日時 2016年8月25日(木)14:00~16:00
場所 千代田区アーツ千代田3331
説明員 合同会社コマンドA佐々木浩一アドミニストレーションマネージャー
1,アーツ千代田3331設置の経緯
千代田区が平成15年(2003年)11月に学識経験者、生涯学習推進委員、青少年委員、公募市民、PTA、専門学校校長を構成とする「文化芸術振興施策に関する懇談会」を設置し、「区民が、多くのアーティストと交流し、活動に参加する機会を作るために、空きビルや区有の空き施設などを活用できる空間を工夫して文化芸術活動の拠点として活用することが望まれる」という答申が出された。この答申を基に平成16年3月に千代田区文化芸術基本条例を制定し、平成17年1月に千代田区文化芸術プランを策定、「(仮称)ちよだアートスクエア」として重点プログラムとした。
平成17年9月から学識経験者、区民、区内企業、地域団体関係者、文化団体関係者で「(仮称)ちよだアートスクエア」検討会を設置し検討された。平成18年10月同委員会から「ちよだアートスクエア構想の提言」が出され、廃校となった3施設の内、拠点施設として錬成中学校の活用が望ましい旨の答申があった。平成18年12月に大学教授他学識経験者、文化芸術関係者、町会長等で「ちよだアートスクエア実施委員会」を設置、平成19年12月に設置場所は検討委員会の提言通り旧錬成中学校(平成17年3月廃校)が適切という提言が出された。
平成20年7月、答申に基づき「(仮称)ちよだアートスクエア実施計画」および「(仮称)ちよだアートスクエア運営団体募集要項」を策定し、旧錬成中学校を文化施設の拠点として運営する団体を募集した。平成20年9月に合同会社コマンドAを第1候補団体と決定し、翌平成21年5月に合同会社コマンドAを運営団体として決定した。旧錬成中学校はアーツ千代田3331として平成22年6月にグランドオープン。暫定利用は5年間で、暫定利用の期限が切れる前に「ちよだアートスクエアあり方検討委員会」で検討し、平成26年5月再度コマンドAが選定された。
運営団体であるアーツ千代田3331は運営団体である合同会社コマンドAが付けた名前である。3331は3・3・3拍子に1を加えて10にして苦がなくなり円く輪が出来るというイメージで名付けられた。コマンドAは任意の芸術家集団コマンドMの仲間が公募するために作った。コマンドMは建物をリノベーションし、様々な芸術文化活動をすることで街づくりを行っており、現在は社団法人にしている。コマンドMはちかくの秋葉原で同じような取り組みをしている。
2、施設の基本方針
・運営の参画、利用の両面で区民等へ開放的な施設とする
2階にある区民会議室、体育館、誰で利用出来るオープンスペース、
・伝統文化と現代文化のであう場所とし、地域での新たな活動を誘発する拠点とする
・人々の興味を引き、話題性を送出できるよう明確な特徴を施設および事業に持たせる
・区民が参画できるイベント等を常に発信する
おもちゃや子供服の替えっこの企画(おもちゃや子供服を物々交換する)、夏休み子ども芸術学校(親子で体験学習ができる)、フリーマーケット
・千代田区と地域との関連性を活かす
秋葉原との連携でソフトバンクのロボットの展示場、秋葉原での電子部品購入者が使えるはんだカフェなど
3、千代田区と運営団体コマンドAとの契約
・千代田区と普通財産賃貸借契約を結び、提案した運営事業を行う
使用料 平成22年 90万円/月→平成27年144万円/月
・施設改修に伴う設計および改修を行う
改修費は千代田区から2億円、ウッドデッキの設置などのコマンドA独自の負担3千万円程度
契約解除時の買い取り請求は出来ない
・文化芸術に関わるプログラムを実施する
・施設の維持管理を行う
コマンドAが借り受けた部分以外に、2階にある体育館の管理(平日の17時~19時は区の公共施設として、平日の10時~17時および休日はコマンドAの施設として)貸出の管理、2階の区民会議室(区の公共施設として)の貸出および施設の管理、地下の防災備品の備蓄倉庫の管理を請け負っている。
600万円までの小規模修繕費は区が負担
・水光熱費を払う
・千代田区の財源に頼らない独立採算を前提とした運営を行う
運営費は部屋や機材の貸し出し料金やコマンドA企画の参加費および区の委託事業(現在2件)受託料で運営。スタッフは当初5名であったが現在20名。
4、施設の概要
施設の構成は①文化活動の拠点、②区民/地域での新たな活動を誘発、③防災拠点、④誰でも利用できるオープンな場所、と位置づけられている。中学校の建物と前の公園を一体化し、オープンな構造にしている。中学校の建物をリノベーションしている。
屋上はネットで覆われた運動場であった。体育館が2階および3階の吹き抜けの構造になっているため、屋上は強度の問題から体育館の天井部分以外しかものを設置できない。そのため運動場部分の一部にオーガニックガーデン(32区画)、その他の部分はは音が出ない企画、例えばドローンの練習や子どものテニスの練習などに使えあれている。オーガニックガーデンの利用料金は加入時1万4千円、7千円/月、土の入れ替えや水やりなど年間の管理費として2万円で、利用者は24間利用できる。オーガニックガーデンは年2回収穫祭をしている。
3階は「はんだづけカフェ(秋葉の帰りに工作が出来る)」、「日々の明々後日」、「アルデバラン・アトリエ秋葉原(ソフトバンクロボット展示場)」、「アーツカウンシル東京」など。
2階は多摩美術大学が卒業後のフォローの場所としての「アキバタマビ21」、「KYOUTO Design Lab東京ギャラリー」などのギャラリーコーナーと区民会議室、区民が利用できる体育館、教室を小分けしたラボがある。
1階は「メインギャラリー」、「コミュニティスペース」、「3331ギャラリー」、カフェ、居酒屋、公園と接続するウッドデッキなど。
地下はギャラリー,スタジオ、コマンドAの木工室、防災倉庫などがある。コマンドAの木工室ではイベント会場の設置を自前で行っている。場合にはイベント事業者の事業も請け負っている。
所感
年間利用者は2010年オープンの年30万人、2014年70万人、2015年85万人と増えており、施設の目的は十分発揮されている。地理的には秋葉原に近く、交通の利便性がよいこともあるが、受託事業者であるコマンドAの企画が優れていることにある。区民会議室やコミュニティスペースなど地域の公共施設としての機能を持ちつつ、アートを楽しむ空間として機能しており、区民の生活の質の向上と観光施設としての機能を果たしている。課題は、契約は5年ごとになっており、蓄積されたノウハウが活かされるためには契約のあり方を検討する必要を感じた。
また、跡地利用について地域住民や芸術関係など多様な構成で議論がなされたこと、アートを活かした施設にしたことが何よりもすばらしいと感じた。ものを消費する時代から文化や芸術を消費する時代となっており、福岡市における大名小学校跡地利用などでは参考にすべき事例である。