2016年度決算特別委員会総会質疑

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2016年度決算に関し、福岡市経済と市民所得について、および子ども総合相談センター「えがお館」について質疑を行いました。

1、福岡市経済と市民所得について

9月28日に安倍首相は突如国会を解散しました。この解散はまさに森友学園、加計学園に見られるように国政の私物解散と言えます。安倍政権の5年間は特定秘密保護法強行採決、戦争法強行採決、共謀罪強行採決と、国民の知る権利を奪い、国民の表現の自由を奪い、政権を批判する権利を奪い、立憲主義を否定するものでした。経済政策を見ると日銀による国債の大量買い付けによる金融緩和による円安誘導、日銀と年金基金による株の大量買い付けによる株価の維持、法人減税・所得税減税による大企業優遇・富裕層優遇政策を打ち出しましたが、日銀が目指す物価上昇2%は達成の見通しはなく、実質賃金はマイナスが続き格差と貧困が広がりました。日銀の金融緩和政策の出口が見えないまま経済は失速寸前の状況です。高島市政は安倍政権が進める経済政策にのり、都市の成長に投資を優先しました。国家戦略特区に手を挙げ経営者の都合で労働者を解雇できる仕組み作りに手を貸しました。その結果、福岡市でも非正規労働は増え続け、格差と貧困が広がっています。高島市長は4年連続で市税収が最高を記録したと言っていますが、日銀の金融緩和政策であぶれた市場の資金が不動産投資にながれたもので、実体経済がよくなったわけではありません。福岡市の地域経済が本当によくなっているのか、市民の暮らしがよくなっているのか検証する質問をしました。

福岡市意の市税収の内訳を見ると、市税収増の主たるものは人口増による個人市民税と家屋等の新築増による固定資産税が増加しています。これから見ると、福岡市の経済は金融緩和による市場の資金が不動産投資に向かいバブル的な状況であり、実体経済は決してよくなっていないのではないかと思われます。

9月の内閣府法人企業景気予測調査では「緩やかに回復基調」としており大企業の景況感が2期ぶりのプラス5.1に好転しましたが、中小企業はマイナス6.5と相変わらず厳しい状況が続いています。福岡県の9月の「県内経済の動向」でも、「業況判断は改善している。」としているものの、個別を見るとまだら模様で鉱工業指数生産指数は頭打ち、企業景況判断指数はマイナス、中小企業景況判断指数も大きくマイナスとなっています。また、二人以上世帯の消費支出は上向いているものの、小売業販売額は頭打ち、百貨店・スーパーの売り上げもマイナス基調となっています。税収も金融緩和策で市場に溢れた資金が不動産投資流れたもので、福岡市は福岡県内の卸売り業の7割、小売業の4割弱を占め、中小企業が多数を占める状況から見ると、成長基調にあるとまではいえません。

法人市民税の主な増減を見ると金融保険業の税収が大きく減っています。その背景には日銀のマイナス金利政策による貸出金利の低下にあると考えられます。同時に、過剰に市場に出された資金が不動産投資に向かっていると考えられ、日銀の金融緩和政策が変更されれば福岡市税収にも大きな影響が出ると考えられます。

24年度 25年度 26年度 27年度 28年度
経常一般財源(億円) 3,197 3,215 3,241 3,388 3,359
人  件  費 786 758 769 765 762
扶  助  費 1,797 1,831 1,942 2,020 2,083
公  債  費 992 980 961 961 958
義務的経費合計 3,574 3,570 3,672 3,746 3,803
経常収支比率 91.7% 90.8% 93.3% 92.5% 94.3%

歳出をみると、人件費は抑えてきていますが、扶助費は増え続けており、経常一般財源が増えているものの、経常収支比率は上昇する傾向にあます。市税収は増えていますが、財政硬直化が進んでいます。現在商業地の地価上昇や臨海部の再開や天神都心部再開発、マンション建設などにより税収の中心である固定資産税が増えています。しかし、日銀の政策変更で金融引き締めが始まればバブルははじけ、固定資産税等は今後とも増え続けるとは考えられません。人口減少・超高齢社会で日本経済は縮小せざるを得ず、将来も厳しい財政状況で、どこに優先して投資するのか、市の政策として問われます。

では、市民生活はどうでしょうか。厚生労働省の調査によると正規雇用も増えているが、非正規雇用も増え続けており、2016年の調査では非正規雇用は2023万人、37.5%となっています。非正規雇用の約5割はパート、2割がアルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託を併せて3割弱となっています。不本意で非正規雇用の状況にあるものは全体で15.6%、25~34歳では24.3%、35~44歳では17.9%、45~54歳では16.8%となっています。福岡市でも同じような状況と考えられます。

求人倍率は2017年8月調査では、1.52倍となっていますが、6月調査によると正規職員の有効求人倍率は季節調整で2004年調査開始以降初めて1.01倍と1を超えたとしており、求人も非正規雇用が多いことがうかがわれます。特に若年層の正規効用の取り組みが必要です。

6月の毎月勤労調査によれば求人の業種は医療・福祉関係が21%、卸・小売りが15%、飲食等13%、30人未満の事業所が65%となっています。福岡市の状況を見ると20人未満の事業所は88%、20人未満の事業所の従業員の割合は全体の28%、100人未満の事業所数は98%、100人未満の事業所の従業員の占める割合は全体の72%となっています。以上のことから、福岡市の経済を元気にし、市税収を上げるためには中小企業・小規模事業所の支援対策が必要です。

内閣府企業景気予測調査や福岡県の「県内経済の動向」を見ても、中小企業の経営状況は依然厳しいことが見えています。金融保険業の法人市民税の減は日銀のマイナス金利政策の副作用であり、地域経済に及ぼす影響が懸念されます。また雇用環境は改善したものの、「福岡市民経済計算」の「市民所得」が平成17年の336万1千円に比較して未だ312万2千円と低い水準にあること、「県内経済の動向」の「決まって支給する給与」は25万5千円前後で推移していることからも、この間非正規効用が増えており市民の所得は増えているとはいえません。中小企業が多く、サービス業や小売業が中心の福岡市経済を活性化させるためには、中小企業の支援とともに市民の購買力を上げることが重要です。市民の所得を増やすために、保育士や介護労働者の処遇改善と雇用の機会の拡大、住宅リフォーム助成制度による地場中小企業への受注機会の創出、公契約条例による賃金の底上げなどが必要と考えます。

アベノミクスの破綻が見えており、実質賃金は安倍政権の5年間ほぼマイナスです。国税兆の民間給与実態調査によると2016年の民間平均給与は421万円、4年連続増加していますが、1997年の467万円に比べると46万円も低くなっています。加えて、正規職員の平均給与487万円、非正規職員の平均給与172万円と正規職員と非正規職員との給与格差が広がっています。大企業は円安効果により収益を上げていますが、収益は内部留保と株主配当に回り、労働分配率は下がり続けており賃金には反映されていません。賃金が上がらない状況で、円安による物価上昇により実質賃金は今後もマイナス基調と考えらます。日銀の金融緩和政策による過剰な市場資金による不動産投資と、日銀及び年金金による株購入による株価の上昇・維持による経済構造はいずれ破綻します。不動産投資の上に成長する「都市の成長」政策は砂上の楼閣といえます。都市の成長によるトリクルダウンは起こっていません。都市再開発、大企業優先の都市の成長を優先する政策からの転換を求めました。

 

2、こども総合相談センター「えがお館」について

こども総合相談センターはこども支援のために、こどもに関する相談事業・障がい認定事業、虐待防止・社会的養育や不登校・いじめ対策などのこども支援事業を行っています。昨年児童福祉法が改正され、こどもが権利主体であることが明確にされ、家庭への養育支援から代替え養育までの社会的養育の充実とともに、家庭的養育優先の理念が示されました。これまでの社会的養育をこどもの権利擁護を実現するために大胆な改革が「新しい社会的養育ビジョン」として提言されています。そこで、福岡市のこども支援事業の中心に位置するこども総合相談センター「えがお館」の電話相談、面接相談の業務体制について質問しました。

1,児童虐待対策について

 下表のように、児童虐待の相談件数が年々増えています。社会的な関心が深まり、相談件数が増えていると考えられます。児童虐待防止のためには、発生予防対策として早期発見、早期対応が重要とされています。虐待は幼児期から始まるといわれています。こども総合相談センターでは、面接相談は,専門的・継続的な相談が必要な場合に,児童福祉司や児童心理司等が相談をお受けし,必要に応じて各種心理判定や医師の診断を行いながら,ケースワークやカウンセリングを実施するものと答えています。相談員の資格は,児童福祉司には社会福祉士等,児童心理司・心理相談員には臨床心理士の有資格者等を充てています。

児童虐待対応件数 全国 福岡市
平成25年度  73,802件 415件
平成26年度  88,931件 547件
平成27年度 103,286件 563件
平成28年度 122,578件 976件

 

 

1)地域での包括的な取り組みについて

虐待の防止、親子関係の再構築、家庭復帰に向けた家庭環境の調整、家庭復帰後の虐待の再発防止等のための家族支援の充実、施設による地域の里親等への支援、子育て短期事業等の地域の子育て家庭の支援など、家族支援や地域支援の充実が重要です。地域で包括的に子ども支援をすることが提起されています。こども総合相談センターと他の機関との連携について、「平成20年度から民生委員・児童委員が乳児のいる家庭を訪問し,地域と子育て家庭とのつながりをつくる「こんにちは赤ちゃん訪問事業」を実施するとともに,平成27年度から産後早期の支援の充実を図るため,助産師等の専門職が生後3か月頃の乳児がいるすべての家庭を訪問する「新生児全戸家庭訪問事業」を実施している。また,平成29年7月に各区保健福祉センターに子育て世代包括支援センターを設置し,新たに配置した母子保健相談員がすべての妊婦に面談を行うなど妊娠期からの相談支援体制の強化を図るとともに,関係機関とも連携しながら妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を行っている」と答えています。

2)社会的養護の取り組みについて

虐待されたこどもの家庭的養育として、里親制度や特別養子縁組の取り組みが重要とされていますこども総合相談センターでは、「平成17年度から里親養育支援共働事業を実施し,里親制度の普及啓発や里親・里子への支援の充実を図っている。また,平成28年度から,乳幼児里親リクルート事業を開始し,乳幼児専門の養育里親の新規開拓に取り組んでいる。第4次福岡市子ども総合計画において,平成31年度末の里親委託率の目標値を40%としており,平成28年度末現在で39.7%に達している。」と答えています。

3)職員体制について、職員数及び正規職員は位置を求めました。

児童虐待防止のためには個別ケースについてアセスメントを行い、具体的な支援計画を立て、検証することが重要と言われています。そのためにも、個別ケースに対応できる体制ができているのか問われています。特に経験や継続名取り悔いができるのかが重要です。そこで人体制を質問しました。

答弁は、3年間の面接相談件数は,平成26年度4,171件,平成27年度4,326件,平成28年度5,134件、児童福祉司は,すべて正規職員で,過去3年間の配置数の推移は,平成26年度が30人,平成27年度・28年度が32人。[平成29年度は33人]、児童心理司・心理相談員は,平成26年度が17人(正規職員10人,嘱託員7人),平成27年度が18人(正規職員11人,嘱託員7人),平成28年度が19人(正規職員12人,嘱託員7人)と答えています。

こども虐待防止と、こどものアセスメントと支援計画の策定、虐待を受けた子どの支援及び施設退所から社会人への自立支援、家族関係の再構築や加速の支援、支援計画の見直しなど、相談員の職務は高い専門性および経験の蓄積、取り組みの継続性が求められます。福岡市では嘱託職員は週5日、27.5時間の勤務になっています。非正規職員が多い状況で、長期的な取り組みや多様な機関との連携が構築できるのか疑問があり、正規職員の増員を求めました。

 

2、教育相談について

こども総合相談センターでは教育委員会と連携して、不登校,いじめなど学校に関わる電話相談や面接相談,不登校児童生徒の学校復帰や社会的自立を目指した適応指導教室,いわゆるはまかぜ学級の運営を行っています。過去3年間の電話などによる相談件数は,平成26年度8,080件,27年度9,939件,28年度10,678件。電話相談などを行っている臨床心理士である教育カウンセラーは,28年度までは嘱託員7名で対応し,29年度から1名増員し,8名で対応しています。適応指導教室については,過去3年間,正規職員である指導主事2名と嘱託員である心理士などの5名で対応しています。

国は平成31年までにスクールカウンセラーは全ての小中学校に一人、スクールソーシャルワーカーは全ての中学校に一人配置するとして、毎年度予算化しています。福岡市はどのような計画を進めているのか質しました。福岡市は、「国の事業予算の範囲内で3分の1程度が補助され,残りを福岡市が負担している。国の教育支援体制整備事業費補助金を活用し,28年度は中学ブロック,高等学校,特別支援学校にスクールカウンセラーを合わせて46人,小学校及び教育相談課にスクールソーシャルワーカーを24人,教育相談課にスクールソーシャルコーディネーターを3人配置している。今後の配置については,成果と課題を検証しながら,教育相談体制の充実に努めていく。」と答弁しました。私は市費負担が2/3あることを理由にスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置を渋ることは問題と指摘しましたまた。昨年度から新たに学校と地域との連携図るスクールソーシャルコーディネーターが配置されるようになり、福岡市では3名配置されました。国の補助率は1/3ですが積極的に配置することを求めました。

 

3、若者支援を求めました

福岡市では19歳まではこども総合相談センターで支援し、20歳を超えると精神保健センターなどに紹介する仕組みになっています。しかし、子どもの支援は継続性が重要であり、担当者との信頼関係の継続が重要と考えます。20歳以上は精神保健センターの相談を紹介するという今の福岡市の取り組みは問題と考えます。先日彦根市の子ども・若者総合相談センターを訪問しましたが、そこでは15歳から39歳までの若者相談として取り組んでいます。福岡市でも継続した取り組みを検討を求めました。

 

4、嘱託ではなく正規職員の配置が重要です。

安心して生活する場所がないこどもが増えていることは問題です。こどもの権利条約ではこどもの権利として➀生きる権利、➁守られる権利、③育つ権利、④参加する権利を謳っています。それを保障する重要な機関としてこども総合相談センターがあります。専門性と経験が求められ、継続性が求められる職です。ところが職員数も十分なのか、非正規職員が多く、個別対応や取り組みの継続性に制約があり、十分機能できているのか疑問です。こどもの権利を守るために、こども総合相談センターの職員数を増やす、正規職員を増やすことが重要です。

平成28年の児童福祉法改正で子どもが権利主体であることが明確にされました。このことを踏まえ、新たな社会的養育のあり方に関する検討委員会は社会的養育の改革の行程を示す「新しい社会的養護ビジョン」を提言しています。ビジョンでは➀市町村を中心とした支援体制の構築、➁児童相談所の機能の強化と一時保護の改革、③代替え養育における「家庭と同様の養育環境」原則に関して乳幼児から段階を追って徹底、家庭養育が困難な子どもへの施設養育の小規模化・地域分散化・高機能化、④永続的解決(パーマネンシー)保護の徹底、⑤代替え養育や集中的在宅ケアを受けた子どもの自立支援の徹底などの改革を平成29年度から着手するよう求めています。福岡市においても、新ビジョンが確実に実施できるよう国に財源措置を求めるとともに、高い専門性と経験豊富な人材を育成し、先進的な取り組みを進めることを求めました。