10月に閣議決定された新エネルギー基本計画は2030年度の温室効果ガス46%削減を目標利再生可能エネルギーについては、電源構成では36~38%程度、原子力発電は20~22%程度、LNG火力は20%程度、石炭火力は19%程度、石油火力等は必要最小限の2%程度としています。原子力発電については安全性を確保することを前提に、設備利用率の向上や40年超運転も含め現在稼働の10基から36基まで増やす考えを示しています。
いのちを犠牲にする原発に頼らないエネルギー政策にすべき
1986年にチェルノブイリ原発事故が起こり、世界中を放射性物質で汚染し、チェルノブイリ周辺では未だに健康被害が続き、元の土地へ戻ることができない人が数多くいます。2011年の福島原発事故では福島県だけでも最大16万人以上が避難を強いられ、10年を迎える今日でも福島県の集計だけでも約2万7千人以上の人が住んでいた土地に戻れていません。福島県外の避難者を含めるとさらに多くの人が未だに避難しています。10年たった今日も原発敷地は放射性物質で汚染され、事故を起こした原発の内部は十分には把握できておらず解体の目途もついていません。地下水の汚染水は増え続け、政府は多くの漁業関係者や国民が反対している中で海洋放出を強行しようとしています。福島県での子供の甲状腺がんが270人を超えていると言われ、このように、いったん過酷事故を起こせば多くの人の生活を奪い、健康被害を長期に及ぼすことが明らかです。
また、事故を起こさなくても放射性物質は原発から排出され、周辺地域の健康被害をおこし、定期点検では被爆労働者によって点検と整備がなされています。このような生命や生活を犠牲にするエネルギーを使うことは倫理に反します。さらに、九電は原子力発電を稼働させるために再生可能エネルギー電力の購入を止めることを繰り返しており、原子力発電を拡大することで再生可能エネルギー電源を抑制することに繋がり、再生可能エネルギー100%に向けての流れに逆行するものです。
石炭火力に依存するエネルギー政策では温暖化を止められない
政府はコスト、地政学的リスクなどが少ないことをあげて、天然ガスへの切り替えなどによる石炭火力全廃を拒否しています。国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が10月31日から11月12日にかけて英国北部グラスゴーで開催されました。COP26では温室効果ガスの排出対策を取っていない石炭火力発電の廃止を盛り込んだ声明がだされ、英独仏や欧州連合(EU)など46カ国・地域が署名しました。声明には主要国は2030年代に、他の国は40年代に排出削減対策をしていない石炭火力を廃止することが盛り込まれています。COP26開催国の英国ジョンソン首相が岸田首相に「石炭火力発電全廃」を表明するよう強く求めていました。しかし、岸田文雄首相は今月2日にCOP26の会場で演説し、温室ガス排出を抑制できるとするアンモニアや水素を使う「ゼロエミッション(排出ゼロ)火力」をアジア諸国で推進するとし、日本は今後も活用を続ける方針を表明し、声明には署名しませんでした。
新自由主義政策では未来の世代に地球を残すことはできません
国際的な環境NGOは、温暖化対策に消極的だと判断した国を選ぶ「化石賞」に日本を選んだと発表しました。「化石賞」は、国際的な環境NGOのグループ「気候行動ネットワーク」が、温暖化対策に消極的だと判断した国をCOPの会期中に毎日選んでいて、2日の「化石賞」に日本とノルウェー、それにオーストラリアを選んだと発表しました。日本を選んだ理由についてはCOPの首脳会合での岸田総理大臣の演説にふれ「火力発電所の推進について述べた」などとし、「脱炭素の発電としてアンモニアや水素を使うという夢を信じ込んでいる」としたうえで、「未熟でコストのかかるそうした技術が、化石燃料の採掘と関連していることを理解しなければならない」などと批判しました。
経済成長を優先する新自由主義政策のままでは先進国としての責任を全うし、未来の世代に対する責任を果たすことはできません。「環境を守ること」と「人権を守ること」と「平和をつくること」は繋がっています。戦争は最大の環境破壊であり、人権侵害です。戦争政策を進め、気候危機に責任を持とうとしない岸田政権を変え、戦争をなくし気候危機に対する責任を取る政治に変える必要があります。私たちには未来の世代に緑の地球を残す責任があります。
環境問題と人権問題と平和はつながっています。経済成長を優先し気候危機に向き合わない政権は人権侵害を行い、人権侵害を行う政権は戦争に突き進みます。戦争は最大の環境破壊であり、最大の人権侵害です。環境・人権・平和の取り組みこそが持続可能な緑豊かな地球を残し、子どもに明るい未来を約束します。新自由主義政策から未来に責任を持つ政治への改革が必要です。