去る3月29日に出された情報公開審議会答申は大きな意味を持っています。以下にまとめてみました。なお全文は、福岡市ホームページで見ることができます。
http://www.city.fukuoka.lg.jp/soki/johokokai/shisei/027.html
吉田市長は説明責任を果たしたのか?
情報公開審議会答申は福岡市の行為は「情報公開条例の本旨にももとる」と意見。
1、ゼネコン3社の聞き取りによるメモ及び電磁資料はあったと思われる
情報公開審査会の答申では、「これらの文書(ゼネコン3社の聞き取りのメモ及び羽損で作成した文書)については,当時,各担当職員が職務上作成していたことは認められるが,検証・検討チーム及び事務局が解散された後も廃棄されることなく,現存していることをうかがわせる事情ないし資料を見い出すには至らなかった。」(以下、「…」は答申より抜粋)
2、1.5倍にした根拠はPwC社の見積額85億5千万円を単に5割り増ししただけ
根拠なく5割り増しすると言うことは別の言い方をすれば捏造では
①市の主張
「ローリング費用を含むこども病院の現地建替え工事費用については,PwC社の報告書だけでなく,平成19年7月中旬から8月10日前後にかけて行った複数の総合建設業(ゼネコン)関係者からの口頭による意見をもとに,事務局が「簡易的な試算」を行い,その結果を第17回検証・検討チーム会議(平成19年7月27日開催)に反映させた。同会議において,事務局より「簡易的な試算」の経緯について説明があり,議論が行われたが,特に異論がなかったため,同会議の議事要旨(公開)には掲載されていない。」
②聞き取り調査の結果
「検証・検討報告書等の中では,この増額分の大半を占めるローリング費用の金額を導き出したという「簡易的な試算」の内容としては,新棟建設・外構工事費用の合計額85億5,000万円の約半額というものであって,それ以上の計算根拠等は示されておらず,それ以外の本件公開資料等でも,この点はつまびらかにされていない。」
3、重要な政策けってするための試算であり、公文書として記録すべきであった
①こども病院問題と本件対象文書の関係
「しかし,こども病院問題は,それ自体として福岡市民の医療及び福祉のあり方に関わる重要な問題であるうえ,平成18年11月に実施された福岡市長選挙でも争点の一つとされたところであって,市民の関心が高く,現地建替えかアイランドシティへの移転かをめぐる賛否の議論が活発になされていたものである。検証・検討チームがその作業の方針において,「アイランドシティ整備事業及び市立病院統合移転事業については,必ずしも市民の理解が得られていないと考えられる」(検証・検討最終報告書1頁)と記しているのも,こども病院問題をめぐるこのような状況認識に基づくものにほかならない。
そうすると,こども病院の現地建替え工事費用の概算額をどのように算定するかは,こども病院問題の帰趨に極めて重大な影響を及ぼすものであって,検証・検討報告書等とPwC社の報告書の各金額に多額の食い違いを生じた理由,ことに事務局担当職員によるゼネコンからのヒアリングとこれに基づく「簡易的な試算」の内容,さらにはこの事務局報告に基づく検証・検討チーム会議における討議の具体的状況がどのようなものであったのかは,それ自体として市民の重大な関心事であるばかりではなく,こども病院問題についての福岡市当局の政策決定の当否に対する市民による適切な検討と評価のために必要かつ重要な情報であったと考えられる。」
②条例の目的との関係
「情報公開の目的は,「市政に関し市民に説明する市の責務が全うされるようにするとともに,市民の監視と参加の下にある公正で開かれた市政の推進に資すること」(条例第1条)にある。
上記(3)で述べたように,こども病院問題は本市の重要な政策課題であって,現地建替え工事費用の如何は,検証・検討報告書等においても,その政策決定を左右する不可欠の要素として位置づけられている。しかも,この点に関して公表された金額は,PwC社の報告書と検証・検討報告書の間で大きな差異があり,その主な要因は,実施機関の説明でも,ゼネコンからのヒアリングに基づく「簡易的な試算」にあったことは否定できない。
そうすると,この点に関する検討過程の情報は,こども病院問題という市政の重要施策に関し,市民に説明する実施機関の責務を全うし,市民の監視と参加による公正で開かれた市政の推進という条例の上記目的を達成するうえで,市民の知る権利の対象とするため,これを公文書に作成したうえで,公文書規則に基づいて保管する必要性が高いものであった。
検証・検討チーム及び事務局組織の特性による時間的制約等の事情を考慮しても,かかる措置がとられることなく,本来残されるべきであった情報が「個人的なメモ等」の形のまま廃棄されてしまったことは,条例の本旨にもとるとの評価を免れないと思われる。」
4、公文書とは言えない、しかし「公用文書等毀棄罪」に該当する
①公文書とは
「条例において「公文書」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関の職員が保有しているものと定義されている(条例第2条第2号)。すなわち,公務員が職務上作成又は取得した文書のすべてが公文書となるのではなく,そのうち,所属している組織としての共用文書の実質を備えた状態,つまり,当該実施機関の組織において,業務上必要なものとして利用・保存されている状態のものが条例にいう公文書である。したがって,個人的なメモ等は,たとえ公務員がその職務上作成又は取得したものであっても,直ちに公文書には当たるのではなく,これが組織共用文書に当たる場合,すなわち組織的な検討に付され又は起案文書等に添付され,実施機関において業務上必要なものとして利用・保存されるに至った場合に,組織共用文書とされ,公文書として取り扱われることになる。
いずれも,当時福岡市の公務員である担当職員が職務上作成したものであることは明らかである。いずれも組織共用文書としての取扱いがなされるに至っておらず,条例第2条第2号に規定する公文書に該当すると認めることはできない。」
②刑法258条「公用文書等毀棄罪」との関係
第二百五十八条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
公務所の用に供する文書は公文書に限定されていない。情報公開審査会の判断は「組織共用文書としての取扱いがなされるに至ってないので公文書でない」としているが、公務所の用に供する文書であることには違いなく、刑法258条「公用文書等毀棄罪」に該当すると考えられる。
政策決定のために取得され、使用形態は異なっても意思決定に使用された。メモも電磁文書も存在していたと思われるという調査報告を見ても「公用文書等毀棄罪」になる。
「公表された金額は,PwC社の報告書と検証・検討報告書の間で大きな差異があり,その主な要因は,実施機関の説明でも,ゼネコンからのヒアリングに基づく「簡易的な試算」にあったことは否定できない。」
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