九州電力は3月23日、玄海原発3号機を再稼働させました。九電本店や玄海原発現地に集まった市民への対応は“門前払い”。市民の不安や反対の声を無視した暴挙に、私たちは強く抗議します。
東京電力福島第一原発事故から7年が経ちましたが、未だに約8万人の方が避難生活を強いられ、子どもの甲状腺ガンが197人確認されるなど深刻な健康被害が広がっています。事故は今なお収束しておらず、原子力緊急事態宣言が発令中です。汚染水処理のめどは立たず、原因の究明もできておらず、廃炉の道筋は見えていません。
3月20日に佐賀地方裁判所は「差し止め却下」の判断をしましたが、昨年12月13日に広島高等裁判所は、玄海原発とほぼ同距離(130キロ)に位置する伊方原発に阿蘇山の破局的なカルデラ噴火の火砕流が押し寄せる可能性があることを認め、運転差し止めを命じました。一昨年の熊本地震など、近年大規模な自然災害が頻発しています。私たちの経験則をはるかに越える自然災害はこれからも十分起こりえます。にもかかわらず、九州電力は十分な安全対策を講じているとは到底言えず、リスクを軽視しています。九州電力が依拠する基準地震動などの計測は、あくまでもこれまでの経験則に基づくものでしかなく、ましてや巨大なカルデラ噴火などは専門家でも予測不可能です。火山国であり地震も頻発する日本に原発の適地などありません。
また、原子力防災・避難計画作成を義務付けられている自治体は30キロ圏内に留まっており、しかもその避難計画は机上の空論でしかなく、放射能から私たちの命を守る計画ではないのです。玄海原発30キロ圏内の8市町のうち、佐賀県伊万里市、長崎県松浦市・平戸市・壱岐市の4市長が反対を表明、また30キロ圏外でも佐賀県神埼市、嬉野市の2市長も反対しています。
その他にも未解決の問題がまだまだ山積みです。例えば神戸製鋼所や三菱マテリアルの品質データの改ざんが発覚し、玄海原発3・4号機の原子炉格納容器の部材や燃料集合体等に同社製品が使用されていることが明らかになりました。九州電力は「安全に影響を与えるものはない」と結論づけましたが、 十分に安全性が確認されてはいません。九州電力は福島第一原発事故からいったい何を学んだのでしょうか。事故が起きてから「想定外であった」では通用しません。なりふり構わない経済優先、安全軽視、消費者軽視の企業体質の九州電力に原発を運転する資格はありません。最大の安全対策は、原発を再稼働させないことです。
原発を運転すれば必ず溜まっていく使用済み核燃料についても、九州電力は搬出先について未定のままです。国策として進められてきた核燃料サイクルも、高速増殖炉計画の失敗、六カ所再処理工場の度重なる完成延期などで、まったく見通しは立たず破綻しています。これら“核のゴミ”は将来10万年にわたって管理が必要とされ、次の世代への巨大な「負の遺産」となります。
今や脱原発の動きは世界各国で広がっており、世界中の多くの国や企業が再生可能エネルギーと省エネを推進しています。しかしそんな中で日本は世界の流れから逆行していると言わざるを得ません。玄海町議会にいたっては原発の新増設を国のエネルギー基本計画に明記するよう求める意見書を今月可決しました。しかし国内の全原発が停止していた期間も電力不足にはなりませんでした。原発は必要ありません。世論でも多くの国民が脱原発を望んでいます。日本は原発の廃炉に向けてシフトすべきです。
未来のために、私たちはいまこそあらためて原発の廃止を強く訴えます。原発のない社会、持続可能な社会を実現していきましょう。