2022年6月議会報告

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主な議案

補正予算

今回の補正予算案は、政府のコロナ禍の影響及び物価上昇の影響に対する国民の生活や事業者に対する支援として支出される、地方自治体の判断で自由に使える新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を財源とする補正予算案です。生活支援関連の支援事業として下水道使用料の減免二ヶ月、学校給食及び保育所等給食の物価高騰対策、生活困窮者支援事業、事業者支援について、農林水産業者に対して原油物価高騰対策の申請サポート、地元水産物の学校給食での提供、園芸産地の育成事業、事業者の経営相談・診断事業、文化・エンターテイメントに対するイベント支援、商業者に対しては全市版プレミアム付き商品券事業、宿泊事業者の支援、修学旅行・バスツアー等による周遊観光の推進となっています。

一般議案

 一般議案として、手続きを簡素化する条例案、職員の定年を65歳までに延長するための条例案、情報化に伴いホームページ公示するための条例案、新たにマンション管理計画を認定するための手数料を定める条例案、博多駅前再開発の建築物の用途や形態に関する基準を定める地区計画、公共施設建設費の物価上昇及び人件費の上昇による等による契約額変更の議案等でした。

議案質疑

1、補正予算案ついて

○市民生活支援について

物価上昇による生活困窮者は増えており、先日の報道でも物価上昇に賃金が追いついておらず、実質賃金は1.2%下がったと報道がありました。円の為替は1ドル135円まで下がり、ウクライナ戦争は年内の停戦はないのではないかとの観測もあり、物価上昇は続くとみられます。岸田政権及びその補完勢力はウクライナ戦争を口実に防衛費のGDP比2%に増やすとしています。防衛費をGDP比2%にすれば、アメリカ、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国となります。日本に求められているのは、軍事大国になることよりも、憲法の平和主義による外交力で緊張緩和を進めることです。いま必要なことは、円安政策を是正し、防衛費を引き下げ、税金を国民生活の支援、とりわけ人材育成するための教育への投資、介護・福祉の処遇改善による人材育成、生活困窮者支援に重点的に支出することです。市長は住民の福祉の増進を図る地方自治の本旨に則り、国に円安政策の是正および防衛費の増額をやめて住民福祉に使える地方の財源を増やすよう求めました。

また、福岡市の2021年度は黒字であり、財政調整基金は43億円が積み立てられ、また、スポーツ振興基金はtotoからの寄付金を前倒しで30億円積み立てています。国の生活困窮者支援として生活困窮家庭の子ども一人に5万円の給付がなされましたが、対象者は5万人余でしかなく、コロナ禍による収入減少と物価高騰で苦しむ市民は多くいます。生活支援として学校給食や保育所等の給食を無償化している自治体は増えており、福岡市としても、財政調整基金等取り崩して給食の無償化や子ども食堂やフードバンクなど民間の生活困窮者支援をしている団体の支援を求めました。

○事業者支援策としての全市版プレミアム付き商品券事業について

全市版プレミアム付き商品券事業について質問しました。商品券は完売、ということで市内の需要喚起策として一定の効果を果たしている、また、購入者の割合は市在住者約9割、市外在住者約1割ということで市民の利用が主であり、市の事業としての評価ができる面はあります。他方、ショッピングセンター(20.6%)、スーパー(18.8%)、百貨店(10.5%)など大手チェーン店が多く、博多区(20.6%)、中央区(27.5%)となっており、都心部以外の地域地場中小事業者への対策としては課題が残るといえます。また、1人あたりの利用状況はプレミアム込みで約6万1千円となっていることを見ると余裕がある人が多く利用していると推察されます。電子決済については8割超の店舗が「ネクスペイは継続して実施した方が良い」との回答からQRコードを使うことで事業者の負担軽減にはなったと思われる反面、スマホを持たない人の課題は残っています。全国チェーン店など大手企業や天神・博多駅周辺の店舗だけでなく、地域の地場中小事業者へより広く参加ができる取り組み、より多くの市民が利用できるような工夫、スマホを持たない市民への対応を求めました。

2、案第100号福岡市動物の愛護及び管理に関する条例の一部を改正する条例案について

 本条例改正は情報通信技術を利用する方法により飼い主の判明しない犬を抑留している旨を周知するため、掲示だけでなくホームページで公示できるようにするものです。動物愛護管理法の改正により犬へのマイクロチップの装着が販売業者には義務化され、飼育者に対しては努力義務となったことから、マイクチップによる飼い主の確認とホームページでの公開となど情報化を活用することで殺処分の削減につなげることは意味があると考えます。しかし、マイクロチップは約1センチで、動物愛護の視点からは課題が残ります。また、マイクロチップには15桁のナンバーが記録されており、マイクロチップのナンバーとともにブリーダー、販売者、購入者の氏名・住所・連絡先がデーターセンターに登録することが義務づけられています。個人情報保護と動物愛護の視点についても留意することを要望しました。

3、議案第104号福岡市建築関係手数料条例の一部を改正する条例案について

 この条例改正はマンションの管理の適正化の推進に関する法律や長期優良住宅の普及の促進に関する法律の一部改正に伴い、マンション管理に関する計画等の事務にかかる手数料等を新たに定めるものとなっています。具体的にはマンション管理計画の認定することでマンション管理の適正化を進めることを目的としています。

 福岡市は、マンション管理組合の管理能力の低下や、建物の老朽化が進行し、適正な管理がなされないまま放置されると、区分所有者等自らの居住環境の低下のみならず、外壁の剥落等による居住者や近隣住民の生命・身体に危害、ひいては周辺の住環境や都市環境の低下を生じさせる等深刻な問題を引き起こす可能性があるとし、マンションは今後も増加傾向にあり、さらに、高経年化が想定されるため、管理の適正化の推進を図るための施策や指標等を定める「福岡市マンション管理適正化推進計画」を策定しています。

マンション管理組合として認定制度を利用することは、良好な住環境が維持できるとともに、マンションの管理状況が客観的に評価され、資産価値の上昇と、中古物件の流通が活性化されることが期待されます。また、福岡市は約4分の3が集合住宅であり、タワーマンションも増えています。マンション管理を放棄することによる都市のスポンジ化が危惧されており、これを予防するためのひとつとして、マンション管理計画認定制度の利用拡大を着実に進めることが重要です。福岡市マンション管理適正化推進計画およびマンション管理計画認定制度をマンション管理組合及び区分所有者に周知すること求めました。

反対した議案

○議案第106号福岡市地区計画及び集落地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例案に反対

この条例案は博多駅前再開発事業の関する地区計画です。セットバックによる容積率の増加は、都心部における歩行空間の確保のためにはやむを得ないと考えますが、気候危機対策や都市緑化の政策課題を課せないまま、ボーナスを付けて再開発を誘導することは問題があります。今回の再開は事業では、北ゾーンでは現行800から1,350に、南ゾーン600から1,000へ容積率が緩和されます。単純計算すると床面積は北ゾーおよび南ゾーンではともに1.7倍弱となり、特段の対策がなされなければエネルギー消費量は1.7倍程度になります。加えて、床面積が増えれば人流や交通量が必然的に増え、エネルギー消費量は増えます。福岡市は2040年実質カーボンゼロを表明しており、エネルー削減目標や再生可能エネルギーが地区計画に反映されよう努力目標ではなく地区計画に明記されるべきです。また、ヒートアイランド現象の緩和と都市景観形成の視点から、都心部の緑化が進められるべきです。経済優先の都市膨張策は見直すべきです。

一般質問

、IRについて

市長は3月の我が会派の代表質問で「IRについては検討していない」との答弁をしています。しかし、巷ではIR誘致の動きがネットニュースで報じられ、市民が不安に感じています。自治体で検討されてない状況で、民間企業が勝手に準備を進めることは住民無視で問題です。改めて市の考えを質しました。

 IRの核心はカジノです。IRを誘致すると言うことはカジノを誘致することであり、賭博を市民に勧めることになります。横浜市長選挙でもIRが争点となり、IR反対を表明した市長が当選するなど、IR法については多くの国民が反対しています。その理由は、パチンコ・パチスロの2019年の総売上は約20兆円、競輪、競馬、競艇、オートレースなどの公営ギャンブルは2020年の総売上は6兆8500億円といわれ、日本は世界一のギャンブル大国であり、ギャンブル依存症が多い日本の現状について多くの国民が危機感を持っているからです。

 3月30日に米国企業バリーズコーポレーションがホテルオークラで「IR事業を福岡市海の中道公園エリアで行う」「2028年までに開業」という記者会見をし、バリーズ側は、基本計画書や意向表明書を福岡市長、福岡市議会議長、九州経済連合会会長、九州IR推進協議会会長などの各関係機関に提出したと報道されています。一般質問では記者会見には出席していないし、基本計画や意向表明は受け取っていない、具体的な計画についても感知していないと答えています。

 厚生労働省がギャンブル依存症の実態把握のために2017年に実施した調査によると、生涯でギャンブル依存症が疑われる状態になったことがある人は成人の3.6%と推計しています。この値を国勢調査のデータに当てはめると約320万人に相当します。この割合はオランダ1.9%,フランス1.2%、スイス1.1%、カナダ0.9%、イタリア0.4%、ドイツ0.2%等、海外に比べると異常に高いことがわかります。ギャンブル依存症は経済的破綻、鬱状態、子どもへの虐待、自殺願望など、自身の精神的な病状だけでなく、家庭破壊など深刻な状況を生み出します。自治体が街の活性化と称して、ギャンブル依存症が増える環境を作り、ギャンブル依存症を治療するセンターを作るという、マッチポンプの街づくりは、「住民の福祉の増進を図る」という地方自治の本旨に全く逆行するものです。カジノによるまちづくりは福岡市にはふさわしくなく、地域の豊かな自然や歴史を生かした地域の活性化が、市民や未来を担う子ども達にも希望を与え、地方自治体の責務といえます。

カジノという重大な事案について市民や議会で議論がなく、民間が先行して作った計画を自治体が後からその計画を追認することはあってはならないことです。市長は私たち会派の代表質問に「IRについては検討していない」という答弁をしており、市民や議会を無視してカジノ誘致は許されません。住民無視、議会無視のこのような民間の動きをやめさせるよう、市に強く求めました。

2、単身高齢者の支援について

  国民の平均寿命は延び超高齢社会になっています。それに伴い高齢者のみの世帯や単身高齢者世帯が増えています。地域包括支援センターや社会福祉協議会、自治協議会など地域ぐるみでの高齢者の見守りや支援がなされていると思いますが、いくつか相談を受けた事案について質問しました。

 一つは単身高齢者の方から入院時の保証人について困っているとの相談を受けており、入院の費用に関する保証人について質問しました。市は医師法で身元保証人等がいないことのみを理由に、医師が患者の入院を拒否してはならないとされており、各医療機関に対し、適切な対応を行うよう周知されていると答えています。市民に周知されているのか再度確認したところ、ホームページなどで周知していると答えました。しかし、単身高齢者だけでなく多くの市民は知らないのではないかと考えます。病院からの説明がない場合はやむなく保証人になっていただける方を探しているのというのが現状です。医療機関だけでなく市民にもキチンと周知することを求めました。

 二つ目は高齢者の総合相談窓口として、地域包括センターが相談窓口となっていますが、夕方5時以降や休日に連絡すると繋がりにくいという声を何度か聞いています。市は「月曜日から土曜日の17時以降や日曜日など、開設時間外の対応については、21時までは専門の窓口で電話相談を受け付け、21時以降は保健所夜間通報ダイヤルへ案内を行い、対応することとしている。」と答えていますが、実際には繋がらないという苦情があり、対応に問題がないのか検証することを求めました。

 三つ目は単身高齢者に対して認知症発症前からの支援についてです。民生委員や校区社会福祉協議会、自治協や老人会など、地域ぐるみの見守りがなされ、相談窓口として地域包括支援センターがありますが、各区役所での単身高齢者の生活状態の把握と支援の連携を図り、見守りと支援がさらに充実することを求めました。