12月議会反対討論
私は緑と市民ネットワークの会を代表して、今議会に上程されている諸議案の内、議案第233号、239号、243号、248号、249号、253号、255号、261号、263号、266号、275号、279号、288号ないし291号、299号に反対して討論をします。
福岡市は、「アベノミクス三本の矢」の検証がないまま「新三本の矢」を打ち出し、国民を「成長路線」の迷路に誘い込む安倍政権の政策に追従し、「生活の質の向上と都市成長の好循環」を謳い市民の生活実態に目を向けない市政をすすめています。それは補正予算案等諸議案に如実に表れています。日銀による国債購入による金融緩和策での円安誘導と年金機構による株価操作にもかかわらず、ゼロ成長の日本経済の実態を見なければなりません。安倍政権がこれまで主張してきた大企業優遇政策によるトリクルダウンは起こっておらず、いまや企業の内部留保は350兆円にも達しながら、実質賃金は26ヶ月も下がり続け、物価目標2%も実現できる見通しもない中で、「新三本の矢」のGDP600兆円が実現できるはずはありません。介護離職ゼロ、出生率1.8%に至っては、財政難を理由に市民負担を増やし、派遣労働法改悪など非正規労働者を増やす政策を進める中で格差と貧困が確実に広がっていることと相反する、支離滅裂な政策であることは明らかです。超高齢化社会、人口減少社会を迎える日本の将来は経済成長なき社会の上で持続可能な社会を目指すべきです。以下、そのような視点から主な議案についての反対理由を述べます。
議案第233号平成27年度福岡市一般会計補正予算案商工業振興費のうち立地交付金について反対理由を述べます。この議案は昨年度の立地交付金の交付認定事業者は当初の所有者である博多アイランドシティプロパティ特定目的会社が不動産投資ファンドである福岡リート投資法人に土地および建築物を転売する際に立地交付金を受領する権利としてこの不動産取引に加えることを福岡市もこのことに同意して執行するものです。
そもそも立地交付金は企業誘致のために作られています。とりわけ人工島については土地処分を進めるために「土地購入費の30%、建築物の建設の10%」上限30億円という高額な交付金が交付されます。事業が確定した時点で交付決定されることになっていますが、転売を理由に交付金受領を延期し、かつ交付金を受領する権利として不動産取引とともに譲渡することを認めたことは立地交付金の趣旨に反するだけでなく、地方自治法232条の2「普通公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附または補助をすることができる。」にも違反するものです。
博多アイランドシティプロパティ特定目的会社は土地を購入し倉庫を建設した時点で事業認定されており、福岡市はこの時点で交付すべきでした。しかし、交付金受領の権利が不動産取引とともに承継されたことは、補助金が不動産取引の対象になったことであり、法に違反しています。そもそも自治体が営利企業に補助金を出すことは本来法で定める公益に該当するのかはなはだ疑問であり、慎重になされるべきものです。補助金は法の定めに則り、真に市民にとって必要と認められるものに限定されるべきで、今回の立地交付金の交付は港湾局が不動産転売事業を助成したことになり違法です。
市の回答は立地交付金交付要綱では権利の承継を認めているので問題はないと居直っています。しかし、福岡市からの補助金を受ける権利が転売されることに市民として納得できるでしょうか。売れない人工島の土地処分のためにはなんでもやる姿勢が見えてきました。これは税金のバラマキであり、容認できません。
次に、議案第248号福岡市立急患診療所条例の一部を改正する条例案についてです。
現在、5保健所に設置している急患診療所では、小児科と内科を併科としている医師が小児科を見ており、博多、城南、西の急患診療所の医師は一人です。医師会の申し出で、小児科と内科を併科としている医師が高齢化し少なくなっていることから急患診療所の統合を打ち出しています。現状の小児科と内科を併科とする医師だけにお願いするということであれば、東および南急患診療所での小児科もいずれ閉鎖することになります。今回の診療所の統合については小児科医が少ない現状が背景にあることは理解できますが、女性の社会進出がすすむなかで平日昼間に診療できないこともあると考えられ、子育て支援には急患診療所の維持が必要と考えます。
また、核家族や近隣関係の希薄化などの様々な理由で急がない時間外診療が増えていることも課題という指摘があり、急がない患者が増えている対策として、♯8000(医療相談電話)や急患に関する医療手引きの活用、体制強化によるトリアージ(優先順位を決める作業)の実施などが必要とされていることも理解できます。急患診療体制強化の予算措置を求めるとともに、急患診療所勤務における小児科医の処遇改善や子育てなどで休んでいる女性小児科医が働きやすい環境整備をすることなどで小児科医と内科医の二人体制による急患診療所の維持を再度検討して頂くことを求めます。
それと同時に、小児科救急医療体制検討委員会の検討では二次医療体制の強化が指摘されていますが、こども病院は二次医療機関よりも高度医療を重視する政策が打ち出されており、二次医療機関として強化するよう見直すべきです。またこども病院人工島移転後の西部地区の小児科2次救急医療体制は課題となっており、高島市長はこども病院人工島移転を決めた2011年5月14日の記者会見で「地域医療の空白化を防ぐために、アクセスのよい現在地、これは現在のこども病院の跡地ないしは、現在その周辺にある病院の中に、福岡市医師会によって新たな地域医療の核となるような小児科を新設する。これがこども病院に対する私の結論でございます。」と言っています。しかし、その後の検討で示された浜の町病院の小児科医の増員で西部地区小児二次医療体制の強化が担えているのか疑問であり、市長は自らの発言に責任を持つことを求めます。
次に、議案第249号福岡市中央卸売市場業務条例の一部を改正する条例案についてのべます。
そもそも中継所を設置することになったのは、人工島の土地処分が進まないために多くの反対を押し切り、青果市場を人工島に移転することを強行したことによるものです。福岡市は負担軽減策として施設使用料の減免などの措置を執るとしていますが、小売業者の負担は増え、廃業する小売業者は今後も増えると考えられます。事業者の声を無視し、地域の生活や経済に少なからず悪影響を生じさせるこの様な事業の進め方はあるべきものでありません。小売り事業者や生産者に対する助成については当然市の責任としてなされるべきですが、この議案については新青果市場人工島移転事業のあり方として反対するものです。市民体育館の人工島移転など市民の声を無視した人工島事業に伴う関連諸議案には、既成事実を作ることで追認させる福岡市政の在り方に反対するものです。
次に、議案第250号博多港港湾施設管理条例の一部を改正する条例案について理由を述べます
クルーズ客送迎用観光バス待機場整備は現状において必要であり、また使用料を取ることについては反対ではありません。しかし、クルーズ船誘致による寄港の急増は、交通渋滞や教育現場におけるバスの手配ができない問題など様々な問題を引き起こしています。更に問題なことはクルーズ船のほとんどは中国籍であり、中国経済の先行きを見るとこのまま将来にわたりクルーズ船が増えていくとは考えられません。市は今後もしばらくクルーズ船は増え、福岡市の経済にも寄与していると答えていますが、中国はバブルがはじけ過剰生産社会となっており、一人っ子政策により急速に超高齢化社会に突入し、今後経済成長が鈍化します。かって高度成長期の日本でも農協による海外ツアーが国際的な話題になった時代があったように、一時的なブームと考えられます。クルーズ船対策としての観光バス駐車場整備は対処療法的措置であっても、将来計画が無いまま進めれば過剰投資となることは見えています。観光客誘致のための施設整備ではなく、また、一時的な爆買いを当てにするのではなく、市民にとって暮らしやすい魅力ある都市の整備の結果として市内外からの来訪者が増えることを目指すべきです。ウォーターフロント開発が準備されていますが、公共空間である水辺空間とその景観は市民の共有の財産であり、市民的議論で整備されるべきです。また、20年~30年先の福岡市は人口減少が始まっており超高齢社会の中で誰がウォーターフロントを利用するのか想像しなければなりません。何よりも市民が安心して暮らし、子どもを産み育てることができる環境整備に財源を投入するよう、福岡市の都市政策の見直しを求めます。
最後に議案第289号福岡市東図書館に係る指定管理者の指定について反対の理由を述べます。
今回東図書館において、図書の選定、購入および図書館施設の維持管理を除く図書貸出や利用者への支援等の図書館業務が民間事業者に指定管理者として業務を委ねる議案です。図書館の民間委託については図書館のあり方として問題となってきました。武雄市がツタヤに委託したことで図書館と喫茶および書店の一体化した従来の図書館機能だけではなく新しい利便施設的要素で賑わいを生み出し、話題となりました。しかし、その一方で、図書購入が事業者の都合でなされた問題や利用者情報の取扱の問題などが指摘されてきました。また、民間委託された図書館で入札による低賃金構造によるサービス低下が問題になった自治体も出ています。本来の図書館機能である利用者への情報提供や読書活動の支援、また学校教育との連携の見直しから一旦民間委託したものを直営に戻す自治体も出ています。
今回東図書館においては受託事業の全員が司書資格を持ち、読書支援や地域および学校との連携を図ると説明されています。そもそも図書館は単なる利便施設ではなく自治体が市民の社会教育に責任を持つ立場から自治体の直営で運営されるべきものです。また、図書館機能をより発揮させるためには継続性も重要であり、指定管理者制度にはなじみません。さらに、今回の契約においては直営と比べて費用的にはほとんど変わらず直営ですべきです。よってこの議案に反対するものです。
福岡市では人件費削減のために事務事業の外注化を拡大していますが、同じ業務でありながら賃金格差が生じており、官制ワーキングプアーを生み出していることは問題です。また競争入札することで委託費を下げた結果、こども病院のPFI事業を受託している日本管財や楽水園で問題となった福岡植木のように事業者が契約を履行しない事例も出ています。
昨年のOECDの報告では日本の相対的貧困率はアメリカに次ぎワースト2となっており、貧困と格差が広がっています。地方自治体の本旨は住民の福祉の増進を図ることであり、自治体自らワーキングプアーを生み出す仕組みはやめるべきです。千人当たりの公務員の数は、フランス2009年86.1人、イギリス2010年81.8人、アメリカ2010年77.9人、ドイツ2009年54.9人、日本2010年31.4人となっており、日本の公務員の数は世界的に極めて少ない状況です。正規職員が少ない部分は非正規職員と民間低賃金労働者が担っています。成長戦略の裏で格差と貧困を生み出す市政は転換することを求めて討論を終わります。
安全保障関連法案の強行採決に抗議し、法の廃止を求める意見書案に賛成する討論
私は緑と市民ネットワークの会を代表して、安全保障関連法案の強行採決に抗議し、法の廃止を求める意見書案に賛成し討論を行います。
自民党、公明党政権は多くの国民が反対し、憲法学者をはじめ日本弁護士会など圧倒的多数の法曹関係者が集団的自衛権は憲法違反として法案に反対する声を無視して、去る9月19日に安全保障関連法案=戦争法案を強行採決しました。これはまさに民主主義を否定し立憲主義を否定する暴挙であり、強く抗議します。
第二次安倍政権が誕生して以来、自民党、公明党政権は戦争への道と国民の権利を侵害する道をひたすら推し進めてきました。一昨年12月に特定秘密保護法を強行採決、翌年4月には武器輸出三原則を撤廃、5月教育委員会制度を改悪、7月1日には集団的自衛権行使を閣議決定、更にまだ法案の審議も始まっていない昨年12月に自衛隊幹部が米軍トップに安全保障関連法案成立することを報告し、今年4月25日には安倍首相がアメリカ国会で夏までに戦争法を成立させることを演説、4月27日には日米防衛指針改定、いわゆる新ガイドラインでは日本が集団的自衛権を行使することを盛り込みました。この一連の安倍政権の動きは国会を無視し、民主主義そのものを否定する、独裁政権とも言えるものです。国会での議論を避けるために野党が求めたにもかかわらず臨時国会を招集せず、国民の目をそらすために「アベノミクス三本の矢」を検証しないまま「アベノミクス新三本の矢」を打ち出すなど、経済問題にすり替えています。これは国会無視、民主主義を踏みにじる行為は許されません。
戦争法強行採決と平行して、日本は安倍政権によって民主主義と地方自治が根底から覆されようとしています。沖縄辺野古基地建設は沖縄県民の意思を無視して強行されており、東京から機動隊を派遣し反対する沖縄県民を力で弾圧しています。辺野古新基地は新ガイドラインの下基地機能の強化であり、沖縄における基地の永続化です。自民党、公明党が支える安倍政権が進める辺野古基地建設は日本の民主主義と地方自治が破壊されている現状を示しています。
さらに、特定秘密保護法およびマイナンバー制の施行に続き、刑事訴訟法改悪が国会で継続審議となっており、共謀罪や盗聴法など人権を侵害する法案が準備されています。先日国連人権委員会の表現の自由を担当するデイビッド・ケイ特別報告者が特定秘密保護法施行後の日本の状況の調査を政府に申し入れていましたが、日本政府の要請で延期されました。国境なき記者団によると、日本の報道の自由度ランキングは2010年には11位であったものが2015年度は61位と報道の自由が失われていると評価されています。また、TPP包括的合意により、国内の農業の破壊と地域社会の崩壊を招き、混合診療を広げ国民皆保険制度が崩壊する恐れが生じ、ISDS条項は国内法や地方自治体の条例をも侵害する恐れがあり、国民生活が破壊されようとしています。このように、自民党、公明党政権は国益に反する政策を進め、政府による人権侵害をすすめ民主主義を崩壊させようとしています。
戦争法が成立したことで、いよいよ米軍と自衛隊を一体化させ、新ガイドラインは実体化し、アメリカ軍の指揮の下に世界各地で戦争することになります。来年には自衛隊はPKO活動では南スーダンへ派遣され、駆け付け警護が実施されることとなっています。日本が戦後初めて海外での戦争行為を始めることになります。しかもこれらの戦争行為は特定秘密に指定されれば、その実態は国民に知らされなくなる恐れがあります。国民が知らない間に戦争に巻き込まれ、テロの対象になりかねない事態を生じさせます。安全保障関連法は国民の安全を確保ことには繋がらず、国民を危険にさらすものであり、日本の民主主義と地方自治を復活させ、人権が守られる国に戻すために、安全保障関連法制の廃止と集団的自衛権行使の閣議決定を撤回することを求めます。