日時 2017年1月24日 10:00~17:00
場所 早稲田大学国際会議室
テーマ:立地適正化計画の更なる展開による持続可能なまちづくりⅡ
立地適正化計画は、都市計画法の用途指定によるゾーニングによる立地の適正化を図る手法から、人口減少・超高齢化社会に適応した都市形成を図るために新に導入された手法である。具体的には必要な都市機能と居住施設を補助金交付や規制を緩和することで誘導する。
この日は国土交通省都市局廣瀬隆正技術審議官が基調講演し、その後具体的事例として、①藤沢市、②和歌山市、③花巻市の報告がなされた。事例報告後、首都圏大学饗庭伸教授から「立地適正化計画のジレンマ」として立地適正化計画を実施するに当たっての課題について報告があり、この報告を受けて研究者、国土交通省、自治他担当者によるパネルディスカッションが行われた。
1、基調講演
基調講演では都市がおかれている現状が示され、立地適正化計画の意義とこれまでの取り組みの成果が示された。大都市においてはこれから人口減少と急激な高齢化が待ち受けており、都市の急激な高齢化は行政サービスの低下と財政負担増をしょうじさせる。また、中心市街地の人口密度の低下は商業施設や医療などの都市機能を消失させる恐れがある。地方小都市では既に超高齢化が進んでおり高齢化のスピードは遅くなっているが、更なる人口減少で人口密度の逓減による中心市街地の消滅の問題や生活サービス維持が困難となる問題がある。立地適正化計画はこれまでの都市計画法や都市再生法に加え、都市機能と居住機能を都市拠点に誘導し、また都市拠点と生活圏を繋ぐ交通ネットワークを形成することで都市が持つ課題を解決させ、持続可能な都市にする。
これまでの取り組みの状況とその成果について、
①都市拠点に都市機能および居住を誘導する、また都市拠点との交通ネットワークを形成することで生活サービスが維持できている、
②都市拠点の人口密度を上げることでサービス産業の生産性の向上と育成ができている、
③都市拠点に人口が集積し商業施設や医療機関などの都市機能が集積することで、施設行政コスト削減と固定資産税の維持ができている、
④居住区と都市機能の近接、また都市拠点が交通ネット枠で結ばれることから、歩行による移動が増えるとともに公共交通の利用が増え、健康増進が実現できている。
⑤また、歩行による移動や公共交通機関による移動が増えることで二酸化炭素排出量が低減し環境負荷が低減している、
以上5点の効果が具体的な人口と行政コストや交通負担率などとの関係を示したグラフで説明された。
現在、立地適正化計画は箕面市、熊本市、花巻市、札幌市が公表、今年度中に100の都市が公表予定、289の都市が準備しているとの方向がなされた。
2,事例報告
1)藤沢市
藤沢市の立地適正化計画は、交通結節点に6の都市拠点を指定し、商業施設等都市機能を集積させる。交通網を整備するためには現状の鉄軌道と一部鉄軌道を新に延伸し、BRTを活用するとしている。また、歴史的に地域コミュニティが形成されている13の地区に拠点をつくり、公共施設の再配置と地域包括ケアシステム構築を行うとしている。同時に、藤沢市は江ノ島がある湘南地区の高級住宅地があることから、東日本大震災を受け、津波や土砂災害などの防災計画と景観形成を進めることとなっている。
2)和歌山市
和歌山市は明治以降城下町を中心に周辺31町村と合併して広がってきた。そのため市内42箇所に支所・連絡所を配置し、連合自治会が形成されている。また、大阪や関西空港に近く、古くから鉄道が中心部から放射状に鉄軌道が広がっている。市内には学校施設がなく、若年層が関西圏や名古屋方面に出て行っており、昭和60年をピークに人口減少が始まっている。金枝の人口動態は社会的減少が止まり、自然減が減少原因となっている。
和歌山市の立地定期制か計画は小手まで市街化調整区域にある駅周辺の住宅規制を駅から500メートル以内を緩和してきたものを100メートル以内に強化することで居住地区を駅周辺に誘導し、都市のスプロール化を防ぐ。中心市街地には居住区を誘致せず、教育施設を誘致するまた、土地・建物のリノベーションによる賑わいと就労の場をつくることで若年層の定着を図る。また、南海和歌山市駅周辺の再開発で日常生活の利便性を維持することとしている。
3)花巻市
花巻市は4市町の合ペにより出来ている。花巻市の立地適正化計画は、東北本線の花巻駅と石鳥谷駅を都市拠点とし、残り大迫・東和の二地区拠点はバスで花巻・石鳥谷の都市拠点に繋ぐ。花巻と石鳥谷には住居を誘導し、花巻に都市機能施設を誘導するとしている。花巻地区は東北線の西側に居住を、東側の中心市街地は医療・福祉・教育関係の都市機能の誘導と土地と建物をリノベーションをし賑わいと仕事の場を作る。都市機能の誘導により地価が維持され、固定資産税が維持される。
3、パネルディスカッション
パネルディスカッションでの意見をまとめると以下のようである。立地適正化計画は都市マスタープランとの整合性を図り、都市の題解決の手段とし、都市の課題を整理することが重要。そのためには、都市の現状の調査・分析を行い、課題を整理する必要がある。人口集積に居住を誘導ないしは都市機能の誘導し、交通ネットワークを形成することで都市の現状に合わせた計画を作る。都市拠点の数は地域の実態に合わせ、何を解決するのかが重要である。立地適正化計画は問題解決のツールで、公共施設の建て替え・集約など公共施設管理計画との整合性を持たせて実施できる。また、地域包括ケアシステムとの整合性がとれる。課題は指定区域外をどのようにするのかがある。指導、勧告ができるが、強制力はない。
立地適正化計画は都市計画法では対象外の病院、福祉施設、商業施設、学校、子育て施設などを誘導することで、ゾーニングではできなかった都市構造を作ることができる。交通ネットワークが重要であり、基幹線交通とフィダー交通の位置づけを明確にすることで公共交通機能を高める。基幹交通は地域の事情に合わせて、鉄軌道なのかバス七日、フィダー交通はバスまたはコミュニティーバスなのか、乗り合いタクシーなのか検討する。従来の集約的な都市としてのコンパクトシティから、住み続けることができる持続可能な街、生活サービスが維持できる街として「持続可能」な都市づくりである。また、人口集積あるいは交通ネットワークを作ることで中心部の都市機能を維持し、また都市によっては都市のリノベーションすることで賑わいを作り働く場を作ることが重要である。
会場から、誘導という緩い措置で実現できるのか、また指導・勧告は実効性があるのか、という問いが出された。区域の指定にあたり、不動産業者や開発業者、医療事業者や福祉関係、教育関係など、誘導する都市機能の関係者との事前の協議が重要であること、また近隣住民との協議も重要である。必要な場合は勧告することができるが、まず計画策定時にどのような事態になれば勧告するか検討しておくことも必要。
所見
立地適正化計画は超高齢化・人口減少社会を迎え、持続可能な都市を作る手法として活用すべきである。福岡市においては都市マスタープランができているが、都市マスタプランの検証と実現のために計画を策定する意味はある。都心部と周辺部との状況が異なり、地域に合わせた計画が必要である。現状で十分とは言えない。