2020年6月議会報告

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国の第1次新型コロナウイルス対策関連補正予算を受けて、4月臨時議会、5月臨時議会において新型コロナウイルス対策関連補正予算案が審議され、補正予算は全会一致で議決されました。国および県の事業に加え市独自の支援策が出されましたが、支援を求める市民、病院や介護関係者、保育園や事業者へ速やかに支援金が給付されるよう、事業の周知と手続きは簡素で市民に寄り添った相談体制を求めました。

6月議会の主な議案は、➀国の第2次新型コロナウイルス対策関連補正予算による福岡市補正予算案、➁拠点文化施設(旧市民会館)整備および須崎公園再整備事業関連条例案、➂福岡市手数料条例改正案、➃中央卸売市場条例改正案、その他留守家庭子ども会施設の買い取り、市営住宅建設費の物価スライドによる契約額の見直しなどでした。

 

■福岡市補正予算案で特筆すべきこと

6月17日に国会が閉会し、第2次新型コロナウイルス対策関連補正予算が成立しました。子ども関連では1人親世帯に対する特別支援金給付および新生児の4ヶ月検診および1歳6ヶ月検診の集団検診に変わる小児科医による個別検診費、小中学校の長期休業による学習の遅れに対する学習保障として小学校教員の加配や小中学校の感染予防対策として各校1名の補助員雇用等でした。また、プレミアム商品券の助成等の経済振興策も補正予算で組まれました。

また、福岡市の特定定額給付金の給付事業に関して、国の事業継続給付金事業における電通・パソナへの不明朗な丸投げ問題同様に、パソナが一括して随意契約で受け、多くの事業を下請け煮出していることが指摘されました。パソナは安倍政権と深いつながりがあり、福岡市の困窮者自立支援センター事業を受注するなど、福岡市の事業に深く関係しており、疑惑が持たれています。

●新型コロナウイルス感染症による福岡市市税収100億円減の見通し

●都市の成長に優先して投資することは許されない

6月議会の常任委員会で財政局は2020年度の市税収見込みとして100億円の減少が見込まれると答えています。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)は今も続いており、収束の見通しはありません。日本において緊急事態宣言は解除されたものの、人の交流は制限され、経済活動も大きく落ち込んでいます。海外との交流も一部解除の動きがありますが、クルーズ船寄港は当面考えられません。感染症のワクチンや治療薬の開発には時間がかかり、影響は2~3年は続くと見られています。また感染症を制圧したとしても世界経済が元に戻るとは考えられません。このような状況において、博多駅前再開発、天神再開発、人工島事業や中央埠頭再開発など都市の成長に優先的に投資をすることは出来ないことは明らかです。ポストコロナ社会をどのように創るのか、介護や医療、保育や教育、芸術や文化など人への投資を優先する市政により、環境と人が共生できる社会にすべきです。

 

議案質疑

1、拠点文化施設(旧市民会館)整備および須崎公園再整備事業関連条例案

この条例案は現市民会館を廃止し新たに拠点文化施設として建て替えると共に須崎公園の整備をおこない、拠点文化施設の建設および維持管理と須崎公園の再整備と維持管理を一体としてPFI事業として実施するための議案です。具体的には、現市民会館を須崎公園に移転・新築し、市民会館跡地を新たな須崎公園にする計画です。

<事業者日本管財の資格審査に問題あり>

入札では日本管財株式会社が中心となった特別目的会社(SPC)福岡カルチャーベースが消費税込みで228億7千万円余で落札しました。福岡カルチャーベースの構成員である日本管財株式会社は以前に福岡市に受託事業において重大な不正をし、ペナルティを科せられないままこども病院のPFI事業を受託しており、受託事業者としての資格にも問題があると考えます。

<1者だけの入札は市民の利益を害する>

今回の拠点文化施設性および須崎公園整備事業をPFIで行うことが本当に市民の利益となるのか、入札額、性能評価をみても、問題であることが見えてきます。事業者福岡カルチャーベース以外に、2グループが参加表明および入札参加資格審査書類を提出していましたが2グループは辞退し、1グループでの入札となっています。1グループしか入札に参加していないこともあり、入札価格全体の落札率は99.5%と競争性は全く働いていません。性能評価も100点満点で59.3点であり、1グループでも入札するというのはおかしいのではないでしょうか。こども病院のPFI事業でも1グループで入札しており、競争性が全く働かないことが起こっていましたが、検証もなく同じようなことが繰り返されています。こども病院PFI事業の入札以前は応募者が1者である場合は入札しないことになっていましたが、こども病院のPFI事業入札以来応募者が1者でも入札をするように変更されました。競争も働かず、事業能力も極めて低い事業者でも、応募者が1者しかなければ落札すると言うことは市民に対する背信行為とも言えます。答弁では基礎審査で要求水準は満たしているので問題ないとしていますが、競争性が働かない入札は、もっと良質で効率的な事業がなされる機会を奪うことであり、市民に大きな損害を与えることになります。応募者が1者しかない入札はやめるべきです。

<建設と維持・管理は分割して入札した方が競争が働き良質で効率化する>

更に内訳を見ると、建設に係る施設整備費の落札率は97.7%、性能評価では100点満点で64.7点、維持管理費運営費の落札率は100.1%、性能評価は100点満点で維持管理51.3点、運営は51.5点です。これを見れば建設と維持管理・運営は分けて入札した方が、入札参加企業は増え、より質が高く安価な整備が出来ると考えられます。PFIによる建設と維持管理運営を一体として入札することは決して合理的でないことは今回の事案を見て明らかです。建設と維持管理・運営は別で入札すべきです。

<PFI発祥の地英国やEUではPFIを問題としている>

そもそもPFIが本当に効率的なのか検証されなければなりません。2018年にNAO(英国会計検査院)は、「英国が25年もPFIを経験しているにもかかわらずPFIが公的財政に恩恵をもたらすというデータが不足」と報告しました。現在英国ではPFI事業は減少しています。また同じ頃、ECA(ヨーロッパ会計監査院)はEU委員会とEU加盟国は指摘された問題点が改善するまでPPPを広い分野で集中的に使うべきではないと勧告しています。ECAは「政府と民間企業のリスク分担が不公平であることが特に問題である」と結論づけています。

<公共施設の建設をPFIで整備することはやめるべき> 

日本のPFIは特別目的会社(SPC)を構成する会社の出資額に対して利益率を確定し、そこから逆算して事業費が設定されます。市は建設費と維持管理費をSPCにサービス対価として15年間で分割払いします。言い換えれば投資家は決して損をしないということです。日本のPFIはSPCの構成企業は株を投機対象として売買することはないので、投機目的でSPC株を売買する英国等のPFIとは異なるとの説明もあります。しかし、SPCの株が売買されるか否かは関係なく投資に対する配当を確保する仕組みは同じであり、SPCの投資額に対する利益は事業活動が生み出す利益ではなく、市民の税金をピンハネするとも言えるものです。言い換えれば「政府と民間企業のリスク分担が不公正である」ことなのです。今回の場合もサービス対価の考え方にもSPCの投資に対する利益を保障することが反映されています。物価変動や利用人数のリスクについて、SPCは損失を被らないことが保障されており、さらに施設利用料金、付属施設等利用料金、自由提案事業による収入、自主企画の収入が丸々収益となります。また利益を出すための再委託などで人件費が引き下げられ、低賃金構造が作られます。PFI事業で行うよりも直営でおこない、必要な事業を直接委託した方が効率的でかつ市民にとって財政負担が軽いことは本議案の事例を見ても明らかです。公共施設の整備はPFI事業として整備することはやめるべきです。

そのほか、須崎公園に隣接する県立美術館について、美術館移転後の施設利用について県と協議が進んでいないことも課題として残されています。

 

2、福岡市手数料改正条例案について

この条例案は行政手続きにおける特定個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部改正に伴い、通知カードの再交付手数料を廃止する等の必要があるとされています。

福岡市の人口は約160万人です。カード発行数は今年4月時点で24万2千枚ほど、約15%程度、6人から7人に1人しか持っていません。カード利用によるインターネット利用は今年度2ヶ月で750件、カード保持者の約0.3%の利用。昨年のカードを使ったコンビニ交付は8万件余、カード保持者の1/3程度、証明書等の交付には区役所や市役所本庁に来ればカードは特に必要はありません。本人確認も運転免許書や健康保険証でできます。特別定額給付金事業ではマイナンバーカード利用は手続きの簡便化どころか大混乱を引き起こし、郵送による手続きよりも大幅に遅れました。

国は通知カードの再発行をやめましたが、住民票からもマイナンバーは取得でき、そもそも通知カード再発行の制度設計が二度手間になっています。またマイナンバーカードはインターネット利用するためにはカードリーダーが必要な上、カードを使用するときには4桁の暗証番号を別に登録する必要があること、大人は10年毎、子どもは5年毎にカードの更新をしなければならないこと、また様々な証明書の交付手続きにはカードが必要ないことから、通知カードの再発行やカードの発行は非効率な業務で税金の無駄遣いであることは明らかです。マイナンバーは様々な個人情報を紐づけ、顔認証技術とAI技術と繋げば中国のような国民監視システムになります。カードを作る意味は少なく、カード保有することで紛失などのリスクの方が高いのです。通知カードの再発行をやめたことを機に、マイナンバーカードも廃止し、個人情報保護に予算を回すべきと質しました。

 

3、福岡市中央卸売市場業務条例の一部を改正する条例案について

この条例案は今年2月議会で市場外における売買取引の規制を緩和したこと等から市場施設の使用料の見直しと、新型コロナウイルス感染症拡大の防止のために売買取引の方法に「入札」を加えるとのことです。

中央卸売市場の使用料は市場建設の償却費と管理事務費等で構成されており、それらの費用から使用料によって賄うべき額を使用面積によるものと売上高によるもので構成しています。今回の改正は卸売業者の使用料における見直しは、売上高割を無くし、使用面積によるものだけにすると共に,鮮魚市場においては面積単価をならすとされています。同時に仲卸から徴収していた直荷引きの売り上げ高に課されている使用料も廃止するというものです。

規制緩和によって直荷引きや商物分離取引が出来るようになり、事業者の市場外流通が増えることが考えられます。市場外取引も含めた取り扱い量がふえると、使用料を面積割りだけにすることは事業者の負担が相対的に下がることになると考えられます。そこで危惧されることは中央卸売市場が公共施設として公的資金が多額に投じられているにもかかわらず、事業者にとって安価なデリバリーセンターに化すのではないかということです。入札方式が加われば更に市場本来のセリや相対取引が減少し、市場取引が空洞化することが危惧されます

新自由主義経済を進める政府の規制改革推進会議の「企業が自由に事業が行えるよう時代遅れの規制は廃止する」との提言を受け、卸売市場法が改正され、福岡市中央卸売市場業務条例も改正されました。これにより、第三者販売、直荷引きや商物分離取引が自由にdrきるようになり、また民間企業も中央卸売市場を開設できるなどの規制緩和が進められました。中央卸売市場本来の機能である、集荷および分荷、適正な価格形成、安心安全な生鮮食品の安定供給が崩れ、生産者の保護と市民生活の安定が脅かされる状況となっています。今回の使用料改正はこのような状況に拍車をかけるのではないかと危惧されます。市民生活や地域経済の重要なインフラである中央卸売市場の公的役割・機能が今後とも維持できる対策は執られているのか質しました。

 

一般質問

1、新型コロナウイルス感染症対策について

秋口の新型コロナウイルス感染症の第2波はインフルエンザと重なると考えられます。医師会および現場の開業医の意見を聴取の上、一般外来と発熱外来を分けること、発熱外来を区に1箇所設置することを求めました。

2月の福岡市の状況は2月20日に感染者が2名以外に感染者は出ておらず、全校一斉休校にする状況ではありませんでした。安倍首相は根拠もない思いつきで一斉休校を要請したことは国会答弁でも明らかです。子どもの影響や保護者への甚大なる影響、地域経済に対する影響を見ると髙島市政の誤った判断の責任は重いといえます。キチンと経過を点検し、同じような過ちを繰り返さないよう強く求めました。

文部科学省が3月24日に出した新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドラインでは,「子どもの居場所確保にあたり,児童生徒等に対して学校給食の調理場や調理員を活用して昼食を提供することも工夫の一つと考えられ,地域の実情やニーズに応じて対応を判断いただきたい」とされていました。長期休校状況に加え子ども食堂の閉鎖などがある状況で、居場所がない子どものフォローが出来ていたとはいえず、長期休校中において昼食がとれない子どもの把握や対策を求めました。

日本小児科学会が5月20日に出した「小児の新型コロナウイルス感染症に関する医学的知見の現状」では、「保育園の休園や学校の休校による子どもの影響が大きい」との指摘があります。秋口に来るインフルエンザと新型コロナウイルス感染症などとの複合的に発熱を伴う感染症が広がることが懸念されますが、休校の判断は子どもの利益を第一に考え、安易な一斉休校措置はしないよう強く求めました。

 

2、スーパーシティについて質問

今国会でスーパーシティ法が成立しましたが、これは国家戦略特区法の改正法です。スーパーシティは特区の指定を受けることで様々な規制緩和が受けられます。また、「Society5.0」の延長線上に進められており、AIやIoTを駆使して生活全般を支える「丸ごと未来都市」としています。福岡市で進めているスマートイーストも「Society5.0」を進めることでのまちづくりですが、スーパーシティとするためには特区の指定が必要です。

スーパーシティは通信システムとAIによる大量な情報処理により生活全般のサービス提供がなされます。その為には行政情報、個人情報、企業情報全てを運営主体が自由に使えるようするとしていますが、個人情報保護の視点から問題があります。また、スーパーシティでは情報通信の高度化が求められ、5Gが利用されると考えられます。5Gは30GHzの領域であり、直進性が強く150m~200m間隔で中継基地が必要なことから、中継基地数の増加、ミリ波でエネルギーも大きいこと、透過性が高いことなどから、5Gの電磁波による健康被害が危惧されています。

2019年5月カリフォルニア州サンフランシスコ市議会は公共機関による顔認証システムの導入を禁ずる条例案を可決しました。カナダ・トロント市では、スーパーシティは今年5月撤退になりましたが、地元では個人データや社会関連データを営利企業がどうやって収集し、どう管理するのかという点に疑問が噴出し、「監視社会のディストピア(暗黒郷)」と揶揄しています。利便性が強調されますが5Gの健康問題や監視社会へ大きな危険を伴うもので、本当に必要なサービスなのか全国民的議論が必要です。

 

3、自衛隊員募集のために18歳、22歳市民の名簿を提供したことについて

6月5日に福岡市は18歳、22歳の市民約3万人の個人情報を自衛隊に渡しました。提供を望まない市民は233人でした。個人情報保護審議会は目的外使用を認めるにあたり、提供を望まない市民は除外するように答申し、周知を求めていました。市はホームページに掲載、市政だよりに1回掲載、公民館および高校・大学にポスターの掲示などを行ったとしていますが、コロナ禍の中で周知が徹底したとは考えられません。

そもそも個人情報保護法および福岡市個人情報保護条例では「本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められる場合は」公益上等の必要があっても個人情報の提供を禁じており、福岡市は該当する市民に権利利益を侵害するおそれがないことを説明する責任があります。自衛隊は海外派兵で戦闘に巻き込まれる可能性があるなどの説明をしたのか。またコロナ禍で高校や大学は休校の上、市政だよりやホームページを見ている市民は2割程度という状況で、権利を擁護するために十分な説明・周知をしたと言えるのか質しました。

自衛隊に名簿提供する際に交わした協定書において、使用目的について「自衛隊員および自衛官候補生の募集に係る事務」とされて、2月7日の個人情報保護審議会目的外利用等審査部会では「ポスティングのため」と説明されています。市と自衛隊との協定書に記載されている目的外使用の禁止、複写・複製および第三者提供の禁止、委託の禁止、個人情報の適正な管理、業務終了後の廃棄、有効期限について、市はどのように確認するのか質しました。

個人情報保護は基本的人権です。自衛官募集という業務員募集に市民の名簿を渡すことに公益性はなく、名簿提供をやめるよう強く求めました。