2015年度決算意見開陳

Pocket

私は緑と市民ネットワークの会を代表して、決算諸議案のうち議案第142号ないし145号、148号ないし150号、152号、153号、155号、157号ないし159号、161号、163号、166号に反対して意見開陳を行います。

2015年度決算を見ると財政健全化比率については問題ないという点では財政健全化が進んでいると言えます。しかし再発行残高は未だ2兆3,796億円余市民一人当たり158万円と依然大きな借金を抱えています。毎年2000億円ほどの借り換えが行われており、金利が上昇すればたちまち財政破綻しかねない状況は続いています。市債発行残高は減少していますが、他方PFI事業などによる債務負担行為は増える傾向にあり、実質的に借金が減少しているのか分かりにくくなっています。

行財政改革で具体的経常経費削減目標を立て削減を行うとともに市税等の収納率アップに取り組み、必要としていた新たな財源は2016年度までに当初の目標をオーバーして490億円となる見込みです。この財源を生み出したものは市税等の徴収率の向上や無駄を省いた結果だけではありません。市立幼稚園の全園廃園や公共施設の駐車場の有料化、生活保護世帯の下水道料金の減免廃止など市民への負担を求めています。人件費削減のために、窓口業務の民間委託、指定管理者制度やPFIと民間委託化をすすめ、非正規雇用の増加を促し、低賃金構造を作っています。同時に、正規職員数の削減は長時間動労や有休消化がしにくい状況をつくり、メンタルケアが必要な職員が多いという状況にあります。この様な福岡市は、まさにブラック自治体と言えます。市民や職員を犠牲に生み出した財源はどの様に使われたのか、生み出した財源の多くを「生活の質の向上」ではなく「都市の成長」として立地交付金や住宅市街地総合整備事業に投資し、「天神ビッグバン」やウォーターフロント開発などの開発事業への優先的な投資、破綻が明らかな人工島に多額の税金を投資し続けていることは、市民の「納得と共感」を得ることは出来ません。

福岡市の基本計画の政策目標である「生活の質の向上」と「都市の成長」の好循環は明らかに破綻しています。都市が成長すれば税収が上がり、市民の所得も増え、市民の暮らしがよくなると言うトリクルダウンは起こっていません。2016年6月労働力調査では雇用全体は増えていますが、正規雇用31万人増に対して非正規雇用41万人増加と非正規雇用が増え続けており、調査時点で非正規雇用は2016万人、雇用の37.4%となっています。非正規雇用が増え続け、高齢者の非正規雇用、パート・アルバイトが増加しており、低賃金構造が進んでおり、賃金格差が広がっています。立地交付金による雇用実態を見ても新たな雇用の5割以上は非正規効用であり、福岡市の情況も全国の状況同様に格差と貧困を生み出しています。国立社会保障・人口問題研究所の生涯未婚率の調査では、2025年の推計では男性27.4%、女性18.9%となっており、年々増える傾向にあります。厚生労働省の調査では20代、30代では年収300万以下では既婚者は一割未満となっており、非婚者が増えている大きな要因の一つに非正規雇用が増えていることにあります。安倍政権が進める労働力の流動化として労働者を使い捨ての解雇指南をする「国家戦略特区」は非正規雇用を増やし持続可能な社会を破壊するものです。

福岡市は市民アンケートで「住みやすい・住み続けたい」という回答が95・8%過去最高と言うことをもって「生活の質は向上」しているとしていますが、これは大都市特有の交通の利便性、商業施設の集積、医療機関の集積など都市機能が高いこと、また地理的に災害が少なく、自然環境に恵まれているものであり、髙島市政によって作られたものではありません。子育てのしやすさや福祉について、雇用の機会などは5割ないし5割を切っており、政策課題は決して解決されているとは言えません。非正規雇用が増えている現状は、低所得構造と非婚者を増やし、貧困と格差を広げ、持続可能な社会を実現させることは出来ません。

髙島市政は歴史・文化に磨きを掛けるとしていますが、和白干潟をラムサール条約登録湿地にしようとしない、セントラルパーク構想において植生などの調査をろくにせず観光施設に作り替える、「天神ビッグバン構想」にしてもウォーターフロント開発にしても膨張主義をむき出しにし、百年都市の景観についての将来ビジョンは見えません。先日神屋宗湛の末裔の方が、神屋宗湛の茶室の危機を訴えられていましたが、福岡を商都と言いながら戦国時代の自由都市博多を作り上げた神屋宗湛、室嶋井宗室、大賀宗久などは顕彰されない福岡市の現状は、ガラス玉の都市と言えます。無秩序なマンション開発により、都市景観は破壊され、旧急激な人口増による行政需要が肥大化し、大規模棒の歪みを生み出すなど、果たしてこれが「都市の成長」と「生活の質の向上」の好循環が始まったと言え得るでしょうか。福岡市は「配る福祉」から「支え合う福祉に」と地域の絆と助け合いを政策の柱の一つにしていますが、美しい言葉の裏には住民組織の下請け化が透けて見えています。基本計画は、桑原市政以降連綿と続く「アジアのゲイトウェイ」「環境の創造」という開発路線、都市膨張路線でしかなく、アベノミクスの実験場として味付けしたに過ぎません。非正規雇用が増え続け、格差と貧困が広がる中であえいでいる多くの声なき声に耳を傾けない市政は近い将来破綻すると考えます。

英国のEU離脱、中国経済の成長の衰退、地球環境の悪化、世界経済を見ても成長の限界が見えています。金融資本主義は実体経済を腐食させ、不安定な経済を生み出し、格差と貧困を広げています。弱肉強食の市場経済の先には破壊と混乱しかありません。日本経済も世界経済の波の中で少子化・超高齢化社会を迎え、縮小します。インバウンドだより、開発優先、企業誘致の投資では福岡経済は活性化しません。非正規雇用が増え続け、低所得者層が増える状況では消費は伸びません。現に総務省家計調査では8月の消費支出は前年同月比で名目▲5.1%、実質▲4.6%、この間ほんの数ヶ月を除いて前年同月比消費支出はマイナスとなっています。総務省の家計調査だけでなく、日銀が10月3日に発表した9月の短観でも大企業製造業の景況感は横ばいと報道されており、経済環境は決して上向いているとは言えません。有効求人倍率が上がっていますが内実は新規求人数に占める非正規雇用が半数を上回っています。需要不足が経済低迷の原因であり、需要を生み出すには市民の所得を増やすことが必要であり正規雇用を増やす施策が必要です。

また、人口増加が続く福岡市は、実は超高齢化が急速に進む時限爆弾を抱えることであり、「都市の成長」は砂上の楼閣でしかありません。地域に根ざした経済、地域でお金が回る経済にするために、教育・福祉・文化・芸樹の振興に力点を置き、「住民の福祉の増進を基本」とする行政運営にすべきです。「都市の成長」に重点を置く基本計画、それを進める行財政改革は、成長管理政策と市民参画による市民自治のまちづくりに転換すべきです。

以上をもって意見開陳を終わります。