自衛隊名簿提供に係った費用が、違法な支出と言うことで住民監査請求をしていました。結果は棄却となりました。争点は名簿提供に係る諸経費の支出に先立つ自衛隊募集事務のために名簿提供することが適法なのかが問われています。福岡市は個人情報保護条例では目的外使用する場合は個人情報保護審議会に諮りることしており、自衛官募集事務に利用することを目的に自衛隊に個人情報を提供することは、公益上の必要性が認められるとの答申を得たとし、監査委員は名簿提供は適法としています。しかし、他都市では「自衛隊員募集事務のために名簿提供することは単に業務を効率化するに過ぎない」として公益性を認めていません。
そもそも、自衛隊員募集業務は法定受託事務(法律により自治体がしなければならない事務)ではありません。全国の自治体から名簿提供の法的根拠を明確にしてほしいと国に要望していましたが、国は地方自治法に基づく技術的助言としか答えていません。つまり、名簿を提供するか否かは自治体の判断になっています。ところが住民基本台帳法では地方自治体に個人情報の厳格な管理が求められていることから、自衛隊員募集事務のために個人情報を提供することは問題があります。更に自衛隊員募集のために同意がない名簿を提供することは、憲法が保護するプライバシー権の侵害にもなります。戦争法によって自衛隊は海外の紛争地に派遣され戦闘に巻き込まれる現実性が強まっていることから、個人情報保護法、個人情報保護条例からも、同意のない名簿提供は権利利益の侵害に当たります。監査委員の判断は大きな誤りがあり、住民訴訟を適することを検討しています。