教育こども委員会調査報告

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2019年7月23日(火)~25日(木)

23日(火)さいたま市

調査目的:さいたま市子ども家庭総合センター“あいぱれっと”の調査

2018年4月オープン、中学校跡地に整備

〇1F:ぱれっとひろば

・子ども・青少年の居場所(学習室・ダンススタジオ・バンドスタジオ)、ぱれっとひろば(親子の遊び場)、なんでも若者相談(市職員、相談及び居場所、18才~39才を対象)、子ども研究センター(市内保育園協会・幼稚園協会で構成する研究会)

・維持管理は指定管理者に委託。委託料年間1億3千万円、1Fフロアーの維持管理および“ぱれっとひろば”の企画・管理運営を委託。

・指定管理者は“ぱれっとひろば”に子どもコンシェルジュ14名(資格あり)配置。子どもコンシェルジュが親子の遊びの状況を見て声掛けを行い、問題があれば同じフロアーに設置している子ども何でも相談(市の職員)を紹介、ここで解決できないときは4Fの職員につなぐ。

・屋根付運動場“冒険はらっぱ”などの広場はできるだけ禁止事項をなくして子供が自由に遊べるようにしている。指導員を3人を市が直接委託。委託料は年間1000万円。

〇3F子どもケアホーム(児童心理治療施設)

・対象は思春期の子ども、精神的治療を兼ねた自立支援施設。原則18歳まで、20歳まで延長が可。その後は継続的な相談窓口として利用ができるようになっている。

・入所施設定員10人(男子5名、女子5名)、女子ユニット5名が入所、男子ユニットは専門職の職員が見つからないため現在はゼロ。募集中。

・通所定員20人。

 

〇4F:児童相談所、他関係機関

・関係部署を集中してワンストップで対応できる。暴力的な親に対応するため警察より1名出向してもらっている。

・260人(正規170人、非正規・臨職90人)

・入所関係機関

子ども未来局子ども家庭総合センター、子ども家庭支援課

市民局男女共同参画相談室

保健福祉局こころの健康センター

教育委員会総合教育相談室、あいぱれっと教育相談室、不登校指導教室「あおぞら」

 

〇そのほか一時収容施設

定員44名。所在地は秘匿となっており、親と遭遇をしないように出入口はわからないように別に設置されている。

 

所見

児童館機能及び子ども・若者相談関係機関をまとめて配置することで、ワンストップの相談・支援活動が出来る仕組みにしている。また、対象を18才未満ではなく39才までの「若者」も対象としており、継続的な支援体制が出来るようになっていると思われた。自立支援施設との連携やひきこもり支援組織との連携が出来れば更に機能が充実すると思われる。

 

24日(水)武蔵野市

調査目的:武蔵野市企業型保育園の取り組み

・武蔵野市の人口は14万6千人余、7万7千世帯余。

・人口密度は日本で2番目に高い、13,356人/㎢

・財政規模:一般会計約670億円

 

○市内保育施設

※認証保育所:東京都が無認可保育所に対して都が基準を作り支援をしている。

 

○武蔵野市の支援

・年1回の市主催の連絡会実施

・補助金の交付

保育士等キャリアアップ補助金(常勤者が対象、保育士だけでなく調理士や栄養士なども対象)

保育士等宿舎借り上げ支援事業補助金(1名分)

保育士補助者雇い上げ強化補助金

第三者評価受審補助金

・窓口相談者に対する企業主導型保育園施設の情報提供

・保育施設全体研修への参加案内

・認可外保育施設職員研修

 

○企業主導型保育の課題

・設置自治体に事前相談なく解説できるため、自治体は開設後に把握することになる。武蔵野市の場合は事前相談がおおむね行われている。

・利用者からの施設への意見・要望への自治体の関与ができない。武蔵野市は補助金を交付することで関与できている。

・近隣自治体に設置する施設との連携がむつかしい。通勤の都合上隣接する自治体の施設を利用する市民の把握ができない。

・企業主導型保育園は0~2歳児を対象としているものが多く、卒園後の3歳以降の受け入れの確保に課題がある。武蔵野市には私立幼稚園が12か所あるが、入園者は減少傾向。地域型保育園や認可保育園との連携で受け入れ対策が必要となっている。

 

※企業主導型保育園は企業が自己事業所職員児童対象及び一般市民の児童対象に企業が保育園を設置すると、国の認可を受けると国から助成を受けられる。定員は企業枠と一般枠が1:1となっている。

 

藤村学園企業型保育園視察

○藤村学園企業主導型保育園

・藤村学園は女子中・高校学校法人、水泳教室も経営。水泳、ソフトボールなどが有名。

・教職員及び水泳教室スタッフ等の子供や周辺の事業所との連携による事業所職員の子供を対象に2017年に設置、

・定員18名 (企業枠9名、一般枠9名)0歳から5歳を対象、現在3歳まで

・職員は常勤9名、非常勤職員25名、看護師を1名常勤(現在産休で3名の非常勤による体制)。女子中・高の学校法人という特性を生かして保育士を確保。保育科はないが、保育を目指す子もいてボランティアで手伝っている。

・施設は学生の合宿施設を改装。学校なので、保育園の運動会は体育館で実施、グランドを学校が使っていないときは子供の遊び場に使用

・藤村学園は企業主導型保育園を設置するにあたって、地域の事業者との連携、市との連携を図ってきた。藤村学園が主導し、市内の企業主導型保育園全8保育園をまとめて、情報交換や共同の研修会を藤村学園の施設を使って行っている。運動会も共同で実施。

・保育園の施設整備については、国が模索中の状況でもあり、認可保育園と同等の整備を心掛けている。

藤村学園企業型保育園

 

所見

企業主導型保育園は自社枠の充足と一般枠の充足とをうまくやらなければ、安定的な保育士の確保など経営的には成り立たない。また、0~2歳児までが多く、3歳児以降の受け皿の問題がある。武蔵野市では藤村学園が地域に貢献することを念頭に、他事業者や市との連携を積極的に図ることで保育の質を落とさずに運営できているようである。また、武蔵野市も様々な支援の補助制度を設けることで事後的にしか把握できない構造の中で事前相談を受けることが出来るようにし、市としての介入と藤村学園を中心として他の企業型保育園間の連携を支援することで保育の質の向上を図っている。企業型保育で問題となっている。保育を自社の収益事業と考えて開園し破綻しているケースが多く出ていることや、園児を確保できず本来の待機児童解消にあまり役立っていない現状がある。福岡市もこの武蔵野市の事例を学ぶことは、待機児童解消と共に保育の質の向上を図ることに大いに役立つと思われる。

 

25日(木)仙台市

仙台天文台調査

調査目的:福岡市立科学館の運営に資するための調査

○事業概要

・1955年に東北大学加藤教授が市民に募金で望遠鏡を購入し、市民天文台を開設。翌年仙台市へ寄贈。その後2008年に現在の土地に移転。街中の光の問題で移転。現地は当初学校用地に予定されていたが、合併後旧宮城町地区は文化施設もないこともあり現地に移転。

・主な施設は、展示室、プラネタリウム、ひとみ望遠鏡、小規模な会議室、屋上貸し望遠鏡、利便施設

・移転後の施設はPFI・BOT方式出整備。33年間の契約(3年間は設計・建設)

・維持管理及び企画運営は指定管理者(PFI事業者が受託)

・職員数は34人(学芸員の資格保有者および大学院修士課程修了者がいる)

・年間のサービス購入費709,877千円(2019年度予算)

初期整備分として   208,018千円

維持管理運営費として 501,859千円

計画より利用者が増えた場合はインセンティブとして別途支払われる。昨年は1500万円。

・仙台市の要求水準:天体望遠鏡業務、プラネタリウム運営、学校教育支援中学1年生は教科として全員参加、小学4年生(95%)、6年生(75%)は学校の取り組み)、天文学普及啓発業務、市民活動の支援、施設の維持管理および企画運営、利便施設の運営など。

・水曜と第3火曜と年末年始が休館日

・2018年度入場者は30万人余、この間ほぼ同程度で推移

・施設及びプラネタリウム入場券、施設+プラネタリウムのセット券、年間パスポート券(利用者が増えている)

 

○天文台としての業務

・望遠鏡等の購入費6億円:ひとみ望遠鏡(1.3m反射望遠鏡)、貸し出し用望遠鏡6台(40㎝(反射)、15㎝(屈折)、18㎝アストロカメラ(反射)、25㎝アストロカメラ(反射)、15㎝大型双眼鏡2台)

ひとみ望遠鏡は三階に設置し、観測を指導。(晴天であ

れば昼間でも星を見ることが出来る)

・東北大学が高校生を募集してひとみ望遠鏡を使って天文観測の授業を行っている。全国から20名募集。

・利用状況は小中学校35,348人、一般14,582人(2018年度)

・貸し出し用望遠鏡は2階屋上に設置し貸し付け。貸し付けはウェブで予約し、22時30分まで開館。機器の更新は5年毎に修理、回収、備品交換をする

・ひとみ望遠鏡は15年目に更新であったが10年毎の点検更新を行うことにしている。2011年の地震でひとみ望遠鏡の被害が出たため反射鏡を付け替えたので移転後11年になる今年はしていない。ひとみ望遠鏡の土台は地下5メートのコンクリートの土台となっており、望遠鏡周辺の床と揺れ異なったために望遠鏡周辺の回線に被害が出た。

・望遠鏡のメンテナンスはSPCの関連会社であるNTTファシリティーズが行っている。

ひとみ望遠鏡

○プラネタリウムの運営

導入費5億円(椅子等の設置費は除く)

ドーム直径25m(福岡市は同じく25m)、座席数280席(福岡市は220席)

デジタル式投影機、立体音響システム。(福岡市とほぼ同じシステム)

15年目に更新。メンテナンスはPSC関連会社の後藤光学機器が行っている。

利用状況は小中学生35,384人、一般108,447人

 

所見

仙台天文台は「市民の天文学公民館」と謳っているように、市民の天文学との交流拠点として特化している。授業の一環としていることで福岡市に比べて小中学生の利用が多い。他方、交通アクセスが悪い為に一般利用が伸びない。しかし、市民天文台としての特異性が利用者をそれなりに維持しているようである。福岡市の科学館も九大との連携やデジタル画像に頼らない独自性が求められる。

 

○仙台市立荒浜小学校

調査目的:教育施設における防災について

・荒浜小学校は震災津波跡地として保存展示することで津波の被害を伝え、今後の防災に役立てることとしている。当時の写真の展示や当時の体験者の記録を映像でつたえるなど、学習の場にしている。

・地震当時在校の小学生91人、教職員及び近隣の避難者320名は全員助かった。

・防潮堤と防風林を超えてきた14m津波は海岸線と並行して開設されていた仙台藩の貞山堀で勢いがそがれ、小学校に到達したときは4m程度になり2階の床までとなった。また、2003年に耐震工事が終わっていたこと、校舎の向きが南向きで津波と直角の位置であったこと、児童数が少ない割に4階建てであったことが幸いした。

・校舎は保存すると共に、海水浴場など近隣利用者の避難場所にもしている。600名の避難が可能としている。

・津波は仙台市若林区の高速道路以東のエリアで被害を出している。仙台市は津波被害を受けたエリアを居住禁止区域に指定し土地を買い上げている。また、津波防止対策として海岸に設置される9mの防潮堤とは別に荒浜小学校側に6mの5千人規模の避難広場の造成、さらに6mのかさ上げ道路を県道に沿って造成することで、津波被害を高速道路までに押さえることとしている。

小学校東端、2階太平洋側からの津波被害の跡

所見

災害はどこでもいつでも起こることを前提に、日常的な避難・減災の取り組みの必要性を確認した。