福岡市のマンション紛争は後を絶たない。その原因は福岡市に街づくりについてのトータルな視点も意思もないことにある。福岡市では昨年景観法に基づく景観計画が策定された。その中で景観形成地区はなんと百道浜や人工島、天神、博多駅周辺と言った開発エリアである。歴史的建造物は保護しようとせず、歴史的景観を有するエリアを保存せず、将来の景観形成は考えない。福岡市は「環境の創造」として百道浜を埋立て、百道浜に人工海浜を作る、人工島を作ることで和白干潟を破壊し、東部海域の景観破壊を進め、一方では人工島に野鳥公園を造る、野鳥公園前の海辺に人工干潟を造るなど、自然破壊を進め人工構造物を造ることが「美しい景観」としていることに如実に表れている。それが福岡市の景観計画の実態である。この景観の価値を理解しない発想がマンション紛争が減らない原因になっている。京都市では遅れたものの景観法に基づく景観地区の指定をし景観の保護を行っている。世田谷区では景観法成立前から景観保護に取り組み、多摩川崖線地区の保護進め、斜面緑地の保全に取り組んでいる。福岡市は至る所で斜面緑地の乱開発に歯止めがかかっていない。
いま起こっている景観破壊は、歴史的建造物である平尾山荘そば、承天寺そば、友泉亭そばに高層マンション建設が計画されていることである。福岡市は高層マンションにより景観破壊が起こるにも拘わらず、規制しようといていない。福山市の鞆の浦では歴史的景観の保全を巡って、景観保全を求める住民と開発を進める行政が争い、最高裁では歴史的景観は保護に値すると判決を出し、住民が勝訴した。福岡市はこの様なことさえ認知していない。全く低レベルの行政としか言いようがない。このような福岡市ではマンション業者のしたい放題というのが現状である。
そして、愛宕3丁目・4丁目のマンション問題は、まさに福岡市の開発業者を優遇する発想を示す象徴的なものである。ここでは、歩道に接して垂直に構築された18メートルの擁壁に隣接するマンション建設が進められている。事業者は最大の利益を引き出すために擁壁の改変を計画し、そのために歩道に擁壁と同じ高さに足場を組んで、その上に重機を載せて工事をするというのである。歩道は通学路であり、重要な生活道路である。重機が載った足場の下を通行させられことに周辺住民は不安を持ち、計画の中止を求めた。擁壁の背後地には、擁壁を支えるアンカーが設置されており、アンカーが設置されている土地は市の地上権が設定され、構造物を造らせないようにしている。ところが福岡市はいとも簡単にマンション業者に改変を認めた。この発想が本質的に問題である。25日の議会では以下の一般質問をし、福岡市のおかしな市政を質す予定である。
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一般質問
都市計画道路豊浜拾六町線において現在大和ハウスが建設予定のマンション敷地と接する愛宕3丁目及び4丁目における福岡市が建設した擁壁に関して以下の説明を求めます。
第1点
①擁壁建設の経緯、
②擁壁の高さ及び長さ、構造、
③擁壁の背後地に地上権設定した目的
④土地購入ではなく地上権設定における補償金を払った理由
⑤地上権の登記上の順位
⑥契約書の特約条項として記載されている内容と継承について
第2点
大和ハウスが行うとするこの擁壁の改変について
①大和ハウスが行う擁壁の改変の理由
②擁壁の改変工事の内容
③福岡市擁壁の改変を認めた理由
第3点
大和ハウスのマンション建設について近隣住民との説明及び協議の経過、双方の主張について、又市の対応について説明を求めます。
第2問
工事予定の擁壁がある歩道は通学路であり、かつ重要な生活道路です。歩道上に足場を組み立て、足場の上に重機を載せて工事を行うことに対して住民が不安を持つこといついて、市は住民の主張がおかしいと考えているのか所見を求めます。又そもそもこの様な工事は異常ではないのか所見を求めます。
擁壁の後背地に地上権を設定し、しかもアンカーで補強している重要構造物の改変を認めるには相応の理由、具体的な公益性がないといけません。今回マンション建設で擁壁を改変し、アンカーを打ち替えなければいけないこと公益性があるとは考えられません。住民の不安を無視して工事の強行を認めた市の理由について説明を求めます。
また、この様な工事をしなくても建設可能な代替案ができるにも拘わらず、市内部での調整がなされず、縦割りのばらばらな対応がなされており、これで市民に責任を持つと言えるのか所見を求めます。
住民にキチンと説明をせず、しかも事業の利益追求を優先させる大和ハウスは悪徳事業者と言われても仕方がありません。私的事業者の利益を優先させることが市長が言う「市民の納得と共感を得る」市政と言えるのか所見を求めます。
第3問
福岡市におけるマンション紛争は後を絶ちません。それは第1には今回の事例に見られるように縦割りでばらばらに対応し、本気で住民と向き合い事業者との協議・調整をする姿勢に欠けていること、次に現在の紛争予防条例が役に立たないことを示しており、景観法をなどの法律を生かし住環境を整備する法的強制力が強い条例にする必要があます。地方分権が進み、地域の状況に応じた条例制定が求められています。今回の擁壁の改変の許可に至ったこと、および事業者に対する指導・調整のあり方ついて問題があります。住環境をよくするための新たな街づくり条例の必要性について市長の明快な回答を求めます。