人工島新事業計画は事業破綻の証

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 福岡市は人工島事業を見直し、市5工区の土地利用の変更(処分地の削減)と平均処分価格を14万円/㎡を10万800円/㎡に引き下げるとしました。その結果、2027年度事業終了予定時の収支は80億円減り125億円としています。しかし、土地売却価格を引き下げても売れる見通しがあるのか疑問です。先日の報道では、福岡市の賃貸住宅の空室率は約2割、日本一とありました。また住宅数は世帯数を11万戸も上回っていると言われており、少子高齢化と人口減少が始まることを考えれば、住宅需要は構造的に減少していると言えます。
 東区千早駅前に30階のツインタワーのマンションが建設されていました。ところが事業者が倒産、5階までで工事は長期にわたり中断したいました。このほど聞くところによると、建築中の建物を取り壊し更地にする話を聞いています。また人工島の42階建てのトリプルタワーも発売以来1年以上経過していますが、まだ販売広告が撒かれています。金融危機による影響と同時に、住宅が過剰供給になっている現状が現れています。
 人工島市第5工区は銀行団がこれ以上埋立を続けても展望がないとして融資を拒否し、平成16年に計画変更をさせ、銀行団が平成17年に福岡市にむりやり買わせたものです。埋立が終わっていないにもかかわらず、これまで要した費用として94.6㌶の土地を399億円で福岡市は博多港開発から購入しました。銀行が見放した事業を福岡市が続けて展望があるとは考えられません。しかし毎年100億円ほどの予算で埋立を継続してきました。今回の見直しは、土地処分が平成16年に変更した事業計画通り行かないことからの見直しであり、事業が行き詰まり展望がないことの証と言えます。
 そもそも、産業構造が既に大きく変わり、国内での大規模な生産施設は今後増えるとは考えられません。加えて、昨年のリーマンショック以来世界の経済の先行きは不透明な状況で海外からの投資引き上げで地価が下落しているのが現状です。日本経済も不透明な状況で、土地需要は構造的にありません。先日、人工島港湾区域の約5㌶の土地に物流センター進出が白紙になりました。その結果、港湾特別会計では66億円の歳入減となりましたが、今後の土地処分が難しいことを暗示しています。
 世界の物量の拠点は上海、香港、シンガポールなど、後背地に新興国の市場と生産拠点を持つ港湾が中心となっており、釜山の30分の1しか取り扱いがない博多港が国際物量のハブ港湾たり得ないことは明らかです。クレーンを必要としないRORO船が増えていることは、クレーンや倉庫、ヤードなどの使用が減ることを意味し、土地の需要が減り、港湾使用料が減ることを意味します。コンテナー船が大型化していることは、寄港する港が減ることを意味し(現に博多港は3万トン以上のコンテナ船の寄港数は減っている)、博多港などフィダー港への大型船の寄港が減ることを意味します。つまり、土地処分はますます困難になり、港湾使用料も計画通りには徴集できなくなります。そもそも、15m大水深岸壁そのものが必要ないのです。
 しかし、福岡市は収支計画で10年度の土地分譲収入にこの用地売却額として66億3千万円を計上しています。この土地が売れ残れば港湾整備事業基金で賄うことになり、10年度の基金残高は76億7千万円から10億4千万円に減少し、売れ残る用地が他にもあれば、たちまち基金は底をつきます。更に、機能施設整備事業(クレーンや倉庫などの港湾施設の整備し、使用料で資金を回収)の収支計画は平成75年が事業終了となっており、50年先の収支計画など全く意味がないものです。しかも施設使用料はこの間赤字で収支計画自体が使用できません。
 以上の状況見れば、港湾特別会計自体が破綻することが目に見えています。埋立はこれ以上すべきではありません。現状からもう一度港湾計画を見直す必要があります。具体的には埋立が終わっていないところは干潟に復元し、自然と共生する都市を再構築することで福岡市の魅力を高めます。同時にムダな公共事業を減らすことで財政再建に寄与します。港湾機能は将来の都市圏の人口動態を見据えて修正し、身の丈にあった港湾整備をすべきです。