補正予算案について
今議会に上程された補正予算の構造を見ると、決算が黒字になると見込まれ、剰余を福祉や保育士の処遇改善などには回されず、基金に積み立てています。この黒字は税収増だけではなく市民サービスの切り下げによって生み出されたものです。市民サービス向上に向けて、基金の積み立ては計画的にするとともに、喫緊の課題である障害者の支援や子育て支援とりわけ保育士の処遇改善に使うべきです。以上の理由から補正予算案を認めませんでした。
議案第17号福岡市早良南地域交流センターに係る指定管理者の指定について、及び議案第20号福岡市早良南地域交流センター整備事業に係る契約の締結について
この議案は佐和区南部地区に建設される早良南地域交流センターをPFIで行うというものです。早良南地域交流センターは20年来市民に待ち望まれたもので、事業が具体化することは大変喜ばしいことです。問題は、市民の声が反映されているのか、事業のあり方に問題は無いのかです。地域交流センターについては「子ども・中高生の居場所」を併設してほしいという多くの署名をもって請願が出されていましたが、市は「公民館等で「子どもの居場所」は確保できている、地域交流センターのホールに自習などが出来様なスペースを作る」などと答えており、設置しなかったことは今後の課題として残りました。また、PFIで行うということも問題です。
市はPFIでの発注により一括発注で建設費が安くなる、また民間ノウハウでサービスが向上すると言っていますすが、建設費は市の直接施工の場合の想定額の98%、維持管理・運営費はPFI事業にしない場合の指定管理方式の想定額の87.5%であり、これが本当に安くなったと言えるか疑問です。また、民間のノウハウを活用することでサービスが向上するとしていますが、事業をPFIでおこなう根拠にはなりません。建設については一般競争入札でやればもっと安くなると考えられます。
また、総合評価を見ると、それぞれの専門立場で評価した結果であると言っていますが、100点満点で見たとき、落札者は最高点で74.1点、最低点は38.5点となっており、評価に落差があり過ぎます。維持管理・運営についても建設とは切り離して提案公募すればもっと優れた提案がなされ、市民サービス向上になります。
PFI発祥の地である英国では、昨年英国会計検査院はPFIが公的な財政にプラスであるという証拠が乏しいと結論し、多くのPFIプロジェクトは通常の公共入札のプロジェクトより40%割高である、総体的に公的に資金調達されたプロジェクトよりPFIスキームは高くつく指摘しています。日本のPFIは議会においても詳細な比較検討が出来ず、極めて不公正な仕組みになっており、更に問題が根深いと言えます。自民党政権は公共施設・公共空間を企業の収益活動の場にすることで経済成長の柱とするとしていることに根本的な問題があります。
落札グループについて、SPCの代表である日本管財は以前問題を起こしたが現在はまじめにしているので問題は無い、また博栄建設も西中洲樋口建設グループですが法的に何も問題は無いと言っています。この福岡市の姿勢が問われているのです。日本管財の不正が監査委員会から指摘された直後のこども病院の入札に日本管財が応募したとき、市は何のペナルティも課さなかったばかりか、不正の事実が入札審査に加味されず応札を黙認したことは根本的な問題です。西中洲樋口建設も実質的には何のペナルティも課さない上に、グループ会社が応札・落札することは事実上西中洲樋口建設を擁護するものであり、市民感情としては納得がいかないものです。
議案第18号福岡市の区域内にあらたに生じた土地の確認について
あらたに生じた土地は人工島第3工区D岸壁のコンテナヤードとなる土地です。第3工区におけるD岸壁後背地の埋立は竣功したが供用開始時期は未定となっています。また、C2岸壁の延長は順調にいって3年後であり必ずしも見通しは明確になっていません。さらに、D岸壁の整備の見込みは明かになされていません。2016年港湾計画では博多港の取り扱い量は平成30年代後半には4,490万トンとなっていますが、2014年の取り扱い量は3,381万トン、2015年3,133万トン、2016年3,133万トン、2017年3,324万トンとなっており、30年代後半に4,490万トンになるとは考えられません。また、コンテナ貨物も2014年91.1万TEU、2015年87.4万TEU、2016年89.7万TEU、2017年92万TEUと頭打ちの状況です。その理由は福岡市の後背地である福岡都市圏及び九州各地は超高齢化・人口減少が始まっており今後需要が伸びる見込みがないことにあります。今議案に上程されているあらたな土地の供用に見込みがない状況およびD岸壁整備の見通しがない状況は、まさにこのような状況を示すものといえます。社会状況を無視し臨海部の再開発を進めるための誇大妄想の港湾計画は見直しが必要です。このまま認定することは出来ません。
議案第21号福岡高速道路整備計画の一部変更に関する同意について
この議案は福岡高速道路から人工島への接続道路の工事費用の見直しについて承認を求める議案です。これまでも当初の事業費250億円であったものが292億円に変更されています。今回有料道路事業として橋脚基礎工の工法変更や、橋梁上部工の構造部材の変更、安全対策の強化などにより50億円の増加、その結果約340億円に変更されます。これにより市の負担増は12億円となります。
そこで、まず橋脚基礎工の工法の変更が必要となった事由は何かを質問しました。事前にボーリング等地盤調査はなされていたにもかかわらず、着工した後に転石が多数あるとして工法を変更するというものです。ボーリング調査では砂質の土壌であることから橋脚の補強のための地盤改良をするために橋脚周辺に土留綱矢板を打ち込むとしていましたが、転石が多くあるため土留綱矢板打ち込めず、転石を破砕しながら打ち込む費用が生じたためです。地盤改良も転石を破砕する必要があり、工法変更により約28億円の増額となっています。
次に橋梁上部工の構造部材の変更の必要性について、当初は接続部分は「炭素繊維シート接着工法」で行うとしていました。都市高速本線(1号線)と接続道路(6号線)に炭素繊維シートを渡し貼り付けて接続させるというものです。その後の詳細の調査で強度が足りないことが分かり、接続部の橋脚にコンクリート増厚保補強をするというものです。なぜ当初の設計時点で予見出来なかったのか、これら大いに疑問です。この工法変更で約13億円の増額です。
次に、安全性から工事の見直しがされます。2年前に新名神構想道路において、高速道路をまたいで橋を渡す工事において、橋を支えていた橋脚が崩れ人身事故を起こしました。これを契機に、道路をまたいで橋を架ける工事においては橋を組み立てて一気にかける工法に変えることにしたとのことです。これで約約9億円の増加となっています。
工事費は340億円では済まない
今回の都市高速道路から人工島への接続道路・都市高速6号線の事業は、福岡高速道路事業は有料道路事業だけでは採算がとれず高速道路事業として認定されないため、有料道路事業に加えて街路事業及び港湾整備事業で構成されている特殊な事業です。有料道路事業として1.4km、臨海整備事業として1.1km有料道路事業以外の街路事業及び臨海整備事業も今後増額が見込まれており、340億円以上になると予定されています。
安全対策で工法が変わるのはやむを得ないにしても、地盤は掘ってみなければ分からないというのは全く理解できません。また道路の接続部に補強が必要と言うことも当初設計時点で強度が計算できないというのも信じられません。極めてずさんな設計だったのではないか、もしくは事業費を安く見せるためにこの様な設計にしたのではないかと疑われます。街路事業においても港湾整備事業においても増額が見込まれ、着工後に水増しされる公共事業が繰り返されています。
高速道路空港延伸よりも高齢者支援、子育て支援、若者支援に
人工島への接続道路工事費増加の状況を見ると、今後計画されている高速道路から空港への延伸事業が470億円では済まないことが危惧されます。超高齢社会に突入し、人口減少が始まっているなかで人工島への接続道路建設が本当に必要な事業とは考えられません。また、超高齢社会、人口減少社会が進行する中で交通需要も大きく変わると考えられ、470億円に及ぶ都市高速道路を空港に延伸する事業は必要ありません。空港へ延伸しても短縮できる時間は数分と言われています。優先すべき事業は超高齢社会への対応策、子育て支援や若者支援であり、必要の無い高速道路建設は止めるべきです。