翁長沖縄県知事と稲嶺名護市長の講演

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4月3日(日),4日(月)に自治体議員立憲ネットワークでの研修が沖縄で開催されました。辺野古新基地建設問題についての学習でした。結論から言えば、①辺野古新基地建設問題は地方自治と民主主義の問題であること、②沖縄の将来の発展には基地は必要ないこと、③安倍政権は不必要な危機を創り出し日本の軍事化・沖縄の基地の強化と固定化を進めようとしていること、④辺野古新基地は普天間基地の移転ではなく将来自衛隊がアメリカの肩代わりをして海外派兵する基地にすることが目的と考えられること でした。この根底には構造的な沖縄差別があると言うことです。

以下お二人の講演の趣旨を報告します。

1、翁長雄志沖縄県知事講演

「闘う民意」

1)2度の琉球処分

沖縄は約160の島がありそのうち40ほどに人が住んでいる。多様な言葉があり文化がある。琉球王国として500年の歴史がある。沖縄は2度の「琉球処分」を受けた。1601年に薩摩が進行し薩摩藩の族国にされ、同時に中国の冊封国(中国王朝はその国力と中華思想を背景に近隣諸国との外交関係樹立においては臣下の礼を求め、見返りに交易や対外的な権威を認めた。)としても存在した。

1879年廃藩置県が行われたとき、琉球王国は沖縄県として併合され、これが第1回の琉球処分である。日本への併合後、皇民教育が強要され、沖縄県民はよき日本人になろうとしてきた。しかし太平洋戦争では1945年に米軍の本土上陸を遅らせるための捨て石作戦として沖縄では日本国で唯一地上戦がくりひろげられた。沖縄戦では民間人が軍と一緒に闘い、10万~12万人の民間人が死亡した。沖縄の言葉でしか話せない人達はスパイとして扱われ、また軍は民間人を守らなかった。軍関係の死亡者は約9万人、米軍の死亡者は1万数千人と言われ、民間人が最も多く死んでいる。

第二の琉球処分は1952年、日本は独立と引き替えに沖縄をアメリカに差し出した。日本がサンフランシスコ講和条約を締結し独立したときに、奄美以南はアメリカの委任統治になりアメリカ軍施政下となった。そのため沖縄では1972年の返還まで治外法権となり、米軍人の犯罪を取り締まることはなされなかった。憲法9条があるにも拘わらず、ベトナム戦争の時は沖縄から爆撃機が出撃した。住民は無国籍状態に置かれ、本土に行くときは琉球政府がパスポートを発行した。米軍施政下では高等弁務官が全権を握っており、住民による立法院が施策を決めても高等弁務官が同意しなければ実施できず、民主主義はなかった。

1972年に本土復帰し、「核抜き本土並み」と言われたが実態は何も変わらなかった。核の密約と米軍基地はこれまでのように残り、地位協定による治外法権の状態は続いた。

 

2)沖縄の経済は基地によって支えられて言う事実はない

全国知事会などでは沖縄は基地による恩恵があるから基地があって良いのではないかと言われるが、沖縄は基地で暮らしがなりたっているわけではない。沖縄は基地で潤っていると言われることが一番悔しい。敗戦直後、全てが破壊されたために家に戻れない人25万人が強制収容所に入れられ、家に戻れない内に米国に土地が強制収容された。基地の約9割が強制収容された民有地であり、畑を耕すなどの仕事ができず、やむなく基地で働くか強制収容された土地の地代で暮らさざるを得なかった。

沖縄の基地は全て強制収容したもので、9割が民有地である。本土の基地は9割が国有地。沖縄では米軍軍政下において、基本的人権を勝ち取ってきた。沖縄の民主主義は自ら勝ち取ったものだ。基地があるのは当たり前と言われるが、日本安全保障を考えるならなぜ本土いつくらないのか、本土の人は安全保障に対する自覚がないではないか。本土の人には日米地位協定について理解されていない。

基地による振興策でお金が来るのでといわれることがあり、全国知事会でも話が合わない。沖縄復興予算が3千億円と言われているが、他の自治体と比べて突出した額ではない。これは本土復帰まで地方交付税措置や各国庫補助金獲得の経験がなかったため沖縄復興庁を通じて一括して予算化する仕組みになった。1952年米軍施政下において沖縄の基地依存の経済はGDPの50%ほどであった。1972年の本土復帰の時点では15%になり、現在は5%程度である。現在の沖縄のGDPは4兆円、国への納税額は5千億円になっており、九州8県では4番目でもうすぐ長崎県を抜いて3番目になる。地方と国の租税分割割合の4:6で見ると沖縄の交付税相当額は2千億円であることからも、復興予算3千億円は何ら他自治体とは変わらない。沖縄は基地のおかげで潤っていると言うことは間違っている。むしろ基地は沖縄の経済にとって阻害要因となっている。基地があることで、日米地位協定による治外法権の状況にある。

 

3)辺野古の新基地問題は地方自治が守られるかである

ペリーは浦賀に来る前に那覇に来ており、半年間那覇で沖縄の地図を作成している。この地図がその後使われている。中国に対する抑止力として沖縄に自衛隊の配備を進めているが、いまの安全保障政策は間違った方向に行っている。辺野古の新基地建設は普天間基地の単なる移転ではない。機能強化され、200年使う基地としている。辺野古が埋め立てられれば国有地となり、沖縄県が口を出せなくなるので、いま新基地建設を止めなければならない。沖縄は日本国土の0.8%しかないのに、米軍基地の73.8%を占めている。米軍は普天間基地を「銃とブルドーザー」で奪ったが、再び国は辺野古を奪おうとしている。理不尽で許されない。日常が非日常に変わろうとしており、一旦非日常に変われば後戻りはできなくなる。

裁判は和解となっているが、国は地方自治法における国と地方が対等であり、是正勧告をして、従わないときには理由書を示した上で強制執行しなければならないも関わらず、地方自治法を無視して強制執行したため、裁判所が国は敗訴になるとして和解 を進めたため和解に怖じざるを得なかった。国の行為は地方自治をないがしろにするものである。辺野古新基地建設は地方自治が守れるのかという課題を示している。東京で不発弾が見つかったというニュースを見たが、沖縄には毎年10数発の不発弾が出てきており、不発弾処理に100年はかかる。沖縄を基地がない島にして、平和の緩衝地帯にしたい。この沖縄の想いを理解していただきたい。

沖縄の基地160407 001辺野古新基地計画160407 001

1,稲嶺進名護市長

「地方自治と民主主義の在り方」

問題解決のためには現場を見ることが重要。いま和解案を受け入れて平穏になっているが、大浦湾は強権的にブイで囲われ、台船も残っている。工事を中断しているおり本来この様なものは撤去すべき。辺野古新基地建設問題は地方自治の問題であり、民主主義の問題である。沖縄は基地で食べているという誤解があるが、沖縄の実態は理解されていない。これはメディアの問題であるとともに沖縄について関心を持たない人が多く、沖縄の現実を知ってもらうことを広げていく必要がある。

沖縄は2度に亘り琉球処分を受けた。1601年の薩摩の侵略、1879年の廃藩置県による琉球国を沖縄県として併合、1945の捨て石作戦による沖縄戦、1952年サンフランシスコ条約により奄美以南は米軍政権下に置かれ日本でなくなった。1972年に本土復帰したが、「核抜き本土な美々」ということであったが、密約もあり基地は変わらなかった。日米地位協定の下、国内的植民地であり、地構造的な差別である。中谷防衛大臣と会談したが、国は沖縄を領土の一部としてしか見ていない。歴史的差別はいまも引き継がれ、沖縄県民を苦しめている。戦後沖縄は米軍によって植民地支配を受けてきた。高等弁務官は全権を握っており、「沖縄の民主主義は神話」とさえ言った。また、「ネズミは猫の目が見えるところしか動けない」とも言い、それはいまも変わっていない。

裁判で国は私人として沖縄県を訴えるという地方自治法を無視した行為は、解釈改憲した行為と同じで、法も解釈で運用するという独善的な行為を安倍首相はしている。国は辺野古新基地建設を進めるために、名護市を飛び越えて辺野古の3地区に直接補助金を交付した。これは予算権の恣意的運用であり、地方自治をないがしろにするものである。これは「法治国家」ではなく立憲主義を否定する「放置国家」である。法を恣意的に運用する国は地方自治をないがしろにし、この国の政策は福島の復興でも起こっており、全国に波及する問題である。

辺野古新基地構想は1967年には計画されて国務長官の承認直前までいっていた。しかし、ベトナム戦争により財政難のために中止となった。それは日本によって再び計画が浮上した。アメリカの上・下院議員に尋ねたところ、アメリカが自前でつくることは財政上出来ないと答えており、日本がつくるならということであった。しかし、アメリカは世界戦略を見直し軍の再編を進めている。軍再編のロードマップでは沖縄の海兵隊はグアム、ハワイ、オーストラリアに8千人~9千人移動させるとなっている。沖縄に破壊へ体は1万3千人ほどいると言われているが、計画通り移動すれは沖縄の海兵隊は4千人~5千人程度になり、普天間基地は必要なくなる。国もこの様な内実を知ろうとしないし、国民にも知らされない。

尖閣列島の問題は、日中国交回復の時に将来の世代への課題として棚上げになっていたものを、石原都知事が尖閣を購入するということを言い始め、国が慌てて国有化したことで中国との緊張関係がつくられた。危機をつくり出すことで基地を作る口実を作っている。辺野古新基地は普天間基地の移転ではなく、要塞としての機能強化した基地である。沖縄では「辺野古新基地はつくらせない」という一点共闘でオール沖縄で闘っている。安倍政権の暴走をくい止めるために一点共闘で闘う必要がある。戦いに勝つ秘訣は「勝つまで諦めない」ということだ。

辺野古新基地問建設問題パンフレットその2 160331 001辺野古新基地問建設問題パンフレットその1 160331 001