がれき処理状況調査報告

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がれき処理状況についての調査報告
福岡市議会議員 荒木龍昇
■8月8日(水) 宮城県議会関係者の話しから
1、宮城県議会の動き、2012年2月が潮目になった
①2011年9月議会で石巻ブロックのがれき処理についての契約議案が出された。そのとき、議会内・自民党議員の中からも4割も広域処理をお願いするのは無理があるのではないかという声が出ていた。放射能汚染されたがれきに受け入れに住民からの反発を受けると批判が出ていた。結果的には知事を支えるという立場から議案は承認された。

➁2011年10月の改選で議長が替わり、議会内でこんな処理でいいのかという声を受けて議長(自)、副議長(自)、予算委員会委員長(自)、予算委員会副委員長(民)が全国都道府県を回り受け入れのお願いをするという話が出て、実行された。

③2012年2月議会で自民党から宮脇氏の「いのちを守る森の防潮堤」について提案がなされた。自民党では宮脇氏を呼んで勉強会をやったということである。これについて知事は国と協議したところ廃棄物処理法に抵触することやがれきを埋設するとガスが発せするなどと国から指摘されたからと消極的な答弁をした。

④2012年2月の予算委会で自民党議員が、がれきは県外に出さず石巻港に埋めてれば処理できるのではないかと質問。土木部長や環境生活部長はいい発想だと賛同を示した。知事は県内処理に全力をあげると表明しつつも、3年間で処理しなければいけないという理由で慎重な答弁であった。

⑤2012年3月16日、自民党長老議員が呼びかけ人となり、「いのちを守る森の防潮堤プロジェクト」推進の議員連盟の呼びかけがあり、59名全員が参加。

⑦その後、6月議会をむかえ、議会としては最大限県内での処理を行う、そのために知恵を出すという方向になっていた。自民党内にも広域処理をやめるという人もいる。民主党も政権与党であるが広域処理の、とくに北九州などの長距離輸送は税金使い方として問題があると県議会質問でも指摘し反対をしている。

⑧モーニングバードで横田議員が議会の意思として県内処理が可能と表明。その直後、横田議員は強く反対したが、議長の責任で行くとして北九州市に謝罪している。

⑨5月21日にがれきの見直しが行われ、広域処理をお願いしている量を上回るがれきの量が削減された。県は環境省の顔を立てるために数字のつじつま合わせをした疑いが強い。なぜなら理由もなく県内での処理能力を半減させたから。

2、精査すれば県内処理は可能
①これまで最終処理場が最も足りないといってきたが、産廃処分場をもっている県環境公社に聞くと115万トンを受け入れできると答えており、広域処理分を遙かに上回る量である。

➁宮城東部地区は来年7月で処理は終了する予定。12月まで稼働させると10万~15万トン処理できるが、処理能力には反映されていない。

③山元町には木くずのサーマルリサイクルとしてバイオマス発電所を作った。山元町は広域処理が必要とされる木くず量が最も多く、16万トンとされているが、どういう訳か、このバイオマス発電所は来年8月で終了するとされている。理由は木くずの質が悪くなっていくからとされるが、12月まで受け入れに何の問題もなく、延長すればさらに木くず処理量を増やすことは出来る

④亘理地区はがれき処理は早く終わる予定で石巻ブロックのがれきを受け入れることが出来るが処理能力には入れられていない。

⑤女川町のがれきは東京都が鹿島jvとの契約前に受け入れを表明したため別立てになっている。この女川町のがれきも当初20万トンとなっていたが14万トンに変更された。

3、北九州市へがれきを出す必要性はない
①がれきの量及び処理能力を精査すれば広域処理する必要はない状況は明らかになる。しかし、北九州市の受け入れが始まるまでは県は数字は扱わないようである。

➁知事は非公式にがれきの広域処理をしなくても県内処理は可能といっている。北九州市は批判が予想される中でいち早く手を挙げたので断れないといっている。北九州市は特別扱いにせざる終えないというのが本音のようだ。

③宮城県に全国の市民から問い合わせや抗議が多数来ており、宮城県当局の担当課や事務方も広域処理を辞めたいが、環境省の手前言い出せない。環境省は広域処理にこだわっており、環境省から6,7人ほど出向して県内のがれき処理部署に張り付き、まるで県を監視していかの体制がとられている。

④復興庁は宮城県内に29基もの仮設焼却炉がつくられ、石巻ブロックには300トン/日の処理施設を5基設置しており、数100億円もかかっているので活用すべきと考えているが、環境省の手前広域処理を否定していない。

4、鹿島jvと北九州市の二重契約問題について
①鹿島jvのプロポーザル契約について、大成jvの提案内容が明らかにされておらず、契約内容に疑義が生じている。

➁がれき量の見直しが公表される以前から環境部長はがれきの量が減れば契約は見直すとしていた。今回がれきの量が大幅に減ったので9月議会に契約見直しの議案が出される予定。

③北九州の契約も9月議会で契約変更の議決がされる予定である。

※これは理論的には鹿島JVに委託した中から宮城県が委託をやめて、北九州市と契約するということだから矛盾することは間違いない。ただし、この委託関係の権限関係を見ると、鹿島JVはあくまで宮城県から委託を受けて処理しているので、委託者である宮城県が途中からその一部を鹿島JVから切り離し処理するからと判断すれば、権限上は宮城県の方が第一義的決定権を持っていると思われる。鹿島JV側が契約違反だと騒ぎ立てれば別だが、それはまずありえないので、この場合は、瞬間的にある期間は契約と矛盾する状態が生じるが、これは委託者側の裁量の範囲だと主張し乗り切ることになるのではないかと思われる。

■石巻ブロックのがれき処理施設を見た。
 宮城県で受け入れてもらえなかったため、自力で300トン/日の仮設処理施設を近くで視察。具体的な処理状況は把握できなかった。がれきは処理場に移されていると思われ、石巻市内にはがれきはなかった。

■仙台市がれき処理についての調査
日時 2012年8月9日 10時~11時
場所 仙台市蒲生搬入場
説明員 仙台市環境局震災廃棄物対策室 主査大島明男氏
目的 震災がれきの処理状況及び震災対応についての調査
1、震災がれきの処理の基本的な進め方
 今回の震災がれきの発生量は135万トンと推定。仙台市の年か廃棄物は清涼36万トンの4年分である。震災がれきは1年間で撤去、3年間で処理の方針で進められてきた。基本としては市内のがれきは市内で処理する自己完結型を目指し、地元の産廃業者を使うことで進めてきた。処理の基本方針は昨年4月には決め、仙台市の判断で進めてきた。
 搬入場は蒲生地区、荒浜地区、井土地区の三ヶ所を設置した。蒲生地区は市営の公園があり、荒浜地区、井土地区も市有地と林野庁の国有地併せて103ヘクタールを確保でき民有地を使用しなくてすんだ。そのため、一次・二次仮置き場を一元化して早く搬入を進めることが出来た。蒲生地区は3月30日から、井土地区は4月15日から、荒浜地区は4月22日から搬入を始めた。

2、がれき等の搬入及び運営
 瓦礫は発生場所で①可燃物、➁不燃物、③資源物に分別して搬入。当初人名球場優先大開の部分はそのまま搬入したが、道路拡幅作業以降は分別して搬入。重機1台にトラック3台を1セットとして配置し、地元産廃業者に作業を委託した。搬入は市内の指定業者のみを受け入れている。搬入後更に10種類以上に分別し、リサイクル率を高めることとした。等処リサイクル率50%を目標としたが、現時点では60%を超える実績となっている。被災自動車は搬入場に仮置き後、車種/ナンバーなどを一定期間公表し、車主の同意を得て処理。被災自動車6,445台の内6,350台をリサイクル。各搬入場には破砕、分別、焼却施設を設置した。
コンクリートガラは路盤材や国土交通庁が整備を始めた防潮堤の材料、道路のかさ上げの材料として使われる。タイヤ、倒木や木の根、良質の木くずは製紙工場の燃料として引き取られる。家電製品も形が崩れていないものはリサイクルされる。海岸際に防潮堤、防潮堤の内陸部に防潮林が計画されており、震災堆積物の処理についても防潮堤や防潮林のかさ上げに使うなどめどが立っている。林野庁は防潮林をはかさ上げした上に松を植えることで松が深く根をはるとしている。
 搬入は①人命救助に関わる破棄物、➁道路確保のための廃棄物、③家屋の撤去の廃棄物(5月から解体を受け付け6月から解体、10,123件を受け付け、8,315軒解体)、④田圃などの車や船などの廃棄物(12月までに完了)の順で受け入れを始めた。人命救助の廃棄物は分別は出来ていないがそれ以降のものは現地で3分別して搬入。当初仙台市の瓦礫撤去は遅いと言われていたが、結果的にはがれき処理は速いペースで進み、来年5月には終了予定。現在135万トンのがれきの内40万トン、30%処理が終わっている。焼却炉は来年12月まで稼働させる予定で、石巻市から10万トンのがれきを受け入れることにしており、7月27日から石巻ブロックのがれき受け入れを始めている。受入量は仙台市が保有する最終処分場の量から判断されている。
蒲生地区と土井地区は90トン/日、荒浜地区は300トン/日の仮設焼却炉を設置、24時間稼働させている。蒲生地区と井土地区仮設焼却施設は新品の施設で20億円、荒浜地区の書客施設は青森県の企業が廃炉にしていたものを買い取り移設したものであるため40億円であるとのこと。入札は5月16日に行い、蒲生地区と井土地区は10月1日稼働、荒浜地区は12月1日から稼働し始めた。入札で最も重視したのは稼働時期を出来るだけ早くすることであった。

3、搬入場の環境対策
 搬入場の整備に当たっては有害物質による土壌汚染を防ぐためにシートを敷いたり、アスファルト舗装している。アスベストについてもがれき撤去現場及び搬入場の密閉化と、市内30ヶ所での大気中のアスベスト濃度調査を行い公表している。搬入場仮設焼却施設は通常の施設と同じ排ガス規制を受けており、バグフィルターと虚けダイオキシン類等の除去を行っている。焼却灰の放射能の線量も測定し公表している。線量は主灰(燃えかす)97~260ベクレル/kg、飛灰(バグフィルターのもの)300~1,380ベクレル/kgとなっている。

4,市民生活の復旧
 家庭ゴミの収集は震災4日後の2011年3月15日から通常収集を開始し、焼却施設の復旧を行い2011年5月9日からおおむね通常の処理を開始した。2011年3月15日から5月10日まで市内全5区に各区1ヶ所の粗大ゴミ搬入場所を設置すると共に、床上浸水地区や高齢者世帯の粗大ゴミの先行収集を行った。

5、がれき車おりが順調に進んだ理由
1)宮城県沖地震が来ると言われており、津波は想定していなかったが震災対策のマニュアルを作っていた。災害時のがれきの借り置き場等も想定していたこともあり、搬入場所は民有地を借りずに確保できたことで処理を早くすることが出来た。

2)政令市であったため、産廃業務を担っているため、民間事業者を把握できていた。震災がれきは基本的には産廃と同じものであり、地元産廃事業者と連携して処理を進めることが出来た。また業務を担う職員の数もそれなりにいることが大きい。

3)市街地の被害が少なく、職員の被災者も少なかったこともあり、行政機能が大きく被災しなかった。

4)トップの判断が速く、現場に一定の決裁権が与えられることで迅速な対応が出来た。

まとめ
 現地はまだ震災の傷跡が残っていた。仙台市のがれき処理は計画通り順調に進んでいる。その大きな理由は、津波は想定されていなかったものの約30年周期で起こっている宮城県沖地震の備えが大いに役立っている。宮城県沖地震に対するマニュアルが作られ訓練されていたこと、がれき搬入場所も準備されていたこと、産廃業者や建設関係などの各種市内事業者との災害時に対する提携が作られていることが災害復旧に大きな力になっていることが改めて確認された。加えて、危機管理体制として、トップの素早い判断力が問われている。福岡市の災害対応に大きな参考になると思われる