2019年決算特別委員会報告

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総会質疑

1、外国人との共生社会について

福岡市は2019年時点で36,673人の外国人が住んでいます。多い順では1位中国、2位韓国又は朝鮮、3位ベトナム、4位ネパール、5位フィリピンとなっています。その内、福岡市在住の「技能実習」の在留資格を持つ人数は1,579人(令和元年8月末現在)、福岡市在住の「留学」の在留資格を持つ人数は13,336人(令和元年8月末現在)です。在住外国人の支援は主に「福岡市外国人総合相談支援センター」(福岡よかトピア国際交流財団)が行っています。今年4月から新たな在留資格制度が始まり、特定技能1号は14業種(介護,ビルクリーニング等)で在留期間は通算上限5年まで、特定技能2号は2業種(建設,造船・舶用工業)、在留期間は上限なし・家族も呼べる(更新が必要)となっています。今後増えるとみられる在留が個人の支援のために「外国人総合相談窓口」の設置が政令市には義務づけられています。福岡市は「福岡よかトピア財団」に委託しています。

今後在留外国人が増えると考えられ、外国人との共生社会が求められています。2016年に法務省が公益財団法人人権教育啓発推進センターに委託して行った外国人住民調査報告書によれば過去5年間に住居を探して外国人を理由に断られた人は約4割、仕事を探したり働いたりした経験がある人の内、外国人であることを理由に断られた人は4人に一人、外国人であることを理由に侮辱されるなど差別的なことをいわれた経験を持つ人は約3割となっています。誰に言われたかは、「見知らぬ人」53.3%、「職場内、取引先」38.0%、「近隣住民」19.3%、「公務員や公共交通機関の職員」12.9%となっています。この数字を見ると根強い人種差別があり、特に公務員や公共交通機関の職員から12.9%もの差別的な発言があることは極めて深刻な事態であり福岡市の考えを質しました。福岡市は,「福岡市人権教育・啓発基本計画」に基づき,人権尊重の視点に立った行政を推進しており,毎年度,全職員に対し職場単位で人権研修を実施するとともに,局部長級の幹部職員研修をはじめ,各階層別の研修を実施するなど,職員の人権意識の向上及び資質向上に努めていると答えています。

今後在留外国人の増加に伴い外国人の子どもが増えると考えられますが、言葉の支援や生活習慣等に関する支援はどのような体制を検討しているのか、また、外国人籍の未就学児童が全国で約2万人程度いるとされていますが、福岡市は把握しているのか、福岡市に対応を質しました。福岡市では,「外国籍の児童生徒など日本語の指導が必要な場合の支援として,日本語の初期指導や授業に参加できるための日本語指導などを実施する特別の教育課程によって,日本語を学ぶことができる「子ども日本語サポートプロジェクト」の体制を整えている。日本語を専門に指導する担当教員が学習に関わるとともに,児童生徒に,日本の文化や生活習慣などについても伝え,生活面での支援も行っている。就学意思を示されていないなどの理由で具体的な状況を把握していない児童生徒は129人いるが,外国人児童生徒の保護者には就学案内を行っている。」と答えています。全ての子どもを支援するために、待つのではなく積極的に訪問するなどの対応を求めました。

今年10月1日から「幼児教育・保育」の無償化が始まりました。しかし鮮学校・保育部および他の外国人学校が「幼児教育・保育の無償化」の対象になっていません。これは国際人権規約、人種差別撤回条約、子どもの権利条約など、日本が批准している国際的に違反しており、各民族の伝統・文化を保持することは基本的人権であり保障されなければなりません。国のこの様な措置は人種差別であり、基本的人権を侵害しています。地方自治体の本旨は住民の福祉の増進を図ることであり、住民とは福岡市で生活する在住外国人を含めた全ての住人です。朝鮮学校等外国人各種学校にも福岡市として支援することを求めました。

2016年に「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が制定されましたが、ヘイトスピーチや排外主義が福岡市でも相変わらずなくなっていません。このことに対して市としてヘイトスピーチ禁止条例制定についての考えおよび排外主義を煽る団体に対する対応を求めました。グローバル化し、新たに在住資格が拡大しており、外国人との共生社会をつくることは避けられません。しかし、根底にある人種差別を解消しなければ共生社会はつくれません。それは日本人に同化することを強要することではなく、それぞれの歴史と文化を認め合いながら共に社会を構成する一員として生きていける社会です。技能実習生や留学生、新たに在住許可基準の特定技能者、加えて在日韓国・朝鮮など戦前からの特別在留資格者、更に結婚などで来日した方、その二世など多様な外国時が在住しています。全ての在住外国人が日本人と同じく処遇されるためには、人種差別をなくす取り組みと、ワンストップの総合相談・支援体制をつくることを求めました。また、人種差別撤廃を実現するために人種差別を助長する活動を規制する条例をつくること、同化を強要するのではない外国人との共生を実現させる条例を作ることを求めました。

 

2、生活困窮者支援について

2013年に生活困窮者支援自立支援法が成立しました。生活困窮者自立支援法についてはメニューも拡充され、それなりに取り組みが進んでいると考えられます。しかし、貧困問題は様々な角度から見ていく必要があります。福岡市では、生活保護の見直しに併せて就学援助の対象が削減されました。その結果、給食費未払い者の家庭は就学援助ボーダーライン周辺の家庭が多いのではないかと推察されます。就学援助は生活保護費を基準に設定しているので基準引き下げても問題ないとし、未払い者の個別の生活状況を把握していません。個別事情が把握できなければ支援は出来ません。子どもの貧困を解消するためには、少なくとも就学援助の対象を拡大すること、また全ての児童の給食費を無償にすることを求めました。生活困窮者自立支援には様々な情報からアウトリーチを行う必要性を国も訴えています。福岡市としても他のセクションとの連携を取りアウトリーチの取り組みを進めるべきです。

次に、1人親世帯の貧困率は極めて高く、母子家庭の貧困率は50%を超えています。ひとり親家庭の支援の事業の過去3年間の決算を見ると年々減少しています。近年相対的貧困率は下がっていますが、これは非正規雇用が増え基準となる中位所得額が低下したことによる相対的な数字の低下であり、実態は貧困と格差が広がっています。福岡市の調査では母子家庭の平均年収は251万円、200万円未満の家庭は45%、300万円未満は72%となっています。生活上の悩みは生活費68.5%と最も多く、子どもの教育・進学が大きな心配となっています。従たる収入は児童扶養手当で、離婚の場合の養育費を受けている家庭は少ない。また住宅に対しては家賃が高い、狭い、古いなどの不満を持つ家庭は70%となっています。そこで、ひとり親支援事業として、➀養育費をきちんと受けられる仕組みを作ること、➁支援事業として住宅補助制度を作ること、➂高校・大学等進学等の給付型奨学金を検討すべきではないか、④他都市では児童扶養手当が4ヶ月毎になっていることを解消するために貸付制度を活用し毎月支給にしていますが福岡市でも検討すること、➄家事の担い手は90%近くがひとり親であり、日常生活支援事業の拡充を求めました。

※相対的貧困とは可処分所得が中央値の1/2以下の世帯

次にひきこもり支援について質しました。厚労省はひきこもり支援として生活困窮者自立支援制度との連携を通知しています。とりわけアウトリーチを求めています。決算を見ると事業費は頭打ちと言える状況です。ひきこもり支援の対象も広がっており、生活困窮者自立支援法との連携やアウトリーチの取り組みを充実させ、事業費を拡充し、人的体制を拡充することを求めました。

次に生活保護について質問しました。国の標準配置数は,1ケースワーカーあたり80世帯であり、ケースワーカーが増えたといっても未だ100世帯近くを担当しています。これでは十分な支援が出来るとは考えられません。小田原市では職員による差別事件を検証し、生活困窮者に寄り添える職場に変えるために80世帯の配置基準にしました。福岡市においても80世帯にすべきです。また、ケースワーカーは経験が必要な業務です。経験年数が3年未満は77%です。市民の生活の質を向上させるためには職員の力量アップが必要ですが、この様な職員配置の在り方に問題があります。生活保護は憲法25条にあるように国民の権利であり、生活保護受給に対する屈辱感を与えることは人権侵害です。生活保護受給資格者の二割しか受給しておらず、生活保護受給者に対する差別をなくしていくことが必要です。

この質問の最後に奨学金について質問しました。生活困窮者の負の連鎖を絶ち切るために教育の保障が重要とされ、国の取り組みも一歩前進しています。全ての奨学金は給付型にすべきであり、また現在負っている奨学金の返済についても減免すべきです。北九州市では企業と共同の取り組みで、地場企業に就職と定住を条件に3年間最大54万円を支援するとしています。国に奨学金の給付制度と減免制度を拡充するよう要請すると共に、福岡市の高校生の奨学金を給付型にすることおよび福岡市としても減免制度について検討することを求めました。

 

3、住宅政策について

市営住宅の争率は10倍を超えているにもかかわらず市営住宅数は変わっていません。住宅は生活の基盤であり、市営住宅を増設し、安価で良質な住居を提供する責任が市にあります。市営住宅入居者の収入状況は全体の8割の方は「収入分位1」の低所得者です。滞納者は減少傾向にあると言え毎年1300世帯、3.5%ほどおられます。滞納者の収入が生活保護基準以下であれば生活保護申請をすることで退去しなくてよくなります。失業であれば生活困窮者自立支援法の手続きすれは当面の住居費は交付されます。生活困窮している場合は必要に応じて家賃減免の他生活自立支援センター等の案内を行っていると答えています。しかし、退去者が毎年30~40世帯ほどいるということは、退去に至る前の支援措置が十分とは言えません。

次に、市営住宅では若者単身世帯は対象になっていません。非制雇用が増える中で所得が伸び状況で若者が自立するためには若者の単身世帯も対象とすべきです。また、若者支援として、生活困窮者自立支援法等他の制度との連携を求めました。

住宅セーフティネット法が改正され支援体制が整備されることになりましたが、まだ機能しているとは言えない状況です。要支援世帯は全ての団塊の世代が75才を迎える2025年には3万7千余世帯と見積もられています。とりわけ低年金世帯、単身または二人暮らしの高齢者世帯が増えると考えられます。また、新在留資格による外国人の増加、非正規雇用が全雇用40%を占める状況、一人親世帯が増える傾向を見ると、居住支援と共に、生活支援が必要であることは明らかです。市として生活困窮者および住宅確保要配慮者の支援はワンストップで生活全体をカバーして実施すべきです。住居は福祉の基盤です。住居の確保と就労支援、生活支援を連携させていくことが必要です。今求められていることは、縦割りの壁を越えた総合的な生活支援です。市営住宅の戸数の拡大と住宅セーフティネット法の拡充と活用、他の政策との連携強化を求めました。

 

2019年決算特別委員会意見開陳

先の台風15号、19号と東日本は甚大な被害を受けました。被災された皆様にお見舞い申し上げますと共に、亡くなられた方にご冥福を心からお祈り申し上げます。

今回の立て続く巨大台風による災害は、日本近海の海水温度の上昇によるものです。日本近海の海水温度は100年で1.12℃上昇し、台風の巨大化と日本各地に豪雨をもたらしています。また、日本の平均気温は100年間で1.19度上昇しており、2100年には福岡市の夏の気温は41.9度にもなるという環境省の予測も出されています。世界各地では異常気象による災害は激化しており、地球温暖化はもはや危機的状況にあります。地球温暖化の主たる原因は温室効果ガスによるもので、温室効果ガスの4分の3を占める二酸化炭素の大気中濃度は上昇し続けています。この二酸化炭素の大気中濃度を抑制・削減するには化石燃料の使用を削減し、脱炭素社会を実現しなくてはなりません。しかし、日本政府は脱炭素社会に向けて明確な施策を示すことは出来ず、むしろ石炭火力発電所の新設を進めています。ドイツでは2038年に全ての石炭火力発電所をなくすことを決めています。国連事務総長も日本政府に石炭火力発電所の新設をやめるよう求めています。福岡市は、地球温暖化は危機的状況にあるという認識の下、日本政府に石炭火力発電所新設をやめるように要請すべきです。また福岡市は九電にも電源開発松浦発電所などの石炭火力発電からの電力購入をやめ、再生可能エネルギーを優先的に買い取ることを要請すべきです。

福岡市は脱炭素社会に向けて、再生可能エネルギー利用推進や省エネ対策などの取り組みを提起していますが、根本的な問題として高島市政が進める「都市の成長」が脱炭素社会を大きく阻害しています。100年間における日本の平均気温の上昇は1.19℃ですが、福岡市は3.1℃となっています。それはなぜなのか、それは都市の無秩序な再開発による街のコンクリート化と緑地の減少、そして博多湾の埋立による海面の減少や河川空間の減少などによるヒートアイランド現象が激化しいることにあります。都市の気温上昇は空調などのエネルギー消費量を増加させます。加えて福岡市の一極集中による人口流入は、エネルギー消費を増させ、自動車等による二酸化炭素排出量の増加を招きます。2018年度決算においても、都市の成長に重点的に投資をしており、エネルギー消費量の増加と無秩序な都市膨張による様々な弊害が生じています。経済成長優先の政策は、地球環境が危機的状況にあるにもかかわらず有効に対処できない構造をつくっているのです。地球温暖化防止対策として、都市の成長路線は転嫁されるべきです。

また、高島市政の都市の成長政策は、格差と貧困を拡大させている安倍政権の下、「住民の福祉の増進を図る」という地方自治体本来の目的に反するものです。相対的貧困率は下がったといわれていますが、相対的貧困率の基準となる中位所得が下がり続けていることによるものです。2018年度の国民生活基本調査で平均所得以下が62.4%と拡大している事からも格差と貧困が広がっていることは明らかです。福岡市市民経済計算の数字を見ても、雇用者報酬は髙島市長就任以降ほぼ頭打ちとなっており、物価上昇を考えると国と同様に実質的な所得は減少していると言えます。

2018年度決算では一般会計は99億7千万円余の実質黒字となっています。しかし、教育、子ども支援、障がい者の支援の現場では人が足りなく、また、専門職は非正規雇用が多いため制度があっても機能しない状況があります。来年度から会計年度任用職員制度が始まります。非正規職員の身分が保障されることでのメリットがありますが、他方、会計任用職員制度は4回までしか更新が出来ないために専門職としてのキャリアアップが出来ない構造が固定化されます。制度が機能するためには、人工島事業、中央埠頭再開発、天神再開発など「都市の成長」に優先的に投資するのではなく、市民の暮らしを支えるために、専門職の増員と正規職員を増やすなど人への投資を優先しなければなりません。財政健全化の原資は「都市の成長」への投資を抑制することで捻出するべきで、市民を犠牲にするべきではありません。人への投資こそが需要を生み出し、経済の活性化に繋がります。高島市政が妄想するトリクルダウンは起こらないし、起こっていません。

また、2018年度の決算では特別会計は実質黒字が59億4千万円余となっています。国民健康保険、介護保険、後期高齢者保険は、前年度黒字になっているにもかかわらず負担軽減はされない結果再び黒字となっています。2019年10月から消費税は10%に引き揚げられました。市民生活は一段と厳しくなっています。2018年度の黒字は市民の負担軽減に使うべきです。

最後に、今年10月1日から「幼児教育・保育の無償化」が実施されました。地方自治の本旨は住民の福祉の増進を図ることです。住民とは福岡市で生活を営む在住外国人も含めた全ての人です。全ての子どもとは在住外国人を含めた福岡市で暮らす子どもです。安倍政権が「幼児教育・保育の無償化」の対象から外国人の各種学校を外したことは排外主義そのものであり、福岡市が政府の政策を追認することは地方自治に反する行為であり、日本国憲法が保障する基本的人権を否定し、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約など国際条約にも反します。福岡市は地方自治の本旨に則り、福岡市に暮らす全ての子どもに公正な支援措置を執ることを強く求めます。

以上、2018年度決算は市民の暮らしを犠牲にした黒字決算であり、認定することは出来ません。