私は緑と市民ネットワークの会を代表して「デジタル改革関連法案について慎重な審議を求める意見書案」に賛成して討論します。
情報化が進む中で、私たちの個人情報は様々な場面で収集され、大量の個人情報はデータ処理され企業活動に利用されています。私たちの生活はキャッシュレス決済やSNSによる通信など情報化技術の高度化で利便性が高まる一方、個人情報の漏洩による犯罪が既に起こり、街中には監視カメラが氾濫し、マイナンバーと健康保険証・運転免許証・預貯金口座などのひも付けや個人情報保護法制の一元化など、監視社会への懸念が高まっています。
情報化社会は避けられませんが、個人情報はデータ主体である私たち自身のものであり、プライバシーが人権として保護される社会が維持できるのかが問われています。AIにより個人情報をプロファイリング(分析・類型化)し行動予測し、個人の思考を誘導するというアルゴリズムによる統治が進む危険があります。既に私たちはカードやネットで商品を購入すると私たちの嗜好に合った商品が紹介されることを経験しています。
また、AI技術と顔認証技術と個人情報を結びつけることで瞬時にして個人の行動とあらゆる情報を把握しプロファイリングが行われ、理由無き差別を醸成し、不透明な管理・規制し、個人の尊厳を冒すことが問題となっています。アメリカではAIによる類型化が黒人差別を醸成するとして、2019年以降、カリフォルニア州のサンフランシスコなどで顔認証技術の使用を禁ずる動きが広がっています
中国では全ての国民や在住者の行動が監視され、プライバシーが奪われる社会となっています。国家に異を唱えるものは弾圧され、ウイグル族、チベット族、モンゴル族はその民族の歴史さえ奪われようとしています。ジョージ・オーウェルが描いた「1984年」の監視社会はすでに現実のものとなっています。
EUでは、データはデータ主体の所有物とすることを基本に一般データ保護規則が作られ、プロファイリングに対する異議申し立ての権利、プロファイリングなどの自動処理にのみ基づくデータ主体に関する重要な決定を下されない権利を保障し、プロフィリングの公正性と透明性を要請することで、「監視するものを監視する」仕組みと権利が保障されています。
今国会でデジタル改革関連法案が審議されています。審議にあたって多くの法曹界や国民から慎重な審議を求める声が上がっています。情報化により生活の利便性が高まると思いますが、他方LINEで個人情報保護の不備の問題が起こっているように、個人情報保護の在り方や監視社会への懸念もあります。高度情報社会を迎え、個人情報がデータ主体のものであり、原則本人の同意なしに収集と利用がなされない人権侵害を生じない法整備がなされるよう慎重な審議を求めるものです。議員各位の賛同を求めて討論を終わります。