10月27日に自衛隊名簿問第第1回裁判がありました。私(荒木)と脇さんが意見陳述を行いました。訴訟の趣旨を説明しています。約40名の参加で902号法廷には入りきれず、次回1月12日(14:00)からは101号大法廷になりました。被告福岡市は12月半ばに答弁書を出すと言っています。現こことしてはキチンと反論し、市民とともに同意がない名簿提供をやめさせます。次回も多くの市民の結集を訴えます。
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2021年(行ウ)第41号
違法公金支出損害賠償住民訴訟請求事件
原告 大塚龍昇 外15名
被告 福岡市長 髙島宗一郎
意見陳述
2021年10月27日
福岡地方裁判所 第1民事部合議A係 御中
原告
福岡市早良区有田5丁目17番7号
大塚龍昇
私は原告の大塚龍昇です。福岡市議会議員を務めていますが、議員名は旧姓の荒木を使用しています。福岡市が昨年及び今年実施した、自衛隊の求めに応じて18歳、22歳の市民の個人情報を提供することは、憲法、個人情報保護法、福岡市個人情報保護条例、地方自治法、住民基本台帳法に違反しており、直ちに名簿提供を中止することを求めています。
福岡市が2020年6月5日から、18歳および22歳の市民の個人情報を本人の同意を得ずに提供を始めました。福岡市は2020年2月18日総務財政委員会においてその根拠として「提出の義務はないが、自衛官等募集事務は法定受託事務であり、毎年、防衛大臣名で住民基本情報の提供についての協力依頼があっているため、本市としてはできる範囲での協力を行う方針である。」「自衛官は定員割れしている状況であり、自衛隊の活動を維持するという意味においては自衛官等募集事務への協力には公益性があると考える。災害救助等において自衛隊と協力関係にあり、法定受託事務として事務の一部を担っている本市としては、このような公益性を踏まえてできる範囲での協力を行っており理解願いたい。」と説明しました。2020年9月9日の私の一般質問においても同様に答えています。自衛官の募集のために18歳および22歳の市民の個人情報を提供すること自体は法定受託事務ではなく、あくまでも自衛隊員募集に福岡市として協力するということであり、市の裁量によるものです。
私たちが問題とする事は、一国家公務員である自衛隊員の募集のために本人の同意もなく名簿を提供する事が許されるのかということです。自衛官の定員が足りていない事から、2019年2月安倍元首相が自民党大会で「新規隊員募集に対して、都道府県の6割以上が協力を拒否しているという悲しい実態がある」と発言があり、安倍首相とは懇意である高島市長が自衛隊員募集のために名簿提供を指示したと考えられます。安倍首相の発言は事実誤認であり、福岡市を始め多くの自治体は自衛隊法第97条及び同法施行令120条の定めにより、自衛官募集のポスターの掲示や募集の案内など自衛隊員の募集に協力をしています。高島市長が安倍元首相に忖度して名簿提供を指示したと考えられることはこの間の提供に至る経過からも推察できます。2019年12月福岡市第5回議会で高山議員が自衛隊員募集のために名簿提供すべきという趣旨の一般質問を予定していましたが、理由は不明ですが当日突然取り下げました。その直後の12月29日付けの産経新聞のウェブニュースで福岡市が自衛隊員募集のために18歳、22歳市民の名簿を提供することに決めたという記事を掲載しました。市の担当者からの取材と考えられます。翌2020年1月6日の定例記者会の場で、市長自らの公表ではなく記者の質問に答えて市長が名簿提供を明らかにしました。1月31日に名簿提供について福岡市個人情報保護審議会に諮問、2月7日に同審議会目的外利用等審査部会を開催、同審議会は2月14日に答申、2月18日総務財政委員会で市民局が報告、4月1日に名簿提供を市民に告知と、異例の早さで手続きを進め、議会や市民での議論がないまま進められました。この経緯を見ると福岡市は抜き打ちで自衛隊員募集のために名簿を提供しようとしていたように推察され、市の不誠実さが見て取れます。
2019年2月14日の朝日新聞掲載の記事によると、福岡市の担当者は、自衛隊法施行令は具体性に欠け「定め」とはいえず福岡市個人情報保護条例に抵触すると、名簿提供しない理由を説明しています。それが急遽名簿提供するに至った理由は、安倍元首相に忖度した市長の強い指示があったと推察できます。個人情報は基本的人権であり、市長個人の思いだけで同意もなく第3者に提供できるのか、一国家公務員の募集のために基本的人権を侵していいのかということです。住民基本台帳法には「この法律の規定により交付される書類の交付により知り得た事項を使用するに当たつて、個人の基本的人権を尊重するよう努めなければならない。」とあり、一国家公務員の募集のために個人情報を提供する事が許されるとは考えられません。
福岡市は名簿提供については、自衛隊法および施行令が名簿提供する「法の定め」として根拠が弱いとの認識から個人情報保護審議会に諮り、自衛隊に公益性がある事をもって提供できるとの結論を導くようにしています。2020年9月9日の一般質問で、「個人情報保護条例第10条第2項第6号の公益性があるという理由で個人情報を提供した事例はどのようなものがあるのか」との私の質問に、市民局長は「個人情報保護審議会に諮問して、市の保有個人情報を提供した近年の事例として、平成30年度に特定の介護保険事業所に対して介護報酬の返還請求を行うに当たり、返還請求の原因である個人に関する情報を当該事業所に提供した事例、平成30年度及び令和元年度に国民健康保険レセプト点検自動化実証実験を行うに当たり、被保険者のレセプトデータを事業者に提供した事例」をあげています。つまり、毎年3万人もの市民の個人情報が継続的に提供される事例は自衛隊への提供以外にはありません。しかも自衛隊の災害活動や国防に対する公益性が認められても、一国家公務員である自衛隊員の募集という業務のために同意がない個人情報を提供することに公益性があるのかという点については、個人情報保護審議会では検討されていません。個人情報保護法及び福岡市個人情報保護条例では、目的外使用する場合は原則本人の同意が必要としています。名簿提供をしなければ自衛隊員募集の業務ができないとは考えられず、同意もとらずに募集チラシのポスティングのために使用することがプライバシー保護を上回る社会的公益性があるとは考えられません。
小郡市では2016年度に個人情報保護審議会は 「自衛隊法施行令第120条で規定されている『資料』に個人情報が含まれるとの解釈は困難」「適齢者情報を提供することの妥当性は認められない」との答申、従来「提供」していましたが、「閲覧」へ切り替えています。筑後市は今年6月1日行政審査会が市長に「個人情報の取扱いに係る意見について」という答申をしました。答申は「名簿という形で自衛隊へ提供してきた個人情報は、いずれも住民基本台帳法第11号第1項の規定による閲覧により取得できることからすると、名簿の提出は単に自衛隊に対し便宜を図る行為にほかならず、名簿がなければ自衛官等募集事務を遂行できなくなるような特段の事情も見受けられない。本来地方公共団体は、個人情報を慎重に取り扱い、個人の権利利益を保護すべき立場であるので、今後もこのような形で個人情報を自衛隊へ提供することは妥当とはいえない。以上が審査会としての意見であるが、仮に今後も名簿の提出を継続しようとするのであれば、個人情報を提供することを本人に対しあらかじめ文書で通知し、本人から申し出があれば提出名簿から除外するとともに、自衛隊に対しては使用後の名簿を確実に処分するよう誓約させ、その処分には市の職員が立ち会うべきであることを付言する。」としています。
次に、デジタル社会を迎え、個人情報保護がますます必要となっており、地方自治体は率先して個人情報保護を厳格にする責務があると言うことです。
福岡市は提供するに当たり、協定書を締結しています。協定書には、複写しない事、委託しない事、使用後は消去する事など個人情報が目的外に使用しないよう厳しく管理する事となっています。しかし、自衛隊募集の案内をポスティングするために約3万人分の紙媒体で渡された名簿をもって回るのか、紛失等はないのか、複写していないのか、使用後消去しているのか、いずれも市が直接確認しているわけではなく、協定書の実効性に疑問を持たざるを得ません。そもそも自衛隊がこのような名簿をどうして必要とするのかも疑問です。名簿提供がなくても自衛隊員募集業務は可能なことは誰もが理解することはできます。ましてポスティングのためにだけに名簿が必要という理由も納得できません。住民基本台帳法第3条第4項に「書類の交付により知り得た事項を使用するに当たって、個人の基本的人権を尊重するよう努めなければならない。」に反するものです。また、地方自治法第1条の2第1項「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」にも反します。
いま、社会の情報化が進むなかで個人情報保護の在り方が問われています。個人情報がデータ化され、本人が知らない間に収集され利用され、AIによってプロファイリングされ、個人の行動が変容させられることが既に起こっており、世界では大きな問題となっています。中国ではAIの技術が住民・在住者の監視やウィグル族など少数民族の弾圧に使われています。また、アメリカの大統領選挙やイギリスのEU離脱の国民投票では、AIを使った技術による投票行動への干渉がなされ、民主主義の脅威として大きな問題となっています。このような状況から、EUではEU一般データ保護規則を制定し、個人のプライバシー権と個人情報の自己コントロール権を保障しています。デジタル関連法が制定され、個人情報・行政情報の利活用が全面的に打ち出されていますが、情報化を進めるためには個人のプライバシー権と自己コントロール権が保障されなければいけません。地方自治体は住民の個人情報の適正な管理と保護が義務づけられており、情報化社会が深化する今日、自衛隊員募集の極めて公益性が低い業務に本人の同意がないまま提供することは許されません。
最後に、自衛隊員募集のために同意がないまま名簿を提供することは本人の権利利益の侵害に当たることです。個人情報保護法及び福岡市個人情報保護条例第10条2項では、「本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるとき」は個人情報を提供できないとしています。自衛隊の公益性について災害救助や国防に公益性があることを理由に提供を認めています。しかし、2015年に安保関連法が強行採決されて以降自衛隊の任務は大きく変容しています。自国の防衛だけでなく、同盟軍の警護や兵站を担うことができ、海外で紛争介入も起こりえます。2016年には自衛隊がPKOで南スーダンに派遣され、ジュバで戦闘に巻き込まれようとしました。今年5月に霧島でフランス軍との軍事訓練が実施されたように、国内外で米軍だけなく様々な国の軍隊との軍事訓練が頻繁に繰り返されています。自衛隊は戦闘に参加し生命の危機を伴う状況が現実のもとなっています。憲法違反の集団的自衛権のもとの軍事行動に公益性はありません。台湾で紛争が起これば米軍基地がある沖縄が戦場になることは必死であり、自衛隊が日本国の防衛とは直接関係なく戦闘に巻き込まれる事は極めて現実性が高い状況になっています。名簿提供された本人が「生命の危険を伴う」等事実を認知しないまま自衛隊員募集のために名簿を提供することは、明らかに本人の権利利益の侵害になります。また、戦前地方自治体が国の機関として住民を戦場に送り出しましたが、戦後地方自治が憲法に規定され、地方自治の本旨から住民を戦場に送らないという地方自治体の意思が示される必要があります。この点についても個人情報審議会は議論をしていません。
以上の理由から、福岡市が同意を得ない名簿を提供することは違法であることを訴えます。
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2021年(行ウ)第41号
違法公金支出損害賠償住民訴訟請求事件
原告 大塚龍昇 外15名
被告 福岡市長 髙島宗一郎
意見陳述
2021年10月27日
福岡地方裁判所 第1民事部合議A係 御中
原告
福岡市東区奈多一丁目6番13号
脇 義重
はじめに
福岡市は昨年6月5日、市が管理する住民基本台帳から18歳と22歳の市民の個人情報29,817人分を本人に知らせず、また承諾を得ることもなく、公費23,745.94円を支出して名簿に仕立て、むしろ積極的に自衛隊に渡すというとんでもなく違法を犯した。
自衛官募集のためという名目で福岡市が人権侵害と財産窃取をしてよいはずはありません。自衛隊への名簿提供が法律上の「法定受託事務」ではなく、名簿提供に条例上の「公益上の必要」は全くない。このように名簿提供に法的根拠がない行政行為は地方公共団体福岡市の事務ではありません。事務ではない行為に公費を使うことは許されない。
その自衛隊は、米軍など外国の軍隊の尖兵となって世界各地で戦闘する部隊に様変わりしています。その軍隊化する自衛隊に福岡市の若者を提供する福岡市長の誤った行政を質さなければならない。
第1.福岡市による名簿提供と福岡市民の抗議行動!
その1.2020年1月9日、博多湾会議など7市民団体の申入れ
自衛隊への名簿提供は(以下、「本件提供」)、市民は基本的人権の享有者であり、個人として尊重されるとした憲法,地方自治体の基本は住民の福祉増進であるとする地方自治法、個人の権利利益を保護する個人情報保護法や福岡市個人情報保護条例に違反します。個人情報を自衛隊に提供することに公益性の必要は見当たりません」として本件提供の中止を申入れた。
福岡市個人情報保護審議会には、「今回の10条適用除外の6号規定を適用して市長の諮問に対して、憲法と地方自治法に違反する行政行為に公益上はなく、自衛隊に紙媒体等で個人情報を提供する諮問には、提供するのは適法ではなく、提供してはならない」と答申してくださいと申し入れた。
その2.2020年2月22日市民デモ。
1月31日に市長が福岡市個人情報保護審議会に「名簿提供」を諮問。2月7日約180名の市民が抗議するなか、福岡市個人情報保護審議会が開らかれ、14日に「自衛官募集事務に利用することを目的として自衛隊に個人情報を提供することについては、公益上の必要が認められると判断される」と答申した。
福岡市内で市民団体「自衛隊への名簿一括提供を許さない!市民集会」の集会とデモが行われ、髙島宗一郎宛ての「法令の根拠もなく、極めて重大な人権侵害を引きおこす、若者の個人情報を自衛隊に一括提供する暴挙を直ちに止められるよう、私たちはここに要求します」との集会決議を挙げた。
その3.2020年3月福岡市議会に請願
多くの団体・個人が名簿提出反対の請願を提出するなか、博多湾会議と市民有志は名簿作成「予算執行停止差止を求める請願」と「18歳22歳の福岡市民の個人情報を自衛隊に提供しないことを求める請願」を提出した。
その4.2021年6月4日に住民監査請求
労働組合と27人の市民が福岡市監査委員に個人情報を名簿として自衛隊に 渡した行為にともなった公金の支出の損害回復のため、損害額を福岡市長に賠 償させることを求め、住民監査請求した。7月14日に二人の請求人(大塚、 脇)が意見陳述した。 その5.2021年8月2日、福岡市監査委員は名簿作成に係る損害賠償請 求監査請求を不当に棄却した。 |
その6.9月1日、監査請求人有志らは、監査結果を不服として違法公金支出
損害賠償住民訴訟請求訴訟を起こしました。違法性の要点は①本件公金支出の 違法性。②名簿提供に法理はない。③名簿提供に公益性はない。④福岡市監査 委員の監査結果批判。⑤福岡市個人情報保護審議会の審議過程と答申に存する 違法性だ。 |
第2.本件公金支出の違法性について
本件行為の違法性 名簿提供に法理はない
本件提供には憲法違反、法律違反、条例違反があり、福岡市がいう提供に「公共性の必要」は全くない。
1 憲法第11条及び第13条、第29条違反
本件提供は、憲法第11条と第13条に違反する。個人情報は不可分の個人財産であり、その使用や利用などの管理権は個人に属する権利であり、本件提供は憲法29条に違反する。
2 地方自治法第1条の2違反
本件提供は、地方自治法第1条の2の条規に違反する。
3 個人情報保護法第1条・福岡市個人情報保護条例第1条違反
本件提供は個人情報保護法第1条福岡市個人情報保護条例第1条に違反する。
4 憲法第8章の第92乃至第95条違反
本件提供は、第92条乃至第95条で構成される憲法第8章「地方自治」制定目的に違反する。
5 地方分権一括法違反
国と自治体の関係を対等のものと法定した地方分権一括関係法の趣旨に反する。名簿提供は法定受託事務ではない。本件提供は地方分権一括法制定の趣旨である地方公共団体と国との平等関係確立の立法趣旨に違反する。
6 憲法前文と9条違反
福岡市の若者を自衛隊員として戦地に追いやることは、憲法規範と裁判規範性のある憲法前文に違反する。また、本件提供は憲法第9条に対する違憲・違法行為である。
7 髙島福岡市長「自衛隊に名簿を渡すことは公益性に適う」発言の違法性
1973年9月7日札幌地方裁判所は「自衛隊は憲法9条が禁ずる陸海軍に該当し違憲である」と自衛隊違憲判決を出した。以降自衛隊合憲判決は出ていない。したがって、自衛隊は憲法に違反する実力組織である。違憲な自衛隊に福岡市民の個人情報を提供した行政行為に公益性はなく福岡市の事務ではない。
第3.本件行為の違法性 福岡市監査委員の監査結果批判
1、監査結果の前提となった一日校長事件の判決解釈の誤りがある。
この判決文を反対解釈すると、右処分が著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合には、事案は住民訴訟の一類型として見做される。
2、そこで、福岡市監査委員の監査の違法性について記す。
1) 監査結果通知書の判断「(1)名簿提供にかかる公金の支出について」の記述の監査結果には根拠法不提示と適正執行不証明の違法がある。
2)人件費、名簿印刷費、通信費についての各項目のいずれについても、記載「関係法令を遵守して適正に執行されている」叙述は、適用関係法令の不明示、法令遵守・適正執行の法的根拠不明示の違法がある。
3)福岡市会計規則第37条で「歳出金の支払は、支出命令書によらなければならない」、同第40条で「支払担当者は、支払命令書に当該支出に関する書類を添え、会計管理者または区会計管理者に送付しなければならない」と規定されているところ、同監査結果通知書には、書類を提示させ、監査したという事跡不明示の違法がある。
4)監査結果通知の判断は、「福岡市では、個人情報保護について、憲法、地方自治法及び個人情報保護法にのっとり、福岡市個人情報保護条例第10条第2項各号に当てはまる場合は、個人情報を実施機関以外の者へ提供できる」と述べている。この判断は憲法11条、13条」地方自治法第1条の2、個人情報保護法の第1条に違反している。憲法84条は「法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定している。個人情報の自衛隊への提供が法定受託事務ではないことを福岡市自らが認めていたが個人情報保護法第16条違反を条例適用で治癒できない。市長の行政裁量だと強弁しても、違法性は治癒されず、裁量権の逸脱と濫用の違法の誹りを免れない。
5)監査委員は、本監査結果で「公益性の必要」を本件提供の理由にしている。しかし、このことにつき、いくつかの点に監査不尽の違法がある。
ア、「公益性の必要」を判断するのは、誰かという点である。監査結果書に、本件実施機関福岡市長は「方針決裁」により「本件提供には、公益上の必要があると認めたうえで、提供を決定している」とあたかも本件提供の正当性は実施機関自身によって証されていると記されている。
イ、2020年2月14日、福岡市個人情報保護審議会は、一日のしかも短時間で、答申した。基本的人権が侵害されることになる本件提供について、審議が尽くされなかった。
ウ、「公益性の必要」による本件提供が「個人の権利」を侵害していることについて監査していない。今回の問題で問われているのは、憲法13条の幸福追求権の一つであるプライバシーの権利が侵害されようとしていることだ。事務効率化の「公益性」と比較考量することは埒外だ。
以上の事実を監査委員は監査していない。監査不尽の違法がある。
第4.福岡市個人情報保護審議会の審議過程と答申に存する違法性
1.1月31日 市長の審議会諮問の違法性
市長は審議会に福岡市個人情報保護条例第10条第2項第6号に基づく諮問(以下、「6号諮問」)を福岡市個人情報保護審議会に行った。
住民基本台帳法11条は、国の機関が、法令で定める事務の遂行のために、必要がある場合には、国は住民基本台帳の閲覧を請求することができるとされている。しかし、閲覧の根拠法令が具体的に示されていないし、名簿作成請求権は法定されていない。これら法定されていないことが行われているのは、同法の拡大解釈であり違法である。
2、2月7日市個人情報保護審議会審議の違法性と2月14日の答申の違法性
1)名簿作成を含めた情報提供は法定受託事務ではない。福岡市の適用違法を審議していない。2月7日の審議会の議事録には審議された事跡がない。その無事跡は同審議不尽とともに、審議の違法性を成す。審議すべきことを審議しないままの答申は違法である。
2)福岡市個人情報保護審議会目的外利用等審査部会では守られるべき個人の権利利益について十分な審議が行われていない。
情報化社会が進化する今日、個人情報保護がより重要となっており、守られるべき権利利益の保護が求められている。自衛隊員募集のために名簿提供することに違法があり、かつ、実施機関の裁量権の逸脱・濫用であって許されない。
3)市個人情報保護審議会議で、個人情報提供が持つ危険性が審議なかった。個人の権利利益侵害に関連して、自衛隊に提供された個人情報が、他の情報と関連されて、個人情報のさらなる権利利益の侵害に拡大されていくことについて、審議された事跡がない。
4)審議を通じて、法令から条例への適用法源の転換で名簿提供ができるかとの市長諮問の本源的違法について審議が尽くされなかった。
3、答申を根拠にした福岡市民個人情報の自衛隊への名簿提供の違法性
福岡市個人情報保護条例2項1号適用上の要件欠缺の瑕疵は、同6号適用でも治癒されず、結果として、自衛隊への名簿提供は法的根拠なく行われた。これは「法の支配」と「法律による行政」原則からの逸脱であり、妄言を多用しても、福岡市の違法。福岡市個人情報保護審議会の審理不尽の違法を隠蔽することはできない。
第5、まとめ
名簿提供反対運動のなかで、私たちは、住民基本台帳を閲覧・書き取りという形で自衛隊に福岡市が提供していた事実に直面した。この名簿提供は法定の受託事務ではないという事実を自衛隊も福岡市も気づいていた。だからこそ、福岡市は、福岡市個人情報保護条例を逆手にとって、違法に「公益性の必要」名義を提供の根拠にしようとした。戦争法制下、自衛隊は世界各地で米軍の尖兵として戦闘する部隊に変貌させられている。
私たちは、この裁判を通じて福岡市の自衛隊への名簿提供の全過程を白日のもとに曝し、その違法性を質し、もって福岡市の歪んだ行政を正したいと思う。、この裁判で真実が追及され、公正な審理と判決が実現するよう求める。
請求趣旨
1被告福岡市長は、福岡市職員に対し、23,746円を支払うよう請求せよ。
2訴訟費用は被告の負担とする。 との判決を求める。