昨日、佐賀地裁で諫早干拓事業における潮受け堤防締め切りにより有明海の漁業に被害を与えていることが認められ、農水省に潮受け堤防開門が命ぜられました。事実上漁民の全面勝利といえます。しかし、失った有明海の豊かさを取り戻すには多くの困難があると思われます。
当初農地確保のために諫早湾の全面埋立が計画されましたが、減反政策が始まり、農地をつくる必要がなくなりました。ところが次は諫早市本明川の水害を口実に、防災堤防として締め切り堤防建設計画が継続されました。しかし、防災機能についても根拠はありません。諫早干拓はムダな公共事業として多くの漁民や市民が反対してきました。
諫早湾は東アジアの渡り鳥の重要な中継地であり、国内外の自然保護団体は国際的に重要な湿地としてラムサール条約登録湿地に指定して保全することを求めてきました。また干潟は多様な生物が生息し、有明海の子宮といわれるように魚介類の産卵育成の場で有明海の豊さの基でした。多くの漁民も埋立に反対してきました。
しかし、多くの国内外の反対を無視し、諫早干拓事業は1989年に着工され、1997年4月11日に締め切られました。その結果潮流が弱まり、海水の上層と下層の水の交換が悪くなり、低層での貧酸素化が進みタイラギなどが育成できなくなりました。また潮流が弱まることで河川から運び込まれる栄養分が十分に行き渡らなくなったと言われています。潮受け堤防による問題は当初から指摘されてきましたが、御用学者による「影響は軽微」という理由で諫早干拓が進められてきました。今回ようやく司法の判断で国の責任が問われることになりました。失ったものはあまりにも大きく、潮受け堤防開門によって全てを取り戻すことはできませんが、有明海の再生には是非とも潮受け堤防開門が必要です。
博多湾人工島計画も諫早干拓事業の双子のような状況を歩んでいます。諫早干拓と同じように、環境アセスでは御用学者により「影響は軽微」とされましたが、人工島埋立による博多湾の自然破壊も大きな影響が出ています。博多湾は東アジアの渡り鳥に重要な中継地であり、埋立前には7万羽を超える鳥が飛来してましたが、いまやその半分の3万5千羽程度に激減しています。私たちが起こした裁判では敗訴したものの、「環境アセスは非科学的である」「埋立を止めることも一つの政治的判断である」など異例の指摘がなされました。私たちが指摘してきたように、博多湾の自然は破壊され、埋立事業は社会・経済の変化の中で土地需要がなくなり破綻しています。これ以上埋立を続けても展望がないことは明らかです。埋立はまだ6割しか終わっていません。埋立にこれ以上ムダな税金を使うことはやめ、埋立が終わっていないところは森と干潟にすることで、博多湾の自然を再生させることが必要です。