は様々考えられるため、その対策は、相談体制、人員配置上の配慮のほか、ハラスメント対策、長時間労働の是正等働き方改革による職場環境の整備など多岐にわたります。そのため、人事担当部局のみならず、職員の所属する各部局や、職場内外の医師、保健スタッフ等が連携して取り組む必要があります。多くの関係者が円滑に連携できるよう、組織のトップである知事・市町村長のリーダーシップの下、全庁的な取組体制を確保し、次の事項を総合的に取り組んでいただくようお願いします。」とあります。
福岡市においてこれまでも、人事院勧告で職員及び教員の長時間労働の是正及びメンタルヘルス対策が勧告されていますが改善されていません。メンタルヘルス不調者が増加している主な要因は業務が複雑化している傾向にあること、一人当たりの業務量が増えたことが挙げられています。また職員及び教員の長時間労働が削減されない状況があるなかで、業務の改善だけでなく、正規職員を増やすことが必要と考えます。高島市長は行財政改革として業務の外注化と非正規雇用を増やし、市民千人当たりの職員数は政令市で最も少ない状況にしてきましたが、職員のメンタルヘルス不調を増やし市民生活の質の低下をもたらしています。人口増に伴い職員数は増えていますが同時に非正規職員も増え続けており、業務の改善とともに正規職員を増やすことが求められています。
また、コロナ禍で子どもや女性など社会的弱者は更に厳しい状況になっており、自殺が増えています。子どもから青年期と切れ目のない子ども・若者の相談支援体制の強化が必要です。ユニセフの2020年報告では我が国のこどもは、38 か国中、身体的健康は1位ですが、精神的幸福度は37 位となっています。保護者にとっては、こどもの成長や子育てをめぐる状況が厳しく、負担や不安、孤立感が高まっていす。自己肯定感を持ちながらこどもと向き合い、親としての喜びを感じられない状況にあります。また、社会全体の視点からは、こどもが自らの希望に応じて活躍できるよう健やかに成長することができず、少子高齢化の進行により社会の担い手が減少することで、こどもやその保護者だけではなく結婚しない人やこどもを持たない人も含めて社会に大きな影響を及ぼし、我が国の社会全体の根幹を揺るがしかねない危機的な状況が静かに進行しています。子どもの育ちにかかわる全ての専門職の増員と正規雇用による体制の強化、さらに民間支援団体の支援が求められています。福岡市の現状は、こどもの権利を保障するための環境を整える取り組みは不十分な状況です。住民の福祉の増進を図るために職員や教員を増員し、専門職の正規雇用を促進する、民間支援団体の支援を強化するなど、経済成長優先の市政から人への投資を優先する市政に転換することが必要です。以上、2021年度決算は問題があり、認定できません。
これで我が会派の反対討論を終わります。