2月議会の主な議案は年度末調整の補正予算および、福岡空港に関する事業を港湾局の所管に移し「港湾空港局」に改称する議案、新設される東市民センターの指定管理者の指定、人工島に建設される総合体育館の建設および管理運営に関するPFI事業の契約、中学校空調施設設置のPFI事業の契約、都市高速道路の空港方面への延伸事業の認定、人工島の土地処分などでした。
1、港湾局のなかにある環境対策課は環境局へ一本化を!
今回の議案は福岡空港に関する事業を経済観光文化局から「港湾局」に移し、「港湾空港局」に改称する議案でした。このこと自体には反対ではありませんが、現在、博多湾東部海域の環境対策を港湾局が担当していますが、これを環境局に移管することを求めました。人工島に設置される野鳥公園はもともと環境局が計画していましたが、公園整備は港湾局が行うという非合理的なことが行われています。これは人工島建設など埋立事業を港湾局がやりやすいようにするための仕組みです。分掌(分担)を見直すのであれば、環境行政を一貫して行えるよう、環境部門は環境局に統合すべきです。
2、総合体育館~PFI方式は本当に合理的なのか!
総合体育館の建設については、箱崎九大跡地が適しているにもかかわらず、人工島の土地処分のために計画を強行した問題がありますが、これに加えて建設・運営手法にも問題があります。今回、建設および維持管理・運営について一括してPFIで平成46年3月31日まで契約する議案が2月議会に出されました。
PFIとは、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図る目的で、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行う手法のことです。
PFIは「利益率を決めて」出資を集め、SPC(特別目的会社)をつくって事業を行います。またSPCの借入金利は自治体が発行する地方債の金利よりも高い上に、15年分割で支払う際の分割手数料がこの金利に上乗せされます(プレミアムが付きます)。契約額148億円余のうち、国の建設費補助金分と開業費用は一括払いしますが、残額約100億円余をサービス購入費として15年間で分割払いすることになっています。
また価格を抑え、利益を確保するために再委託されるなど低賃金構造があります。福岡市総合体育館の契約を見ると、以下の問題があります。
第1点 総費用は市の積算額よりPFI落札価格のほうが高い! ▼建設費…SPC(84億円余)>市(82億円余) ▼運営・維持管理費…SPC(49億円余)>市(37億円余) ※私の質疑の答弁で明らかになりました!
第2点 市営であれば生じないSPCの設立経費や運営費が総費用に含まれている。
第3点 15年分割払いのため、分割手数料として金利にプレミアムがつき高くなる。
第4点 利用者数についてSPCの見込みは福岡市の見込みの約1.5倍! 根拠が定かではなく、過大に見積もってある。
第5点 光熱水費は定額でサービス購入額に算入されており、前年度の1.5%の価格変動を超えたときに改訂するとしており、利用者数が適正か疑問である。
第6点 ネーミングライツ料(施設の命名権)はSPCの収入となっており、市営であれば市の収入となるものである。
第7点 15年間もの長期にわたる契約は、問題が生じたとき途中解約は難しく、SPCに有利な契約となる(建前では解約できるとしているが、事実上解約は難しい)。
3、空港へ都市高を延伸~5分程度の時間短縮のために500億円かける必要はない!
都市高速道路空港通ランプを空港方面に延伸する整備計画が議案として出されました。空港口交差点等の渋滞緩和ができるとし、ルートについてはトンネル案を採用。同時に榎田方面からも通過できる計画としており、これによる時間短縮効果は5~10分程度です。「あれば便利」と言えますが、「なければ困る」と言うほどのものではありません。事業費約500億円のこの道路整備が本当に必要なのか疑問です。人工島への接続道路のように、今後の資材の高騰や人件費の高騰、湿地帯でのトンネル工事の費用による増額も否定できません。
既に株価の下落や円高に見られるようにアベノミクスの破綻が露呈し始めており、GDPも10月から12月の四半期はマイナスとなっています。福岡空港の乗降客数および発着回数の動向を見ると、1968万人(2002年度)をピークに1580万人(2011年度)にまで減少、再び増加に転じて2014年度で2000万人となっていますが、約8割が国内線利用者であり、今後増え続けるとは考えられません。発着数も2011年度まで年間14万回前後で低迷していましたが、航空機の小型化が進んだことで2013年度に17万4千回と増えたものの、翌2014年度には17万1千回に減少しています。縮小する日本経済の状況や超高齢社会、人口減少社会を迎え、航空需要が今後も右肩上がりに増えるとは考えられません。滑走路増設も必要ないと言えます。
「あれば良い」「なくても困らない」ような高速道路の延伸よりも、急がなければならないのは年間1%程度しか更新ができない上下水道管更新事業や子育て支援、高齢者、障がい者の支援対策です。また、高齢者などの「移動する権利」のことを考えると、これからは公共交通を中心としたモータリゼーションの推進が求められており、自動車交通が増え続けるという考え方自体に問題があります。高速道路の長期的な維持管理の財源をどうするのか、高速道路延伸は将来世代に大きな負担を残すことになります。
4、多額な立地交付金による人工島の土地処分に反対しました!
人工島については髙島市長に変わった直後の2011年度に事業見直しを行い、土地処分が進まないために「4年間で260億円」という企業立地交付金の予算枠をつくりました。土地代の30%、建物建設費の10%、1件あたり上限30億円を交付するとしています。今回の土地処分では土地売却価格29億円、立地交付金は17億7千万円でした。
このような補助金の交付によって市民にどのような恩恵があるのでしょうか。立地交付金による企業誘致で雇用は増えたと髙島市長は言っていますが、雇用の多くは非正規です。人工島のために使った埋立費用・基盤整備費用および交付した立地交付金などが、本当に固定資産税や法人市民税等によって回収することができるのか、はなはだ疑問です。