2020年2月議会報告

Pocket

主な議案は➀国の補正予算による子育て支援の増額、プレミアム付商品券事業の減額、年度末の調整に関する補正等の補正予算案、➁国民健康保険財政調整基金の設置条例案、➂中央卸売市場業務条例の一部改正案、➃人工島の土地処分、➄市営住宅建設工事契約、➅小学校校舎の買い戻し、⑦道路の認定等でした。

 

議案質疑

1、プレミアム付商品券事業について

今回のプレミアム付商品券事業は、消費税10%引き上げによる負担の軽減のために、非課税者の方と子育て世帯に一人当たり最大2万5千円のプレミアム付商品券を販売するというものです。利用者は2万5千円の商品券を購入するためには2万円を支払う必要があります。実績を見ると対象者は約35万人でしたが、購入希望者は13万5,143人ということで予定者の約39%、1月24日時点での購入額は予定額87億5千万円に対して約20億3千万円で約23%、利用期限の3月末日までの見込額は約35億円,約40%となっています。この結果について、販売した商品券約20億3千万円の内約7割が使用されているので、地域における消費喚起・下支えになっているとしていると答弁しています。しかし、総務省の家計支出調査では11月前年同月比マイナス2.0%、12月前年同月比マイナス4.8%となっており、消費税引き上げによる買い控えの状況が明らかです。
1999年に子育てを支援し、年金受給者や低所得の高齢者の経済的負担を軽減することにより、個人消費の喚起と地域経済の活性化を図ることを目的に発行された地域商品券は、経済企画庁の調査では振興券によって増えた消費は振興券使用額の32%、残りの68%が貯蓄に回わされたり、振興券がなくても行われた消費に使われたということでした。また、2014年度国の補正予算に盛り込まれた、地方の消費喚起等を目的とする地域住民生活等緊急支援のための交付金を活用した「プレミアム付商品券」は、ある程度の消費刺激効果は実感されたもの、一時的な消費増で翌年以降の消費支出は下がっています。

今回のプレミアム付商品券の購入が進まない背景は、収入が増えない中で物価上昇が見込まれ、商品券を購入する資金がないことや将来への不安から購入を控える生活者の実態が見えています。そもそも、消費税引き上げで消費が落ち込んでいるのにプレミアム付商品券を購入する余裕はありません。アベノミクスが破綻しており、消費税引き上げが更に市民生活悪化に追い打ちをかけていることが見て取れます。国に消費税引き下げを求めると共に、地方経済を立て直すために税源移譲を求め、地方の自主財源を増やすべきと市に質しました。

 

2、国民健康保険財政調整基金条例案について

福岡市国民健康保険財政調整基金条例案上程理由として福岡市の国民健康保険事業の財政の安定に資する為としていいます。財源は2019年度国民健康保険特別会計の黒字額21億円を充当し、運用益と特別会計に黒字が生じれば充当するとしています。国民健康保険事業はこの間,累積収支が黒字です。このような状況において国民健康保険事業を安定化するために基金を設置する背景には、国が医療費削減策と共に自治体に法定外繰り入れ削減を強要することで被保険者の負担増を求めていることにあります。福岡市においては法定外繰入17億円が対象とされており、6年間で法定外繰入をなくすことが求められています。法定外繰入削減計画を策定しない場合や計画達成状況によって国費の交付額が削減されるということです。これは、地方自治を侵害するものです。

国民保険加入者は退職者など高齢者が増え3割を占め、また非課税所得者が約5割、所得割保険料を負担する世帯の約7割が所得額200万円以下となっていることから、所得割負担者の負担がより重くなる構造になっています。消費税が引き上げられ、生活は一段と苦しくなっていく中で、年間2千円の負担増は重く保険料値上げには賛同できません。今回の財政調整基金設置の背景にある国の法定外繰り入れ削減強要による非被保険者への負担増は認めることはできません。地方自治の本旨は「住民の福祉の増進を図る」ことであり、住民の生活向上を図る一般会計からの繰り入れに関して削減を強要することは、地方自治を侵害するものです。国に異議を申し立てるべきと質しました。

国民健康保険は構造的に破綻していることは明白であり、人頭税である応益分を国が負担すべきです。また、国民健康保険加入者は低所得者が圧倒的に多く、消費税引き下げを国に求めると共に、国民健康保険等福祉施策の財源として所得税や法人税等を抜本的に見直すことを国に求めるべきと市を質し、議案については反対しました。ました。

 

3、中央卸売市場業務条例の一部を改正について

条例案上程の理由として卸売市場法の一部改正に伴い中央卸売市場の業務に関する事項について所要の改正を行うとしています。卸売市場法は「適正かつ健全な運営を確保することにより、生鮮食料品等の取引の適正化とその生産及び流通の円滑化を図り、もつて国民生活の安定に資することを目的とする」されています。

今回の改正では1点目が,中央卸売市場の開設は国が定める一定の要件を満たしている者に対し開設の法的効果を与える「認可制」から,高い公共性を有し公正・安定的に業務運営を行うことができる者に対し中央卸売市場の開設を認める「認定制」に改められます。2点目は,生産者保護の仕組みを維持した上で,中央卸売市場における第三者販売,直荷引きや商物分離等の取引について,法による全国一律の規制が廃止されました。これにより,市場ごとの特性を活かした柔軟な取引を可能にすることで,市場の活性化を図ることが期待されるとしています。

まず、「認定」制度に変わることで卸売市場改正に民間事業者の参入も可能となります。施設の規模が一定以上で、国の定める要件に適合した場合、地方自治体に限らず、法人が開設する卸売市場も中央卸売市場として認定するとされ、民間大企業による中央卸売市場の開設も可能になり、公設市場の民営市場化が促進される可能性があります。安倍政権下での官邸主導での農業破壊および食生活の破壊に繋がるものと言えます。
次に、生産者保護の仕組みを維持した上で,中央卸売市場における第三者販売,直荷引きや商物分離等の取引について,法による全国一律の規制が廃止されことで、卸売市場の競争と再編にも繋がります。また、卸売市場における第三者販売、直荷引きや商物分離などが可能となることで、卸売業者や仲卸業者と大手のスーパーや外食産業との直接取引が拡大すると考えられます。これにより買い手の力が強くなることで、買いたたきが起こり、市場で「公正な価格形成ができなくなる」懸念や、スーパーなどの大手事業者の購買力が強まることで生産者価格の低下にも影響し、農業にも影響を与えると考えられます。また、卸が間に入り、商取引は市場が行うが、物品は大型産地、輸入商社、冷凍業者が市場を通さずスーパーなどの大手事業者への直接出荷が増大することで、これまで卸売市場を支えてきた中小の仲卸業者にとって、卸売市場での生鮮食料品の購入が困難となり、仲卸業者に依存していた専門小売商、料理店、すし店などの買出人の仕入れを困難にし、その営業にも大きな影響を与えることになると考えられます。
 中央卸売市場は市民生活および地域経済の重要なインフラです。条例案では「卸売業者は市場内で安定的に卸売を行い、仲卸業者は市場内で安定的に買い取る」ことを責務としているので、これまで述べた懸念はないとしています。しかし、今回の法改正は、規制改革推進会議による「企業が自由に業務を行えるように時代遅れの規制は廃止する」という提言を受けて卸売市場の規制緩和を進めるもので、国はこれまでも輸出を奨励し、TPP、EPAなど自由貿易協定を推し進め、卸売市場の規制緩和を進めてきた経緯があります。
この様な規制緩和の先には、福岡市中央卸売市場の民営化が将来あり得ます。また、今回の条例改正は、中央卸売市場が生鮮食料品の需給調整と価格形成、食品衛生検査員の派遣など市民への食料供給の安全性の確保という公的役割が担保できるのか懸念されます。この条例案は反対しました。

 

その他

4、議案第19号、20号人工島の土地処分について、

議案第19号の土地売買契約は2016年3月4日に立地交付金の認定申請を行い同年4月14日に認定、同年4月22日に土地売買契約締結に関する協定書を締結、議案第20号の土地処分は2016年2月15日に立地交付金申請を行い、同年3月31日に認可、同年4月26日に土地売買契約締結に関する協定書を締結、されています。2016年3月31日にまでに立地交付金申請すれば立地交付金改定前の土地代の30%、建築物の10%が助成されため、土地処分を進めるために異様な駆け込みで申請したものです。その異様さは契約が認可後4年も経過していることに見て取れます。更に処分価格は議案第19号は1平米当たり117,072円、議案第20号は1平米当たり112,122円と埋立原127,000円を下回る価格となっており、その価格は4年間据え置きとなっています。

この立地交付金は一般会計から支出され、本来保育、教育、介護など市民生活の質の向上に使われるべき財源です。「都市の成長」として使われた税金によって市民生活が向上しているのか、市民経済計算を見ても非正規雇用は増え雇用者所得は増えておらず、トリクルダウンが起こっていないことは明らかです。消費税10%に引き上げられたことで、市民生活は一段と苦しくなっており、この様な事業は認めることは出来ません。この議案は反対しました。