日時 2013年11月6日
対応者 上下水道部横田敏広参与兼次長、高田勝弘副参事、
佐藤卓上下水道総務課経営・企画グループ長
目的:下水道事業における民営化検討の経緯と下乗及び課題について調査
1、浜松市の下水道事業の現状
2005年に12市町村が合併し、11処理区、10ヶ所の終末処理場を有している。2012年度81,2万人、下水道普及率79.4%。人口密集に応じて下水道処理地区と合併浄化槽処理地区にしている。2015年度には処理面積74%、処理人口57%を占める西遠流域下水道事業を県から移管される。それまでは小規模事業であったため移管に向けての体制づくりが急がれている。
2、民営化についての調査について
浜町市においても少子化、人口減少の時代を迎え、使用料及び市税収が増えない中、将来の維持管理の負担の問題と財政健全化が課題となっている。その取り組みとして、一部処理区域において、複数年契約、複数業務の一括発注、放水水質党を要求水準とする性能発注にによる包括委託がなされてきた。しかし、「契約年数(3~5年)が短いため、民のノウハウが十分生かせない」、「民のコスト縮減努力が予定価格の低下につながり民の効率化意欲や受注意欲が低下している」、「契約更新時の追加的なコスト削減にも限界がある」「修理は小規模に限られることが多く、間が修繕する部分都民が修繕する部分が混在する場合もある」などの問題が指摘されていた。
そのため、契約期間の長期化や、施設の維持管理と改築更新をパッケージで発注することで、民が「中長期的視野で下水道施設の運営から改築までの一体的なサービスを提供し、ライフサイクルコストの削減を図ることが出来る」、官民双方にとって魅力ある事業のあり方の可能性と課題を検討することにした。
具体的には湖東処理区と館山寺処理区をモデルとして、2011年に改正されたPFI法により制度化された、設計・施工・維持管理に運営を加えたコンセッション方式と、設計・施工・維持管理を一括発注するDBO方式との比較した。そのために、アンダーセン・毛利・友常法律事務所、野村総研。静岡銀行、日本下水道事業団、国土交通省下水道企画課、松山市でワーキングチームを構成し検証した。
3、検証
コンセッション方式は受注事業者が改築工事と維持管理、運営を行い、市は平準化可能な「サービス対価」を事業者に支払う。サービス対価は本来市が事業した場合の維持管理費及び改修費を基に契約され、市の支払いの原資には下水道事業に対する一般会計繰入金及び国庫補助金である。事業者は市民から直接使用料を徴収し、市からのサービス対価と併せて事業収入となる。施設の所有者は市であり、事業者は市へ施設使用料を払う。
事業者の支出は施設改修及び維持管理にかかる費用、借入金の返済と借入利息、更に法人税等が新たに発生する。事業者の利益は収入から支出を差し引いたもので、維持管理や改修費を縮減できても、借入金利が民間の借り入れがたくなること、新たな税負担が生じることから利益が出にくくなる。
下水道会計においては収入は事業者からの施設使用料および下水道事業既存施設建設費償還のための一般会計繰入金、支出は契約管理費、既存施設建設借入金の償還とその利息となる。下水道会計の収支は収入から支出を差し引いたもので、民間の利益を一定程度保障するとなれば施設使用料を下げざるを得ず、事業効果が出にくくなる。
コンセッション方式は借入金利は一般的に公的な借入より高くなる問題と施設を借りて経営するため法人税など税負担が生じる。また、改築更新試算の追加修繕等が生じた場合は事業者の負担となり、利用者の増減による収入のリスクを事業者が負うことになる。また、事業終了間際に投資すると減価償却が単年度に多額に生じ、サービス対価は平準化されているため決算は赤字になる。そのため、事業者の施設更新は比較的早い時に行うことが考えられ、民によることでの施設の長寿命化の効果も十分発揮できなくなる恐れがある。
これらの対策として①将来予測されている改築投資をあらかじめ引き当て帰任参入できること、②投資実行時以降の投資支出の償却(繰延資産の償却)を施設の耐用年数ではなく契約期間で償却可能にすること、③毎年度一定のサービス対価等のうち改築相当費を前受金として貸借対照表上に積立て、改築実施年度に必要額を益金に振り替え、売却処理することが考えられるが、税制面での整備が必要となる。今回、①維持管理費の3割カット、②資本的支出費3割カット、③施設の5年間の長寿命化、④税制面での整備がなされたとして想定で試算した結果、一般会計繰入削減効果は年間数%~10数%、約1千万円程度となった。しかし、具体的な資本支出費3割削減等の中身については検証されていない。
DBO方式は維持管理費・施設更新費は委託工事費として支払われるため受注者には税負担はなく、追加的修繕が生じた場合は瑕疵責任期間(浜松市は2年)が過ぎれば事業者の負担はなく、利用者の増減による収入のリスクは事業者にない。DBOでも事業費削減は出来るが、市としてはサービス対価の平準化は出来ない。
4、結論として
コンセッション方式はまだ税制面など未解決の問題が多い。事業者と市との意図や認識のずれを回避するために双方の対話が重要。民間のノウハウの発揮を促すためのインセンティブが働く仕組みやペナルティ設定の検討は必要である。また、トラブルを避けるために、資産台帳の整備や現地の立ち会いなど、既存施設の引き継ぎの際の資産査定も課題となる。現状では運営と更新型DBO方式が導入の可能性が高いという結論であった。
いずれにしても、民間のノウハウの発揮させるためには契約期間を長期にする必要がある。
5、今後について
浜松市では2年後に静岡県から処理面積74%、処理人口57%を占める西遠流域下水処理場が移管されることになっており、その準備が急がれている。毀損の浜松市の能力を大きく超えることから、現在の人員や体制では受け入れが困難であり、民間を活用した運営手法を検討するとしている。現在下水道処理の人員は6名であり、西遠流域下水道処理場を受け入れても6人の増員で臨みたいとのこと。電気技術系の職員が少ないことと技術の継承を考えて新規採用をしたいということであった。また、技術の継承を図るため、1施設については直営として残す考えということであった。
検討はA「公共施設党運営権を活用した民間への振るアウトソーシング」、B「包括委託の拡大や指定管理者制度の活用」を想定している。検討に当たっては、本年6月6日内閣府が公表したコンセッションに課するガイドライン及び、昨年度より国土交通省「下水道施設の運営におけるPPP・PFIの活用に関する検討会」において協議が行われている内容を反映させるとしている。検討に要する費用2千万円については、「先導的官民連携支援事業」(国庫補助事業)」として1千万円が交付される。
まとめ
成熟社会を迎え、少子化、高齢化が進み福祉、教育、医療費など義務的経費が今後拡大していくことが見込まれる一方、人口減少が始まり日本経済は縮小せざるを得ず税収の伸びは期待できない。この様な情況で、戦後拡充してきた公共施設及びインフラの老朽化が大きな課題となっている。福岡市においてもアセットマネジメントに取り組み、公共施設や道路・橋梁、上下水道の維持補修・更新事業の平準化を図っている。経費縮減の方策としてPPP・PFIが様々なところで検討され、民間ノウハウの活用が検討されている。その一つにコンセッション方式があり、全国の空港や上下水道事業において検討が始まっている。今回浜松市にこける検討状況を調査した。コンセッション方式についてはまだ税制の問題や資産引き継ぎの問題、また市の技術の継承などの課題があることがわかった。さらに、使用料金を含めたサービスの質の確保、トータルな経費節減の検証、公契約労働者の雇用条件の確保などの課題が残る。行政のアウトソーシングが地域の雇用と経済に与える問題も検証がなされる必要がある。